現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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サツバツ!


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道中の戦闘はあの一回だけでは当然済まない。

 

けれど大部屋を避け、通路での戦闘……出来る限り小規模の戦闘で済むように調整(コントロール)し。

且つ回避できる戦闘は回避しながらも、後ろからの圧力は止まない。

 

(……いや、圧力じゃないな多分)

 

幾度目かの戦闘を終え。

剥ぎ取りもそこそこに死骸を焼き払い(普段はこんなことしない、後に残したくなかった)。

空間を()()しながらの歩みは、気付けば全員小走りへと変わっていた。

 

「どうだ?」

「多分来てる、というか探られてる……のか、こりゃ」

 

何度目かの問い掛け。

その返答は変わり、悪寒にも似た圧は背中から少しずつ増えている。

 

同じタイプ……空間に干渉して何かをする特異性を持ったやつを知らんので何とも言えないのだが。

何となくのイメージとしては、空間を囲む結界に外から触れられているような感覚とでも言えば良いのか。

 

向こう側は此方の状況を感知しているのかまでは分からないが、俺が分かるのは至極単純な理由。

この空間自体の物体を浮遊させる能力のおまけ。

触れたものを浮かせられるかどうか、に関しては半ば直感的に感じ取ることが出来るからに他ならない。

 

武具であれば重量と制限に余裕があれば可能。

但し、特異性は重量を持たない各個人の影響の結果だから其の物を浮かすことは出来ない。

結果から発生した二次影響ならば兎も角、其の物を俺のでどうにか出来る訳じゃない。

……その辺を認識依存とは言え、消すことが叶う雄次の能力がイカれていると言うだけの話だ。

 

「……追われてる、と思います」

「理由は?」

「直感に近いんですけど……なんだか私を追い掛けてきてる感覚が抜けないんです」

 

たかが直感、と言いたいところだが。

此奴の握った武具との繋がりを考えればバカに出来ないし、俺自身も理解できない感覚で命を拾ったことは幾らでもある。

であるなら、空間に干渉する探査能力を応用として持つ誰か、と言う話になる。

 

「小鳥遊、お前の仲間内に探れる応用持ちいたか?」

「ちょっと其処までは……ただ、あるとしたら弓使いの子ですかね……?」

「分かる範囲で良い、言え」

「矢を使うほうが基本だったんですけど、弦を弾くことで不可視の矢が打てた()()()んです」

 

……らしい?

 

『確定じゃないの?』

「回数制限があるのか他の条件があるのか、一度だけ見せてくれたんですけど……。

 弦を弾いて暫くしてから、()()()()()()()()なんですよ」

 

普段から使っていなかった。

暫くして、という明らかに速度に遅延が起きる攻撃。

矢よりも遅い、恐らくは別の発生条件か限定条件を持つ衝撃や伝播を利用した攻撃。

表面ではなく内面に届く攻撃の可能性。

 

「……厄介だな」

 

それが十一階まで降りてきている。

探知能力だけに割り振ったのでないと考えるなら、望むのは攻撃性能の向上……だよな。

 

「最悪のパターンにならなきゃ良いんだが」

「どうなると思う?」

「無音の室内での衝撃だけを押し付けた爆撃」

 

仲間を巻き添えにしていいなら、それを連打されると此方が明らかに不利だ。

空間の物体を操るだけで、空間自体に干渉しているわけじゃない。

内側で爆破を連打されるなら、真っ先に鉄塊叩き込んで首をへし折るくらいしないと止まらん筈だ。

 

そしてもう一つ最悪なのが、先輩と合流したところでそれだけじゃ姿を隠せないところ。

どう探っているのかが判別できない以上、視覚と特異性との両面から潜む必要性が出てくる。

と、なると。

 

「雄次、お前の『軽減』で行けるか?」

()()()()()()()、って意味で言ってるか?」

「ああ」

 

先輩と合流できれば薬でなんとかなる、とは伝えていた。

だが、今此処で増えた情報で少しだけ方向転換する。

 

叶うなら何処かの道から逆戻りして先に脱出。

それさえ出来るなら、同じように追われたとしても対処のしようは幾らでもある。

 

死体が地上に戻らない『迷宮』だからこそ取れる手札、として握っておける。

 

「視覚情報を鑑みなくて良い状態で、壁に張り付いてる……なら行けるかもな。

 相手の特異性の撹乱とか低減じゃなくて良いんだろ?」

「その手札は伏せておきたい、やるにしてもどういう原理で使われてるか目視してからだな」

 

此奴の特異性の便利な点は『隠密』みたいな能動的に使用するモノではなく。

飽く迄受動的な、『此方を()()見逃すかも知れない』影の薄さを強める、という点にある。

 

視覚情報を騙せるのなら、岩の陰や壁などに張り付いていれば反射したとしてもそういう形だと認識して貰えるかもしれない。

特に隠れ潜む予定なのは採取場、岩の破片やらがゴロゴロ転がっている場所だ。

一見するだけでは採取品と判別しづらいのも合わせれば、誤認する可能性はそれなりにあると思う。

 

(……そもそも、此処まで追い掛けてくるほうが不穏なんだがな)

 

小鳥遊一人だと思っている……のは流石に考え難い。

ともすれば、単独にした上で身内に引き込もうとしている可能性を上げるべきだと思う。

そうすると寮に戻る行為自体がリスクを孕むことになるし……一旦は連れ帰るか。

 

「それと、分かってるとは思うが」

「追ってきてる奴等の情報だろ、わーってる」

 

一番可能性があるのは同級生で、少なからず野心を抱いた奴。

相手をきちんと確認せずに動いた、という時点で小物臭は抜けないが厄介なのは変わらない。

此方の情報……異名と能力に関しては(当時のものに限っては)公開されていると考えるべきか。

 

「小鳥遊、お前も当時の仲間の情報全部吐き出せよ」

「分かってます」

 

本来こういう事考えるなら天音ちゃんのほうが向いてるんだけどなぁ。

後で詰め方に関しては相談しよう。万が一見落としがあると怖いし、先輩の借金返済のこともある。

 

「やることが多すぎて退屈しねえなぁ」

 

そんな皮肉を一言。

少しだけ広がり始めた目前の広間で、見覚えのある背中を捉えた。

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