現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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朝食後、各々が取った行動はまあそれぞれの性格が出ていたと思う。

 

小鳥遊は半両手剣を何度か振り、首を捻ってはそれを繰り返した後に瞑想を執り行った。

その振り方が剣道のような日本刀向けのように見えたのは、以前習ったものと似通っていたからか。

準備を行い始めたのは十数分前で、いつもこんな感じで朝方はオンオフが激しいんだろうとなんとなく思った。

 

天音ちゃんは片付けを率先して行った後、自分が身に着けているものの確認を行っていた。

特に注意して見ていたのは手元の糸巻き機で、既に幾つかの戦闘を行っているのに無傷。

最早糸巻き機が本体なのか、糸が本体なのかが分からずじまいで聞くに聞けず。

何かしらを布……水分を吸いやすい布に染み込ませ、準備していたのが妙に気になった程度。

 

そして俺はと言えばいつも通りの事前準備。

半ばルーチンワークと化したように、身の回りの品を幾つも準備しておく。

当然のことではあるが、こうした準備は先輩方から学んで身に着けたものだ。

どうしても同じ相手を含む以上、天音ちゃんと用意が似通ってしまう部分はある。

 

腰回りに幾つか硬質の瓶に入れた回復薬に属性薬、手に持つ杖と背中に捲いた一振りのナイフ。

後は鉄塊に関しては基本周囲に浮かべるようになった。

前は手に持っていたりもしたが、重量が重量だけに手が死ぬし咄嗟に動けない。

 

特異性と武具と、どっちを優先するかと言われると……やはり、優先してしまうのは特異性なんだろう。

最悪その辺に転がってる石でも代用できる武具と比べてしまうとその差異は激しいし。

 

「まー、こんなもんか……後は臨機応変にだな」

 

そうした細かい用意を整えていれば、一時間なんて直ぐに経ってしまう。

空間解錠で中の整理をしたり、咄嗟の時に取り出せるようにしたりと以前に比べて出来ることが増える分準備も増える。

最初期までは五分もあれば終わったんだけどな。

 

「あ、もう時間です?」

「時間だな」

 

そんな言葉に反応して、少しだけ前からそわそわしていた天音ちゃんをスルーして。

目を瞑って手を組んで、坐禅っぽい状態を保っていた後輩の言葉が飛んでくる。

お前の準備ほんとに数分で終わったのか。荷物改めたいけど流石に肌に触れるのはヤバいし諦める。

 

「実際あの中に入る前に言っとく」

 

指を指したのは『扉』前の広場。

これから向かう先。

多分知らずに入ると焦ると思う。

普段は取れる選択肢の一つが取れなくなる、というのは思ったよりも精神負荷が大きくなるから。

 

「あの中に入って……そうだな、何歩か歩いた先か。前後が閉じて、俺達は()()()()()()()()()()()

 

守護者、というのはそう言う意味もある。

自分か相手か、何方かしか生き残れない決戦場のようなものを形成するのだ。

 

「え、じゃあ常に初見を相手にするってことですか?」

「そうだな、こればっかはどんだけ下っても変わらないらしい」

 

出入り口が開いた時、其処に人が立っていなければそれは敗北したということ。

そしてその結果はこの入る前の領域の片隅に、学生証という形で戻って来る。

今は一枚たりとも見当たらないが、年末には山のように積もり始めるだろう。

 

――――逆に言うなら、それ以外の全てがこの『迷宮』に呑まれるのだ。

見込み外れ、とでも示すように。

 

「ただ、これだけははっきりしてる。

 同時に入った面子が自分のやれることをきちんと果たせば、必ず勝てる相手だってことだ」

 

統計学的な推察だが、臨時で組んだ相手よりも長年組んだ相手のほうが生存性は高い。

無論道中までは協力するが、順番を整えて仲の良い……相性の良い相手と共に潜った方がいい。

多分、咄嗟の判断とかの差異で出てくる違いなんだろうが……多少のミスなら挽回できる相手であるのもまた確か。

 

最悪なのは、戦闘中にも関わらず他の仲間への不満を公に示す行為。

 

正直そうするアホ共は淘汰されていくんだが、知能と引き換えに強い能力に目覚める傾向にあるのも確かで。

それを頼りに進んできた奴等を根刮ぎ刈る、という意味で()()とか呼ぶやつもいる。

 

ただまぁそういった噂や情報は今は必要ないから口に出さないだけで。

調べようと思えば幾らでも調べられる。

 

同じ学校に通う同学年だけでなく、別の学校の同学年も。

一定数摩耗する事実がある以上、国が公開しないはずもなく――――その反論意見は全て叩き潰されている。

 

単純だ。

そうしなければ、国を運営する魔石(エネルギー)の採取量は減る一方でしかなく。

同じような他国であっても、同じような対策を取るしか無いのだから。

 

「大丈夫ですかねえ」

「しょーじき、お前等二人で勝てない相手とか想像もしたくねーんだけど……」

 

ただその言い方からして不安に思っていると言うよりは雑談の種のような言い方。

これなら寧ろ、初めて会った時の帰り道のほうが焦った言い方だった気がする。

 

「ま、実体験する他無い。武具の用意は?」

「完璧です!」

『存分に』

「良し」

 

多少緊張感を持ったまま突っ込んだほうが良いのか。

リラックスしたまま突っ込んだほうが良いのか。

人によるだろうが、俺達の場合は自然と後者寄りになると言うか。

他に頼れる相手がいない、という事実を認識し合う中だから、下手な道中よりは余程マシだろう。

 

声を掛け、剣と糸と鉄塊と。

それぞれがそれぞれの武具を身に着け、一歩二歩と歩き始める。

 

草原の中。

妙に青臭い気配の中心。

 

前後に白い壁のようなものが聳え立ち、出入りを封じ。

その場所に何かが姿を見せたのは、そんな直後のこと。

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