現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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十数分後、降り立ったのは十一階の出入り口。

 

一緒に動くと宣言していた恵先輩は現在単独で先行、以前に聞いていた鉱石エリアで採集中と聞いている。

そして後輩二人は十階の守護者先、『扉』の前へと二手に分かれて潜り始めていた。

 

「二人だけでいいのか?」

「と言うか、『迷宮』内で同級生だけって経験が薄いほうが不味いだろ」

 

無意識下に頼ることを前提とする可能性がある。

まああの二人なら先ず起きることもないだろうが、潜るだけなら大したことはない。

ついでに言うなら、天音ちゃんの意見と以前に恵先輩から聞いた変異の情報と。

この辺を考えるなら、各個人で集中できる状態で欲しいものを考えてもらった方が良いと思った。

 

誰かがいれば、その手助けの方面の思考が混じらないとも限らない。

二人の天禀を鑑みれば、深掘りして貰った方が良いのは個人的にも都合がいい、という打算もあった。

 

「まあ実際のところ、最初の変異は自分に合う形にして貰う方が良いだろ」

「あー……たまに聞くよな、ペア前提の能力に変わるってやつ」

 

組み合わせれば鉄壁、最強。

そう豪語する人が、一年以上耐えられるかは多分五分五分。

組み合わせることに特化した能力を得たとしたら、分断された時の不利益はその分大きくなる。

罠や生命体の知能を考えるなら、単独である程度の戦力を保持した上で組み合わせる、という形に落ち着くのは自然なこと。

 

たまに部隊(パーティ)として独立独歩し、複数人でしか動かないというトップ集団の話題を耳にすることがある。

分断されることを前提として、最少人数二人以上ならどんな組み合わせでも潜る階では勝てるというまで鍛え上げた修羅共。

 

ある意味集団(クラン)の利点を純粋化し、欠点を薄めているというのは間違いないが――――。

どうしても体調の関係もあり、同性だけや(薬で抑えられるとは言え)月の物の周期が近い奴等だけで纏まる傾向があるとは言うし。

俺等みたいに男女混合で潜るなら単独戦力を前提として戦術を組む方が色々と楽だったりもするのだ。

 

「実際どう思う、アレ」

「悪くはねーんじゃねーかなーとは思ってるが……巻き戻しが出来るわけでもねーしなぁ」

「欠点が大きめに出るってとこがなー」

「俺等みたいなやつだと致命的過ぎるだろ」

 

やっぱその辺に落ち着くよな。

高出力で短期決戦を繰り返すよりも、長期戦をある程度見据えた軽い消耗で済む能力のほうが()()という話。

その辺りを調整できる小鳥遊の能力が優秀なのは、他者への付与と言う部分で大きく欠損しているから得た部分なんだろう。

 

「と」

「あー、やっとか」

 

そんな雑談をしながら部屋の外へと気を配ること暫し。

誰かが出てくる時特有の薄明かりを灯しながら『扉』から抜けてきたのは天音ちゃん。

自分の両手へと視線を向けて、往復する動きは俺にも覚えがある。

 

「お疲れ、どう?」

 

そんな言葉に頷いて、手元を手繰って空間解錠。

人によってこの動作は違うが、彼女の場合は実行することを意識しながら手首を返す事が動作鍵らしい。

そして開いた空間から溢れるのは、俺の鉄塊の時と似たような武具の端。

 

(あれ?)

 

ただ、其処に見えたのは糸巻き機が二つ。

木で作られた棒に巻き付くような古い糸巻きだったのが、片方が何処か距離尺(メジャー)のような機械仕掛けのように見えるのが特徴的。

そのうちの片方……古い方を拾い上げ、俺と雄次の腕へと伸ばし。

彼女の意志に従うように宙を舞い、くるりと縛り上げて言葉を伝える。

 

『お待たせしました』

「いや、それは良いんだけど……」

「なぁ、東雲さん」

 

此奴は先輩に睨まれてるせいか呼び方がブレがち。

ただ、それ自体を彼女自身も咎めたりもしないので緊張するとたまに振れるんだよな。

 

「その足元に落ちたのも武具ってことでいいのか?」

『だと、思います……ええっと』

 

片手で伸ばしていた糸巻きを腰へと備え付ける。

和服の上から身に着けるのは些か珍妙な腰巻きではあるが、その有用性は実証済み。

そして、足元に落ちた機械仕掛けのようなそれを拾い上げ、表と裏を見て何処か納得したように頷いている。

 

『ああ、間違いないですね……多分、こうかな』

 

手首だけでボールを放つように糸巻き機の先を誰もいない方向に向けて振る。

ひゅっ、と空気を切るような音と併せてまっすぐに伸びた糸が地面へと刺さり、手元へと戻っていく。

 

『武具……定義的には刺剣に近いんでしょうか。真っすぐ伸ばして突き刺す武器みたいです』

 

……一番最初、彼女が武具をそう使っていたのを思い出す。

最近は触れさせればそれで特異性を発現させたりと言った使い方が殆どで、自衛の為には使っていなかった。

その内心でも読み取ったのか、純粋に近距離でも遠距離でも使える兵器としての格をまた上げた気がする。

 

「何でも刺さりそう?」

『どうでしょう……土は行けると思いましたけど、石とか岩、鉱物系はまだ厳しいかもです』

 

詳細は使い込むうちに分かることだろう。

長さ自体もそのうち確認したいところだが、純粋に鞭と刺剣としてだけ見るなら色々便利使い出来るように為ったのは確か。

後多分気付いてないが、自分の意志で操作できる精度も上がってそう。

 

「特異性は……まあ実験しないと分からんよな」

 

特に唯でさえ危険度が高いのだから、適当な生命体で試さないことには運用できない。

それ自体は彼女も理解しているのか、何度か頷いて同意を示している。

 

「まあ分かった、小鳥遊は?」

『岬ちゃんならもうすぐ来ると思います』

 

まあ、潜って何分か開けるのは大事だよな。

その先でどう試しているか分からんし、下手に暴走でもしてたら巻き込んで大惨事になるし。

 

「しかしよぉ」

「言うな」

 

雄次の目線が天音ちゃん……の武具に向いてる。

多分思ってることは同じだろう。

 

……格差が酷すぎないか?




明らかなバグ枠の手数が二倍に増えました。ち、チート。
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