現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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少しだけ情報の開示。


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「お前等どうなってんの?」

「全く以て同じ言葉を返したいんですけど」

 

超越者組三人は当然のように扉を越え。

先輩方三名は一歩足を止めた上で普通に通過してきた。

やっぱこれ、半数も弾かれる理由になってない気がするんだが。

 

「本当に半数も弾かれるんです?」

「あー……そうだな、平均すれば半数には届く、筈だ」

 

そんな言葉を口にしたのは女王様。

ただその内容は何処か胡乱な気配を含んでいて、正しく受け取って良いのかどうなのか。

 

「……なら、俺達が越えられた理由は?」

 

先輩二人は役に立たないと判断してもう一人。

今日初めて出会った、片側の顔を隠した女性にも話を向けてみる。

小さく首を横に振った上で八月朔日先輩へと目線を向けたから、そちらから聞け、ということか。

 

溜息を呼吸に混ぜ込みながら、反応を待つ。

 

「あー……もう教えるしかねえよなぁ、これ」

「一(・)人(・)で(・)も(・)入(・)れ(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)、と思い千里を呼んだが」

「保険にはなるだろ、俺等どっちも前衛で暴れるタイプだし」

 

…………?

今、少しだけ違和感があった気がする。

 

「入れない、のに入れるように出来る、と?」

「正確に言うなら此処から先に進むのに必要になる行為に付属するものだが、な」

 

どういうことか、と目線が集中する。

そろそろ熱量さえも帯びそうな集まりに、明らかに溜息を吐きながら頭をガリガリと引っ掻いた。

どう説明するか、と悩んでいる時特有の癖にも似た行為。

 

「良いか、絶対誰にも言うな。言ったら次の日には二度と起きられなくなると思え」

 

周囲をもう一度確認した。

俺達以外誰もいないことを分かった上で改めて口にされたのは、そんな明らかな脅し。

一切ふざけている様子がない、本気の忠告。

 

「珍しく忠告するんスね」

「ああ、これ本気も本気だから気をつけてね~?」

 

呆れたような口調の東雲先輩に恵先輩。

二人はつまり、多少なりとも知っている?

 

「知ってたんですか?」

「聞いたでしょぉ?十五階を超えれば嫌でも理解することがある、って。

 でも、私達も越えられるとは思ってなかったのは事実だよ?」

「え?」

 

少しだけ強めの問い掛けに、敢えて怯えるような動作を取ってみせた恵先輩。

ただ、後半に付け加えた言葉に載せられた感情は真剣な時特有の重みがあった。

 

「零、お前気になったこと無かったか?

 何故新入生を促成栽培してでも探索者として成立させようとしないのか」

「……あります」

 

割と何度も。

自分と周囲の格差を感じる度に、浮かばなかったと言えば嘘になる。

 

「そうするとな、十(・)五(・)階(・)を(・)絶(・)対(・)超(・)え(・)ら(・)れ(・)ね(・)え(・)って実例があんだよ。

 この国じゃなくお隣での実例だがな」

『……なら、何を見ているんですか?』

「十五階で見るのは能力の応用性……術理が構築出来ているかどうか。

 もうちょい補足するなら、一人で能力をきちんと成長させられているかどうか」

 

誰かに頼って越えられるわけではない、と。

ただ、それは十階の守護者でも同じようなものを経験する筈。

もっと厳密に判断する何かがある……それだけの試練のような何かがある、と。

 

「なら、今のこの空間は何なんですか?」

 

併せて気になるのはこの場所。

感じていた圧力に慣れたからなのか、それともそう感じる気配があっただけなのか。

多分見るべき基準が別としてあるのだろう現状こそが、先輩が隠そうとした真実なのだろう。

 

「……入れる基準に関してはある程度判明してる」

 

苦々しい口調。

 

「なら」

「だが、先に言っとく。これから言うのは一切冗談抜きの情報だ」

 

答えるか答えざるか。

多分誰か一人でも入れなかったら教える気がなかったと思われる口振りで。

そして俺が重ねようとした答えを上書きするように、少しだけ声量を上げて口にした。

 

「本来なら一度実感してもらいたかったが、今のお前等の顔見る限り従わねえだろ?」

 

「先」。

目標地点に辿り着く前に、もう少しはっきりとした何かを体験させようとしていた、と。

うんまあ、答える内容は決まってる。

 

「良く分かってらっしゃる」

「これだからお前等は……」

 

信頼が消える訳では無いが、信用は薄れる。

特に小鳥遊辺りの目の色がヤバい。

飛び掛かることはないだろうが、信用出来ない、と判断したら一切引っ繰り返さないタイプなんだし。

その上限に届く前に此方で調整してやる必要があった。

 

「……入れるか入れないかは、零には前にもちょっと言ったが才覚で決まる。

 『迷宮』に初めて入ったときに見定められて、その結果で上書きすることは一切出来ない先天的な才覚でな」

 

しん、と周囲の音が途切れた気がする。

十五階が後天的な才能、訓練で何とか出来るものだとすれば、此処……良く分からない「招集対象」の空間は先天的。

一切変えようがない、その前提を全員が達成している?

 

「達成してる奴等を、俺等みてーな超越者って呼ばれてる奴等は『迷宮に愛されてる』とか呼ぶんだがな。

 国の目線、もうちょい言うなら裏で色々と調べてる奴等から言わせるとまた別の呼び方をされんだよ」

 

目線が、俺に、天音ちゃんに、そして恵先輩に向いた。

小鳥遊にも一度向けられた気がするが、此奴は……なんだろう、誰もが分かる例外種みたいなもんだし。

九十九先輩は雄二から一切目を離さないからそっちに任せたんだろう。きっと。

 

「……つまり?」

 

話が二転三転、遠回りしている気がする。

なので、はっきりストレートでぶん投げれば。

出来れば言いたくねえ、とばかりに物凄い重い口を僅かに開いた。

 

「上位者、俺達みたいな人間とはまた違う……ずっと昔にいただろう存在からの認識の比重の差」

 

そう定義される、と吐き捨てるようにして。

一度見れば分かる、と重ねるように俺に口にした上で。

その名前を改めて呼ぶ。

 

「この『迷宮』の生まれ落ちた理由にも繋がる…………神(・)、(・)と(・)か(・)呼(・)ば(・)れ(・)る(・)ク(・)ソ(・)共(・)からの寵愛の差だよ」

 

自分の鍛錬ではどうにもならないモノからの判断で変わる、半分以上が入れないというこの空間。

其処に入れているというのがどういう意味を持つのか。

思考が落ち着いて。

身体に、震えが走った。

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