ブレスオブファイア3二次創作 釣竜伝説   作:泉 とも

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※今更ですが本作でティーポとリュウが釣る大型の魚のサイズは、ゲームの最大値より少し盛ってあります。


恐怖の海難事故

 釣りポイント14。

 

 ミッド・シーと、外界のはざまにさまざま魚が 集まる。

 これぞ穴場(だいたい原文ママ)。

 

 生息魚 グミフロート トベータ イシムペスラ タイタン シーマウス チヌーク タコ ランタンキャット ボルデビボーンドマリーナ マニーロ

 

 

「だっだめだ、近付けない!」

 

 ボーンドマリーナに呆気なく敗れ去ったリュウは、雪辱戦を挑みに岬へと追って来た。

 

 そこは正に釣り人の楽園とも言うべきスポットだった。

 

 だがあまりにも魚が釣れるため、本命のボーンドマリーナには、全く近付くことができない。

 

 疲労をリリフで回復するのもそろそろ厳しい。

 

(どうする。ボクだけじゃ全部の魚を釣るのは無理だ)

 

 圧倒的な物量を前に苦戦を強いられるリュウ。

 だがその時。

 

「おーいリュウー、待てよー!」

「一人で遠くまで行くなっての」

 

 ティーポとレイが。

 

「ちょっとみんな早いわよ」

「モモさん、あとちょっとだから」

 

 モモとニーナが。

 

「頭上に気を付けろ。たまに石が降って来るぞ」

「ぶっきす」

 

 ガーランドとペコロスが。

 駆け付けたのである!

 

「みんな……」

 

 リュウは集まった六人の仲間を見た。自然と、彼の胸中には暗雲を払う風が吹いた。

 

 一対一に持ち込めないなら、複数対複数で戦えばいい。

 

「全く、あんまりムキになるなよ」

「もしも大変そうなら、私が手伝ってあげるわよ?」

「みんな、実は頼みたいことがあるんだ」

 

 そして。

 

「なるほどね、そんならいっちょやりますか」

『おー!』

 

 リュウ以外の各員が一斉に釣竿を握り、ルアーを投げる!

 

「わっわっ、もうかかっちゃった!」

「本当に沢山いるのねー」

 

 ボーンドマリーナを守る無数の魚たちを、リュウの仲間たちが釣り上げ、陽動し、道を拓く!

 

「みんな、ありがとう。たー!」

 

 リュウは全力で釣竿を振った。遠くまで飛んで行ったルアーが、一際大きな魚影の近くに落ちる。

 

(さっきあの魚は、物凄い力で緩急を付けた後、身を捩って糸を切った。慣れた動きだった)

 

 慎重にルアーを動かしながら、彼は先ほどの敗北を思い出す。

 

(あの動きに合わせられないと、幾らヒットしても結果は同じだ)

 

 一瞬だけ見えた、長大かつ鋭利な棘のような器官。武器を持った魚と戦うのは、これが初めてだった。

 

(イメージするんだ。奴の先を行く動きを。感じ取るんだ。奴が仕掛けて来る呼吸を)

 

 リュウは勝負を仕掛けた。ギリギリまで引き寄せたかったが、そうすればこの相手は気付く。

 

 歴戦のアングラーである彼は、自分を有利に立たせての勝負を断念した。読み合いも駆け引きも既に始まっていたのだ。

 

「……ヒット!」

 

 獲物が食い付いた瞬間、リュウは流れるような動きで地に伏せた。

 

 水辺の生物が陸の生き物を見て逃げる、その裏をかくために釣竿に覆い被さり、糸を手繰り寄せる。

 

 誰に教わるでもなく、彼は本能的に戦い方を選び取ったのだ!

 

「リュウ、お前……!」

 

 ともすれば奇行にも見える少年の戦法に、レイは驚愕の声を上げる。

 

 釣りというよりも狩りに近いが、釣りとは元来魚への狩りである。

 

「カテクト」

 

 息を殺し、目を閉じて、リュウは集中する。

 

 あまりにも危険な行為。手を捥がれても不思議ではない。自身に対する回復と補助により、初めて可能になる釣りだった。

 

「下がってよう、ここからはオレたちの出る幕じゃない」

 

 レイに言われるまでもなく、釣り場は静寂に包まれていた。

 

 ボーンドマリーナとリュウの勝負が始まると、魚たちは道を開けるように広がり、他の餌に見向きもしなくなる。

 

「勝てよ、リュウ……!」

 

 釣竿を仕舞いながらティーポが激励する。

 

 一際大きな魚影が波飛沫を上げ、時には大きく近付き、時には全力で糸を引く。

 

「アプリフ!」

 

 全身を引き摺られれば、捻じ伏せるようにして糸を引くリュウ。

 

 最早下手なモンスターの一撃では、傷も付かない肌から出血する。急いで回復をするが、慌てる様子はない。

 

「こんあ釣り見たことないわ」

「リュウ、がんばって!」

 

 少しずつ、本当に少しずつだが、リュウは相手を引き寄せた。

 

 岸までおよそ20メートル。それが永遠にも感じられるほど、遠い。

 

「なんだあいつ、急に止まって、休んでるのか?」

 

 動きを止めたボーンドマリーナに対し、ティーポが訝しんだ矢先。

 

「来る、ここだ!」

 

 魚影が躍るように動くと、釣糸が大きくうねり、捻じれる。

 

 ボーンドマリーナは自らの角に釣り糸を巻き取り、切断するつもりだった。

 

 野生が身に着けた釣り人への反撃手段である。

 

「ぐっ!くぅ、ううううぅぅ!」

 

 だがリュウも一度は見た技である。

 

 両手に巻き付けた糸を解放し、相手に合わせて弧を描くように巻き取ることで、相手の巻き取りと切断を巧みに回避する。

 

「今だ、リュウ!」

「うん!」

 

 ガーランドが吠える。反撃をいなされたヌシの一瞬の隙。

 

 少年は渾身の力を込めて巻き取り、まるで銃撃を回避するかのように横転する。

 

 今のリュウは生きたロープ巻き取り機だった。

 

「いいわ、どんどん引き寄せてる!」

「ぷきっぷっぷき、ぷきー!」

 

 ペコロスも大興奮だ!

 

「ふう、ふう、最後の勝負だ!」

 

 奥義を破られたボーンドマリーナは、持てる力の全てで抵抗した。

 

 力と力、技と技の純粋なぶつかり合い。

 

「あと少し、もう少し!」

 

 体中を砂と泥に塗れさせ、腕に絡まった釣糸はあまりの締め付けに出血し、また紫色に変色している。

 

 並の人間ならばとっくに死んでいる戦いだった。

 

「見えた、奴さんが跳ねたぜ!」

「もう直ぐそこだ!」

 

 立て続けに二回飛び跳ねるボーンドマリーナ。

 

 疲労の証明と同時に、糸を巻き取ろうと空中戦を仕掛けたのだ。

 

「うわ、しまった!」

 

 糸の切断こそ躱したが、体を持ち上げられ引き起こされてしまう。

 

 リュウは見た。もう5メートルもないほどの近く。

 すぐ側でマニーロが固唾を飲んで両者を見ている。

 

「負けない……!」

 

 体重の差から来る力負けに、彼は釣竿を背負うようにして戦う。

 

 この場に奇跡があるとするなら、それは未だに壊れない釣竿そのものだった。

 

「負ける、もんかああああーーーー!」

『おお!』

『ああ!』

 

 正に背負い投げの要領で、遂にリュウはボーンドマリーナを釣り上げた。

 

 だがしかし。

 

「……え?」

 

 誰がその声を発したか。

 誰がその瞬間を予期したか。

 

「あっ」

「ウソ!」

「リュウ!」

 

 空中から降り注いだボーンドマリーナの角が、リュウの胸を貫いた。

 

 地面に倒れ、縫い留められる少年の体。

 

 何処かしら尖った魚が人に突き刺さる。恐るべきことに、この事故はそう珍しくないのである。

 

「リュウ!クソ!」

「こんなことって、おい」

「待って、そのまま引き抜けば大出血を起こすわ!」

 

 暴れる巨大魚を男衆が取り押さえ、角の部分だけを切り取る。

 

「リュウ!しっかりして、死んじゃだめよ!」

「リュウ、おいリュウったら!」

 

 ニーナとティーポが必死になって名を呼ぶ。

 

「うっ」

 

 その時だった。

 

「何だ、リュウ、どうしたんだよ、リュウ!」

 

 リュウの体が大きく脈打つと、刺さっていた角が抜ける。

 

 出血が収まり、更に大きく体が震えて行く。

 

「まさか、こんなことが」

 

 レイが呆然と呟く。どくん、どくんとリュウの身が脈打ち、震え、光り輝く。

 

 徐々に人間の輪郭を失い、そして。

 

「リュウ、お前は、ドラゴンだったのか……」

 

 後には小さなドラゴンが横たわっていた。

 

 ボーンドマリーナマリーナ『180』。

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