現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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もう一つ書いてる作品がある程度形になったら公表したいですね……


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「んー……?」

 

進んだ先は一度見覚えのある光景。

ただ穴が隠されること無く幾つか散らばっていて、蟻の姿が一切見受けられない。

後目立つとすれば、穴の大きさが明らかに拡大しているところだろうか。

 

「これでいいのか……?」

 

一見何も変わらない。

入る時に感じた圧は突き抜けた今何も感じない。

扉の奥側から入口の方を見れば、苦笑と目を見開く約二人。

残りの仲間……という言い方も変だが、普段から共に動く仲間は何も感じないのか首を傾げている。

 

「分かってはいたが、当然のように通過すんのな」

「いや、何がですか?」

 

何を基準にしているのか。

多分入る時に感じたアレが理由なんだろうけれど、それでも超越者(とそれに近いだろう)二人が驚く理由にはなってない。

 

「取り敢えず小鳥遊、お前もとっとと此方来い」

「あ、はーい!」

 

まあ、壁越しで話す内容でもない。

俺に出来たくらいなんだし他も当然出来るだろう。

そんな気持ちを込めつつ声を掛ければ、警戒しながらも此方側に近付いて……入口の辺りで足を止める。

 

「ん?んん??んー……あー、成程?」

 

ていや。

そんな軽い言葉と共に鯉口を開き、鞘に納める。

それだけで足止めされていたのか嘘のように、壁を超えて此方側へと近付いてきた。

 

「先輩、何なんです?さっきの」

「俺も知らん、八月朔日先輩が言うにはなんか壁って話だけど」

 

特段この場所にいても違和感はない。

周囲に広がった操作領域を手繰っても唯の『迷宮』。

一瞬だけ感じた違和感は、思考は何処かにするりと抜けてしまったように意識に残っていない……気がする。

 

「いやまあ、壁はありましたけど」

「そういう意味じゃねえよなぁ、多分」

 

物理的な壁じゃなく、精神的な壁っていうか。

何と言うか拒絶されている場所に無理矢理入っていく為の技術というか、そんな感じ。

言葉で表現するのが妙に難しいんだが、確実に言えるのは普段の場所とは明らかに違う空間みたいな気配があった、気がする。

 

「どう思います~?」

「なんだろうなぁ……先輩方が言ってた入れるかどうかの基準、ってこういう事、なんだよな?」

「多分?」

 

だよな、お前も俺と同じ状態なら同じような感想しか出ないよな。

本来の十五階で似たような出来事が待ち受けてたってことなんだろうけど、下手すると()()()退()()()()って事態とも噛み合わない気がする。

ってことは見る目線とか判断基準はまた別なんだろうか。

 

「おー……なんか変なのあったな」

「いやフツーに入ってくんなよお前」

「自分を薄めりゃあんなモン無いも同然だわ」

 

どうなんだろうなぁ、と小鳥遊と互いに目線を重ねていれば横から聞こえる男の声。

っていうか雄二の声。

壁から目を離したのは僅かな時間だった筈なんだが、当たり前に乗り越えてくんのどうなの?

本当に半数も脱落する判定基準あるのか此処。

 

「で、何の話よ」

「いや、壁ってなんだったんだろうなって話」

「八月朔日……さん?が言うほどのものだったのかなー、とは思ってます」

「ああ、まあ、うん……言いてえ事はわかる」

 

あんだけ強めに脅してきたんだ。

もっと酷い何かがあると思ってたのに実例としてみれば大した事ない。

いや、慣れたからどうということ無いって感じてるだけなのだろうか。

基準を何処に置くかで判断の天秤が大きく振れる気はしてる。

 

「お前なら俺の感じてる違和感通じるよな?」

「あの程度か、って感覚で良いんだよな?」

「そうそう、それ」

 

もっと、こう……千尋の谷に叩き落とすっていうか。

笑顔で地獄に蹴落として鍛えさせるような側面が目立つあの人があんだけ警戒を促したんだし。

もっと地獄が待ってるもんだと思っていれば拍子抜けしてしまった、というのが大きい気がする。

 

当然周囲は警戒し続けているが、動き続ける気配はまるでない。

この間と同じように穴の中までは探索してないが、穴の縁から目線でも感じれば気付ける状態ではある。

こうなったのは、間違いなくミサキとクダの影響なんだが。

 

「確かに八月朔日先輩のしでかす事に比べると生温いっつーか……お優しいっていうか……」

「『迷宮』の中でこんな事感じる羽目になるとは思わなかったわ」

「それな」

「あの、先輩方。どんどん苦笑が酷くなってるのでその程度で……」

 

いや別にそれは良い。

あの人の前で堂々と不満を漏らしたことは幾らでもある。

その上で一切対応を変えないのがあの人だし、俺等も越えた上で一切対応を変えなかった。

多分これは変な信頼なんだろうなぁ。師匠と弟子筋の関係性だし。

 

「気にしねーでいいよ。だってほら、天音ちゃんも当然のように越えてきてるし」

 

苦笑、という言葉にもう一度壁の向こうを見る。

その時には一切足を止めること無く突き進んできた天音ちゃんの光景。

なんか俺等とも違う、そもそも何も無かったような動作にも見えるが……まあそれはそれでいい。

やっぱり俺等とは違う存在だった筈なんだな、と思うだけなので。

 

『……何かありましたか?』

「圧力っていうか壁?」

「空気の壁、みたいな感じが凄かったよ?」

「俺はそもそも帰れ、って言われてる感じだった。知らんわって無視したけど」

 

こうして話を聞いてみると感じた内容が微妙に違うのが良く分かる。

まあ残ってる先輩方は当然越えられるもんなんだろうが、嘗ての経験とか聞いてみたい所。

 

『なんで私は特に何もなかったんでしょう……?』

「天音ちゃんの特異性……由来なのかなぁ……?」

「どうでしょうねぇ……?」

 

研究が進んでいる……と信じたい。

動きが何処かぎこちない超越者組を此方側で見据えながら。

何ともなしに、そんな事を考えていた。

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