現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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「擦れってやっぱり酷いのかなー?」

「あ、やっぱりすぐ駄目になっちゃうんだ……じゃあ抑えるにしても無理しない方が良い?」

 

首を縦横に振りながら自分の意志を一応示しているらしい二人。

若干イライラしながら店の入口傍、背中越しで待たされている俺。

 

(女性のは長引く、とは言うが……)

 

手元にぶら下げているのは多量の袋。

顔を覗かせているのは幾つもの包帯と市販薬の塗り薬、幾つかの痛み止め。

後は個人的に使ってみて効果があったアルコールやらハッカ油辺りも逆隣の薬局店で購入済み。

この辺は良かったんだ、この辺までは。

 

問題になったのは先に選んでおけ、と伝えたのにそれを無視したこと。

先にスポーツ店、薬局店まで付いてきた上で下着系の店にまで同行しようとしたこと。

別に女性専門店でもないから問題になるわけではないとは言え、明らかに周りから見られる目はそれ相応に重くなる。

だから(二人に対し一人だけ自前の、というのも気を悪くしそうだし)自分のやつだけパパっと買って終わらせたのだが。

何故か視線が後頭部にブッ刺さる。

 

「無茶言うなよ貴様等」

「何も言ってませんってば」

 

閉店時間が近いからか他に客はない。

そんな終わり際に大量の商品を買い込む客が来た、とばかりに店員は楽しそうに幾つかを提示し。

聞こえるのは彼氏さんだとかお兄さんだとか持ち上げる声。

どっちでもないんで、と断りつつ背中を向けっぱなしだがこれを信用してくれる人がどんだけいるのか。

だから一旦外にいるって言ったのにそれを阻害しやがって。

 

はぁ、と敢えて聞こえるように漏らした溜息の後に端末をチェック。

学校関係者向けの普通の掲示板、俗に言う『裏』(とくめい)掲示板。

そういったまだ浅い表側の情報を拾い上げ、俺等に関しての噂がどの程度広まっているのかを確認する。

 

(彼奴に任せた以上は明日中には広まる、これで()()()()()()

 

現状はまだ流れていないが、周りを警戒しているか或いは明日の朝一の話題にでも上げるつもりか。

なんとなく普段の状態を思い返し、まだ猶予があることを改めて確かめ少しだけ落ち着く。

 

相手も同様に噂を利用し、小鳥遊と天音ちゃん()()頼んでいる方向に向けられていると厄介だった。

ただ、そういった流れは先行した噂が優先され、後出しで出た情報はもっと()()でもなければ淘汰される。

 

ここから拾い上げられるとすれば、同じ拠点から出てくるだとか常に一緒にいるだとか。

そういった『囲っている』状況を裏付けるような幾つかの情報だけ。

なら同じような情報屋としては噂が真実である、という流れに持っていってくれる……と思うんだが……。

 

店主(マスター)が『俺は情報屋やるには綺麗過ぎる』って言ってたからなぁ……)

 

曰く、『人の悪意を汲み取りきれない』とかなんとか。

だから方向性だけ伝えて、一応弟子扱いされてる彼奴に頼んでる部分はあるんだが――――。

良いのかなぁ、と思ってしまう俺の理性もあるわけだ。

 

「おまたせしましたー、先輩!」

『ありがとうございます』

 

頼んだ以上は俺等に対していい方向に持っていってくれるのは確実。

だから準備に専念すれば良い。

とは言っても今は……と思い返したくない現状へと目線を向けそうになって。

預けていた探索者用のカードを片手に戻って来る後輩AとB。

 

片方は携帯端末越しの電子音声での会話だからか、普段聞こえる声と違って微妙に違和感。

まあ、外での普通の会話では遅延の関係で用いるもんでもなし。

飽く迄外聞上用いてるだけだからこうもなるか。

 

「随分待たせてくれたな……」

「これくらい普通ですよ?」

 

がさり、と揺れる紙袋の中に微かに見えるのは色気もない運動用のが何枚か。

此処で魅せる用の下着とか買ってたら頭ぶん殴ってたが、流石に其処までイかれてる訳でも無いようだ。

ちょっとだけ落ち着いた。

 

「でも先輩ー」

「なんだよ」

 

カードを受け取り。

ありがとうございましたー、という声を聞きつつ。

レシートを見て何とも言えない気分を抱えながらに追加された言葉。

 

「好きな色位は言ってくれても良かったんじゃないです?」

「それを聞いて俺にどう対応しろって言うんだお前は……」

 

5割……違うな、6割位怒りを込めて聞いてみるが相手は特段変化がない。

笑ってる訳でもなく、極めてまともに質問してきているのに面食らう。

ねえ、なんて天音ちゃんと共感してるのに理解が追いつかないんだがどういうことだ。

 

「いや、だってですよ?」

「おう言ってみろ」

「これ使い捨てが前提で、中に潜った時に変えるって感じなんですよね」

「そうだな、行きもその中から一つ引っ張り出して着ていく想定だな」

 

だったら、とかなんとか付けるな。

その想定する先が明らかに一歩ズレていそうで怖い。

 

「だったら見る可能性があるのって先輩と天音ちゃんだけなんだし別に良いんじゃないですか?」

「よーし、グーで行くぞ」

「嫌ですよー!」

 

何が良いんだアホが。

つーかそう云う意味なら嫌いな色でもなきゃ意味ねえだろ、『迷宮』だぞ。

周囲の目が邪魔なものを見る目に変わり、外見を見て呆れと納得、嫉妬に移る。

 

「真面目に聞いた俺がアホだった……」

「なんか酷い評価されてませんか!?」

「してるよ、今」

 

(からか)ってると思って良いんだよなこれ。

もう一人、眺めている視点の天音ちゃんに目をやれば苦笑い。

次いで小鳥遊に少しだけ冷たい目。此方は理由が分からない。

 

「其処で見せても良いって発想になるのほんっとにお前って感じある」

「えー、部活の頃も剣道着から変えるのに見られたりはありましたけど」

「俺は男共にマジで同情する」

 

昔から……あー、いや違うな、多分。

此奴の場合()()()()()()()()()()()()()()タイプなんだ。

映らないなら誰にどう見られようと気にしないっていうか、なんというか。

無意識下に荒らすタイプ。

 

……そりゃ追い出されるわ。

 

はぁ、ともう一度溜息を吐き。

なんでですかー!と叫ぶ後輩を尻目に。

今なら閉店セール中の筈の食料品店に向けて歩き始めた。

 

放置しないでください、と叫ぶ後輩の足音を背中越しに聞きながら。




かなり性質が悪いと思います。はい。
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