「はぁ……」
周囲が血と体液と肉塊で染まった赤緑の草原。
そんな中でもまだマシな一帯……『扉』付近で漸く腰を下ろし。
頭痛が未だに思考を遮る中で、よろよろと回復薬、丸薬を取り出して一気に嚥下する。
「やっと、終わりですか……?」
『センパイ!』
「あー、いい……俺も怪我はねえから。小鳥遊、お前も飲んどけ」
はぁい、という元気が薄れた返事を聞きながら目を瞑る。
緊急対応、連続して戦闘を行う際の補給に近い服薬。
あまり望ましくないのは事実だが、『迷宮』内ではそんな事言ってる余裕はない。
そもそも……これがどういう条件で発生したのかを確認するためという側面もある。
じわじわ消えていく全身の怠さ。
けれど残る頭痛に、一つの方向性を見る。
(肉体面の疲労は消えるが頭痛が消えない……精神面かもう少し
多分、他人の能力に干渉したから発生した消耗なのだろう。
俗に『魔法系』とか呼称される属性系・物質か現象形成型の能力持ちは使用しすぎると精神面とはまた別の何かの損耗を本能的に理解するという。
今まで感じたことのない――いや、ずっと昔に似たようなことが在った気もする――痛みに、片目を開きながら深い息を吐く。
休む以外の手段だと、現状じゃどうしようもない。
一応補給する為の回復薬も存在はしてるが、必要だとは思わなかったから用意してねえし。後純粋にクソ高いし。
「何処のクソだ引き込みやがって……」
『引き込み……?』
垂れた糸は俺達を繋いだまま。
もう『浮遊』で触れるだけで声を聞くのは簡単に出来る、本能的にそう思う。
ただまだ
だから伸ばしたままの状態で、天音ちゃんからの疑問に答えを返す。
「本来……と言って良いのかね、普通にしてれば『扉』付近には生命体は沸かないんだよ」
そもそも、生命体という存在には謎が多い。
どうやって増えているのか、一定階層を超えると産まれる魔石とは何なのか。
亜種と呼ばれる属性付きの別種はそもそも同種なのか。
発見される度に臨時で名付けられ、それが広まることである種の
どんな特例がいつやってくるか分からない――――けれど、そんな中での不文律が一つある。
実際に俺も試してみたから分かるのだが、少なくとも丸一日見ていた限りでは『扉』の付近に生命体が出没することはなく。
何もしなければ、この周囲……正確に言うならこうした部屋状に構築された場所は安全地帯として利用出来る場所なのだ。
にも関わらず、生命体が群れでこんな場所に陣取っていた理由は……まあ、単純なこと。
「先輩、それってー……もしかしてー……」
「大体お前の想像通りだろーよ」
草原に寝転がり、上下反転していた小鳥遊がぐるりと反転。
目線の低さと高さの差異はあるものの、互いの目が何方も嫌な想像を浮かべ交差する。
先行者、まあ下級生かそれを引き連れた同級生のどっちかだとは思うが。
そいつらが獣を引き連れたまま『扉』を潜ったからこの場に取り残されて、他の獲物を待っていた。
現状で考えられる最も確率の高いのは、
「良いんですか!?」
「裁く法律も、それを見咎めるルールも無い。まあマナーとしては最悪だがな」
実際そうやって強引に先に進んでも帰れない以上は詰む、ということに気付かないのか。
進む場所は『扉』を潜った階から可能だが、戻るのは五の倍数階限定という罠が此処で牙を剥く。
そして、それに気付いた時にはもう死は隣に佇んでいるのだ。
(トップ層は助け合って仲間にして、なんて聞くがそんな余裕はねえしな)
見つかったとしても、
普通に考えて、進む為の手助けは最初に組んだ仲間か当初に決めた契約相手くらいのもの。
なんとなくこの先の展開が思いつき辟易しながら、言葉を手繰る。
「まあ出来ればこの想定は当たって欲しくないんだが」
『センパイがそういう時って大抵当たりますよね』
「余計なこと言わないでくれる?」
気分が更に落ち込むから。
はぁ、と溜息をもう一度漏らして疲労を身体の外へと追い出そうと試みつつ。
「多分この先……十階の入口で進退窮まったアホ共がいると思う。
俺が対処するから何も言うな、見るな、俺の背中だけ見とけ」
こういう時にどういうことを抜かすか想像がつく。
助けてくれ、一緒に連れて行ってくれ、
今まで散々に言われてきた言葉で、二度同じ顔を見るかは精々多くて
大幅にリスクに対しての猶予を取り、道具を揃え、警戒すれば
俺と彼奴はそれを実現した。
俺達よりも戦闘に向いている能力なら、もっと余裕があるはずなんだ。
それを切り捨て、金銭を優先したり体調管理をミスり、帰らぬ人となる。
人が集められなかった俺達とは違い、収益が赤字になろうとも人数は掻き集められただろう。
……実際、そうやって突破してる奴等もいるんだ。
「……どんな事言われますかねー?」
「一応想定しとくか?」
「お願いしまーす」
「なら先ずは……」
こういうことばっかり教えている先輩で本当に良いのか少しだけ悩み。
ただ、実際にそうなる前に教えているという意味では間違いない、と自分を慰め。
色々と想像する中で、恐らく最初に飛び出す言葉を口にする。
「
特に、俺達の傷の無さを見ればそう言うだろう。
知らんが。手配できない自分を恨め。
色々とありすぎて物凄い擦れている零くん。