現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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オヒサシブリデス


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また一つ、一塊の敵が吹き飛んでいくのが見える。

それだけ前線で暴れているのだろう、と言うのは目に見えずとも分かること。

それでも、警戒を緩めるような圧力の減少は一切発生していない。

 

(…………)

 

少しだけ、呼吸を整える。

頭に酸素を回して、戦闘よりも思考に重点を置く。

その数秒で足一歩分は詰められるだろうが、それよりも先輩方が消し飛ばす量のほうが多い。

 

目線を前と後ろに向ける。

 

九十九先輩は少しだけ前へと陣取り、定期的に蟻人を爆破するように消し飛ばしている。

小鳥遊は此方の声が届く範囲で移動しながら撫で斬りにしているのが見える。

先程まで硬い、とか何とか言っていたのが嘘のように――――()()()のか、或いは()()()()()()()()()()()()()()のか。

 

手応えの差。

空気の変化。

”師匠”が更に踏み込んだのだろう、その理由。

 

知らない事を空想で埋めながら、けれど足りない知識を欲して。

再び直ぐ眼前に戻ってきた後輩へ、一言だけ投げ掛ける。

依頼ではなく命令として、告げる。

 

「小鳥遊、九十九先輩と併せて前線の維持の継続」

 

何をどうすれば終わるのか。

確かに海先輩は答えたけれど、それを全て鵜呑みにしてよいのか。

疑問として抱いた、幾ら潰しても終わりが欠片も見えない戦場。

恐らく、足りないものが……知り得ないものが、俺にはある。

 

「先輩は!?」

()()()()()()()()()――――多分、その後は突っ込むことになる気がする」

 

目線を向けたのは後方。

俺には理解できない何かで、軍勢を縦に分割しているのが見える。

顔を隠した、気品さだけを持ち合わせた女性。

 

名前も答えず、口も開かず。

ただ「付き従い」ながらも、今も何故か視線で後頭部を射抜かれているような相手。

隠れていない部分だけを見れば、女王の影と呼んで差し支えのないであろう女性。

そんな相手と、()()()()()のが分かった。

 

だから、と一言だけ告げて呼吸した。

 

飛ばしている鉄塊、そして狐達と併せて操作する戦場全体。

一時的に其処から目線を外さなければいけないのだから、どうしても短時間に凝縮したくなる。

気付けば指示を出す立ち位置にいたからこそ……全てを彼女達に任せる、という選択は選べても。

完全に意識しない、という選択は選べなくなってしまったのは多分自分自身に掛けた枷。

 

多かれ少なかれ、助け合いながらの戦いだと理解しているのに。

それを統括することに慣れてしまった、俺自身が取ってきた行動の結果故。

 

その呪い(こうどう)を……この現場に連れてきた後輩に頼み込むのは、と。

どうしても上から目線で見てしまいながらも、現状を踏まえてもう一歩踏み入れる。

 

「戻ってきたら、もう一度指示を出すとは思うが」

 

彼女の背中に迫っていた蟻人の首を、鉄塊で穿つ。

 

当初よりも、皮膚に当たる硬皮が柔らかく感じる。

慣れなのか、錯覚なのか。

目前の後輩と同じようなことをしている自分のことは、考えないようにした。

 

「はい」

 

一歩、彼女が俺の後方へと踏み込んだ。

併せて、首元に体液らしき生暖かい何かが飛んでくるのが分かった。

 

全周を互いの視界で確保しながら、それでも尚対応が遅れる後方への攻撃を互いの前方として補助する。

似たような……囲まれた時の対応は、十階層に攻め入った時に経験していた。

だからこそ、互いに無言でお互いの援護行動(フォロー)が噛み合ってくれる。

 

「道を作るか、一緒に来て貰うか……どっちかは分からんが、準備だけはしておいてくれ」

 

扱う術技の違い。

対軍勢用、対単体用、或いは相打ち覚悟の自爆技。

最後を選ばせないためにも、俺がするべきなのは……自分を含んで、完全なまでに使い切る行動。

 

こん、と鳴く声が一つ、二つ。

自分達に任せろ、とでも言いたげに会話に介入してきた狐達にも目を向けて。

思考しない範疇……無意識下でのやり取りを越えて、意識しながらの意思疎通が真っ当に行えた気がする。

 

「わっかり、ました!」

「任せた!」

 

二歩ほど離れた場所にいた天音ちゃんにも目を向ける。

ふわふわと漂う『流し雛』の手先に当たる糸が無造作に伸び、ある種の結界のように立ち振る舞っている。

触れれば死ぬ。

ただそれだけを追い求めた結界に、けれど敵は無造作に触れては散っていく。

 

意思の有無を、どうしても感じながら。

言葉を発する余裕も無いようで、俺にも目線を送るだけで。

 

小鳥遊にしたように、一度だけ頷いて。

走り込んだのは、『扉』の前――――此処に潜る前と何ら変わらない格好で。

けれど、その包帯の下から何かが滲み出てきているような錯覚を覚える、女性の前へ。

 

目線が、もう一度合った。

 

「どう、したいですか?」

 

そして。

ある程度予想していた通り。

「獣の女王」と殆ど同じような色合いの言葉は、問い掛けから始まった。

 

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