現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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(しっかし――――)

 

四階後半。

森を避け、少しだけ迂回した道順を通った進行路。

その分草原が多く、猪や子鬼が複数体現れる可能性が出てくる道であり、推奨度は一つ下がって中級程度の難度の道。

 

「天音ちゃん、前は任せて!」

 

そんな中現れたのは子鬼が三体。

どれもこれも武器を保有し、頭数より多い以上は範囲殲滅手段を持たない(天音ちゃん(ぶっこわれ)は除く)俺を含めた二人だとやや梃子摺る筈の相手。

 

にも関わらず、俺が手を出すこともなく。

目前で開かれているのは二人による剣と糸の舞。

それを彩るのはやや黒ずんだ赤色の液体。

 

多少は加減に慣れたのか弾け飛ぶこともなく、精々が()()()()()()()()()()()()()()()()程度。

いや、これを程度と呼んで良いのかは分からんが寧ろ相手のほうが可哀想に見えてくる。

何しろ、そうなれば死ぬか死ぬ寸前で止められているような状況でしか無いからだ。

 

長期戦を見据え、自身に『付与』すること無く動きを読みながら一歩先を取る小鳥遊。

強制的に短期戦になる、皮膚を裂き内面を暴発させながら一つ一つを潰す天音ちゃん。

本来噛み合うはずがない二人の戦闘形式が、奇妙に噛み合って見えさえする光景。

 

(幾ら天音ちゃんがいるとは言え、此処まで蹂躙できるのはやっぱし才能だよなぁ)

 

なんとなくその理由を察しつつも、俺がやるのは上から奇襲を仕掛けてくる鳥の群れ(アホども)の対処。

現状同時に一つしか操作出来ないとは言え、この程度の階で苦戦するはずも無し。

単純に打撃に強い骨格をし始める種別が現れる訓練地帯下層に比べれば、全然気楽に処理できる。

友人(あいつ)と組めば、その辺の問題点は解消できたとは言え。

単純な斬撃使い、それも技で斬ることが可能な人物と武具で切ることが出来る二種類とで別れているのは今後を踏まえても助かる部分か。

 

「よし、終わり」

「これでっ!」

 

ぼとぼと落ちてくる、羽根や頭部に妙な凹が出来た害鳥共。

腹部から血液と、幾つかの臓物をぼとぼと落としながら倒れる子鬼。

『生きている』のだから当然のことではあるのだが、やはりこの場は異世界に近いとも強く思う。

 

『お疲れ様です、センパイ』

「あー、鳥まで手が出せなかったぁー!」

「お前それは贅沢言いすぎだろ」

 

ほぼ同時に片付いたのは、手慣れているかどうかと向き不向きの差異でしかない。

慣れれば衝撃波くらい飛ばしそうなやつもいるんだし、そのうち俺も御役御免になってしまうだろう多分。

 

辺りは血塗れ、けれどこれくらいは当然のこと。

制服は血が染み付いても簡単に落ちるように材質レベルで対策されているらしいし、それは防具もまた同じ。

手入れしなければならないのは当然としても、付いてしまったこと自体を嘆く必要はあまりない。

なのでまぁ、何をしなければいけないかと言えば。

 

「小鳥遊、そっちの子鬼の爪だけ剥がしておいて」

「はいはーい、先輩は?」

「此方の鳥の処理終わらせる、それが終わったらまた別のことだな」

 

別のこと、というか教えとかなきゃいけないことと言うか。

本来なら採取しやすいのは森の中だが、此方の草原地帯にも生えていないこともない薬草の数々。

原料と手間とを引き換えに手に入れる回復薬の別入手ルートに関しての指導が待っている。

なので、手早く鳥の処理。

 

「あ、天音ちゃん、ついでに処理もやり方教えるから此方来てくれ」

『分かりました』

 

癒やす/内側から破壊する特異性である都合上、生物への知識が深ければ深いだけ効果を発揮できる。

例えば単純に傷口を癒やす、と言うのと『血管が傷付いているからその部位と表面を強く』と想像する差異、とでも呼ぶべきか。

どういった原理で回復現象が発生しているのかは当人も未だ把握しきれていない以上、持っておいて損はない知識の筈。

 

鳥の首元、何故か妙に太いゴム状の皮膚を裂いて内側に見える二本の血管を指差す。

既に致命傷と呼ぶべき状態だからか、両手で作業をしても微動だにせず。

念の為に浮いたままの石塊が、行き場のないままに漂っているだけ。

 

「基本この階層の生命体の鳥ならこのどっちかの血管が破れれば直ぐに落下死する。

 今は石をぶつけて落下させてるけど、今後一発だけじゃ落ちないのも出てくるからそしたら任せるかも」

『なら、普段はどうしてるんですか?』

「頭部は頑丈になっても羽根の付いた両腕は軽くしないと飛べないからね、此奴等。

 だからどっちかをへし折って落下させて、後は時間を掛けてかな」

 

相手は飛べることを前提に知能を働かせている。

けれど別の言い方をするなら、突進以外の攻撃手段をこの段階ではまだ持たない雑魚に過ぎないのだ。

伝え聞く第一階層以降、生命体も何らかの特異性を発揮し始める『迷宮』の本番。

其処からが本当の探索だし、俺が()()を見出さなければならない領域。

 

『なら、基本は羽根を?』

「俺はある程度離れた場所から狙えるからそうしてる。

 ただ、この上位種になると羽根を矢にして飛ばしてくるから狙えるなら胴体潰して確殺かな」

『……鳥、なんですよね?』

「どういう進化してるのかってのは一つの研究テーマになってるよ」

 

一応矢と言っても短矢、或いは投擲するダーツに近い。

射程は然程長くなく、一応ではあるが俺の石のほうがギリギリ射程は上なので打ち合ったとしても時間さえあれば殺せる。

二人の場合は……射程のこともあるし、確実に胴体か片腕奪って地面に落とすのを優先するべきかねえ。

少なくとも小鳥遊はそれで良い筈。角見てから避けやがるし。

 

「此方は大丈夫でーす!」

 

ああだこうだ、と教えていれば手を振りながら後輩の声。

それに負けじと大きく声を張り上げる。

 

「分かった、ならお前さんも此方来い!実験材料はいっぱいいるから一匹練習しとけ!」

 

はーい!と叫びながら近付いてくる刃物を持った女子学生。

そう言う目で見ると俺達全員ヤバイよな。

 

「あ、その鳥持ち帰っても大丈夫ですか?」

「寮で食うなら素直に解体依頼したほうが楽だぞ、俺は一通り出来るが」

「えー、じゃあ教えて下さいよぉ」

 

戯言を交えながらの解体作業。

それが終われば薬草の採取、次の階への進行。

まだ日は天から落ち始めた時間帯。

 

少なくとも――――この二人が優秀すぎることは、他の誰の目から見ても明らかだった。

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