ドラグニール。
それは女神ミリアの手を逃れた、ドラゴンの末裔たちが隠れ住む集落。だがほとんど廃墟に近く、最早朽ちるのを待つばかりであった。
そんな所にリュウたちはやって来た。俄かにざわめく生き残りたち。
ドラゴンの力を捨て老いさらばえた住民と、一握りの年少者らしき者。
「お前たち、ここから出て来たのか」
「えっはい」
「待ってろ、今長老を呼んで来る」
そして始まる歴史物語。
女神とドラゴンの世界を巡る戦い。
正義と悪の因縁。
「ドラゴンの御子、あなた方がこの世に生まれたのは、恐らく女神ミリアと戦うためでしょう!」
お年寄りの一人が力説する!
「奴めは死の砂漠を越えた先におります!ですがドラゴンの勇者とその仲間なら必ず越えられるでしょう!」
「いやあの、ボクはまだ行くと決めた訳じゃ」
「大丈夫です、力ならあなたも負けておりませぬ!自信をお持ち下され!」
「いやだから」
「力なら負けておりませぬ!自信をお持ち下され!」
あれよあれよという間に、自分たちの与り知らぬ過去を押し付けられてしまい、リュウたちは成す術も無かった。
『なんだか大変なことになっちゃったなあ』
というのが一行の胸中であった。
冷静になって考えれば当然、この流れは当然なのだ。
数百年以上世界の命運を賭けて戦う二者の、相容れぬ死闘。竜と神、どちらかが滅び去るまで続く争い。
そして今、遂にドラゴンは敗北を喫し滅亡しつつあった。生き残った人々の心中が穏やかであろうはずもない。
「あのさあ、ティーポ」
「何だよリュウ」
「やっぱり神様に会うのやめようか」
リュウはそんなことを言う。ストーリー的にはそこまで執着する理由は彼には無いのだ。
ただ旅の意味とか、自分の生の意味とか、とかくそんなものを求める内に、漂流していったというか。
「オレもその方がいいと思うけど、逃がしてくれるかな」
「一応あの機械が直った以上、ここまでみんなが行き来できるようになったから、悲観的になることはないと思うわ」
相部屋で雑魚寝していたモモが呟く。
トランスポートの修復は、再び人類が外へ出る足掛かりを得たことを意味し、この限界集落が滅亡する日も遠のいた。
「いきなり余所者が来ても困るから、しばらくは妖精さんやマニーロたちに様子見を頼もうぜ」
まるで腕利きのケースワーカーの如き視点でレイが言う。
世界中の何処にでもいるその種族なら、馴染まないということもないだろう。
問題を起こさないとは限らないが。
「砂漠を越えるのも現実的じゃないし」
「だよねえ」
この時はまだ、ギリギリの所で当事者にならずに済んだのだが。
翌日。
「ボノに会ってくだされ。この集落の最古参です」
「はあ……」
そして。
「教えて下されご老人!」
「えーい老人老人言うな!同い年のくせに!」
「頭に来た。もうわしピチピチしたおなごとしか口きかないもんね!」
→モモ。
「いやじゃいやじゃ!もっとピチピチしたおなごじゃないといやじゃ!」
「ひっどーい!失礼しちゃうわー!」
「はっはっはっはっはっはっはっは!」
「笑い過ぎだよ兄ちゃん!」
→ニーナ。
「わしにチューしてくれ」
「え!?ど、どうしよう、リュウ」
『どうしてボクに聞くの?』
「そっそうよね」
と、だいたい本編と同じことが起きた。
「さて、これで思い残すもなくなったし、リュウよ。ティーポを連れて来い。何をするかもう察しはついとるじゃろう?」
――そしてボノからそう言われて、メンバーをレイとティーポに変えて戻って来た。
「なんかさあ、昔もこういうことあったよな。ほら、ズブロ火山で」
三人はかつて気の触れた老人に襲われたことがあった。今にして思えば、彼の言葉はこの時に結び付いていた。
「うんボクもそう思った」
「あの爺さん、ここの連中の仲間だったんだな」
「何をごちゃごちゃ言っとるんじゃ」
ボノに言われて向き直ると、彼はレイを指差して下がるように示す。
「すまんがこの二人だけで頼む。ドラゴンのみの慣習みたいなもんでの」
「ああ、分かった」
そしてリュウとティーポが残る。
「これからすることは簡単じゃ。ワシはズルして本気を出すが、お前たちはドラゴンの力無しでワシを倒す。それができればワシのドラゴンの力をお前たちに授けよう」
「何かと思えば、要は修行か」
「そういうことなら」
「ふぁふぁふぁ、他の連中みたいなことは言わん。ただワシはこのために長い時間を待った。もういい加減やめたいと思ってたんじゃ。このチャンスは絶対に逃さん」
はっきり言うご老人に二人は苦笑いを浮かべる。自分たちは関係ないのに謎の罪悪感が込み上げてくる。
「よっしゃ、じゃあとっととぶっ倒して、隠居させてやろうぜ、リュウ」
「行きます!」
「覚悟せい小童ども!」
――そして戦うこと暫し。
「まいった!ワシの負けじゃ!」
「指輪がなかったら危なかったな」
「共同体で増やしといてよかった」
この時代からドラゴンはフェアリーに弱い。
「まさか戦ってる最中に装備を変更されるとは」
「臨機応変ってことさ」
「かかっ違いないわい。では約束通り」
リュウとティーポはアンフィニのジーンを受け取った。
「まさかドラゴンの御子が二人も来るとは想定しとらんかったが、これはあくまでお主たちの力を引き出すきっかけに過ぎんから、個数が足りないとかはないぞい」
「いや別に聞いてないけど」
「取り合いにならないのは良かったけど」
ボノは若人たちを眺めると、満足そうにうなずく。まるで全ての時間を使い切ったかのように。
「おい、爺さん!」
『え!?』
少しずつ、その姿が薄くなっていく。
「元々、その力に活かされていたようなものじゃ。わしもイイ歳じゃったから、こうなるのは分かっておった」
「おいジジイ、こんなことされたって迷惑だぞ!」
「そうだ、ボクたちの力を返せば!」
しかし二人が動くよりも早く、ボノの体は霧散してしまった。
『わしは満足しておる。これでよい。リュウ、そしてティーポ。お前たちは古いしがらみに囚われず、己が心のまま、自由に生きるがよい。ふぁふぁふぁ……』
最後の言葉も消えると、老人の気配は完全に消えてしまった。
「ズブロ火山の時といい年寄りってのは、人の話を聞かないもんだな」
レイは二人を迎え入れると、率先して外へ向かう。リュウたちも後に続く。
「そんなこと言われたって困るぜ、ったく」
「どうしようかなあ、本当に」
外に出ると集落の人たちは、何が起きたかを察しているようで、何も言わなかった。
「ボノは女神との対決を託したんでしょう!」
この人以外は。
本編でいいえを選ぶと信じられんっていう人。きっちり恨みを抱えている黄色い服のお爺さんである。
「決めた」
「リュウ?」
「この話を終わりにしたい。だから、やっぱり神様に会うだけ会ってみよう」
どこからか現れ、絡み付く他人の過去。
唐突な因縁と犠牲。
リュウは苛立っていた。
「そっか。そうだな」
「まったく、愉快だね、どうも」
自分たちの周りで起きたドラゴンと神の対立。
その煩わしい問題に終止符を打つべく、リュウたちは砂漠越えへと挑むのであった。