現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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『Chapter2-4』

 

 

「良いか、小鳥遊に天音ちゃん」

 

『迷宮』内、十階守護者後。

逆走する最初の部屋を早足で戻りながら、一塊になりつつ説明しておくべきこと。

それは、十階の集落を制圧する上で最も必要になる行動の解説。

 

「前に真っ直ぐ突っ込んだことを咎めたときのこと覚えてるよな?」

「あの、鬼が大量に出てきた時のことですよね?」

『はい、はっきり覚えてます』

 

小隊を組んで現れる鬼の山。

中心に向かえば向かうだけ遭遇率が上がり、消耗していく罠。

しかし裏を返せば、今回はそれこそが目的という側面もあるのだ。

 

「あの時に言ったかは忘れたが、十階の中央に目的の集落がある。今回の目的はその制圧と異物の奪取だ」

 

不定期に再出現する異物。

それを奪う為の前提条件が集落の制圧。

単なる盗人ではなく、制覇する。

少なくともこの階層での入手条件はそうだと理解され、幾度も血に塗れて来た。

 

「その上で大事になるのは()()()()()()()()()、これが鍵になる」

 

通常の存在であれば無限に湧く筈がない。

未だに理解が及ばない生命体という存在だが、同一階では同時出現数に制限があるのではと言われている。

一つ潰せば何処かでまた増える形にはなるが、それでも僅かに猶予ができる。

その合間に探索を進め、奥の『扉』を潜って再びに戻る。

最前線を押し進めるスタイルとしてはこうしている筈だ。

 

「先輩」

「なんだ」

「でも、倒せば倒すだけ後から増えますよね?」

 

そう、問題になるのは其処。

倒しても倒しても尽きない存在、というのは探索者である事を定められた後に無理矢理にでも学ばされる。

『迷宮』の外に出てくるケースは今の所観測されていないから外の世界は平和。

仮に外にでも出てくることがあれば、一瞬で日常は崩れ去るだろう。

 

『違うよ、岬ちゃん』

「違う?」

「あれだよ~、倒さないとそもそも到達できないようになってるの」

 

説明しようと口を開く前に、東雲先輩から聞いていたのだろう訂正の意思を伝え。

そしてそれを補強するように、恵先輩が(外観から認めない速度で)追従してくる。

こうして見えても第一階層踏破者。

今の俺達の中では下手をすれば一二を争う程度に身体性能も強化されているから、走りながらでも簡単に言葉を口に出来る。

まあ、それが出来るのが前衛探索者としての最低ラインではあるのだが。

 

「そもそも発見するための条件が一定時間以内にある程度の小隊を潰すことなんだよ」

 

これは本来あるはずの集落に近付けば小隊の出現数が増えることとも繋がっている。

近付けば相応に戦う羽目になり、消耗する。

けれどその全てを薙ぎ払えれば、前提条件を満たし集落を発見できる。

 

「ああ、成程?大将首が見えるのがその先ってことなんですかね」

「一応合ってるけど言い方よ」

 

そしてついでに言えば、一つの仲間達だけで殺し切る必要はない。

その階で一定数の撃破が条件で解放される都合上、集団(クラン)の襲撃日が分かっていれば前提条件だけを押し付けて集落の長を掠め取るなんて事を目論むことも可能だ。

無論、その際は速攻で殺さなければその後で人間同士の争いが発生するから成功例は殆ど聞かないけれど。

逆に言うなら、他の……下部組織に前提の負担を押し付けて旨味だけを奪う、なんて事は割と日常的に起こっていることと聞く。

 

「だからまぁ、求められるのは処理速度と()()が出来る人員な訳だ」

 

後者に関しては斥候でいい。と言うより戦闘能力其の物よりも便利な能力を求められる傾向にある。

だから奇襲、或いは遭遇次第に徹底的に刈り取って『迷宮』其の物に負担を掛ける。

 

「あー、釣りは俺がやる。だから後輩ズは片っ端から見掛けた奴等をブチ殺せ」

 

その為に連れてきている、という側面は無くもない。

此処での戦闘能力は、即殺出来るか否かで処理速度に大きく差が出てくるので。

 

「纏めて呼ぶのやめてくださーい」

「実際主戦力はお前等だがフォローはする。とにかく片っ端から殺してくれれば道が見えてくるはずだ」

 

片っ端から殺し続け、素材に関しては必要最低限の採取のみで片付ける。

肉体を残す必要よりも、運良く残ればそれでいい、というレベル。

主に限っては出来る限り外皮や武器は残しておきたいが、それでも”出来れば”で構わない。

目当てなのは主本体でなく、更にその奥なのだから。

 

『破裂させて良いんですよね?』

「ああ、その辺の生命体の素材は今回は全部切り捨てて良い。俺等が殺したやつから剥げれば十分」

「私の薬で()()()()()()のもあるしね~」

 

なので、剥ぎ取れなかった素材で武具から特定されかねない部分は恵先輩に任せる。

危険物を完全に溶かし切るような、こういう時でもなければ余り使う機会もない薬も持ち込んでいる筈だ。

……本来は人の死体を消し去ることで証拠を抹消する為の道具らしいんだが、まあ何でも使い方次第ということで。

 

「だから、まぁ」

 

肩を叩かれ、茂みを指す雄次。

少ししてぎゃいぎゃい、と声が聞こえ始めた。

一切迂回すること無く突撃しているから、向こうからも見つけやすいだろう。

見張り台で捕捉され、そして此方の反応目掛けて突撃してきている小隊が幾つあるのか。

 

「今回は、きちんと戦闘力を保った上での半恒久連戦っていう持久力の鍛錬でもある」

 

その点では、俺は誰にも負ける気はしない。

放った鉄塊が茂みに潜り、妙な手応えと同時に何かをへし折った感触。

多分頸骨を叩き折った。

 

「一度で戦力を吐き出すのは主戦でいい、一旦は慣らし運転から始めてくれ」

「……そう言いながら、一番槍持っていくのずるくないですか先輩」

「槍じゃねえし、弓の打ち合いみたいなもんだろこんなの」

 

飛び出して来るのは怒りの表情を見せた子鬼と指揮官。

愚痴を漏らしながら飛び出したのは一閃と一糸。

片方は貫かれ、片方は斬り裂かれ。

直ぐに間近は静かになった。

 

「幾らだって練習相手はいるんだ。好きにやってみろ、その術理の鍛錬」

 

はい、と。

言葉尻が上がった気がした。

 

……喜んでいるの、なんとも言い難い感想しか浮かばねえな。

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