ブレスオブファイア3二次創作 釣竜伝説   作:泉 とも

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祟りの形も色々だ

「アレがダウナ鉱山」

「見事にチンピラやゴロツキしかおらんな」

 

 ドラゴンの噂を聞いて鉱山へとやって来た。

 

 そこにはカタギの人々など影も形も無く、その辺を歩くだけでもエンカウントしそうな有様だった。

 

 ――んだてめっ肩ぶつけてんじゃねーぞ!

 ――でめーこそガン飛ばしてんなコラァ!

 

 野放図とか無秩序という言葉がぴったりなロケーションに、リュウたちは渋い顔になる。

 

 大して教育を受けていない三人でさえ、こうはならない。品性とは才能なのだ。

 

「関わり合いになることもあるまい。鉱山を巡って様子を見たら、そのまま帰ろう」

 

「その方が良さそうだね」

 

 ガーランドが嫌でも目立つが、同時に真っ当な人間にも絶対に見えないので、他の連中もケンカを吹っ掛けて来ない。

 

「あっガーランドの旦那!」

「……誰だ?」

 

「いやあほら、あっしは漢羅強烈大武会で、裏方をやってたもんでして」

 

 それどころかゴマをすりにやって来る者が出る始末。

 

「何それ?」

「闘都でやってた武闘大会らしいぜ」

 

「ああ、オレも昔は常連でな。普通に勝っていただけなんだが、闇市の連中はオレを用心棒みたいに扱って、裏でケチな八百長をして小銭を稼いでいた」

 

 しかし彼もティーポたちと過ごし、大会にも出なくなったので、すっかり縁も切れたかに見えたのだが。

 

「旦那がいなくなって大会はしょっぱくなっちまって。まあ相手がいないんだから仕方ないっすよね」

 

 猿っぽいゴロツキは落ち着きなく動き回り、喋りまくる。

 

 聞いてもいないのに一方的に話してくる人は鬱陶しいものだが、こういう場合に限っては有り難かったりする。

 

「でも旦那が来てくれて助かりやしたぜ!なんせ鉱山ん中はゾンビがうようよしてまして」

 

 男が言うには鉱山を乗っ取ったまではいいものの、内部ではゾンビ系を軸にモンスターが湧き続けるのだそうな。

 

「ミクバの親分は戦っちゃくれないし、ゾンビは減らないしやんなりやすぜ!」

 

 彼らもゾンビよりは強いのだが、だからといって被害無しとは行かない。

 

 傷付き倒れた者はそのままゾンビになり、敵の戦列に参加してしまう。

 

「炭鉱夫も逃げ出して、適当にいじったクレーンは物故割れるし、ゴースト鉱も上手く取り出せない、踏んだり蹴ったりですよ」

 

 生産力のない者を人的資源とは呼ばない。

 

 ともすれば草むしり一つ満足にこなせないのがゴロツキなのだ。

 

「ところで、ドラゴンの幽霊というのは」

「あっやっぱり旦那もその話で呼ばれたんすね!」

 

「いや、オレたちは別に」

「流っ石ガーランドの旦那だ、話が早い!」

 

 一人早合点をしながら捲くし立てるゴロツキ。

 

 ティーポの額に青筋が浮かびも、リュウがそれを無言で『放っとけ』とジェスチャー。

 

「鉱山の中にとんでもねえバケモノを見たって奴がいるんでさあ!みんなしてモンスターが化けて出たんだってビビっちまって、もう何人かはやられちまった」

 

 既に被害が出ている辺り、噂は真実になりつつあった。

 

「闇市は他の派閥に押さえられちまって、親分も戦っちゃくれねえし、途方に暮れてたんでさあ」

 

 暗にガーランドたちに始末してもらおうと言っているのだが、こういう期待に気付かないほど三人も鈍感ではない。

 

「じゃあさ、親分一人残して、みんなでバックレたら?」

 

「え!?」

 

「だってそうだろ?このままだとみんなが損するだけじゃん。親分がバケモノにやられたら、金目の物を手土産にして、闇市に帰ればいいんだし」

 

 単純に断るのではなく、更なる仲間割れを煽るティーポ。

 

 余計ないざこざは避けるに限るし、ならず者たちに肩入れするつもりも無かった。

 

「な?おっさんもリュウもそう思うだろ?」

「えっ」

 

 突然水を向けられて二人は顔を見合わせる。汗をかきながらも向き直り、慌てて頷く。

 

「ま、まあ、そうだな。親分はお前たちを見捨てる気でいるのかもしれんし」

 

「せめて一緒に戦ってくれないと、困るよね」

 

 

 そして今度はゴロツキの方が慌てる。

 

 忠誠心など1ゼニーも持ち合わせていないため、この言葉は非常に悩ましいものがあった。

 

「そりゃまあ、裏切ったらぶっ殺す!なんて言われてるけど、じゃあオレたちに見返りがあるかっていうと、無いし。自分はどっかに隠れて出て来ないから、やれるもんならやってみろってなもんだけどさ……」

 

 暴力や恐怖で心を支配しても、それは定期的に見せしめがあるからこそ保たれる。

 

 組織としての構造が崩壊している今、闇市の恐怖政治は機能を停止しており、それはつまり統制を維持できない、ということだった。

 

「なら問題ないな。だろ?」

「言われて見れば、そうだな……」

 

 あくまでもリュウたちはドラゴンの噂を確かめに来たのであって、ゴロツキの内輪もめに加勢しに来た訳ではない。

 

 三人ともそこは共通していた。

 

「よ、よし!オレ、みんなに言って、親分から逃げようって誘ってみるぜ!こっちには旦那たちもいるんだ、何とかなるさ!」

 

「おい、オレは別に何も」

「おーいみんな聞いてくれーーーーーー!」

 

 ガーランドを身内扱いしたまま、猿っぽいゴロツキは駆け出してしまった。

 

 怒りや憂鬱といった感情が、ガーディアンの中に渦巻く。

 

「とりあえず、話は進んだってことで、いいのかな」

「ああ、たぶん」

 

 ――その後。

 

「ガーランドの旦那が味方に付いたら千人力でさ!」

「ミクバのクソッタレにはウンザリしてたんだ!」

「やってやろうぜ!」

 

 あっさりも鞍替えしたゴロツキたちが、ゴキブリもより多いんじゃないかってくらい鉱山から出て来る。

 

「正面から乗り込まなくてよかったね」

「流石にこんなにいるとは思わなかったぜ」

 

 戦った所で万に一つも負けないが、それでもこんなにいると引く。

 

「おーい、ゾンビを誘導する準備ができたぞー!」

 

 などと話していると、ゴロツキの一人がそんなことを言う。

 

「ゾンビを誘導?」

「どういうことだろう」

 

「なんでも、ミクバとの連絡役をしている奴も寝返ったらしい。奴の隠れている場所まで餌を撒いて、誘き出す作戦なんだと」

 

 鉱山から人払いをするだけの話だったのに、いつの間にか下克上のような事態に発展している。

 

 人の話を聞かない奴は、物事を勝手に動かすので注意が必要である。

 

「へっへっへ、あばよミクバのオヤジ、あんたの天下も今日限りさ」

 

 猿っぽいゴロツキが呟くと、鉱山から盛大に煙が吹き出す。

 

「なんか美味そうな匂いが」

「魚を焼いているのか」

 

「ゾンビ共は普通の飯も食いますからね、たぶん生きてた頃のことをちっとは覚えてるんでしょ」

 

 この世界では幽霊は珍しくないし、モンスターだって人の言葉を喋る。それくらいは別におかしくないのだ。

 

 そして食欲をそそる香りが、次第に焦げ臭くなった頃、

 

 ――ウオオオオオオオオオオオオ!!

 ――ぐわあああああああああああ!!

 

 二つの恐ろしい声が聞こえ、その場の誰もがピタリと黙った。

 

「どうやら、出たらしいな」

「あ、あの、ガーランドの旦那、本当に、行きなさるんで……?」

 

 最初こそ調子付いていたゴロツキたちは、今や完全に怯え切っている。

 

「うむ。行こう、リュウ、ティーポ」

「うん」

「おう」

 

 三人は気を引き締めると、武器に手に香ばしくなった鉱山へと突入したのだった。

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