砂漠越え。
砂ブタを連れて水を大量に用意し、十日ばかり歩く命知らずの行軍。
時に進路を誤り、時に水を飲み切り、ひたすらに耐えて進むという辛い道のり。
「こんなの変よー!絶対迷ってるわー!」
モモは泣きが入り。
「神は何故に、これほどの苦難を我らに与えるのか……」
ガーランドは音を上げ。
「もう すなは あきた」
レイも気が滅入り。
「ねえ、どうしてまた砂漠に戻ってるの?」
ニーナも疑義を呈した。
「とりあえず砂漠の地図は完成した。お宝も拾ったしこれで完璧だぜ」
ティーポは狂気の産物としか思えない物を完成させた。目の焦点が合ってない。
「よし、先に進もう!」
この一ヶ月ほど、砂漠を歩き続けたことで、リュウたちは遂にオアシスへと到達。
コンテナヤードで転送装置も発見し、いよいよ神がいるはずの『古の都』へと突入した。
「ここに、神が」
そこは荒れ果てた文明都市の亡骸。
最早住民はおらず、敵も出ない。奥へ行けば遥か天上へと向かうリフトが有った。
『ステーション・ミリア行きのリフト、発進します。手すりにお掴まりください』
「ミリアって、確か神様の名前よね」
「要は『マクニール村』みたいなもんだろ」
「あんまりいい感じはしないな」
生きるか死ぬかの旅を乗り越えた一同は、既に気力を取り戻し、何事も無かったかのように会話をしていた。
「で、ここからは敵が出ると」
「油断するなよ、リュウ!」
「うん!」
神がいるかどうかは知らないが、奥へと突き進むリュウたち。
今までで一番強い雑魚的。
面倒臭い床のギミック。
アイテムドロップに粘ることもあった。
「グミオウの剣は諦めよう」
「そうだな!」
地下空間が自然に侵食され、或いは意図的に再現された部屋を越える。
無数のコンテナと個室の連なりで、どこかで見た奴らと全く同じ姿のモンスターたちとも戦った。
「どうやら、オレたちのいた世界の奴らは、元々はここで作られたっぽいぜ」
「ミクバやヌエもいたよ、兄ちゃん」
スタリオンとは遭遇してないので知らない。
「でもドラゴンはいなかったわよね」
「ワ―タイガーもな」
「その二つは作られたものじゃないのかも」
などと口々に話ながら、遂に空中ステーション『ミリア』の最深部へと到達。
今や戦闘で彼らを止めることはできない。
『女神ミリアは、人々の幸福のために、世界を守っているのです』
途中でいきなり入るナレーション。女神の役割、ドラゴンの脅威。
社会科見学で歴史の授業でもしているかのような口調。
「この世界はマジで一回、ドラゴンに滅ぼされかけたってのかよ」
「何だか女神もドラゴンには勝ててないっぽいんだけど」
レイとモモが半信半疑で、ナレーションの内容を呟く。
「そういや、ドラグニールの壁画のことで、長老も似たようなこと言ってたな、リュウ」
「仲間と共に邪悪を打倒した……あれ?」
周囲を警戒しながら進む内に、彼等は最後の部屋に出た。
その中心部では、背中に羽根を浮かべた薄着の美女が、これ見よがしに浮かんでいる。
「アレは」
「アレか」
「アレよね」
「アレだわ」
「アレだろ」
「アレこそが」
「アレじゃよ」
「そこ、アレアレ言わないのですよ」
『!』
口を利かれたことでリュウたちは驚き沈黙する。それでも歩みを止めず、女神ミリアの前へと進む。
「あなたが、女神ミリア……」
「その通りです。ガーディアン・ガーランド。それにリュウ、ティーポ、レイ、ニーナ、モモ」
ミリアは全員の名前を言い、アルカイックスマイルを浮かべた。
人によってはピエロのメイク並みに拒否感の出るやつである。
「私たちのこと、知ってるんですか?」
「ええ、あなた方が遠路遥々ここまで来た理由も」
「なら話が早い。なあ女神様、オレたちや他のドラゴンのことなんだけど、放っといてくれない?」
ずいっと一歩前に出てティーポが言う。
ハンサムになっても根は怖いもの知らずのままである。
「ダメです」
「そうか、ありがとうって、え、ダメ?」
「ダメです」
優しい笑みのまま、しかし断固たる意志で女神はNOと言った。
「そらまた、どうしてなんだよ」
「そっそうよ!せめて理由を教えて!」
「ではこちらをご覧ください」
ミリアが片手を上げると空中に映像が出現する。
それは古の時代から続く、ドラゴンの物語。
「昔々あるところに女の子の神様がいました。神様は力が強く、みんなの願いをなんでもかなえてあげていました」
「何か始まったわ」
「一応最後まで聞いて見よう」
みんなその場に座って映像を眺め、女神の話に耳を傾けた。
「しかし、人々は散々願いを叶えて貰いましたが、その内神様の力は危険だと言って彼女を封じ込めました。神様はがっかりしました」
まるで絵に描いたような少女が映っていた。恐らくはアレが女神の幼年期なのだろう。
「次に封印が解けたとき、ドラゴンたちが戦争をしていました。勝った方のドラゴンは、負けた方のドラゴンが呼び出した神様を邪悪と呼び、いきなり襲い掛かりました。神様は一生懸命戦いましたが力及ばず倒されました。ドラゴンと人間許すまじ」
穏やかな声にも静かな怒気が滲んでいる。相手側の都合を語られて行くと、背中が段々と落ちつかなくなって来る。
「ですが一度生まれたものは、そう簡単には消えません。彼女は千年くらいの時間をかけて復活しました。この時のために自分のジーンを撒いておきましたが、途中で後継者も倒されていました。神様は一人でした」
「はえ~さっすが神様」
「しぶといなあ」
敵対するのかしないのか、スタンスで言えば敵対しているはずなのだが、当事者意識の無さが一行を悠長に構えさせる。
「神様も今度こそはと頑張りました。されどドラゴンたちは強く文明の力では勝てませんでした。それどころか人類も、神様を崇めながら争い合い、世界は両者の力であっという間に滅亡寸前まで荒廃しました。神様はもう呆れて溜息しか出ませんでした」
「あの砂漠とかがそうなのね」
強いモンスターや魚たちくらいしか生きられない、過酷な世界だけが残された。
「こうなってしまった以上、神様も生き残った人類を守るために、手を尽くすしかありませんでした」
映像は荒れ果てた世界に変わり、残された緑が次々枯れて行くシーンに変わり、やがて暗転して消えた。
「それがドラゴンの抹殺」
「ドラゴンはあまりにも危険な生き物。絶滅させるか隔離するしかないのです。私は別に間違ったことはしていないのです」
RPGでよく言われることだが『作品内で最も強力な怪物は主人公説』を地で行くのが、ドラゴンという種族だった。
「でもリュウは悪いドラゴンじゃないわ!」
「良い悪いではなく、できるかできないかが争点なのです。ニーナ」
少女の抗弁を女神が否定する。
ガノトトスだって悪気は無くとも漁村を破壊してしまう。要はそう言う話なのだ。
「世界のためにドラゴンは隔離、封印。それが私の出した結論です。私でさえ今の人類の生存圏を守るのが精一杯で、それも年々縮小しているのです」
女神の言葉の端々からは諦観が漂っていた。
一切の希望が感じられない。
「私もあなたたちに危害を加えたくありません。だからリュウ、そしてティーポ、あなたたちはここで一生暮らしてください。それで話は済むのです」
「嫌です」
「断る」
二人はきっぱりと断った。
世界の話をされた所で、それは彼らが自分自身でいることや、生きて行くこととは関係がない。
「あなたたちが本気になれば、大切な人たちが傷付くかもしれないのですよ」
「ボクの仲間たちは、そんなに弱くない」
「あんたには悪いけど、オレたちは旅を続けるよ」
「そうですか、残念です」
みんなが武器を構えると、だいたいここから本編と同じことが起きて、ペコロスが賢樹に覚醒したりした。
そして。
「流石にドラゴンが二体相手では、厳しいですね」
女神は敗れた。
そして。
「もう一回勝負してください」
「え!?」
コンティニューを頼んで来た。
「三回勝負でお願いします!」
「え!?」
回数まで増やした。
「私が勝ったら二人はここで暮らしてください!」
「そんなこと言われても」
「ハンデもください!」
なりふり構わないわがまま!
女神は世界を背負っているのだ!そのためなら恥や外聞などどうでもいいのである!
「じゃあ、モモと一対一なら」
「ありがとう我が子よ!」
勝手に子ども認定して、女神は自分を全回復すると、時の砂も使ってないのに勝負をやり直した。
しかし。
「モモの勝ち!」
「やったー」
「なんでそんなに強いんですか!」
モモ LV99 HP446 MP 385
攻撃 411 防御372
賢さ 312 素早さ80
武器 アトミックボム
防具 ぶしんの小手
ぎんのティアラ
ミストアーマー
ひょうがのゆびわ
雷のゆびわ
竜の神に師事
ドーピング炎
プロテイン等全使用
「なあ、三回目、どうする?」
「神よ。こんなことを言うのは心苦しいが、諦めては如何です」
ガーランドは沈痛な面持ちでミリアを諫めた。
必死さが伝わって来るだけに痛ましい。
「私とて神の端くれ。たとえ人とドラゴンがその愚かさから滅亡に瀕したとしても、世界を守る責任があるのです……!」
「頼んだ覚えはないが、神様に見放されましたってのはまあ、寝覚めが悪くなるな」
戦えば負けず、負けても女神は諦めず、言い分も双方聞き入れられない。
何か落としどころはないのか。誰もがそう思ったとき。
リュウが呟いた。
「次で最後にしよう。勝負の内容はこっちで決める」
「あう、わ、わかりました」
ミリアの表情は悲壮だった。暴力では最早勝ち目はない。それでも逃げ出すことはできない。
救いの道はないのかもしれない。
だからこそ。
「ミリア、ボクと、ううん」
リュウは意を決した。
「オレと、釣りで最後の勝負だ!」