ブレスオブファイア3二次創作 釣竜伝説   作:泉 とも

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もう一度、明日へ

「私の負け、いえ、リュウの勝ちですね」

 

 コンビナートの波止場で、ミリアはリュウたちに向けてそう言った。

 

 疲れ果てた様子だったが、まるで憑き物が落ちたかのように安らいでいた。

 

「それじゃあ、オレたちのことは」

 

「ええ。今後はあなた方とドラゴンに干渉をするのはやめます。それでよろしいですね?」

 

 これまでのしつこさは何処へやら。しおらしい態度の女神に、ティーポやガーランドは少しだけ不安になった。

 

「言っておきますが私は今でもドラゴンたちを葬って来たことを、間違っていたとは思いません」

 

 ミリアは改心した訳では無かった。街を滅ぼせる猛獣を街中にブラブラさせてはいけない。それ自体は当然のことなのだ。

 

 彼女が味わった苦汁もまた本物である。

 

「ですが私は神として、生物たちを守る以外に果たすべき務めがあることを、ニーナに思い出させてもらいました」

 

「えっ私?」

「あなたの言葉は、私の胸を打ちました」

 

 慈愛に満ちた願いは、やつれた女神の心を何よりも元気付けたのだが、知らぬは本人ばかり。

 

「生き物たちを信じ、応援すること。その役目と気持ちを、私は長い間忘れていました。ありがとう、ニーナ」

 

「やれやれ、お姫さんにはかなわねえな」

「オイシイとこ持って行きやがって」

 

 レイとティーポが茶化す。

 

 日は既に傾いており、もう少しすれば夕暮れが訪れるはずだが、辺りは賑やかになる一方だった。

 

「この辺の人は全員集まる勢いね」

「無理もない。あんなモノが釣れたら、な」

 

 リュウが釣り上げた勇魚は波止場を完全に踏み潰しており、重さや全長を図るべく、大勢の人が行き交っていた。

 

「これで終わりかあ」

 

 そのリュウが呟く。全身はボロボロで、顔も疲労の色が濃かったが、いつもの優しい笑みを浮かべている。

 

「そういえばなんでここまで来たんだっけ?」

「確かおっさんが神に会ってみようぜって」

 

 旅の目的を忘れたモモに、レイが事の発端を思い出しながら言う。

 

「それが思ったより大事になったのよね」

 

 ニーナが指を顎に当て、小首を傾げる。

 

 既に慣例と化した家出が、今では大海原を越え、砂漠を踏破し、古代都市の探索の末、神との邂逅を果たし、戦って勝利するまでに至った。

 

 下手の偉人伝よりよっぽど盛った内容である。

 

「ドラグニールの爺さんたちから、ドラゴンとミリアの戦いのことを聞いて、それで」

 

「神と会うついでに、ドラゴンの抹殺や干渉を止めるよう、リュウが決めた」

 

 ティーポの言葉をガーランドが結ぶ。言葉のチョイスが下手だが事実その通りだった。

 

「ついでって、まあついでか」

「っぷ」

「ははは」

 

 誰からともなく笑い声が広がって行く。

 

 観光のていで始まった遠征が、いつしか壮大な冒険となり、ここに結末を見たのだ。

 

「これからどうするのですか?」

「神様にも会ったし、一旦帰ろう」

 

「そうね、さすがに塔が恋しいわー」

「お母様たちにも連絡しないとだし」

 

 転送装置が復活したので、リュウたちのいる大陸は目と鼻の先である。

 

 何もノンストップで世界に挑むことはないのだ。

 

「懐かしの我が家に帰るとするか」

「うむ……」

「どうしたガーランド」

 

 神と会いドラゴン虐殺の真意を知り、その行為も終わった。

 

 石像になることはないが、ガーランドの精神は燃え尽きかけていると言っても過言ではない。

 

「ガーディアン・ガーランド」

「はっ何でしょうか、神よ」

 

「あなたは竜族をその手にかけたことに、罪悪感があるのですね」

 

「…………」

 

 ガーランドは無言で俯いた。ミリアの教えに嘘があったとはいえ、100%の邪悪という訳でもない

 

 自分たちがこれまで手を汚して来たことが、本当に無意味かと言えばそうでも無さそうなのが、余計に彼を悩ませた。

 

「あなたたちにそうさせたのは私ですが、言ったところであなたの心は納まらないでしょう。だから」

 

 時代はポストアポカリプス。善悪や正義の戦いではない。課せられたるは生存という名の命題。

 

「あなたはあなたの心のままに、生きてください。最早ドラゴンを殺すことはなく、罪を償いたければそうすれば良し。自由に生きるも、ここで眠りにつくも、あなた次第です」

 

 ミリアの言葉にガーランドは顔を上げる。

 

 与えられた使命にはもう従えない。

 

 かと言ってドラゴンたちに許されるとも思えず、自由も持て余す。

 

 だが、まだ仲間たちとは。

 

「ガイストにも、そう伝えてください。それからのことは、また考えればいいでしょう」

 

「はっ……ありがたく」

「あんたほんとに悩むの好きだよな」

「難しく考えないと死ぬのか?」

「正直めんどくさいよね」

 

 盗賊トリオはナイーヴなおっさんに対して白い目を向けた。真面目が過ぎると人生に前向きになれない良い見本である。

 

「これからっていえば神様はどうするの?」

「私は今まで通りステーションにいますが」

「えー!ダメよそんなの!」

 

 ニーナは大げさに声を荒げた。身振り手振りを交えたいつものオーバーリアクションだ。

 

「あんな所に一人でいたらきっとまた辛くなるわ!折角一緒にいるんだからみんなと旅をしたり、誰かと一緒に過ごすべきよ、ね!リュウ!?」

 

「えっああ、うん。そうだね」

 

 ニーナの勢いに同意してやり過ごすリュウ。

 

「ほら、相手がいないなら私たちでもいいし」

 

 このバグった距離感の詰め方が如何にもニーナである。最初に押せる所まで押すのが彼女のセオリーだった。

 

「ありがとうニーナ。私も久しぶりに、人を訪ねてみましょう。心当たりがあるので」

 

 ミリアの言葉に他の全員が、内心で胸を撫で下ろした。

 

 生まれてこの方アクセルしか踏んだことのないヒロインほど恐ろしいものはない。

 

「えー、ちょっと残念ね」

「いいじゃねえか、アテが有るんだから」

 

「そろそろオレたちも帰ろうぜ、リュウ」

「うん。そうだね」

 

 リュウたち一行は旅支度を整える。赤々と燃える夕日が、彼らの眩しく照らし出す。

 

「ミリア」

「リュウ、これでお別れですね」

 

「そうだね。でも、また会おう。いつか」

「……!……ええ」

 

 そして、後ろで『街』とか『未来の行方』とか『夢で終わらせない』とか『BRANDNEW WAY』辺りが流れ、たまに駆け出したりしながら、リュウたちは帰路に着いた。

 

 

 ――それからしばらくして。

 

 

 釣りポイント3

 

 小魚をねらう 川のギャングの なわばり(だいたい原文ママ)。

 

 生息魚 ペスラ レインボー ビッグマウス

 

「なにようぜんぜん釣れないわよう!」

「つりざおびゅんびゅんし過ぎなのようばか!」

「ばかっていうほうがばかようばか!」

『……………………』

 

 妖精さんたちがギャングなき後の釣り場で悪戦苦闘していた。

 

 共同体の食糧調達には釣りも含まれている。

 たぶん。

 

「オレの拳を試すか!」

「カモーン!」

 

 でも上手く行かずに揉めたりする。

 

 

 釣りポイント2

 

 魚にまぎれて どこかで見かけた 姿が見える(だいたい原文ママ)。

 

 生息魚  ピラニー ペスラ ブラウン マニーロ

 

「思えばここから、ワテとボンたちの物語が始まったねんな……」

 

 マニーロはどこにでもいるし、どこにでも行く。彼はしみじみと昔を思い出していた。

 

 釣り場のど真ん中に突っ立って。

 

「魚のおじちゃん釣りの邪魔だよ」

「本当に色々なことがあってなあ」

 

「邪魔だっつってんだろ石投げるぞ」

「黙って聞かんかいジャリボウズ!」

 

「上等じゃねえかッ!お前をぶっ倒してこのオシャレな道着を着せて、チョイボンゲ音頭を踊らせてやらぁ!」

 

「やれるもんならやってみぃや、ほないきまっせー!」

「伝説を見せてやるぜ!」

 

 今日もまた世界のあちこちで、色んな人たちが釣りをしている。

 

 それは何もリュウたちに限った話ではない。

 

 

 釣りポイント1

 

 おだやかなに ながれる川に 小魚が たわむれている(だいたい原文ママ)。

 

 生息魚 グミフィッシュ ピラニー レインボー

 

「ヒット!」

 

 早朝のシーダの森。そこから近い釣り場に一人の男がいた。リュウである。

 

 彼の魚籠には既に、この辺で釣れる魚が沢山入っており、腕前の確かさを示している。

 

「お、いたいた。お前って本当に釣りのことしか頭にないな」

 

「ティーポ。久しぶり」

 

 次にやって来たのは紫色の長髪をした青年。

 ティーポだった。

 

「アレから結構経って、みんなもそれぞれの生活ってものができたけど、お前だけは本当に変わらないよな」

 

 ティーポはリュウを探している間に、旅暮らしが体に染みついていた。

 

 さながら回遊魚のように、動いていないと落ち着かない。

 

「レイ兄ちゃんもすっかりとらになっちゃって」

 

 ウィンディアでは喋るトラとしてすっかり人気になったレイは、今日も子どもなどに纏わり付かれている。

 

「ニーナは、別にいいか」

「うん。この前も来たし」

 

 ニーナは定期的に城を脱走し会いに来るので、近況報告は必要なかった。

 

「甲斐甲斐しいねえ。オレの分まで、他の連中の近況報告してくれないかな」

 

「モモはプラントの修理に忙しいって」

 

「ああ、あの機械で海の向こうと行き来できるようになって、壊れてない機械が手に入るようになったからな」

 

 女神とのやり取りとは関係なしに、自分たちが踏破した道とその成果を、モモはフル活用していた。

 

 コンビナートの機械を直接入手し、ステーションに眠る知識から、技術の復興と学習を進めていた。

 

「あいつ少しは風呂に入るようになったんだぜ。砂漠での生活がよっぽど堪えたらしい」

 

「臭う絨毯みたいになってたもんね」

 

 辛い道のりも決して無意味ではなかったのだ。

 

「ガーランドはガイストとペコロスの三人で、旅に出たみたいだぜ。ま、思う所があるんだろう」

 

「そうだろうね。ペコロスはなんで?」

 

「賢樹に目覚めてから、ミリアに狙われるかもしれないって」

 

 なおミリアは大元である賢樹の場所までは知らないので、ペコロスを賢樹と思い込んでいる。要は囮となってガーランドたちに付いて行ったのだ。

 

「とりあえず、みんな元気ってことだよ。それと最後に、ほらこれ」

 

「手紙?誰から」

 

「ミリアからだよ。いきなり出来て、渡してくれってさ」

 

 リュウは釣りを止め、女神からの手紙を広げた。

 

『私のリュウへ。いつもお元気ですね。あなたのことはいつも見守っています』

 

 事実なのだが知らない人が見たら怖がるようなことが書かれている。

 

『先日のお詫びがまだでしたので、まずはその連絡をと思い、ティーポにこの手紙を渡しました。新しい地方へのポートドライブの設定と、釣り場の簡単な内容を記しておきます。詳しいことは会って話したいので、お時間が良ければまた仲間たちを誘い、ズブロ火山の壁画の前までお越しください。ミリアより』

 

「新しい釣り場!」

「お前ってほんと単純だなあ」

「行こう、ティーポ!」

 

 わずかな単語に釣られ、リュウは勢い良く立ち上がった。

 

 ティーポはそれを見てやれやれと肩を竦める。

 

「実はいつでも出発できるように、準備だけはしておいたんだ」

 

 森の小屋へと向かって歩き出す二人。

 

 最初の山家事から何年も経ったが、彼らの仲は変わらない。

 

「じゃあまた前みたいに、みんなに声をかけるか。たぶんだけどさ、途中でガーランドたちとも会うんじゃないか?」

 

 なんやかんやで合流するのがお約束というものである。

 

「今度はどんな魚がいて、どんな釣り場なんだろう」

「さすがにもう勇魚みたいなのはゴメンだけどな」

 

 バタバタと慌ただしく動きながらも、即座に二人組のパーティが出来上がる。

 

 これから以前のように、或いは前よりも大人数になっていくだろう。

 

「よーし、釣りに行くぞ!」

 

 そしてリュウたちはまた、新たな冒険へと旅立って行くのであった。

 

 Fin。

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