「私は――――」
答えを返す前に。
思う。
想い出す。
考える。
***
物心が付いた時には、私にはもう祖父しかいなかった。
地震があって、両親が亡くなって。
それより前に連れ合いを亡くしていた祖父にとって、唯一残った家族は私だけで。
私にとっても、全ての基準はその祖父から学んだようなものだった。
『お前に残せるのはこれくらいしか無い』
それが口癖で、最期の遺言。
祖父と共に暮らしていたのは小さな道場のような場所。
剣の道ではなく、剣の術を身に着けるための。
半ばは趣味で、半ばは意地で。
ずっと祖先から継いできたという、戦場で抗うための根本的な手段だった。
初代。
つまりは道場、在り方を伝え始めた人物は
ただ、支えて見続けていただけ。
けれど、その姿に憧れ見惚れて、いつかは自分もと刀を振り始めた。
時代が移り変わって、刀は唯の見世物となっても。
剣に、素手にと在りと汎ゆるモノを活かして生き残る術へと移り変わっても。
初代が見たというその光景は。
後世において伝承と成り果てても――――私の家系にとってはそれは実際に起こったことで。
そして目前で行われたこと。
日々、武器を振り続けた。
『迷宮』という、私が、世界が取り込んでしまった異常が正常に移っても。
『探索者』という、嘗ての英雄の再現のような異常が世界に認められても。
私達が継いできた在り方は、決して変わることはなかった。
祖父には、能力が目覚めることはなかった。
けれど、だからこそ己の身体のみで再現してみせると笑い。
その数年後、私が能力に目覚めたほぼ直後に病没した。
あの時のこと……祖父に『入れた』ことを告げた時のことは忘れない。
今でも夢で思い返す。
刀ではなかった。西洋の剣だった。
斬るための力ではなかった。寧ろ纏わせるものだった。
求めたものと違い、落ち込む私に告げられたのは単純なことだった。
『自らの纏った
身体は細くなり、昔よりもずっと起きていられる時間は短くなっていたけれど。
歳を重ねる度に、刀を帯びた時の格好は鋭く光り輝いていた。
だから、その背中を追い掛け続けた。
病没し、
けれど資格を備えていたから寮へと入り、只管に剣の道を追求した。
剣を操る術ではなかったけれど、幾らか応用することは出来て。
一人で追求するその術を応用するために熱中し。
周りに見せる表情は、いつしか錆びて固まっていった。
噂されている。
話題にされている。
そんな話が聞こえ始めたのは昨年末。
それが色恋沙汰だとか、身体付きだとか、顔だとか。
外見ばかりが話題となっていたから、どうでもいいとばかりに切り捨てて。
ずっと求めていた、刃を振るう場所へと辿り着いてからは日常に少しだけ楽しみが生まれていた。
だから、だろうか。
共に行こうと誘われて、特段理由も無しに参加して。
そして危機には当然の如くに捨てられる。
重荷を見ていなかった。だから切り捨てられた。
術を追求する重りを捨てた。だから一人になった。
幾つか入り混じった感情を統合しながら、唯生きる為に剣を振るっていた筈だった。
けれど、あの時背後から飛び出した人は。
私よりも弱くて、私よりも貧弱で、私よりも何も抱えず。
けれど、私よりも生きることに
だから、表面上は取り繕った。
助けて貰って、肌のことなんてどうでもいいと考えていた私は回復薬なんて当然持たず。
されるがままに治療され、ただ離れることを望まずに付き従った。
顔なんて見ない。
身体なんて見ない。
或いは存在さえも重視しない。
「
問い掛けても跳ね除けられた。
見つめても無視されて。
何なら近付いても無碍にされる。
同じものを見てくれていると思った。
外側に気を取られず、内側を鍛え上げている人だと思った。
求めているものを見失っても、最後には何かを見出してくれる人だと思った。
自らの悪評を気にせずとも、私達のために願って、聞いてくれる人だと識った。
――――だから、思う。
いや、
私は、私が追い求めるものを叶えたい。
祖先が見た、祖父が見た夢を。
雷を、炎を、天を。
手が届かなかった全てを、私自身が断てるようになりたい。
その果てで。
全ての
祈って、願って、その先で見える光景を共に見たい。
其の為に、必要なものは。
其の為に、必要なことは。
とても、単純で――――。
***
――――
「お願いします」
これ以上、貴方に迷惑は掛けない。
これ以上、貴方の道を阻害しない。
「先輩、一緒にいさせてください」
叶うならば。
貴方の隣で、手を繋いでいる
ただの剣。
ただの刀。
その願いの方向性は定まった。
だから、担う武具もまたその意志へと従う。
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