現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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「あの……えっと……」

 

彼女への説明は、そんな戸惑いから始まった。

 

「あー……まずは自己紹介からだな。

 俺は其処のアホの……クラスメイト、まあ強いて言うなら友人? 如月雄次ってモンだ」

「誰がアホじゃいこの野郎」

 

茶々を入れられ、入れ替えし。

この学校の()()()()()を理解しているから僅かに震えている天音ちゃんの手を取り、落ち着けるように心掛ける。

元々人見知りな――と言うより他人への警戒心が異様に高い――彼女の心にするりと入りこめたのは大したものだが。

文字通りに何も知らなかったと見える小鳥遊へは、真逆に後悔心を抱えている筈だろうから。

 

「私は、えっと……小鳥遊岬って言います」

「オッケー、じゃあ取り敢えず小鳥遊ちゃんって呼ぶな、それでいいか?」

「あ、はい」

 

何から聞いていいか分からない状態。

その状態でぽんぽんと進められる話、ある程度は馴れ馴れしくも線を引く態度。

俺の雑な扱いに比べれば丁寧だと思ってくれれば良いのだが。

 

「で、何が問題だったっていうとだな……小鳥遊ちゃんは、()()()()()()()()()()()()()

 

本質的な問題に踏み込む。

 

多分俺なら強めに言ってしまうこと。

面倒を見る、と言ってしまった関係上、普段の会話の関係上。

ただ、そうやって強引に伝えたとして理解するかは別の話。

そうは思っても急に変えられるかは……まあ、こればっかりは俺の不足だな。

 

「何……同級生は同級生じゃないんですか?」

「違うなぁ、いやまあ普通はそう捉えるだけなんだけど」

 

()()感じるのは一歩離れたところからの目線。

上と下と、繋がりを持つから……外と繋がるから、今をどう見れるかという目線。

 

掌に書かれたのは、『止められませんでした』という後悔の言葉。

致し方ない、と手を握ることで伝えつつも。

こうなってしまった以上はすべてを伝え、文字通りに丸抱えする以外の選択肢は消えたと判断する冷静な俺がいる。

そして、半ば取り込む――良くて友好的中立――に近い状態に、友人を追い込む形になってしまうとも思ってしまう。

 

何しろ。

『二つ名』は伏せることを許され、けれど学校に知られている情報であっても。

それより上の発展した方向性に際しては()()()()()()()()()()()()()()()から。

 

「俺等……一年の後半、早けりゃ二学期かな?にもなると別の見方をし始めるんだわ」

「別の?」

集団(クラン)に加えられるか否か、もうちょい言うなら……仲間か、商売敵として見るか、提携先として見るか、だな」

 

少なからず学校では付き合いがあるから、そういう目で見る機会は然程多くない。

ただ、卒業後……或いは二十歳という縛られる年齢から逃れた後。

別の『迷宮』へと流れるとしても、自分にとって相性がいい相手は出来れば連れて行きたくなるのが人間の性。

 

地上であれば通常の法律が裁くけれど。

『迷宮』内で、それが正しく守られる保証は無いのだから。

それこそ、相手の善性に頼るくらいしか。

 

「しょ、商売敵!?」

「その前提になるのはな、その当人が持ってる『能力』とその振れ幅、発展先。

 性格……も勿論考慮には入るけど、細々とした情報を探られることになるのは避けられない」

 

特に、()()()()()()だけの将来性か現実的な能力か、何方かを持っていると判断されれば。

同級生との間柄が薄くなるのと併せて、調べることへの忌避感が薄くなるのは必然的だから。

 

言い聞かせるように、淡々と。

少しだけ早い世間勉強。

今更遅い部分と、今からでも立て直せる部分とは分けて考える必要があること。

 

「言っとくが、俺も此奴も……後は残ってる同級生はどれもそうだな。

 『二つ名』から伏せてる奴も含めて、最低限度の情報と噂、『能力』の表面情報は出回ってる」

 

横から口を挟む。

ぎゅっと握られた手の力が強くなる。

君の場合は……周りから何も言われなくなるくらいに上に昇る以外の選択肢が無いものな。

だから、噂が広まり切る前に一年次のノルマを終わらせて二年次以降の領域に踏み出す予定だった。

東雲先輩からは、そう聞いてる。

 

俺が半ば公言しているのは、其処から手繰られたとしても『大したことがない』と認識されがちだから。

精々が荷物持ち。下位階層ではそれ以外の役割を持てない。そもそもの発展性が死んでいる。

店主(マスター)や此奴経由で確認して貰った情報や噂話は殆どそんな形で収束していて、納得と安堵を同時に覚えた覚えがある。

――――その通りだよ。伏せてることを除けばな。

 

「ぇ、ぁ」

「だからまぁ、()()()()()()()のでもなければ目立たないようにするのが鉄板だったわけだが」

 

それだけ時間を稼げるから。

けれど、その薄い保護膜(ベール)は自らの手で破られた。

 

目の前の友人からの目配せ。

これからの流れを即時に踏まえた言葉を必要とする、という合図。

やってしまったのは仕方ない、だからそれを補う行動がいる。

 

「取り敢えず時間は稼げなくはない――――だよな?」

「ああ、お前の悪評を利用すりゃあ『利用されてる可哀想な後輩』って目には五分五分でイケルと思う。

 ただ、『利用されるだけの価値がある』と思われれば手助けに見えた引き抜きが来るぞ」

「その部分の判断は俺じゃなくて小鳥遊がすることだろ」

 

若干浮き気味になってしまった、という小鳥遊。

元々埋没していた、という天音ちゃん。

その何方もが『調べる対象としては後回し』から前倒しになるのはもう避けられない。

 

「だから、まぁ。お前が俺のとこから離れるなら離れるで構わんし。

 無理矢理に連れて行かれるとしても止める手法、手段が俺にはない」

 

僅かに見えたのは、捨てられた犬のような目か。

或いは殺意にも似た眼光か。

 

「それが嫌なら、自分の意志で『嫌だ』と言えるだけの力が必要になった。

 そういう意味じゃ、天音ちゃんと一緒だな」

 

取り敢えずは今月中で訓練地帯突破(とっしゅつしたせいせき)

次いで一学期中で第一階層の大半を攻略(だれもとめられないせいせき)

 

一年で此処までやれれば同級生は多分対応の仕様がない。

上、俺達の同級生やら上級生の干渉はどうしようもないが、其処はまあ俺達でやれるだけはやる。

実際、似たような前例は無いわけじゃないんだから。

 

「で、俺はお前の意思を聞いてないんだが」

 

どうしたいのか。

今、その意見を求めた。

 




失敗したのは何も知らなかったこと。
致命的な失敗は別の誰かに聞いてしまうこと。

前者は避けられず、後者からは逃れ出て。
定められた流れから一歩だけ、抜け出して。

一部インターミッションで別視点一話挟むなら誰が良いですか

  • 小鳥遊岬/後輩A
  • 東雲千弦/男先輩
  • 東雲天音/後輩B
  • 滝野瀬恵/女先輩
  • 如月雄次/友人
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