現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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「……って話があったわけよ」

「はーん」

 

翌日、()()()()()

教室で話せる内容ではないのは重々承知。

だから雄次(こいつ)に声を掛け、態々「教員」に部屋を借り。

誰にも聞かれていない、一旦は完全な安全を保った状態での情報公開。

 

こういう時、以前『迷宮』内で身に付けた空間認識能力が役に立つ。

この部屋全体を覆い、明らかな異常物……例えば盗聴器だとかレコーダーだとか……の有無を確認できる。

これが出来るまではおっかなびっくり、完全な安全地帯じゃないと話も出来なかったからな。

 

()()()そんな感じなのか、うちの学年のトップ」

「知ってたのか?」

「いや、今年のは何も知らん。多分隠してるんだろうが、去年までのは調べてある」

 

まあ、全部が全部事情を共有してるわけでもなし。

緩い繋がりだったからこそお互いに任せておける部分もあるので、何も言わない。

 

「平均、って話にゃなるが……大体夏休み付近、遅けりゃ十月くらいまでは足踏みするらしい」

「は?」

 

ただ、その期間には思わず疑問が溢れた。

 

剣から無造作に光線を放つやつ。

人為的な土石流を生み出し放つやつ。

そんな人外共が、足止めを食らう環境?

 

「因みにこれは三年の遅い組も似たようなもんだ、逆に上に取り込まれた組はスルスル抜けていくんだとよ」

 

つまりは、周囲にコネを持たなかった奴等は嫌でも足踏みする。

逆に言えば自立を蹴った集団なら、今までの上の準備の恩恵に預かれる――――ってことか。

 

「何でかとは思ってたが、そういう理由かよ」

「創作者が大事なのは分かってたが……いや、露骨過ぎねーか?」

「俺等の周りの人達が例外なだけで、創作者もピンキリだからな?」

 

ンな事は分かってる。

呆れたような顔をされなくても、店売りの規格化された商品との違いは触れさえしなくても分かる。

 

(……いや。触れなくても分かるように為ったのは、最近か)

 

恵先輩の教えに従うなら、『何かを作りたい』と願うか『手段』として願うか。

その何方かで創作者としての能力……『迷宮』内で使える道具類、武器類の作成制限が解放される。

 

ただ、教えてくれる内容は人それぞれ。

そして、作成する物品もセンス次第でそれぞれ。

 

ある一定のところまでは修められても、それ以上を求めるなら個人の努力とセンスがいる。

能力の一環として技術を与えられたような奴等は特にその辺が目立つ。

そのまま受け入れるか、或いは少しでも改良して自分に合うように手順を変えるか。

そういった経験次第で、訓練地帯を越えた……能力の変異後への影響が露骨に出るのだ。

多分。直感と経験と、願いを読み取っているからこそ。

 

「周りはどうだ?」

「何処も似たりよったり……周囲の情報集めつつ下に潜り始めたのが大半っぽいが、片手に刃物持ってるのは変わんねーよ」

「面従腹背ね……去年と変わらんか」

 

その階にどんな生命体がいるか。

どの辺りが安全か。

金銭と情報と、後は借りと貸しを行使しながら互いを信用できるか詰めていく。

 

去年よりも集団(クラン)の人数が増えているのもあるのだろう、この辺は活発化するか。

まあ一つのだけに所属しなきゃいけないわけでもなし、複数所属する奴もいたりするからこの辺は個人のスタイルによる。

そういう意味ではほぼほぼ一蓮托生まで行ってる俺等が珍しいっつーか、手早いと言うべきなのかもな。

 

「『石の花』については?」

「聞いたことはない……が、名前だけ見たことがある、ってくらいだな」

「何処で?」

「受付の奥、高価買取してる品出してる時あんだろ。彼処に一瞬だけ」

 

何時間かして戻ってきたら消えていた。

()()()()()()()()()、とはこいつ談。

 

消せる程の圧力は絶対的に掛けられない……以上は、多分ミスに見せかけた釣りか?

それを見て反応した、或いは聞いてきた相手を引き込む撒き餌。

 

普段見掛けないものに対しての無意識的な警戒は誰しも抱くもの。

それを意識的にまでに引き上げて、記憶出来るかは……各個人の適性次第だとは思うが。

そういう記憶能力に関しちゃ俺は絶対及ばないのは理解してる。

 

「どうする?」

 

この質問はもう少し探るか、と言う意味で問い掛けてきてる。

調べるにしろ、調べないにしろ実物……或いは異物其の物を見たことが無い現状じゃ探る手が止まるか。

首を横に振り、それを否定。

 

「一旦後輩は置いといて俺達で潜っとくべきだな、十一階のマッピングも途中って理由付けもあるが」

「本質的なところは全体調査……だな、乗った」

 

表向きの理由を先に立てる。

恐らく同様の物体を探している相手から見れば知っている相手と思われ。

何も知らない相手からすれば未だに抜けない『雑魚』という目線で捉えてくれる。

まだ賭けに出るには色々と足りない情報が多いし、先輩方を引っ張り出す理由も重ねて付けられる。

 

「なら今日か?」

「出来るだけ早いほうが良い、今日行けるか?」

 

花、と呼ぶ以上は植物……或いは鉱物か?

何にしても採取して即座に復活(リポップ)しないのは訓練地帯と変わらんはずだ。

寧ろ探し求めるって言うなら相当数絞られている可能性も考えたほうが良い。

どういった場所に生える、なんて基礎知識も無いなら辺り一辺倒探す前提で動いたほうが良いな。

聞くのは後回しだ。

 

「声掛けられた段階で予定は組み直した、今日中に戻るんだよな?」

「そりゃな、仮に下への道を見つけても後回しだ」

 

全ての道を書いた、と豪語する地図があったとして。

それが後から地形が変化しないとは限らない。

何が起こるか分からないのが『迷宮』である以上、自分達で踏破しなければ意味がないのだ。

特に、戦闘外の部分を重要視する俺達のような奴等は。

 

「なら出来るだけ早めに済ませたいとこだなー……。

 明後日孤児院に顔出す予定あるんだわ」

「それを言うなら俺だってそうだよ……。

 つーかまたなんで、週一ペースだったろ?」

「………………」

 

おい、何だその余計なこと言ったみたいな顔は。

 

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