現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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わちゃわちゃとやれることを話し合い、練って、実践し。

実際に使えるかどうかは別として、それなりの個数を作り上げ。

後は戦いながらに組み合わせてみる、或いは手に馴染むモノを見出す事になった翌日早朝。

 

「……はぁ」

「いや朝からどうしたよ」

 

事前に言っていたはずの予定が切り替わり。

誰にも、一人でも見咎められないように動く為に集まった俺の部屋。

フード付きの外套で顔を隠し、少しでも身を潜めながら動く久々の準備を整えながら。

思い切り漏れるのは昨日からちょっと引き摺る差異と言うか、なんというか。

 

「いやちょっと、昨日色々と」

「刺されないようにしろよ?」

「色恋沙汰ならテメーに言われたくねーんだよ」

 

いつもの倉庫には他の誰も入れたくないので、一旦リビングで女性陣が。

隣のコンクリ部屋で男性陣の着替え、と言うか準備。

山程持ち込まれた回復薬や道具の数々に、此奴が冷や汗を掻いてた事を俺は見逃さない。

 

まあこれ全部売っ払えば一財産になるだろうからな。

代わりに暫く延々と追われるし値崩れも発生して創作者からも追われることになるけど。

毎年転売を目論むアホが姿(・)を(・)消(・)す(・)のは最早毎年の風景らしいのが地獄極まってると思う。

 

「ついでにいうとそんな頭桃色な事じゃねーよ、ある種のいつもの病気に近いが」

「ああ、いつもの」

「そう、いつもの」

 

俺等の病気。

隣の芝生は青い。

まあ、そういうちょっとしたどうしようもない嫉妬心。

だからこそ強能力を持って勝ち誇ってたり偉そうにしてる奴を叩きのめす反骨心に繋がってるところはある。

それはそれとして羨ましい。

 

「こればっかはなぁ」

「出来ること探すのは当然だがなー」

 

与えられる能力の総量はどの探索者も同じ、なんて理論をぶち上げる研究者もいたりする。

実際その理論通りであるなら、俺達が出来る幅はもっと広がる筈だ。

だから机上の空論に過ぎないと分かっていても、訓練すればその方向に伸びる感覚と伸びない感覚に悩まされる。

一生付き合っていくしか無い特異性に悩まない探索者は、少なくとも一人だっていないと思う。

だからこそ、”使い易い”モノに憧れるのは職業病に近いんだろう。多分。

 

「んで?」

「何がだよ」

 

余りそっちの方向に向けたくないので今度は此方から話を振る。

どうでもいい話から、今日の準備の方向へ。

 

「昨日の電話の後の話」

「ああ、アレなー」

 

各々の取り出しやすいように物品を並び替え。

外で取り締まられない為に刃物や武具を手元において。

できるだけ内部で準備に費やす時間を減らすために、今こうして隠れて準備を整えている。

 

「一応もう一人……今回の騒動から外れてる最後の一人に関しては色々確認したわ」

「裏取りか?」

「他に紐がついてねえかとか、まあその辺?」

 

寝るとは聞いても、単純に寝るだけとは思えなかった。

少なくとも九十九先輩のあれこれが片付くまでは結ちゃんと組んであっちこっち動くだろうし。

幻(・)想(・)構(・)築(・)型(・)の能力者、それも戦闘以外にリソース割り振ってるタイプが本気で動くとこういうのが怖い。

死んでも浮気とか出来なさそう。

 

「で、俺が確認できる範疇ではマジで何も無い。実際には傭兵みたいな感じらしいがほぼ毎日潜っては返済してるっぽいわ」

「一人できっちり返してるとこは好感覚えなくもないが、お前が推薦したの其処だけじゃないんだよな?」

「まーな。二つ名が『透弓』、和式の弓使いって話」

「弓使い、というか後衛やっぱ多いな……」

 

前衛1に後衛3。

剣士に何方かと言えば点で攻撃する後衛が三人。

範囲攻撃が出来る、とまでは言わないが明らかにバランスが酷く崩れていたのは誰であっても分かる。

 

まあ、こうした失敗を積み重ねて人員を入れ替えたりしていくのが普通ではあるけれど。

その最初で躓けば……こうもなるか。

 

「もう一つ、集落の状態は?」

「上は行く気がない、同レベルは前へ前へと先だけ考えてる、下はそもそも足掻いてる」

「今が丁度良かったってことな」

 

多分後一月もすれば下か同級生が金目当てで組んで突っ込んでいっただろう。

あの場所での戦闘は頭数が多ければ多いだけ楽にはなるが、主(ボス)戦では頭数が多すぎると不利になる。

俺も上に付き従って一度だけ見学したことがあるが、下手な集団で突っ込めば壊滅しかねない強さがあるのも間違いない。

 

「ま、後輩が妙に強くて助かってとこだわなー」

「九十九先輩達がいればもっと楽なんだがなぁ」

「言うな、悲しくなる」

 

その点、俺等の場合は連戦への負担を除けば何とでもなる。

求められるのは複数の戦闘をこなせる持久力、或いは一戦一戦を手早く片付けられる火力。

主戦になってくると必要なのは戦闘領域管理(コントロール)力……電子遊戯(ゲーム)で言うところのレイド管理能力、指揮能力。

 

今までであれば雑魚戦の処理負担は先輩方に頼っていたが、その部分を後輩共に投げられる。

逆に敵意管理に関しては多分不慣れな部分があるだろうし、明確に『受け』られる人員がいないから少しだけ早く動く必要がある。

調整に関しては慣れてるから、後は指示をきちんと聞いてくれるかどうかが主体な問題になる。

 

「今回を越えられればまたいつでもイチャイチャできるんだから頑張れ頑張れ」

「グーでいいか?」

「やめろ」

 

俺は別に先輩とはだなぁ、とか寝言が聞こえ。

はいはい、と聞き流しながらに準備を終え、空間を閉じる。

 

『せんぱーい』

「そっちももう良いのか?」

『はい、出てきて大丈夫です!』

 

数日潜るという話でもないから戦闘以外の準備は最低限。

その代わりに数十戦程度なら余裕で突破できるだけの準備は整えた。

一振り一殺と言えない実力持ちが複数いるから、半ば以上に賭けの要素はあるけれど。

 

「だとよ」

「へーへー、行きますよ」

 

自分たちの立場を確立するための第二歩の大前提。

幾ら稼げるかは分からずとも、『種銭』としては十二分。

 

だから、負けるわけにはいかない。

そう思って、部屋の扉へと手を掛けた。

 

「…………?」

 

――――気の所為か。

誰か、三人目の誰かに声を掛けられた気がした。

 

「どうした?」

「いや、なんでもない」

 

振り返ることもせず。

それを望まれていないような気持ちを抱きながら。

手首を捻り、外へと身を滑らせた。

 

気持ち悪い程に。

まだ太陽が昇る前だと言うのに。

妙に、暑くなるような気がした。

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