釣りポイント10
上流の つめたい流れに めずらしい魚が 住むと言う(だいたい原文ママ)
生息魚 レッドキャット ビッグマウス 火星ダコ
「なるほど、その巨大なモンスターは海へ帰ったのですね」
ダウナ鉱山付近の釣り場で、リュウたちは釣りをしていた。近場に街も村もないので、食料を確保しなければいけないのだ。
「はい。これがその鱗」
「うわあ、大きいですねえ」
「あの人だれ?」
「エミタイという、ティーポの魔法の師匠らしい」
リュウが見つかるまでの数年間、仲間たちはただ生活に追われていた訳ではない。
何やかんやレベルを上げていたのだ。
「これでしばらくは平和が戻ったと。いや~よかったよかった」
結構な額の借金を払って貰ったり有り金を全額要求したり、魔法使いの師匠は基本的にごうつくばりである。
とはいえ身近に怪獣みたいなモンスターが出て、ローンから解放された自宅を手放すというのも酷な話。
エミタイはティーポの報告に胸を撫で下ろした。
「それでティーポさんは、またウィンディアに戻るんですか?」
「ええ。その内また挨拶に来ますよ」
タコばっかり釣りながらティーポが言う。この辺は変わっていない。
「そうですか。ライアも会いたがってますから、顔を見せてやってくださいね」
エミタイは娘の相手にティーポを狙っていた。
昔は闘都では娘が病気という設定で、対戦相手を泣き落としで倒していたが、今ではうだつの上がらない父親である。
こんな僻地に出会いも何もないので、次の心配は子供の将来だった。
「またその内」
結局食える魚を釣ったのはリュウだけだった。
「ああそうだ、ウィンディアに帰るなら、闇市の連中に気を付けなさい」
「闇市?」
「闘都の漢羅強烈大武会を仕切っていたヤクザ者の根城だ」
二人の会話を聞いて、リュウはガーランドに尋ねる。山家事で自滅した馬兄弟はそこの幹部である。
「あそこの幹部たちがいつの間にか死んでいたそうで、内部分裂が起きたらしいんです」
闇市には控えめに言って盗人や人殺しが大勢いる。
組織を維持するのは武力であり、馬兄弟ことバリオとサントの死は首領ミクバの立場を一気に危うくした。
「今はダウナ鉱山に拠点を移しているそうです。ゴースト鉱の横流しをしているのは公然の事実というか、暗黙の了解みたいになってたから、乗っ取られたんでしょうね」
エミタイ宅はそこから微妙に外れているため、この危険な集団の目に留まらずに済んでいた。
「私たちには関係ないことですが、向こうからやって来ることもあるでしょう。なるべく目立たず、自分の身を守れるようにしておきなさい」
「はい、ありがとうございます」
年長者としての忠告に感謝すると、ティーポはお礼に魚を少し分けてあげた。
釣りを切り上げると、リュウたちはそのまま帰路に着く。
「ヤクザ者同士の争いか。ここに来るまでは無かったが」
「まあガーランドは如何にも強そうだし」
「普通狙わないよね」
自分たちが狙われるとは思わず、狙われた所でどうってことない三人は、寂れた街道を進む。
そしてその日の晩。
ーーキャー誰かー!
夜の静寂を切り裂く女性の叫び声。
キャンプ中だった一行は武器を手に立ち上がる。
「悲鳴だ!」
「愉快だね、そりゃオレたち以外は狙われるか」
「……行くのか?」
「行こう!」
いの一番にリュウが駆け出す。
灯りも無い藪の中を一直線に掻き分けて行く。
「こんな所に人なんか来る訳ねえだろ!」
「へっへっへ、大人しくしろい!」
つ レッドキャット
※アイテムとして使うとガダブレダ。
『うわー!?』
採れたての魚を投げつけられ、悪漢たちはあっさりと撃破された。
リュウはそのまま走り、声の主を確認する。
「大丈夫ですか?」
「あっああ、ありが、とう」
腰を抜かして地面にへたり込んでいたのは、金髪でやや胸を強調した服装の女性だった。
アレもんでコレもんな感じの。
「こんな所に女一人、それもそんな薄着で、不用心が過ぎるな」
「一人旅って感じじゃないな。何か訳がありそうだ」
三人は女性を連れてキャンプに戻ると、話を聞くことにした。
「それで?あんたはどこの人なんだ?」
「あたし、闇市から逃げて来たの……」
その言葉にリュウたちの間に、僅かに緊張が走る。エミタイから聞いた危険な団体である。
「闇市、ならず者の集まりか」
「そう。そこは少し前まで、ミクバって親分が仕切ってたんだけど、用心棒で幹部の人たちが死んじゃったらしくて、他の人たちが親分の座を狙って」
「内輪モメを始めた、と」
「……そう。それで闇市でも大きな抗争が起きたの。それでもう、闇市はメチャクチャになっちゃってさ」
彼女の話はエミタイの情報と概ね一致していた。
「おまけにあたしみたいに、逃げた奴を捕まえようとしてる連中もいたの」
来る者は拒まないが、去ることは許されない闇市の掟を知り、リュウたちは顔をしかめる。
「危ない所だったね」
「うん。でも結局、行く所なんかなくて」
女性は大きな溜息を吐くと、そのまま体育座りになって俯く。
「それで?肝心のミクバってのはどこに行ったんだ?」
「たぶん今はダウナ鉱山にアジトを移してるはず。あそこは昔からゴースト鉱の横流しをしてて、いざとなったら乗っ取るって、聞いたことがあるよ。その証拠に他のゴロツキたちも集まってる」
こういうことがあるから反社会的集団と付き合ってはいけないのである。
ボウモウ山のおじさんたちだって、本編ではニーナたちを馬兄弟に差し出した後、影も形もなくなってしまった。
「前に聞いた話だとあそこはモンスターも出るし、それに昔から不吉な言い伝えがあって、炭鉱夫以外はほとんど近付かないから、隠れるには持ってこいなんだって」
「不吉な言い伝え、とは?」
焚火に薪をくべつつ、ガーランドが問う。たぶん怪談噺の類だろうと思っていたが、女性の口から出たのは、意外な言葉だった。
「それがね、何でもドラゴンの幽霊が出るって話よ。ドラゴンが何なのかは、あたしも知らないんだけど」
ドラゴンという単語に三人が一斉に振り向く。
都会から外れた遠方の地で馴染みのある、しかし決して縁起は良くない単語に、彼等はお互いの顔を見合わせる。
「どう思う?」
「分からない。だが、確認はすべきだろう」
「まだ他にもドラゴンがいるのかな」
無視して静観を決め込むこともできたが、彼等はそれを確かめた方が良いと判断する。
「行けばウィンディアに戻るのが遅れるけど、どうする、リュウ?」
「行ってみよう」
「よし、決まりだ」
リュウはいつものようにGOサインを出した。
物語を動かす力は大したものである。
「あの、それであたしはどうなるんでしょうか」
「……とりあえず、この子をエミタイに預けてからだな」
そうして三人は後日、女性を一時避難させると、ダウナ鉱山へと引き返すのだった。