釣りポイント7。
小魚を ねらうならココ!(ほぼ原文ママ)
生息魚 グミフロート トベータ タイタン
「フィーッシュ!」
ラパラ地方。それは荷運びギルドが治める街、ラパラがある地方。まんまである。
リュウたちは早速新天地の風を感じつつ、新たな釣り場を堪能していた。
「リュウってば絶好調ね!」
隣で釣竿を垂らしているのはニーナだ。相変わらずボウズである。
「なあなあ、もっかい吊り橋行こうぜー」
「ダメに決まってるだろ。次からは紐付けるからな」
ティーポは関所を越えて直ぐの、高く長い吊り橋で大いにはしゃいだ。馬鹿と煙は高い所が大好き。
そして行ったり来たり飛んだり跳ねたりして、うっかり落ちかけた所をレイが慌ててキャッチした。
本人以外は心臓が止まりかけたが、その本人はまるで懲りていない。
「綺麗な魚だなあ」※外見はタイ。
「それはタイタンね。甘く煮込むと美味しいのよ」
「へー」
物知りお姉さんのモモに教えられ、リュウの目が輝く。
釣りも楽しかったが、この頃は水や魚の知識を知ることを楽しみも加わった。
「所でお姫さん、事情を説明してくれるってのは、何時になるんだい?」
「え!?まだ覚えてたの!?」
「こらっ!」
「あう、ごっごめんなさい。今日のキャンプでします……」
勢いで流せると思っていたニーナは、レイの問いかけに驚く。人生に勢いは大事だが、それで全てが通せる訳ではない。
「よーし、約束だぞ。ちゃんとしないとウィンディアに連れ帰るからな!」
「はい!約束します!」
帰宅への拒否り方からレイは色々察した。
真面な出発はしてないな、と。
「ふう、レイ兄ちゃん、ここはこのくらいにしよう」
一通り魚を釣ったリュウが声を掛ける。魚籠にはまだ余裕がある。
「お、いいのか?まだ釣れそうだけど」
「他に釣りをしてる人たちが、この近くにもう一つ、釣りポイントがあるって言ってたんだ。そっちも見て見たくって」
はきはきと答えるリュウに、いつものぼんやりとした様子は見当たらない。
彼は釣りをしていると頭が冴え渡るのだ。
「流石に海だよなあ。あっちこっちに釣り場があるなんて」
海のことを良く分かっていないティーポがうんうんと頷く。しかし笑ってはいけない。
人類も未だに海については知らないことの方が多いのだ。
釣りポイント8
小魚を もとめて 海のハンターが 回遊してくるポイント。(ほぼ原文ママ)
生息魚 グミフロート トベータ シーマウス タコ
「いででででででででででででででで!」
ティーポがタコを釣った。
「またでっけえの釣ったなあ」
「ティーポはタコ釣るのホント上手いよ」
「いいから助けろ!」
例によって金冠サイズのタコを釣り上げ、頭に張り付かれたティーポが悲鳴を上げる。
タコのいる場所で彼が釣りをすれば、その日のおかずが確実に一品増える。
「わっ、ねえねえリュウ、かかった!かかっちゃった!」
「よし、任せて!」
珍しくニーナも魚が釣れた。シーマウスの平均サイズだが、この魚はそこそこ大きいので、小さいニーナが持つとかなり大きく見える。
「きゃーおっきい!魚拓取らなくちゃ!」
「おお、結構上手そうだな」
以前も塔の先の海で、海水系の小魚とタコは食べたことはあるが、今回はまた違う魚が採れた。
リュウほどではないが、他のみんなもこの生活をそれなりに楽しんでいた。
そしてその夜。
「はー、釣った釣った」
「でもそのせいで街に行くのは後回しにしちゃったな」
「大丈夫よ、街は逃げないわ」
新鮮な海の幸を平らげて、少年少女はお腹をいっぱいにした。
モモの知識も加わり料理が解禁されたことで、ご飯のランクが上がった。のでみんなよく食べた。
「さ、晩メシも食ったし、そろそろ事情を教えてくれない?」
「え!?まだ覚えてたの!?」
「愉快だね。イイ性格してるぜ、ほんと」
「は~分かりました。説明します」
ニーナはリュウたちに、自分がまた家出をしたこと。その途中でモモを拾ったこと。
変異体がペコロスを生んで、枯れてしまったことなどを告げた。
「そっかあ、あいつ枯れちゃったのかあ」
「で、出て来たのがこいつ」
「ぷき」
ペコロスは疑問符を浮かべて周りを見た。よく分かってなさそうだった。
「まあ悪いもんでも無さそうだけど、どうすんだ、コレ?」
「うーん、しばらくはまたみんなと一緒にいて、帰ったら私が育てるわ」
しれっと同行を継続する旨を伝えるモモ。
無計画ながらも、その場のノリで事を運ぶのが上手い女性である。
「え?モモは帰らないのか?」
「ラパラに機械の船があるらしいのよ。観光でもしてから帰ろうかなって」
「だから付いて来たのか……」
「こいつちゃっかりしてんな」
関所を超えることは簡単ではないので、できる内にやっておこうという事らしい。
「いいじゃなーい。きっと楽しいわよー。ね?リュウ」
「え?ああうん。そうなんじゃない」
すっかり釣りから離れ、通常モードに変わったリュウ。全く気の無い相槌を打つが、モモは得意げに胸を張る。
「ほらー、ね?」
「リュウ、お前そろそろ眠いだろ?」
「うん」
「ほらもうテント行こうぜ」
「あー私も寝るー!」
キッズは先にテントに向かった。
中からはティーポとニーナの話し声が聞こえて来るので、本当に寝たのはリュウだけのようだ。
「チビ共は元気だね、どーも」
「レイは大変ね」
「好きでやってることさ」
焚火の前でナイフを研ぎ、たまに薪をくべながら、レイが呟く。
「それに、大きな街なら仕事の一つくらいには、ありつけそうだし、そうなればもう少しラクになる、かもな」
周りには釣り場もある。リュウにはこの環境が良いだろう。
ティーポのこともあるが、身の振り方を決めるにはまだ早い。
「それで金が溜まったら、また旅暮らしをするのだって悪くない。今は落ち着く先を決めようってだけなんだ」
「ほんと、大変ね」
「好きでやってることさ」
そうしてしばらくすると見張りを交代して、レイたちも寝ることにした。
一行は既に野営もこなせるようになっていた。
(静かな夜だな。真っ暗だ……)
リュウは遠くの海を見つめた。月の出ない日は水面に照り返す光も無い。
本来なら灯台の明かりがあるはずなのだが、ラパラの海は、しんと静まり返っていた。