「うわー……」
遠目に見えるのは少しだけ白く見える『扉』。
その前に広々とした草原が見えるのがその守護者の部屋、そして今の現在地が更にその手前。
「なんですその言い草」
「いや、俺達の時の苦労が何だったんだろうなーっていう諦観」
結局、あの後襲撃してきたのはあいも変わらず鬼の小隊。
本来範囲外からはみ出しているからか、出現した回数も精々一回。
もう少し……こう、天音ちゃんとかに経験積ませるつもりだったんだがそれもパァ。
毎回何だかんだ何かしらが引っかかって上手く行かねーな。
「私のお陰で戦いにならなかったー!って褒め称えてくれても良いんですよ?」
「すげーすげー」
「おざなり!おざなりじゃないですか!?」
いやだって想定とブレたし。
ついでに意識して出来てるなら兎も角お前のそれ常時発動じゃん。
「で、こんな漫才は良いんだよ」
漫才じゃないのにー、とかぶう垂れてる。
ころころ性格が変わるよな此奴。
多分本質が「使われる」側だから抑えてたとかそんな感じするけど。
「俺の武具と特異性はほぼほぼ自分で把握できてる。
もうちょい別の使い方出来るとは思うが、まだ
せめて百キロ超えるくらいまで操作できるようになれば悪さのしがいも有りそうなんだが。
そうじゃないにしろ二十……いや、硬いのをぶち抜くなら四十くらいまでか。
これは今後の課題。
「お前等の能力に関してはどうだ、どの程度まで認識できてる?」
本来(必死になって突破しているから忘れがちだが)訓練地帯の目的は
能力だけでなく身体能力や視野、得意不得意を含めた一個人としての生存能力の確認。
そしてその向上其の物にあるから、上手く噛み合うやつほど早く進み、一階層に乗り出す。
まあそういう奴程後で地獄を見るんだが。
「私は……なんでしょうね、先輩が気付いてくれたのがあるので消耗減らせてきた気がします。
こう、剣に纏わせようとすると凄い疲れちゃうのは変わらないんですけど」
「お前がそう言う方向を望んでたってことだろーな、あんまり外部への付着は期待しないほうが良いか」
「ただ、剣で斬れない相手は無力になっちゃいますよねえ」
「其処は副武器に道具使うなり属性付与した
小鳥遊は一個人、一戦力として認識するのが確実だと思う。
外に影響を与える、目に見える形での特異性が幾らでもある中で明白に得意分野が見えてるのは今後に期待できる。
『付与』っていう外付けの特異性だからか、疲弊は避けられないだろうがその分応用性は効く。
今の発言からして、消耗を軽減する――――微量の効果で同様の効果を発揮する方向に才能があるっぽい。
「でも、なんだろうなぁ……なんだか、武具其の物がびみょーに合ってない気が……」
ううん、と悩んだまま見つめているのは『迷宮』に与えられた半両手剣。
「お前、それは今更じゃねえのか……?」
呆れつつ、そんな言葉が飛び出す。
そもそも変更の仕様がないものを見られても困る。
というか、それで簡単に変わるのなら俺の石塊はどうなんだおい。
「あ、違います! ……何ていうのかなぁ。
今までは普通に扱ってましたし、慣れても来ましたけど」
んー、言葉にするのが難しいように悩んでいる。
感覚に過ぎないものを言語化しようとしているのか、それとも自分で気付いていない何かなのか。
それを問う前に、もう一人の女の子の言葉が漏れる。
『何かが違うような感じがし始めた、変わろうとしてる……ということですか?』
「……あー、それに近いかも。
自分の特異性について色々考えて、使ってみて……心の奥で何か
「揺れてる、ねえ」
はっきり言うならその変異に関しては何も言えない。
扱う当人の根幹が定まった、という意味合いならばそれに従う形で変化が起きる筈だ。
ただ、明確に目に分かる形で武具の変異が発生するのは視界の奥の『扉』を越えた後。
今の時点で何かが出来るというわけではない。
「まあ自分でも良く分からん部分を今突き詰めても変わらんな」
一旦其処で話を切り、次の……今確認しないといけない部分を再確認する。
当人が一番理解しやすいのは、発動による負担だから。
「『付与』を発動すれば色々と性能が上がるのは知ってる。分かってる。
大凡の時間でいいんだが、発動した状態で疲弊無しで動けるのはどんくらいだ?」
「そう……ですね……。
自分に対して使うだけならもうボタンを押す、くらいの感覚で出来るのでー……。
ずっと使い続けるなら三十分、オンオフ切り替えていいなら二時間くらいは行けると思います」
どうにも、使い続けるとその分発動時間に応じて消耗が増していく気がする、というのは当人談。
一度使えば切れるまで使いっぱなしで燃費がいいもんじゃねえのか、と疑問があるが。
自身の身体保護にも回していると考えるとそれは仕方がない部分なのかもしれない。
「分かった、んじゃあ取り敢えず何が出るか分からん以上は武具に使うタイプの道具とか一通り渡しとく」
粘着性の軟膏のような感じの属性付与の道具を幾つか手渡す。
相手の硬さに応じて剥がれやすさは変わるが、それでも効いている間に攻撃すれば相手だけに粘着→発動する優れモノ。
一応投げても使えるが、外した際に地面や壁なんかに残り続ける地雷化するのでその辺調整出来なきゃ使えない。
前衛職なら幾つか揃えておいて損はない物品。一つあたり学校小売価格五千円、生産者価格で五百円(材料持参)。
「えーと、これは刃に塗れば?」
「何が出るか分からんから有効そうなのを隙を見て塗る感じだな。
一応俺も操れる外装にしてるから、余裕があったら叩き付けてみて反応チェックしてってとこ」
即座に効果を発揮する、というより継続して削る補助品だしな。
明確に生物なら炎とか効きやすいんだが、見た目だけで判別すると痛い目見るし。
「咄嗟に使えないと困るから一個くらいは無駄にしても良い、確認しとけ」
「はーい」
で、もう一人。
天音ちゃんの方はどうなのか。
……珍しく、顔を顰めている(ように見える)が。