現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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「で、どう思う?」

 

戦闘後。

使える素材や目ぼしいものを回収した後、安全空間での話し合い。

これは本当に仲間や組んでいる相手次第だが、俺達は毎度毎度挟み込むようにしている行為。

 

たった一言でも、ああして欲しいこうして欲しいという要望を知っておけば次に活かせる。

どういう事が得意で、どういう事が苦手か。

其れ等は実戦の中で見出すしか無いことも多く、共有するのもまた必須な事なのだろうと考えている。

 

そして、今の話題は各々の得意不得意。

もう少し言うなら、欠点を埋めるために各自がどうするべきか相談する時間。

自分で考える課題と他人が思う課題、その穴埋めに必要となる対話時間兼休憩時間だった。

 

「どーしてもお前の役割不足は少し不安だな」

「やっぱそうだよなー……」

 

今俎に上がっているのは雄二の特異性。

対人には優位であっても対生命体に於いては幾らか不利益が目立つ能力。

特に問題となるのは……まあ、訓練階層(うえ)で有効だった幾つかの戦術が使えなくなっている点。

 

此奴一人を軽くして立ち回らせる、というのもその一つ。

だからこそ、役割がどうにも浮いてしまっている面だけが目立ってしまっている。

 

「戦闘以外ではクソ有用だからこそ、って部分はあるんだが」

「戦闘特化に比べりゃまあそうだわな」

「あれ?ひょっとして私馬鹿にされてます?」

 

後輩が挙手しながら自己申告しているが無視。

 

こればっかりは仕方ないが、根本的な部分として雄二の扱いは「斥候」、或いは「草」に近い。

忍者、という戦闘能力を兼ね備えた空想の存在ではなく。

ただ生き残ること、ただ情報を探ることに特化した探索者。

正直、この役割を馬鹿にするやつの脳がどうかしてるとさえ俺は思ってる役割。

 

この洞窟においての”罠”、足元が脆く崩れ落ちそうになる落とし穴や天井からの崩落。

物陰からの奇襲は余り警戒しないで良い分、そうした目に見えない罠があちこちに仕込まれている。

しかもそれを避けた底に『石の花』があったりと嫌らしさは拡大中。

そうしたギミックを全て踏んだ上でも踏み倒せる役割を担っているからこそ、他にもと思ってしまうのは贅沢ではあるのだが。

 

「ぅう~~」

「なんていうか幼くなってねっすかね先輩」

「色々溜め込んでるんだよきっと~」

 

三人ほどマジで観客がいる状態なので余計に悩ましい部分はある。

此方が要請するか、緊急時には動いてくれる分助かるのだが。

何より素材を持ち帰れない心配は皆無だし。

 

「俺のとお前のとで出来ることが幾つか被ってるのも問題っちゃ問題なんだよな」

「何向けか、って差はあるけどなぁ」

『それでも出来ることが重なってる、と言うのは最悪代替して貰える、とも取れる訳ですし』

 

俺は対生命体向けで対集団向け。

此奴は対人向けで対単体向け。

 

その前提を踏まえても、何かを浮遊させる/軽くする、という本質は似通っている。

出来れば俺を軽くして貰った上で自分で浮遊させられれば擬似的な空中浮遊も可能になるのだが、そこはそれ。

他者の特異性が大きく関わっているものは任意操作が難しい、というデメリットが此処で牙を剥く。

 

だからまぁ、今回考えるべきは此奴単体での戦闘での役割を増やすこと。

 

敵の背後に周り一体一体を狩っていく、という戦闘形態は間違ってないと思う。

俺の役割が撹乱且つ調整役として動いている以上、独自判断で数を減らしてくれる思考が噛み合うやつがいるのは気楽でいい。

 

だから……そうだなぁ。

 

「取り敢えず俺からは武器で補う、っつー当たり前の考えしか浮かばねえな」

「やっぱりか?」

 

ぴょんぴょん跳ねて自己主張してる天才は無視します。

お前みたいに即座に生み出せたら誰も困らねーっつーの。

 

「今から特異性の改造、発展、術理の策定は余計な時間がかかり過ぎるだけだろ」

 

無論その辺の思考は常にして貰う。

方針は同じでいいとしても、出来ることの幅は常に広げて貰う。

 

目標は一対二の状態に追い込まれても八割近くの確率で勝率を握ること。

或いは取り囲まれた状態での遠距離攻撃を一定の時間でも良いから耐久できる手段の構築。

俺達の師匠は一対四までなら七割、三なら九割圧勝してたんだしそれくらい出来ずして何が仮弟子だ。

未だ後者は中途半端にしか出来ていないので、俺が自分で言えることではないけれど。

 

「取り敢えず最近使わねえ鉄球使ってみるか?」

「あー……確かに普段は使わねえからなぁ」

 

此奴の短刀は文字通り()()()()()()という側面がある。

 

根元の部分の輪っかになっているところで束ねることが出来、これ自体が本体という形が近い。

何方かと言えば刃の本体は切り離せる再生部のような扱いになっているから、普段から数十本分を溜め込んで投擲具として使用する。

仮にこれが尽きたとしても、戦闘中に外す猶予があれば永遠に戦闘可能。

なので俺のように幾つも別途投擲具を用意する、という思考に余り行き着かなかったという今がある。

 

空間の容量も其処まで多いわけじゃないから内容物絞ってる筈だし。

 

「刃に毒塗っておけば済んでた、って思考の硬直で止まってたのが問題かぁ?」

「つっても本来近接なのを強引に遠距離運用してんだから仕方ねーだろ」

 

下手に近くで攻撃するとアレの斬撃に巻き込まれかねないし。

視線をちらりと向ければ頬を膨らませて怒ってますポーズ。無視。

 

取り敢えず次の戦闘で試す、として放り込んだままの鉄球を渡す。

一旦二種類、ベアリング状の数十グラム程度の多量の塊と数キロ程度の一つの鉄球。

 

「東雲先輩、場合によっちゃ加工頼めますー?」

「いーぞ、この辺の岩使えば幾らでも問題ねえし」

「って話だ、このまま十三階には進むが一回お前メインでもやってみるか」

「だなぁ」

 

この動きが正しいか分からない。

それでも、一人が明確に動けないのは不味いのは分かる。

試していくしか無いのだ。

一つ一つを積み重ねて――――。

 

(この時期に同級生っぽいのを見ねえのは違和感あるが)

 

少しでも、先に。

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