ブレスオブファイア3二次創作 釣竜伝説   作:泉 とも

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今回で幼年期編は終わりです。
幕間の話を挟んだら青年期編が始まります。


さらばリュウ!いつかまた会う日まで!

 その日の夜。

 

「きゅうぅ……」

 

「ほら、しっかりしろリュウ。お前が釣ったボーンドマリーナだぞ」

 

 でかい魚の角に胸を貫かれ、ドラゴンに変身することで九死に一生を得たリュウ。

 

 しかし傷が深かったのか、弱ったまま時間が過ぎて行く。

 

 ティーポは甲斐甲斐しくも魚を柔らかく焼くと、身を解して口に運んでやる。

 

「一応食欲はあるけど、予断を許さないわね」

 

 リュウは熱を出しており、ニーナは枕元でお絞りを絞っては取り換えてやる。

 

「刺さった場所が心臓の真横で、魚が暴れたときに傷付いた恐れがあるの。今はドラゴンになって傷はふさがって見えるけど……」

 

「もしも上手く治らなかったら、ってことか」

 

 レイは厳しい顔をしながら後頭部をかく。完全に油断していた。

 

 体の大きい魚なら、小さな獲物を水中に引き摺り込む。鋭利な角やエラが有れば切り裂く。

 

 自然との戦い、その厳しさに陸も海も違いはないのだ。

 

「ぷきゅう~」

 

 ペコロスが頭から大きな葉っぱを生やし、団扇のように動かす。

 

「はいリュウ、あーん」

「きゅう」

 

 ニーナがすりおろしたリンゴを口に運ぶ。今夜が峠だが、誰もがそれを乗り越えようとしていた。

 

「……」

 

 ガーランドはテントの中を覗くと、静かに溜息して火の番に戻る。

 

 どっかりと座り、薪を火にくべる。

 

「まったく、困ったことになったもんだぜ」

 

 その様子を見てレイも対面に座る。

 

 自分も看病をしてやりたかったが、邪魔になってもよくないと思い、断腸の思いで席を外したのだ。

 

「いいのか?リュウに、ついていてやらなくて」

「そういうあんたこそ、いいのかよ?」

 

 言われたことの意味が分からず、ガーランドは首を傾げた。

 

「ウルカン・タパで聞いたぜ。あんた、昔はドラゴンと戦ってたそうじゃないか。リュウは弱ってる。手を出すんなら、今しかないんじゃないか」

 

「……そうか。確かにオレたちガーディアンは、神の命に従いドラゴンを殺し回った。奴らは本気になれば、とてつもない力を発揮する。善悪は関係ない。何かのはずみで、容易く村や街を滅ぼせた」

 

 気を紛らわせるように、二人は話し始めた。

 

 ガーランドは他のガーディアンたちが、まだ健在だった頃を思い出す。

 

「それなのに、ドラゴンの多くは無抵抗だった。ドラゴンは悪だと言われて、それを疑わなかったが、奴らが悪事を働くところを、オレは見たことが無い」

 

「……負い目でもあったのかね。我を忘れて、暴れ回ったら、大勢が死ぬとか」

 

「かもしれん。弱いドラゴンでさえ本気を出せば、オレ一人では厳しい手合いがほとんどだった」

 

 一つ、また一つと薪を火に投げる。木の爆ぜる音が、時折鳴り響く。

 

「オレの仲間の一人は、そんな状況に疑いを持って、ガーディアンをやめた」

 

「それで?あんたはどうなんだ?」

 

 レイはガーランドを見た。根っからの悪漢では無さそうだが、かと言って純朴という訳でもない。

 

 問答無用でリュウに襲い掛かることもない。だが、これまでに無抵抗なドラゴンを手にかけてもいる。そしてそれを止めたとも言わない。

 

「分からない。ただ」

「ただ……?」

「もしもリュウが助からなかったら、オレは」

 

 ガーランドはテントを一度見てから、視線をキャンプの火に戻した。

 

「オレはあの子を、殺さずに済む……」

 

 悩んだ上で、零れた言葉。深い溜息が、炎を揺らす。

 

「おっさん、あんた」

「この話の続きは、リュウ次第だ」

 

 その言葉を聞いて、レイは武器の手入れを始めた。ガーランドもそれを咎めない。

 

 各々がそれぞれの理由で緊張に包まれた夜が、徐々に深まり、いつしか開けて行った。

 

 

 ――そして。

 

 

「ううん、あれ、ボク」

「よう、お目覚めかい。リュウ」

「レイにいちゃん……」

 

 リュウは、人の姿に戻った。

 

「覚えてるか?お前が釣った魚にブッ刺されて、ドラゴンに変身したことで、何とか生き延びたんだ」

 

 テントの中、正確にはリュウの傍には、ニーナやティーポといった仲間たちが、彼を守るようにして眠っていた。

 

「さっきまでずっと起きてたんだぜ、こいつら。愉快だね」

 

「そっか」

 

 何かあったら起こすから、少しは休むようレイは言った。そして夜を徹してみんなを見守っていたのもレイである。

 

 そんなことは、おくびにも出さないが。

 

「あれ、ガーランドは?」

「ああ、あのおっさんなら、ほれ」

 

 レイは一枚の書置きをリュウに渡した。

 

 ――天使の塔にて待つ。

 

 と書いてあった。ついでにアクセスも添えてあり、そちらのほうが本文よりも字数が多かった。生真面目な男である。

 

「そこはおっさんが、仲間たちと倒したドラゴンの墓になってるんだと。ドラゴンのことで話があるとも、な」

 

 ガーランドがどういう人物なのか、二人は宿での話を聞いていたので、どうなるかは薄々分かっていた。

 

 行けば戦いになるだろうと。

 しかし。

 

「行こう。ドラゴンやボクたちのこと。知ったうえでボクたちのことを、話そうと思う」

 

「……そうか。リュウはすげえな。本当はオレ、このままバックレちまおうって、言おうとしてたのにさ」

 

 おどけた仕草でレイが笑う。彼は知らない。この弟分の真っ直ぐさは、自分が守って来たということを。

 

「ま、肩が凝りそうな話はさっさと片付けたほうがいいしな。ティーポたちが起きたら、準備をして会いに行ってやろうか」

 

「うん!」

 

 決意と共に返事をすると、その声で仲間たちも起き始めた。

 

「うぅん、リュウってば、朝早いのよね」

「あ、お早うニーナ」

「お早うリュウ。リュウ……?」

 

「あ゛あ゛ああああぁぁぁぁーーーーッ!!」

 

「おわっ何だ何だ!?リュウを守らないとって、あっリュウううううぅぅぅぅーーーー!!」

 

「ちょっ耳、耳が……!」

 

 感極まった様子で飛び付くニーナとティーポ、大声に面食らうモモ、起きないペコロスによって、パーティは完全に復活した。

 

「みんな、心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」

「いいの!リュウが元気になったからいいの!」

 

「ほらお姫さん、リュウは病み上がりなんだから、その辺にしな。ティーポ、朝飯の準備をするぞ」

 

「オッケー兄ちゃん!」

 

 寝癖もそのままにテントを飛び出したティーポが、疾風の如き速さで朝食の支度を済ませる。

 

「あら、そういえばガーランドさんは?」

「その辺も追々話すよ。マジメな話なんでな」

 

 嵐のような半日が過ぎると、何事も無かったかのように、普段通りの時間を過ごす。

 

 一同はウルカン・タパへ戻る途中で、ちゃっかりジャンク村で装備を新調してから、天使の塔へ向かった。

 

 

 ――ウルカン・タパ聖地『天使の塔』。

 

 

 所々荒れている古代の遺跡。その正体はドラゴンたちの亡骸を納めた墓。

 

 本来ならば余所者には閉ざされた場所だが、今は違った。

 

「リュウご一行様ですね。ガーディアン・ガーランドがお待ちです。どうぞ、中へ」

 

「本当に、戦うことになっちゃうのかしら」

「たぶんな。ま、なるようになるさ」

 

 階段を上って横から飛び降りて迂回して内部へ侵入すると、リュウたちはRPGの墓といえばダンジョンに挑む。

 

「何よー!聖地なんて言いながら全然管理が行き届いてないわー!」

 

「この岩なんだよ動かせねえよ!」

「みんなで押すんだ、せーの!」

 

 ウジャウジャいるモンスターを倒し、倉庫番ギミック担当の不在に苦戦しながら、それでも地下の最深部を目指す!

 

「こっちは大勢で押し掛けてんだ。構うこたねえやっちまえ!」

『おー!』

 

 まるで時代劇の小悪党みたいなことをレイが言うと、他も勢い付いて突撃する。

 

 そんなこんなで最深部。

 

「いた!ガーランドだ!」

「来たか、リュウ。それにその仲間たちよ」

「うるせー畳んじまえー!」

「えっ!?」

 

 イベント仕様の一対一などこの期に及んで誰が許そうものか。

 

 六人は雪崩を打っていきなりガーランドを倒してしまった。

 

「よーしふん縛れ!」

「お、オレはリュウと一体一の勝負を」

 

「うるせー!大変なことになりそうなのに、誰かそんなことさせるか!」

 

 ティーポが耳元で叫ぶ。

 

 やれ大事な話だとかやれ善悪を見極めるだとか言っても、そこに命の危険があるなら、許されるはずはない。

 

 負けたらゲームオーバーになるような戦闘を仕掛けようとするからこんなことになるのだ。

 

「どうぜあんたのことだから、悩んでるのにリュウを始末しようとしたんじゃないのかね?少なくとも、オレたちがいる間はそんなことさせねえぜ?」

 

「だが、ドラゴンは危険な力を持っている。放置しておくことはできん。例えオレたちの手に負えないとしてもだ」

 

 念仏めいてガーランドが言う、恐らく同じことを何百年と繰り返し、自分に言い聞かせて来たのだろう。

 

「そんなこと言ったって、オレたちは大人しく殺されないんだから、もうどうしようもないだろ?観念しろい!」

 

 縛られたガーランドをティーポが思いっ切り蹴る。

 

 硬くて足が痺れたのか、そこで黙ってしまう。

 

「まあ、人生無理なもんは無理って時がある。あんたにもそれが来た。それだけだろ?」

 

「うむう」

 

 納得できないが抵抗する気も起きない。ガーランドのモチベはだいぶ前から尽きかけていた。

 

「しっかしまあ、改めて見るとえらい量の骨だな。これ全部ドラゴンなのか?」

 

「墓碑に殺害数まで律儀に書いてあるわ。ちょっと現実感がないくらい」

 

 周囲には無数のドラゴンの骨が散乱し、幽かな光が立ち上っては消えて行く。

 

「うわっ兄ちゃん!」

「ティーポ、こっちに来ておけ」

「これは……うっ」

「リュウ?どうしたの、リュウ!?」

 

 時には大きな生首となって一行の前に迫り、声も無く霧散する。

 

 ドラゴンたちの無念が、末裔たちに語り掛けようとしては消えて行く。

 

「……おかしい、普段ならここまで反応はしないはず。やはりリュウに呼応しているのか?」

 

「えっオレは?」

「お前は関係ないだろう」

「いや、オレもドラゴン」

 

 ティーポの呟きは無視された。ガーランドもマジメな話をしているんだと言わんばかりだ。

 

「ぐっうう」

「リュウ、おいどうした、リュウ!?

 

 ――目覚めよリュウ。ドラゴンの御子。

 

「見て、光が!」

 

 墓の中を埋め尽くすほどの光が地面から放たれ、その全てがリュウへと向かって集まっていく。

 

「いかん、ドラゴンたちの怨念が、リュウの真の力を覚醒させようとしている!」

 

「うわああああーーーーっ!」

『リュウ!」

 

 リュウの全身が輝きを放ち、巨大なドラゴンへと変わる。

 

 水かきのついた二本足。全身に伸びる鋭利なヒレと極彩色の鱗。水の化身とも言うべき美しくも多しい姿。それは。

 

「カイザードラゴンだと!」

 

 ガノトトスです。

 

「シャアアアアアッ!」

「危ない、下がれ!」

 

 リュウはその40メートル級の巨体を震わせると、天使の塔の外壁をぶち破って、外へと飛び出した。

 

「待てよ、リュウ、行くな!行くなー!」

 

 ティーポの叫びも虚しく、カイザードラゴン(ガノトトス)は跳躍、海へ飛び込み盛大な水飛沫を上げる。

 

 そして。

 

「ティーポ戻れ!ここは崩れるぞ!」

「リュウー!」

 

 リュウは母なる海へ彼方へと、泳ぎ去ってしまったのだった。

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