現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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バカ二人のバカな会話?


022

 

第五階を余裕で突破し、その場で帰宅することを選んだ夜のこと。

手に入れた物品を売却し、金銭に変えれば二人は目を開いてその値段に驚いてみせた。

曰く、『想像以上の金額だった』と。

 

今までがもっと多人数に依る分割だったり、撃破数其の物が少なかったり。

或いは単純にその経験が無かったりと理由はそれぞれ違うものの、喜んだのは文字通り。

その金銭を使って更に準備を整える、と宣言して解散後。

後々の予定のことを考えれば無理は出来ないと戒めつつも、残った用事を片付けようと一人動いていた。

 

『で、何だ? 俺にも頼み事?』

 

帰宅しながら電話したのは唯一の同級生の友人へ。

 

「頼み事っつーか、お前の目線からも聞きたいことがあんだよ」

『別に構わねーけど、この後家事とかあるから短めにしろよ?』

 

元々今日は手隙だという予定を知っていたからの連絡。

やや面倒くさそうに電話に出たやつに告げたのは、後輩二人に関してのこと。

ああ、と口にしながら次に舌に乗せたのは、自分では理解できない部分の直感的対応に際して。

 

「正直なところ、訓練地帯後半に関して()()()()だとどういう所に注意してる?」

 

思考を複数並列し、警戒するからこそ直感と言うよりは見落としを防ぐのが俺の基本の立ち回り。

それに対して此奴は流れというか、その場その場の対応に併せて立ち回る直感型の極みみてーなやつ。

だから、自分が警戒している部分と違う部分に関しての擦り合わせは案外噛み合ったりする。

 

東雲先輩と恵先輩に聞く、という手段がなくもないが。

前者は何方かと言うと遊撃、周囲の状況を見て前衛から後衛までを熟せる熟練の戦士という側面であり専門家でなく。

後者は純粋に投擲特化、或いはその場で加工することで戦況を操作する状況操作(バランサー)に近い立ち位置の為役に立たない。

 

だから、俺が今直ぐ取れる伝手は友人か或いは卒業生か。

そのうち前者を選んだと言うだけの話で、多分此奴が同じ状態になったとしても俺に振ってきただろう。

故に感謝の気持も何も持たない。お互いに。

 

『板についてるなぁ先生様が』

「抜かせ、お前に言われたくねーよ」

 

通話口越しに聞こえた苦笑に、同じく軽口で返す。

 

此奴は自分が生まれ育った孤児院の年下の子に辛抱強く生きる術を叩き込んでる謂わば先達。

その事実を追求すれば『将来の利益になるから』とかなんとか言ってるが、その年下に狙われてんの知ってるからな。

後はその姉とか諸々にも……まあ、()()()に流れてしまう孤児も一定数いるのもまた事実だから否定しきれんが。

 

『で、前での目線でいいんだよな?』

「ああ、お前も知ってる天音ちゃんにもう一人拾ってな、もしかすると組むことがあるかもしれねーし」

『まあ入学早々後半のこと聞くくらいだしそうもなるわな……そうなれば助かるのも事実だし』

 

特にお互い口にしないが、上へ上へと上がっていく奴等は多分今月中には卒業に必須のノルマは超える。

既に上の学年の知り合いと結び付くことで制限を解除したり、或いは進むことを特例で許可されたり。

その在り方はそれぞれ違うだろうけど、お零れに預かれるというのは案外悪くはないのだ。

特に、『疲労』という絶対に逃れられない重圧を抱え込む『探索者』の場合は。

 

『まあ知ってると思うが、俺の場合大抵がノリに近いからな?』

「それでも良いわ、特に注意しとく部分とか前兆とかの勘はお前のが掴んでるだろ」

 

子鬼の数が増えたり、或いはその姿を大きく『大鬼』と化したり。

生きた粘液はまあ存在自体を見なかったことにすりゃいいが、知性を持って動き出す亜人共の警戒はしてもし足りないし。

 

『そうだなー……子鬼共が何か仕込んでる時は大抵目線が下に行く、ってところか。

 後は例の猪犀とかいるだろ』

「あー、いるな」

『彼奴等、速度を出すことに集中すんのか走り出す直前に目を伏せる癖があるんだわ』

 

動物系、亜人系、鳥系。

それぞれに共通する、正直言って余り気にしていなかった、目線という視点。

誘導する、表情の変化の差異は白兵時に見てはいたものの……特に下に行くと同時操作による対処になるから其処まで目が行かなかった。

そういった見てしまう方向から察して対応できる程度には手慣れている、説明に慣れているのを聞けば。

まあ何度も言ってきたことなんだろうな、と納得がいく。

 

「次ん時は俺もその辺気を付けてみるかねえ」

『お前は石投げてりゃいいだろ石』

「なんだよ近くで戦っちゃ不味いってのかよ」

『少なくとも俺よりはダメだろ』

 

まあそれはそう。

『軽業』という飛び回ることを得意とする撹乱タイプの此奴に比べれば、地を這うだけの俺が前に出るのは認め難いのは確か。

 

「それを言われるとどーしよーもねーんだけどな……」

『まあ、マジ話すると第一階層以降は後衛でも最低限の防衛手段持っておいたほうが良いらしいがな』

「誰情報よ」

『去年卒業してったパイセン。たまに連絡してんだわ』

 

絶対女だろうなぁ。

外見上特に目立つ部分無いけどその分気は配るし、一緒に出かけてて楽しいって言ってるのを聞いたことあるし。

多分アレ俺ってルートを通して攻略する手筋見つけてた感じじゃねえのかな……。

 

「まあいい、分かったサンキュ」

『もーちょい残ってるから後で文で送るわ』

「うい、んじゃまた学校でな」

『年下ばっか食い散らかすなよー?』

 

何言ってんだテメエ、と言う前に切られる。

多分向こうの電話ではけらけら笑っているんだろうが、それを考えると苛立ちが残る。

 

(まあいい、お前がそう言うこと言うなら俺にだって手札はある)

 

例えばそーだな、お前のプールの画像とか流せばそれなりに賑わうよな。

後で彼奴の目の前で送信してやる。

 

そんなことを思いながら、画面に記された悪友であり友人でもある『如月雄次(きさらぎゆうじ)』という名前を見つめ。

どうしてやろうか考えつつ、夜闇の中をなんとなくゆっくりと歩いて帰ることにした。

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