ブレスオブファイア3二次創作 釣竜伝説   作:泉 とも

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再戦を誓って

 新天地に到達したリュウ一行は、これまでと一転してちょっとSFっぽい倉庫街を探検していた。

 

 その名はコンビナート。

 

「すごーい!機械がいっぱいだわー!」

「どいつもこいつも変な格好だな、リュウ」

「うん、それに妙に元気がない」

 

 モモは大はしゃぎで、ハニーの仲間としか思えない顔の機械たちを調べ回っている。

 

「見て見て!この子故障してるわ!うちに持って帰れないかしら!」

 

「重いし返して来なさい」

 

 レイの連れない返事にモモはしゅんとする。

 

 見るからに鉄の塊であり、数十キロはありそうな物を、拾って帰るとか言ってはいけない。

 

「でも不思議よね、機械たちはモモさんの武器みたいなのを持ってるけど、人間用の装備は私たちのいた所と、そこまで違いはないみたい」

 

「言われて見れば」

 

 SF的な姿の住民が、剣と魔法の世界のアイテムを売っている。それは奇妙な光景であった。

 

「話を聞くに、機械浜に漂着する機械はここで作られて、あの船に積まれて、途中で海に流されるらしい。何故そんな無駄なことをするのだろう」

 

「そのまま渡せばいいのに、壊したいのか渡したいのか分からないね」

 

 自分で機械を作らせないようにするための、女神の涙ぐましい調整とは露知らず、リュウたちは彼らの奇行を眺めていた。

 

 そんな時である。

 

「おーい!大変だ大変だー!」

「どうしたティーポ、そんな古典的な慌て方して」

「笑ってるってことは、何かいいことでもあったの?」

 

 一足先に探索に出ていたティーポが、息せき切って走って来たではないか。

 

 彼はリュウを見ると、少し勿体付けて言った。

 

「この先にすげえもんがあったんだ。何だと思う?」

「まさか帰りの船とか」

「いやそれも大事だけど、そうじゃなくってさ」

「焦らすなって、それで?」

 

 レイに言われるとティーポは自分が来た方向を振り返る。

 

「釣りポイントだよ!」

「え!?」

『え……?』

 

 温度差。

 

「ここにも釣りができる場所があるんだ。しかもだ、見たこともないほどでっかい魚がいたんだよ!」

 

「行こう、連れてってティーポ!」

「よし来たこっちだ!」

 

 慣れない土地で見知ったアレコレを見つけた時、意外とテンションが上がるものである。

 

「愉快だね。まあ気晴らしにはなるか」

「まったくもう、二人共まだまだ子供ね」

 

 そんなことを言いながら、みんなして釣り場へ向かう。なんやかんや言っても付き合うし、気になっちゃう。

 

 で。

 

 釣りポイント17

 

 彼の地の つり場では 見たことも ないような 大物が つれるのだろうか……(だいたい原文まま)。

 

 生息魚 グミフロート トベータ ボーンドマリーナ 勇魚 マニーロ

 

「ヒットー!」

 

 リュウは釣竿を握ると、水を得た魚のように活力を増した。

 

 次々に新天地の魚を釣り、かつて苦い思いをしたボーンドマリーナも相手にならない。

 

「これって俺たちがいた大陸の魚じゃねえか」

「そうね。意外と魚の種類って多くないのかも」

「リュウが楽しそうでよかった。ね、リュウ?」

 

 外野ものんびり釣り糸を垂らしてぼーっとする。

 

 ここまで話に流されたり勢い任せで進んだりした中で、まとまった休憩時間となった。

 

 リュウ以外は。

 

「……リュウ?」

「来た!」

 

 彼が身構えるのと同時に、釣竿が大きくしなる。折れそうなくらいに曲がり、リュウの体が引き摺られる。

 

「どうした、大物か!?」

「ちょっと見てアレ!」

「アレだよ、オレが見たのは!」

 

 みんが次々に指差す先には、小島ほどの大きな何かが水面に浮かび上がっていた。

 

 勇魚(いさな)、つまりクジラである。

 

「ぐっくうう、なんてパワーなんだ!」

 

「いかん、完全に重量差で負けている。このままだと引き摺り込まれるぞ!」

 

 力比べにおいて、体重で負ける者は相手を動かす場合、その重量分の力が余計に必要となる。

 

 如何にドラゴンの力が有ろうとも、ダメなものはダメなのだ。

 

「リュウ、釣竿を離せ!」

「いやだ!」

「意地を張るな、リュウ!」

「ぐぐぐぐぐ、ぐわあああーー!」

 

 遂にリュウの体が宙に浮き、海へと転落する。誰もが沖へ連れ去られると思った。

 

 しかし奇跡的に彼の体は浮き上がり、そのまま泳いで戻った。

 

「釣り針が外れたのか、運がよかったな」

「ちょっとリュウ、大丈夫!?」

「うん、でも、負けた。完敗だ」

 

 びしょ濡れの体をそのままにして、リュウは海を見つめた。

 

 水平線の彼方へ、悠々と去って行く勇魚の姿に、去来するのは悔しさと尊敬の念。

 

 勝鬨の如き潮吹きを、海鳥たちが囃し立てる。

 

「すごい奴がいたもんだ……」

「レベルを上げてまた挑めばいいさ」

「そうだね」

 

 敗北を喫したものの、世界と海の大きさは却って青年たちに良い刺激を齎した。

 

 

 ――そんな気分のままコンビナートを出発し、機械墓場へ行き、コロニーへ出て。

 

 

「この機械に乗ればどこかに行けるみたいよ」

「どこかってどこなの?」

 

 ――どこかで見たような機械をいじくった結果。

 

「帰って来ちゃったな」

「あれー?」

 

 機械浜まで戻ってしまった。

 

「前向きに考えましょう。無事に帰って来られたって」

「そりゃあまあ、そうだけどよ

「あっ、私お父様たちに手紙を出して来るね」

 

 船に揺られて数日かかった旅路が一瞬で振り出しに戻った。

 

 小馬鹿にされているかのような進展の無さに一同はうんざりしたが、ノリで飛び出してそのままだったニーナだけは、内心で安堵していた。

 

 こちらでは母親とケンカ別れの末の家出ではなく、出先では小まめに便りを出していたのだ。

 

「これってどうなるんだ?またあの船が来るのを待つのか?」

 

「大丈夫、あの装置を使えば同じように戻れるはずよ。しばらくは色々と行先を、試してみるしかないと思う」

 

「帰る手段が手に入ったと思えばいいんだね」

「そういうこと」

 

 機械関連の都合上、ニーナを差し置いて出ずっぱりになるモモの言葉に、みんなが胸を撫で下ろす。

 

 これまでのことが徒労になった訳ではないのだ。

 

「お待たせ―。これでまたしばらく旅ができるわ」

「ニーナの家出って、別に許可は出てないよな」

「そうよ?それだと家出にならないじゃない」

「ああ、うん。そうだよな」

 

 何を見て旅の可否を判断したのか、ティーポには分からなかった。

 

 イケる、やれる、大丈夫。これらの言葉は往々にして実態が消失しがちだったりする。

 

「じゃあまあ、さっきの装置に戻るか」

 

「パネルに見たことのある名前もあったから、たぶん行先の地名を指してるはずよ。言い換えれば」

 

 道中に出て来る新規の敵も難なく蹴散らしつつ、一行はトランスポート(転送装置)がある場所へと引き返す。

 

 道に迷ったり進展がないように見えたりするが、決してそんなことはない。

 

「知らない地名なら、行ったことのない地域になる」

「そういうこと」

「それならオレ、一つだけ気になったのがある」

 

 ティーポはそう言うと装置の前に来たとき、パネルを操作した。

 

 そこにはこう書いてあった。

『ドラグニール』と。

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