現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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ちょっと短め、後一話でChapter1は終了予定です。


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『Chapter1-Epilogue』

 

「せんんんんっぱぁーい!」

「うるせえ叫ぶな」

 

どん、と衝撃を持って飛び付いてきたアホをスルーしながら血を拭う。

普段使うものじゃないが、最後の最後には頼りにする武器。

手入れは大事にしているからこそ、使った直後の血拭いは欠かせない。

唯でさえ消耗品に近いもんなんだし、日本刀なんて。

 

「なんですあれ!使えるんじゃないですか!」

 

目をキラッキラされても困る。後纏わりつくな、お前の剣はいいのか。

 

「アレしか使えねー、の間違いだし大声で叫ぶのやめてくれねえ?」

 

普段から自宅で振るようにはしてるが、外では決して使えない技でもある。

多分ああしたほうが良い、とか色々指摘事項はあるんだろうが……今の俺には一番これが合っている。

特に、他の手法で上乗せ出来ない以上は。

 

「いえ、十分だと思いますよ!所詮人斬りの技でしかないんですから!」

「一応お前剣道家じゃなかったか?」

「いえ、剣術家ですよ?」

 

きょとんとした表情。

そう……だったっけ?細かい事情まで覚えきれず忘れてる部分もありそう。

 

「殺せれば良い、それは前提として何を求めるか……ってのが私の学んできたことですし」

 

あまりにも当たり前のことのよう。

それはそれで分かったから少し距離を取れ。

 

べたべたと張り付くのを引っ剥がし、刃に血が残っていないのを確かめた上で鞘に仕舞う。

軽く捻じれば手応えが返り、再びに杖としての機能が復帰する。

個人的には此方のほうが多機能に使えるし便利だと思ってるんだがなぁ。

 

『お疲れ様、です』

 

そして開いた少しの隙間に滑り込むように入り、笑顔を浮かべて言葉を告げる天音ちゃん。

疲れ気味だが笑っていて。

でも何故か、その笑みに圧を感じるような気がするのは勘違いなんだろうか。

 

「天音ちゃんも助かったよ、ああして貰わなきゃ多分刃が立たなかった」

「でしょうねー、唯でさえ毛で受け止められてましたし」

「お前の武具でか?」

「はい、尻尾に斬り掛かった時が一番硬かったですっ」

 

ああ、最後のタイミング。

筋肉質な内面とあの特殊な体毛と、その何方もが強固な壁となって邪魔をしたと。

なら妙に弾かれる距離が長引くのも納得する。

思ったより深く踏み込んで叩き切ろうとしたんだろうが、それが通用しなかったってことだろうし。

 

『出来ることをしただけ、ですから』

「それにしたってだわ」

 

最後の辺り……と言うより毛に巻き付けて以降、俺は糸に干渉していない。

其処から繋ぎ続けた微調整は彼女の思考と腕に頼っていた。

当然出来ると思って任せた訳だが、仮に失敗していたら攻撃がそもそも通せていたかも怪しい。

なら、素直に褒めておいて損はないと思う。

 

(ついでに圧も減るだろうし)

 

そんな黒い考えが無いとは言わないが。

 

「んでアホ」

「誰のこと言ってます?」

「分かってて無視すんのやめろ」

 

じっと見ながら言葉にすれば、自分ではないように左右を向いて他人事。

お前のことだ、と頭を押さえれば痛い痛いと喚きつつも漸くまともに話を聞く状態に移行する。

 

「半両手剣、先が欠けてたが大丈夫なのか?」

「あ、その話ですか」

「何の話だと思ってんだよ……」

 

だから俺は戦闘外でお前を罵倒するんだが。

その辺理解してるんだろうか此奴。

愛称みたいなもんだと認識されたらそれはそれで嫌だぞ。

 

「ん~……よく分かんないんですけど、多分大丈夫だと思います」

「それは……感覚か?」

「です。打ち直す必要とかも特に無い、みたいな?」

 

そもそも武具は手入れが精一杯で、作り変えるなんて出来るもんでもないのだが。

そして基本的に不壊で、仮に破損したとしても()()()()のが手一杯。

 

武具の破損攻撃なんて更に下も下の希少種が使ってくる程度らしいが、それでも使()()()()()()事自体は在り得る。

今の此奴の剣のように欠けたり、或いは柄が握れない状態に陥ったり。

何かがあった時には破片を持ち帰るのが常識(マナー)なところもあるが、それさえ不要と此奴は口にする。

 

「ならどうすんだよ」

「『扉』に呼ばれてる感覚はあるんですよねー、さっき欠けてからずっとなんですけど」

「そう言うことは早く言ってくれんか?」

 

いやまあ、即座に潜れる訳でも無いんだが。

それでも普段聞かない言葉を聞けば、焦りと併せて呆れも浮かぶ。

 

『岬ちゃんもですか?』

「お、天音ちゃんも?」

『はい……私の場合は、もう少し違う気もしますが』

 

じっと見つめるのは、何も変わらない『扉』のある辺り。

この部屋から出ない以上は後方の封鎖も解除できないから、心底落ち着いていられる場所。

にしても、後輩二人が二人共呼ばれてるって何なんだよ。

 

(……まあ、なんとなく納得する部分はあるが)

 

才能が有り過ぎる。

だから呼ばれている。

そう言う意見はあるし、潜る探索者達の中にはそれを認めて口にする人もいる。

 

一番下に何が待っているのか。

それはまだ、誰も知る由もないこと。

 

「ま、いいや……一応東雲先輩に武具見て貰え。

 その上で、『扉』潜った上での変異を見てからどうするか考えるぞ」

「はーい」

『はい』

 

一人で潜ろうとしないだけマシだと、いい方向に考えよう。

何にしろ、守護者を乗り越えたことには何ら変わらない。

 

「じゃ、戻るか」

 

地上に。

本来暮らすべき、太陽の下に。

 

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