「……って感じだった」
「ってことはー……なんだ、結構変わる感じか?」
「体感で言うが訓練地帯の頃の武器のままじゃキツイのはマジっぽいな」
「マジかー……」
翌日、翌朝。
疲労を抱えながらも、本日から続く三日間の授業の為の登校。
この時ばかりは徒歩圏内というのは助かると心底思うが、それはある程度の周囲に住む同級生も同じ。
なので普段から少しだけ早く登校するようにしていて、それは目の前の友人も同じ。
なんとなく話し合われるのは、やはりこの四日間で得た『迷宮』の知見に関して。
特に電話で聞いた部分もあるから、向こうから質問され、それに回答する。
その逆のことも幾らだってある、もう慣れ切った日常の風景だった。
「ならよ、実際どうなんだアレ」
「アレってーと……?」
「能力の更新に関してだよ、起こり得る話なのか?」
周囲で話し合われているのもそんな雑談と打ち合わせが半々だ。
興味もないのか此方に聞き耳を立てる気配はないが、逆に向こうから情報を吐き出してくれている。
有り難く頂戴しつつ、でも『これくらい出来て当然』のラインだからこそ口に出てるんだろうなと軽く自嘲。
「一応。恵先輩から伝え聞かなきゃどうなるか分からんかったが」
「あー……」
苦々しい顔をしているのは、此奴も此奴で変なラインの情報を握っているから。
周囲を見回し、同じように聞かれていないのを確認してから声色を落として囁きかけてくる。
誰にも、というのは難しくても、その可能性を減らせる……要は『秘密』という
暴かれるのは単純で、そしてそうなった時には周囲にも伝播する。
それを承知で言うつもりなのだろう。既に起こってしまったことなのだから。
「俺の
「言わねーよ、そういうってことはある程度噂広まってるってことだろ」
立場上、そして能力の近位上、此奴は
情報収集、或いは情報共有の幾つかの受け口を分けて貰っている関係上、妙に噂に詳しい。
そして其れ等の大半は、『寧ろ拡散して欲しい』噂も混じっているから判別が難しい。
情報戦もやれるとか流石は『草ノ者』。
そして何より、
当たり前過ぎるので当たり前の対応をするだけ。見せかけだこんなもん。
「なんかな、
――――脳裏に過るのは、昨日の助言。
「この四日間で先に進もうとした奴等で、か?」
「そのせいで俺の周りの幾つかで混乱が起きてる、何が正しいのか、ってな」
つまりは武具の発展も、特異性の拡張も発生しなかったということ。
当人の認識の仕方次第で千差万別の扱い方が出来る『能力』ではあるが……。
「何が変わったのか自分で把握できてないだけじゃなくてか?」
「だとは思うんだが……如何せん情報が不足してるだろ、この辺のは」
「まぁ、なぁ……」
口に出すのは流石に出来ない。
視線を落とし、態とらしく端末を開いて昨日電話した履歴からメッセージを一つ。
『夜 パイセン』
多分これだけで分かると思うが、軽く振動したそれに目を通してほんの少しだけ頷かれることで了承の意を示したと判断する。
あの人に直接確認するわけにも行かないが、俺が分かっている範囲、聞いたことを噛み砕いて伝える分には問題ない。
意図して誤魔化す部分も出てくるが――――多分、此奴が把握したいのは『自分がどうなるか』のライン。
一つ壁を乗り越えるのを手伝って貰った以上は、その恩恵を友人や後輩に伝えるのも大事な役割だと理解している。
だが、
それだけの価値があるからこそ、秘めておかなくてはならない……そんな矛盾した情報という価値を持つ宝。
「ただ、何にしろそんな噂が出回るんじゃ攻略速度落ちるんじゃねえか?」
「どうかね、まだ第一報に過ぎねえから半月くらいして広まりきったら分からんが」
若干話のテンポが狂ったのもあり、周囲への誤魔化しを兼ねて一旦どうでもいい言葉を挟む。
この攻略速度、は単純にノルマ達成率のことを指す。
最深階層更新されれば一斉にお祭りになるだろうが、そちらの方の進行度は現状どうなのか良く分からんし。
「ただ、少し気になったことがあるのは事実だな……今聞いた話で」
「ってーと?」
「気付かなかった、と言うよりはお前の思考から純粋にすっぽ抜けてるだけだと思うが」
「お?喧嘩売ってる?」
「売ってねーよ。単純な話、上の学年で同じことが起きなかったと思うか?」
どうでもいいじゃれ合い、僅かに逡巡。
ゆっくりと頭を持ち上げた時の目は、ある種の答えを導き出したモノへと移り変わっていた。
「……まさか、
「だろうな、と言ってもこれ単体じゃ絶対解決しない罠も込み込みだが」
単純な話、毎年起こっていて、毎年流れる噂と言うだけ。
但し、それが流れるのは二年か三年……つまりは最低でもノルマを達成した生徒達にのみ。
此処で戸惑い、それが脳裏にでも過ぎれば再現されてしまう。
……僅かなリード、少しだけ先に進んでいる連中からの
擦り抜けるには、年上との伝手か或いは強固な意志か、何方かが求められるのだろう。
「彼奴等にも伝えとかないとな……」
「ああ、後輩ちゃん達?」
「一人はゆらゆら揺れそうでなー」
ああいや、寧ろ関係ないとばかりに無視するか?
多分そのどっちかに振れると踏んでるが、剣鬼みたいな状況でもないとはっきりしねえ。
アレは何かしらの幹、頼れる何かがあってこそ輝く才能だとは思うんだが。
「で、どうなんだよ」
「何がよ」
「東雲パイセンの妹さんは良く知ってるが、もうひとりの方」
「あー…………」
見た目……とかは関係ねえな。
此奴年上好きだし。
「一言でいうと」
「おう」
「剣の鬼、戦闘大好きわんこ、天才」
「意味が分からんのだが」
「安心しろ、俺も良く分かってない」
なんだそりゃ、と呆れるが。
……実際の戦場を見れば、多分理解できると思うぞ。お前も。
一部インターミッションで別視点一話挟むなら誰が良いですか
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小鳥遊岬/後輩A
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東雲千弦/男先輩
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東雲天音/後輩B
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滝野瀬恵/女先輩
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如月雄次/友人