現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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「ふぁぁ……」

 

翌日。

教室に少しだけ早く着いた俺は、いつものように自席に着きながら周囲を見回していた。

 

どうしても抜けない眠気。

睡眠時間よりも優先するべき調査事項があったから、それについて調べていれば普段の半分程度にまで落ち込んでいた。

故に無理矢理薬で覚醒させているわけだが、其の為の代償は後で降り掛かってくるのは覚悟済み。

 

当然唯情報を持ち込んだだけでは嘘と疑われる。

なので蟻共がいなくなった合間を見計らって頭部を二匹分程(これでも相当量スペースを取った)持ち帰っている。

証拠として裏側でその頭を取り出した時、受付担当の目が一瞬で真面目になったのは見てて面白かったのは事実なんだが。

あれこれ情報の提示や逆に問うこと、取引の提示。

その辺で面倒臭かったのもまた事実。

 

(実際、情報を初期も初期に握れたなら動く以外の選択肢はねーからなぁ)

 

主動的になるにしろ、受動的になるにしろ。

今回相手にするものは『迷宮』の外へは影響せず、けれど内側では蔓延り続けて大惨事になるのが視えている罠。

だからこそ何とかしたいとは思っているのだが、その為の準備は俺一人では到底こなせる物ではない。

なので、先ずはどの程度影響を与えているのかの()()調()()と一般的な存在の情報を片っ端から漁っていれば朝日が昇る直前だった。

 

とは言え、俺が眠気を前面に出すのは割といつものこと。

だからか、漂うのは普段と余り変わらない雰囲気。

けれど、妙にその頭数が少ないような感じがするのは俺の勘違いなのだろうか。

 

「ぉーぅ」

「うわびっくりした」

 

ぼーっと周りを見回しながら欠伸を噛み殺していれば、普段と違って気配が死んだ雄二が真横に立っていて少し驚いた。

何というか目の下の隈が酷いことになってるし、彼方此方から声を掛けようとしてはその顔を見て二の足を踏む奴等がちらほらいる。

その顔に見覚えがあったりなかったりするが、どれも情報源としての付き合いをしていると前に言っていた奴等だった…………と思う。

 

「なんだ、夜に()()()()()でもしたのか」

「窓から落としていいか?」

 

ちょっとからかったら真顔、と言うか殺意を帯びながら返答があった。

いやまぁ、其処まで進んでるならとっくに決着は付いてるよな。

昨日二人で帰ったのは知ってるけど。

 

「悪い悪い…………ってのは置いといてだな」

「置いとかねーで欲しいが言いたいことは分かってる」

 

指先をくるりと回転。

空中に円を描くようにして周囲、という簡単な意思疎通に頷いた。

 

取り敢えずこの状態に関して聞きたい。

つーか、昨日頼んでた事の現状報告だけでもして欲しい。

別に表向きは外に漏れても問題ない内容ではあるんだし。

 

「軽く探った限りだが、俺等と同じくらいの奴が3%くらいっぽいな」

「3%……いや、何とも言いにくいなおい……」

 

ノルマを熟せずに退学処分になるやつは例年1%いるかいないか。

それも一年に限った話で、上に上がっていけばその割合はほぼ零に等しくなる。

そういった事実がある上で、全体の――落ち零れ集団の――二十分の一以下。

これを大きいと捉えるか小さいと捉えるかは各個人別な気がする。

 

「ただ、話はそう簡単じゃなくってな」

「んだよ勿体ぶって」

 

其処まではやや拡散気味に。

此処からは声を潜めてハンドサイン混じりの虚実込での話。

 

先程までの情報は広めるべき話として。

今からのは身内としてやり取りすべき情報として。

無論、その内容を見透かして此方に取引を持ちかけてくるなら受ける用意はある。

そういった見せ札であり、同時に相手の才覚を測る情報の提示でもあった。

 

()()()()()()()()()()()()、寧ろ此方のほうが比率としては上だ」

 

だからこそ、此奴が吐いた真実に耳を疑う。

冷静になってみればそうなるのが当たり前なのに、不思議とそれを例外として除外していた自分がいた事に気付く。

 

「マジか?」

「大マジ、表立って噂にはなってねえが多分今週末には誰もが知ってる事実になるぞ」

 

というか、事実にする――――というのが正しいのだろう。

その為に多分彼方此方に種を撒き、事実という枝葉を育てて虚像を実像に仕立て上げる。

そういった技術は、俺には全くと言って良いほどない……ある種の芸術だった。

 

「妙に顔触れが少ねえと思ったらそういうことか?」

「今朝段階で聞かれたら答えてるからな、裏取りやら何やらで動くだろうよ」

 

探索者が稼ぐ一番単純な方法。

それは、半ば作業と出来る階で作業と出来る相手を永遠に狩り続けること。

中間層の平均帯は十五階前後、少し登ったところまで戻ろうとすればあの蟻共と対面する羽目になる。

単体向けの特異性で下手に一人なら、先ず間違いなく帰ってこれないだろう。

 

「そんで?」

「こっからか?」

「当たり前だろ、お前が其処まで踏まえて動かないわけがねえ」

 

いや、技術を教え込んだ店主(マスター)がそんな中途半端を許さない。

此処で終わらせたら悪戯に混乱を巻き起こしただけ。

投げっぱなしにするなら、先ず間違いなく佳境にぶん投げられるのは目に見えてる。

 

「これは俺の予想を含んでる、ただ八割方こうなるだろうって想定ではある」

「で?」

 

更に一段階小さくなった声。

相槌に合わせて放たれた言葉は、ある種の説得力と悪寒を同時に感じさせるもの。

 

「多分、()()()()()()レベルにまで膨れ上がると思う」

 

……もしそうなったらどうなるのか。

激流の中に放り込まれることはほぼ確実視出来る未来に。

友人と二人、溜息を零した。

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