お気に入り100越えたので追加投下ですん。
現れた二角兎相手、『付与』無し。
「わ、うわ、あっぶ、ちょっと、助け、っ!」
「んなこと言いながら全部弾いて回避してるじゃねーか」
一発飛ばしてきたのを
決め手は下から上への切り上げ。
その辺に
「あ、ほ、と、終わり!」
「うわ、全攻撃動く前に潰されとる」
振り翳した棍棒……の根本から攻撃の方向性を潰され、どう足掻いても当たらない位置へと誘導されて。
四肢を潰されて哀れな存在は首チョンパで終わり。
うん、まあ敵が違うとか相手が獣か小さな子供的な奴か、とか細かい差異はあるとしても、だ。
「明らかに動き違うじゃねーか」
『気付かなかったのですか?』
戦闘を行った場所から少しばかり離れた木々の袂。
四階への道筋からは少しだけ逸れて休憩、兼少しだけ早い昼食を取りつつの話し合い。
今日のメニューはざっくり簡単に作れる手抜きの卵サンドとハムサンドのセット。
「まあ意図して使わなくても一対一ならやれる、って改めて認識できたのは良いが……」
特に亜人系列っぽい二足のやつじゃなく、獣型みたいなそれなりの重みがある武具での立ち回りがしっかり出来ていたのはポイント高い。
ただまぁ、自信満々に言ってた角も回避してるところだけは突っ込む。
いや見てから回避してる時点でおかしいのは変わらんけどな。
「気付かなかった……ええ、これ私の能力の影響だったんだ……」
俺から奪ったハムサンドを片手に物凄く愕然としてる。
自分で気付かない程度に自己強化して反射神経やら動体視力あたりでも強化してたのか。
……いや、視力に関しては多分素だな。
神経の強化をするとしたって、見えてなければ無駄な動きをするだけで却って邪魔。
元々剣道を習ってたとか言ってたし、その派生と言うか根本を支えていたのもやっぱり目なんだろうな。
「なんか差異は感じなかったのか?」
「いやぁ、相手が強いと思ったら『付与』で少しでも武具を強化してたので……。
後はこう、前だと前衛が私しかいなかったので慣れようと思って常に使いつつ疲れたら休んで、の繰り返しでした」
「ひでーバランスだなおい」
今の俺達が言えることでもないのだが。
前衛一人は明らかにバランスおかしいだろ。
前衛も出来る後衛、みたいなのが一人でもいるならまだ納得するが……。
『それで、どうします?』
「まあお互いの癖とか能力に関しては後ろで見てて理解できたろ?」
言いながら石を前方に投射。
草叢の中から悲鳴が聞こえ、ずるりと妙な物音と共に鉄の匂いがまた周囲に広がっていく。
「あの、先輩……反射で生命体殺すのやめてくれませんか……?」
「いやお前、殺さないほうが却って危ねーから常に先手打つくらいでいいんだよ」
『センパイ、そうじゃないです』
二角兎が草叢に隠れてて急に飛び出して足を持っていかれ。
その直後にあの猪犀に突撃を喰らった事があるやつだけが文句を言っていい。
あの時の危機の後だっけかなぁ、俺の脳内の思考が一つ増えたの。
「別にお前等が先に見つけたならやってもいいが……そもそも届くのか?」
「そうじゃなくてー!」
『私達の経験にならないって話ですよ、センパイ』
敢えて会話の方向を少し変えれば、二人の声は
冗談に聞こえない冗談は流石に今不向きだったな、反省。
「分かってる分かってる、この辺の警戒に関しても経験してみたい、って話だろ?」
だからそんなに前に乗り出すのをやめろ。
防具と制服で大分潰されてるとは言え、前屈みからの目配せは色々勘違いするバカが出かねない行為だから。
……そう言って理解すんのかなぁ、小鳥遊。
ハムサンド齧りながらもそもそ言ってるから色気より食い気にしか見えねーんだが。
『分かってるなら……』
「実質初めての探索なんだし、休憩中くらいは気を抜いて良い、って気を使ってやっただけなんだけどなぁ……。
ま、そう言うなら後はお前さん達に任せる。 上だけは俺が見とくが本気で危ない時以外は口も手も出さないからな」
慣れればマジで常在戦場とばかりに休憩しながら備えるくらいは出来るようになる。
よくある小説みたく『迷宮』で女を襲う男、みたいな阿呆はほぼ百パー出ないから人間を警戒する必要が無いだけ大分ハードルは低い。
単純に命を狙ってくる分まだマシ。
「ただ、お前さん達が警戒しなきゃなんねーのは外、『学校』と『同級生』の方だからな?
その辺り理解してるか?」
好意に見せかけた悪意、みたいな裏に備えた行動を警戒しないといけないのは寧ろ
そして外……寮では、小鳥遊を守ってくれる相手は誰もいない状態。
元仲間達、お零れに預かろうとする小判鮫、或いは単純に外見だけを見て宝飾品のように手に入れようとする馬鹿。
何処に手が伸びるか分からないから、一年間はなんとか耐えて貰う必要があるんだが。
『
「ああうん、東雲先輩はそうだわな……」
第一段階のハードルが高すぎるんだよ天音ちゃんに近付く為の。
「んー……私も多分大丈夫だと思いますけどー……」
ちらり、と此方に目を向けた。
おい、どういう意味合いだその目は。
「心配してくれるなら、先輩のお家の部屋とか貸してくれません?」
「何抜かしとるんだ阿呆」
そんな軽々しく言われて「良いぞ」なんて頷くわけねーだろうが。
同性しかいない寮なら先ず問題になることも無い、寧ろ問題を引き起こしに来てどうすんだよ。
「あはは」
小さく笑い。
少しだけ、一瞬だけ影を見せた笑みを浮かべながら。
「そう言ってくれるから、私は信頼したんですよ、先輩」
呟かれた言葉は。
少し先の獣の生命の匂いを孕んでか。
少しだけ、血と、鉄と――――女の匂いがした気がした。
『…………』
天音ちゃんと、同じような香りが。