現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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【Chapter2-3】

 

地上に出る為、来た道を戻っていく。

主流となる道とそうでない道を併せて戻るが、生命体の姿はまるで見受けられなかった。

 

ただ、その分警戒は続けていたし奥へと進む探索者の姿はちらほら見受けられた。

そのどれもが周囲を警戒し、此方へも一定の警戒心を抱きながらも首肯くらいはする。

同じく返す形で済ませるのは、互いへの一定の距離感を保つ為だ。

 

「こうなってくると、ちょっと予定変えないとな」

 

出来るだけ気軽に周囲に投げた言葉。

ころころと予定が変わるのは毎度のことで申し訳ないが、何故なのかは理解して貰えているから助かった。

まあ、一人だけは表面上は誤魔化せているようで全く成功していなかったが。

 

「あの盾使いは覚えがある、ちゃんと確認した上にはなるが……後で報告でいいか?」

「ああ、頼む」

 

飽く迄普段と変わらない口調で述べられる報告。

覚えがある、というのなら名前や見覚えなどを含めた確認事項を記憶しているということ。

其処から繋がる二つ名を知れれば、自ずと得意とする対処手段は判別できる。

 

「天音ちゃんも後で時間くれ、ちょっと詰める手札を確認したい」

『はい、センパイの為なら幾らでも大丈夫ですよ』

「助かる」

 

多分、俺が言わなくても()()()()()気はするが。

根を張り、意識を向け、周囲からの感情を操作して押し潰す。

周囲に顔が利く悲劇の少女、という表面上の側面。

暗黒と言うか漆黒と言うか、とにかく煮詰めまくった復讐という単語一つで表せない内面を秘めた天才という内面。

その一端を紐解けば、多分広がるのは地獄とかいう単語一つで済まない。

 

「恵先輩」

「ああ、うん。天音ちゃんと協力すればいいよね~?」

「はい、そっちの面はお任せします。後は出来るだけ薬の生成も」

「おっけおっけ、任せといて」

 

何より、手を出してはいけない一派に手を出して顔を見せたままとかいうのが終わってる。

一切知らなかった巻き込まれ事故みたいなもんだが、()()()()()()という事実唯一点を取ったとしてもだ。

即座に帰還して、繋がりのある所に謝罪し巻き込むつもりはなかった旨の詫びを入れなければ文字通り詰む。

 

店売りだけでなんとかなるのは去年までだ。

今年に入ってやっていくには、今からでも(多分遅いが)伝手を作らなければ何れ詰む。

 

その辺の事実を知らんから、序盤は自分の力だけではどうしようもない創作者派生を馬鹿にするやつが一定数いるんだよな。

自業自得、と言ってしまえばそれだけの話ではあるんだけど。

大体はそういう扱い受けてれば周囲が不憫に感じて手助けして、その相手に後で恩で返す……みたいに繋がるはずだし。

そういう意味では淘汰環境が成立してんのか。

 

「雄次、ちょっと九十九先輩と()()するからな」

 

それはそうと、先に話だけは通しておく。

俺があの人絡みに関わるならそうするようになったのはいつだったか、二人の距離が近付いた頃。

逆に此奴が此奴所以の何かで先輩方や後輩に関わるなら、その時も話は通されるだろう。

 

「あ゛?其処までやんのか?」

 

取引、という単語の重みは俺達の中じゃ普通の売買なんかの比じゃなく重い。

だからこそ、成立すれば互いにとって絶対的なモノになる。

文章で残さない、口でのやり取りだからこそ決して破れない血の誓い。

 

「やるよ、彼奴等は失敗したって事実に気付いてない。だから確実に根まで駆逐して見せしめにする」

 

元々助けようと思っていた相手なんだ。

ただ、その優先度を最大値にまで引き上げると言うだけ。

その代わりに、卒業したあの人の力を俺達のために借り受ける。

俺が知る限り、()()()()()()最恐の一角に居座るあの人の能力を利用する。

 

何より。

人狩り(マンハント)に近い行為をやろうとして、周囲に一切警戒していないところが一番許せない。

 

自分達だって成功する、と思い込んでいるような子供じみた行為。

そうした結果の悪影響を考えず、周囲からどう見られるかを正しく判断できていない。

それだけで耳が遠く、「普通」の探索者の中でも底辺なんだろうことは窺い知れた。

 

(互いに利益がある取引、事前に保険として頼み込んでくる臆病さ、一切の非がない巻き込まれ。

 この辺なら当然受けるし、或いは少しくらいは同情しても良い)

 

俺が同級生に対して興味を殆ど失っている理由の第一は此処だと思ってる。

突出した成績を持つ奴がおらず、上級生の集団に紛れた奴が最上位。

だからこそ周囲の成績、能力がある程度で安定してしまっているから明らかな格下を卑下して嘲笑う。

 

助けて貰える、と当然のように思っている性根。

事前準備の曖昧さ。

『迷宮』に対して抱く警戒心の薄さ。

 

其れ等は全て上の人達から教わり、自分で学んできた経験。

同級生より上の学年の人に顔が利くのは……多分、そうして生き延びてきた人と接する機会が多かったから。

 

(ただ、自分の非を認めようともしないやつは許せない)

 

虚勢を張る相手より、臆病ながらに立ち向かう人間のほうが好き。

極論を言ってしまえばその程度に落ち着く、人の好み。

ただ――――触れてほしくない部分を土足で踏み込んだのだ、唯で返さない。

本当にそれだけでしか無い、苛立ちの仕返しだ。

 

「…………」

 

小鳥遊は何も言わない。言えない。

ただ、このままにすると何処かに行ってしまいそうなので何処かを掴んだまま離さない。

 

「お前さぁ」

「んだよ」

「お前みたいなやつが怒るのが一番こえーんだからもうちょい分かりやすくしねえか?」

「全く以て同じ言葉をそのまま返すが」

 

だから、似たモノ同士だと。

そう云うだけの話だ。

 

洞窟の入口までもう少し。

『扉』までは更にその先。

 

「小鳥遊」

「……はい?」

「今日は家に泊まってけ」

 

多分、この件が片付くまでは。

或いは、片付いても暫くは。

学校に通う事自体がリスクに為ったのだから、それ以外で済ませる。

 

そう、決めた。

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