釣りポイント13。
知る人ぞ知る ゆうめいな タコつり場(だいたい原文ママ)。
生息魚 タコ ボルデビ ランタンキャット マニーロ
「いいな!どっちが大きい魚を釣るか勝負だ!お前らが勝ったらディースの封印を解いてやる!」
「いつでも来い!」
タイドパレスの奥、世捨て人たちの集まりに、元ガーディアンのガイストはいた。
リュウたちは封印された魔女『ディース』の解放を求め、釣りで戦うこととなった。
どうしてそんなことになったのかというと……。
――遡ること数日前。
「いやーリュウさん、お久しぶりです。大きくなりましたね!」
ラパラに立ち寄ったリュウたちは、モモの用事であった荷運びギルドへの挨拶に向かった。
「ベイトさん、それじゃまるで親戚のおじさんみたいだよ」
「ははは、私も父親ですからおじさんですよ」
ニコニコと笑う眼鏡の青年は、昔はやんちゃだった奥さんと幸せな家庭を築いていた。
一見すると優男だが、リュウたちが暇に明かせて悪ふざけの末に鍛え過ぎたせいか、こう見えて引くほど強い。
「そういえば船は?」
「ああ、船なら故障したので機械浜に」
「あの船しょっちゅう故障してるな」
ティーポが半目になってうめく。
リュウはもしかすると、船とは一生縁がないかもしれないと思った。
「リュウがドラゴンになった後、私たちは直った船に乗って帰ったのよ」
「へー、じゃあ今度はボクもそうしようかな」
などとのんびりしてから、火山の噴火から復旧した山道を通り、順調に旅を続けた。
――そしてある日のキャンプにて。
ティーポ「ガーランドの言う神様って、絶対ろくなもんじゃないだろうな。戦う準備はしておいたほうがいいと思うぜ」
レイ「おっさんが思い詰めてるけど、まだ何か隠してる気がするな。案外、天罰でも怖がってたりしてな」
ニーナ「神様かあ、リュウやティーポは悪いドラゴンじゃないけれど、信じてくれるかちょっと心配よね」
モモ「少し気になったんだけどね、ガーランド以外のガーディアンって、どこに行ったのかしらー?他にもいるような口ぶりだけど、教えてくれないのよね……」
ガーランド「もしもオレたちの神が、オレたちの信じていた神と違っていたら……。いや、なんでもない」
ペコロス「スヨスヨ……」
いつもと変わらないペコロスだ。この寝顔を見ていると、心配事があっても眠れるから助かる。
そんなこともありつつ、天使の塔に到着した。
「お役目ご苦労さまでした、ガーディアンガーランド」
入り口の番人に見送られ、ガーランドは天使の塔の頂上を目指す。
「ここもすっかり直ったのねー」
「リュウが前にドラゴンに変身して、ここをぶっ壊してから立ち入り禁止になったんだぜ」
ティーポが遠くの海を見つめる。あれから何年も経ったが、あの日の水平線は、今も変わらない。
「ガーランドのおっさん、何て言って誤魔化したと思う?『ドラゴンがあまりに強力だったから、つい本気を出してしまった』だぜ?」
リュウは嘘が下手にも程があると思った。だいたいゴリ押しで通るの正直ずるい。
「まあおかげでまた入れるんだけど」
「へー」
などと話しながら頂上まで行き、ガーランドが合掌、神を呼ぼうと天に向かって請願した。
のだが。
『我をここから出せ。神のことを知りたくば、封印を解くのだ……』
ぱっと見リュウの女性版みたいな裸の女性が空に現れて、そんなことを言うと、それきり反応が無くなった。
「奴はディース。いったいどういうことだ……?」
「ディースって誰?あの女の人?」
「奴は魔女ディース。我らの神とドラゴンの抹殺を真っ向から批判し、大昔に封印された者」
その説明にガッツでは耐えられないほどの白い目が向けられたが、ガーランドは我慢して話を続けた。
「思えば奴は神のことについて随分知っているというか、砕けた感じで話していた。得体の知れない女だったが……」
「じゃあさっさとその封印を解いてやれよ」
「いや、奴を封印したのはオレではない」
ガーランドは腕を組むと、遠方を見つめて呟く。
「ガイスト。それがディースを封印した、ガーディアンの名前だ」
「そのガイストはどうしたんだよ」
「自分のしていることや神に疑念を持ち、ガーディアンをやめた」
『こいつらこんなことばっかりだな』という表情が仲間たちの顔に浮かぶ。
重要な手がかりとか関係者が、揃っていなくなっている。
「居場所は分かるのか?」
「ああ、ここから先にあるタイドパレスの奥に、世捨て人たちの集落がある。奴はそこにいる」
今回は既に知っているので話が早い。
「ガーディアンっていうことはガーランドさんみたいに大きいのかしら」
「いや、奴はなんというかこう、シュッとしてる」
「ああ、昔のレイ兄ちゃんみたいな」
弟分の言葉にレイが頭をかく。ガタイが随分良くなっているので、細マッチョ路線は遠のいた。
「それだと今のオレがシュッとしてないみたいじゃないか?ティーポ」
「だいぶがっしりしたよね」
「昔はハンサムだったけど今は兄貴って感じよね」
「昔は、ねえ……」
地道に鍛えてしっかり体も作ったが、中々上手くいかないものである。
「気の短い奴だが、話せばきっと分かってくれるだろう」
そんなこんなで一行はガイストに会いに行った。
そして。
「誰だい」
「久しぶりだな、ガイスト」
それでだいたい本編と同じような会話を済ませたのだが。
「おい、ドラゴンの小僧共、こっちに来い!」
「はい」
「なんだよ」
「オレはお前たちの力が見たい。そこでだ」
ガイストはアゴをしゃくって外を示す。
「オレと釣りで勝負しろ。見た所、お前らも結構やるようじゃねえか」
「……!」
「はあ?」
ティーポは疑問符を浮かべたが、逆にリュウは気を引き締めた。
釣りを通して彼は初めて、他者から戦いを挑まれたのだ。
「ちょっとした暇潰しだよ。お前らが勝ったらオレはディースの封印を解く。負けたらこの話は無し。どうだ」
「まあそんなのでいいなら」
「受けて立とう!」
――という訳で冒頭に戻る。
「いくぜえ、竜族よおっ!」
結果。
ガイスト ランタンキャット 111
ティーポ ボルデビ 134
リュウ マニーロ 221
リュウの勝ち!
「お前、マニーロはずるいだろ……」
「はー?ちゃんと魚扱いでポイントとサイズが図鑑に載りますが?」
「それはそれでひどいと思うねんな……」
「いいからコインを返せよ」
コインを咥えてマニーロがしょんぼりと呟く。
そのくせティーポの手を払ってコインをガメようとする。
「ちっ、仕方ねえ。約束通りディースの封印を解いてやるぜ。ていうかもう解いた」
「えっ、もう?」
「ああ。もしかして術者の命と引き換えにする奴を想像してたか?神には悪いがそこまではしねえよ」
「そうだったのか」
ガーランドは少しほっとした。昔は自分よりも苛烈な人物だったので、そういうこともするかもと、心配だったのだ。
「……神の教えはこうだ。ドラゴンは強く、善悪ではなく弾みで世界を滅ぼせる。そして世界をここまで追い込んでしまった、存在自体が悪としか言えないと」
海を見つめながら、白いガーディアンは目を細める。
「所がどうだ。オレより強いドラゴンたちは、無抵抗に殺された。弾みも何もない。自分たちの死を耐えて見せた。オレたちの言い分は真っ向から否定されたのさ」
ガイストの眉間には怒りによる深い皺が刻まれて行く。
「だからオレは、ガーディアンの役目を放棄した。できればオレも付いて行ってやりたいが、余計なことを言って話をこじれさせるかもしれん。悪いが後はお前たちで何とかしろ」
「ガイスト、すまん」
「ガーランド、暇になったらお前もこっちに来たらいいぜ」
ガーランドは無言で片手を上げると、静かに背を向けて歩き出す。
「よし、天使の塔に戻って、ディースってのに会ってみようぜ」
「何だかティーポに似た人だったね」
「そうかあ?」
かくしてディースの封印を解いたリュウたちは来た道を引き返したのだった。