現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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進学校とかだと授業の数が多い印象ありますね。


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きんこんかんこん、音が鳴る。

 

「やーっと終わったぁー」

「確かに慣れるまで時間掛かるよなぁ」

 

『迷宮』で活動するための時間を要する関係上、授業日として定められた三日間の授業数は妙に多い。

基本的には朝から晩まで、一日辺り九時限。

これは単純に寮生活でもなければ難しかっただろう日程だ。

 

ただ、まぁ……それを何とかする手法が無くもないのがこの学校、と言うより国立の『迷宮』探索者育成学園。

其処に潜り、きちんと成果を出すことを前提とした授業の公欠と(ほぼ意味のない)模擬テスト提出を以て単位とする。

()()()()()()()()()()()()比重をどちらに移しても構わない、そう言われているようなもの。

 

だからか、今日の席は幾つか空席が。

普段騒がしくしている男性女性陣の上位チームが丸々欠けていたのは静かで助かったが、疲労を誰かに丸投げ出来るわけもない。

いつも思うが、この後に部活とかマジで言ってるんだろうか彼奴等。

 

「お前この後は?」

「どーすっかなぁ、材料取ってきたし今日か明日には東雲先輩ンとこ行こうと思ってたんだが」

「あー、第一階層の素材?」

「そーそー、かなりヤバいわ」

 

立ち上がりながら雑談交じり。

孤児院近くにまで戻る此奴とは大体校門前までは共にする。

時間があったり話す内容があるなら何処か寄って帰ったりもするけれど……。

 

(内容連絡は夜でいいしなぁ)

 

外で話せる内容ではないからこそ、話題として帰宅途中に上げられる筈もない。

ただ単純に雑談混じりで、帰宅するかと教室を出て一歩か二歩。

 

――――ぱーい!

 

なんか嫌な予感がして少し震えた。

 

「どーした?」

「いや、なんか幻聴が聞こえた気がしてな……」

 

少し足を止めたのを訝しみ、隣のやつも足を止める。

此奴には聞こえなかったのか、いやまぁ顔も知らん相手のことなんて知るわけもないか。

 

「疲れてるんじゃねえの?熱は?」

「知恵熱ならあるかもしれんけど授業終わりはこんなもんだろ……?」

「そうでもねえだろ、去年より詰め込む量は増えてるし」

 

訓練地帯を越えたのだから覚えることは山程あるぞ、と。

優しさ一割欲望九割だろうが、教え込まれるのは生き残るために必要になる術。

正直()()()()()()()()()()()()のだから、幾つか捨てりゃいいだけなんだが。

先輩方は特化しすぎてその成績で殴り倒してるって聞くし。

 

「だよな、気の所為だよな……」

 

そう信じて、悪いと言い伝えてもう一歩。

 

せんぱーい!

 

…………。

 

『零せんぱーいってばー!』

「いやこれ幻聴じゃねえな!?」

 

流石にここまで聞こえりゃ意識を逃がしてる猶予はない。

段々近付いてくる足音と声と、後普段聞かない女子の声。

廊下に未だ残っていた幾らかの同級生の目線がそっちに向かい、併せて友人の目が一度後ろに向き、俺に戻る。

 

「なぁ」

「何も言うな、マジで頼むから……!」

「いや、まぁ、うん……」

 

向かおうと思っていた下駄箱に最も近い階段から反対側へ反転。

早足で歩き出し、次いで後方からも同じように足音がする。

目前、大分前に見えるのは片手を大きく振る後輩(バカ)

隣で顔を伏せて顔を真赤にしてる天音ちゃんの姿もある。

 

(何してくれてんだあのバカァ!?)

 

正直思わず叫びたかったし、なんだか哀れみの目線を後方から感じるのがすげえ嫌だ。

廊下で一瞬止まったような時間が動き出しつつ、幾つかの視線と教室から覗いた目線が併せて後頭部に突き刺さる。

その色合いは……なんだろう、興味と、嫉妬と、疑問?

 

「なんでむs「良いから此方来い馬鹿!」いたいいたいいたいですってばぁー!」

 

近付いた先でも同じように声を上げるバカ。

余り今後に差し障ることをしたいわけじゃないんだが、今この場での恥ずかしさ抹消には勝る。

顔面を鷲掴み(アイアンクロー)を実行しながら恐らく降りてきた側であろう中央階段側に回る。

 

校舎の上から一年、二年、三年と分けられた建物。

特別教室(専門教科)は特別棟と呼ばれるもう一つの建物に渡り通路を利用する形で行き来するので、そちらの方面へ向かう。

今の時間帯なら部活で鍛えよう、と思ってる連中を除けば先ず邪魔は入らないだろうし。

 

ずんずん進む俺とそれに引き摺られるような形のバカの更に後ろ。

本来だったら見なかったことにしてもいいのに、友人ともう一人の後輩も付いてきている。

片方は物味遊山な部分もあるんだろうが、絶対天音ちゃんは引っ張られてきただけだろ可哀想に……。

 

「……なぁ天音ちゃんよ」

 

ふるふる首を振る少女の姿が目に入る。

外では余り見覚えのない、けれど学校だからこそ見れる制服姿。

意識して見ようとしなければ多分埋没できる。

ただ一度見てしまえば目を離せない、何処か誘蛾灯のような煌めきを魅せる少女。

 

目立たないようにしていたはずなのに、今回のこれで多少は明るい立ち位置にでてしまうかもしれない。

まあ、()と同行して『迷宮』に潜る側な以上は、同級生との繋がりは必然的に希薄に成りがちだから其処は余り問題じゃない。

どっちかって言うと自衛の方か。

 

廊下を渡り、階段の隅、裏手。

清掃道具入れのロッカーなどが立ち並ぶ物陰。

 

「俺が言わなかったのが悪いのかもしれんが、何しでかしてるんだお前……!?」

「別に悪い事してないじゃないですかー!」

 

手を離し、けれども壁面に背中を押し当てる。

逃さないように、後は周りに声が響かないようにある程度声を抑えながら怒鳴る、みたいな状況下。

目立たないほうが良い、っていう意味合いを理解してない以上は一定の納得はするが、それはそれとして……。

 

()()()()()()()()()()のかお前」

 

この学校の裏情報を口にする。

こんな場所で言いたくはなかったが、これ以上被害を広げるよりはよっぽどマシだ。

既に手遅れな部分は絶対的にあるけれど、余計に延焼するよりはマシ。

 

「どういう意味です?」

「どうもこうもねー、唯の事実だよ」

 

目をぱちくり。マジで何も知らないってのがよく分かる。

その片棒を担う役割の奴が丁度いるんだ、ご指導願おう。

目線をやれば、深く深く溜息を吐いて一言。

 

「貸し一」

「お前も無償で情報得るんだから一も何もねーだろうが」

 

恩の貸し売りの会話を経て、一歩だけ前に出るのと合わせ。

片手を壁面から離し、一歩だけ後ろに下がった。

 

此処からは、お前の大嫌いな勉強のお時間だ。

一部インターミッションで別視点一話挟むなら誰が良いですか

  • 小鳥遊岬/後輩A
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  • 如月雄次/友人
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