ブレスオブファイア3二次創作 釣竜伝説   作:泉 とも

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Join us家出娘 後編

「えいっやあったあ!」

「そんなビュンビュン振ったらダメだって」

 

 リュウに手取り足取り教えられながら、ニーナは釣りに励んだ。

 

 自分から全力でぶつかっていくタイプの彼女にとって、自然に構え、相手に合わせることなど不可能だった。

 

「でもでも、急いで釣らないと遅くなっちゃうし、魚も逃げちゃうわ!」

 

「魚が逃げちゃうから、静かにしてるんだってばあ~」

 

 意気込みや情熱を見事に空焚きしては、ニーナは魚をどんどん逃がして行く。

 

 あっというまに釣り場の魚たちは、どこかへ行ってしまった。まだ一時間も経っていないのに、凄まじい影響力である。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ。やっぱり私って、釣りに向いてないのかも……」

 

「うん……」

 

 ニーナはまたしょげ返ってしまった。この子のテンションに中間はないのだろうか。

 

 リュウは訝しんだ。

 

「でもめげないわ!大物を釣って、お城のみんなをあっと言わせるんだから!」

 

 そして立ち直ると、また釣竿を構えた。ルアー投げのゲージの如く、最小と最大を行き来する。

 

 そういう生き物なんだなと、リュウは思うことにした。

 

「とりゃー!」

 

 勢いよく投げた疑似餌は、大きな魚影の手前に落ちた。リュウも奮発してヘビーキャロを使っているので、大半の魚は見かけ次第食いつくはずだった。

 

「……?」

 

 しかし妙だった。ニーナがうるさくて逃げた魚たちと違い、その魚影は動じることなく、ルアーを突かず離れず見ていた。

 

「マズイ!」

「えっちょ、ちょっとリュウ!?」

 

 リュウは咄嗟にニーナから釣竿を取り上げようとした。ルアーの出来だけで釣れるような、生易しい相手ではない。

 

 釣り人として直感が、最大限の警報を鳴らした。

 

「待ってリュウ、もう少し、もう少ししたら交代するから!」

 

 しかし、その時のニーナの慌てた動きが、ルアーに伝わってしまう。それは不意の事態に慌てふためく、不安と窮地の振動。

 

 奇跡的なリズムが、魚影に獲物だと判断させる後押しになってしまった。

 

「そんなに強く引っ張らないで~って、え?きゃー!」

「ニーナ!」

 

 あまりにも容易く引っ張られるニーナを、リュウは全力で抱き留めた。

 

 子供とは言え二人もいればその重さは60kgほど。それが余りにも簡単に引き摺られて行く。

 

「なになになになになになになになに!?」

 

 メッセージウインドウがガタガタ震えるほどの困惑でニーナは尋ねた。

 

「魚が掛かった!大きい、しっかり踏ん張って!」

「やったー!じゃない、分かったわ、リュウ!」

 

 ニーナは状況を把握すると全身に力を込めた。

 

 しかし二人は徐々に水面へと引きずり込まれて行く。

 

(なんてパワーだ!重さが、ボクたちじゃ重さが足りない!)

 

 釣竿の糸が切れないよう、釣竿そのものが折れないよう、リュウは全身の力を振り絞りながら、全神経を集中させた。

 

 体中に汗が吹き出し、筋肉は痙攣を起こしている。

 

(どうする……?釣竿を手放すべきか、このままじゃニーナが保たない!)

 

 一生懸命に釣竿を握り、糸を引こうとする少女だったが、ほとんど身動きが取れないでいた。

 

 身の安全を考えれば選択の余地は無い。だが一瞬の判断の遅れを見逃すほど、魚影は甘くなかった。

 

「えっ?」

「しまった!」

 

 唐突に消える抵抗。急接近。からの急反発で、二人の体が宙に浮く。

 

 万事休す。最早これまでと二人が目を瞑りかけた、正にその時。

 

『ニーナ!』

 

 なんと一組の歳の行った男女が駆け寄り、二人を抱き留めたではないか。

 

「えっ!?お父様!それにお母様も!」

「待っていろニーナ!今助けてやるからな!」

「せーので引っ張って!みんなで引っ張るんだ!」

「えっええ、分かりました……!」

 

 何とか再び地に足が付いた二人は、ニーナの両親と力を合わせて四人で釣竿を引いた。

 

「オーエス!オーエス!」

『オーエス!オーエス!』

 

 リュウの掛け声に一同は、一本の釣竿を引いた。徐々に近づく魚影。

 

 でかい。浅瀬に近付くにつれ、怪物めいた大きさが明らかになる。

 

「今だ!」

『わああああああああ!!』

 

 ウィンディア王家が一丸となって、一匹の大魚を釣り上げた。

 

 ヒュージマウス。サイズ『100』

 

「まあ!!」

「むう、なんという大きさ!」

 

「やったー!お父様、お母さま、リュウ、みんなお手柄よ!」

 

 全長1メートルもあるヌシを釣り、ニーナは大興奮だった。

 

「でもどうして二人が来てくれたの?私、家出したのに」

 

 ニーナの父ことウィンディア王は、その場に屈み娘の肩に手を置いた。

 

「手紙を読ませてもらった。本来なら、公務を差し置いて遊びに行くなど許されんことだ。でもなニーナ、どうか父を許して欲しい」

 

「私もこうしてついて来た以上、お説教をする立場ではありません。今回は」

 

 ニーナの手紙にはこう書かれていた。

 

 ――お父様たちへ。私は先に行って待っています。ご都合の良い日にお二人で来てください。それまでずっと、私は待っています。ニーナ。

 

 怒りと不安で震えた文字を見て、二人は慌ててここへ来た。

 

 子どもの家出と侮って仕事を優先しかけたが、城内は家来たちの視線で、針の筵と化したことが決め手となった。

 

「お父様、お母様……うえ~~~~ん!」

 

 そんな事情は知らず、ニーナは感極まって両親の胸へ飛び込んだ。

 

 リュウはその光景を温かく見守ると、その辺の泥濘を掘って、ヒュージマウスを保存し、静かに去って行った。

 

「あっそうだリュウ、この二人が私のかぞ……アレ?リュウ……?」

 

 

 ――そして。

 

 

「ていうことがあったんだ」

「ほーん、大冒険だったな、リュウ」

 

 キャンプの火を囲みながら、三人は今日あったことを話し合った。

 

「何だい、オレたちだって大物を釣ったんだぜ!なっ兄ちゃん!」

 

「大物、大物ねえ」

 

 ティーポは大きめのバケツに、タコっぽい物を入れて持って来た。

 

 火星ダコ サイズ『90』

 

 それはヒュージマウスに負けず劣らずの大きなタコ、のような生物だった。

 

「兄ちゃんと二人掛かりで釣ったんだ。オレたちもリュウに負けてないってことさ!」

 

「すっごーい!」

「へへへへへへへへへ!」

 

 とても食えそうにない釣果を誇りながら、ティーポは串焼きにしたビッグマウスを齧る。

 

 よほど気に入ったのか、明らかに一人だけ沢山食べていた。

 

「やっぱ都会まで来ると魚も上手いし、手近な森も立派だしで、この辺をアジトにしてもいいかもね、兄ちゃん!」

 

「まあな。そうだリュウ、明日オレたちはウィンディアに入って、また幾らか荷物を買う。そんでまあ、もしかしたら『仕事』をするかもしれない」

 

 レイが仕事の部分を強調したことで、リュウは泥棒をするんだなと理解した。

 

「いよいよオレたちも都会デビューだね兄ちゃん!」

 

「まだ下見だよ。それに、道はこの先の海まである。そっちも見てみたいだろ?」

 

「海って何?」

 

 レイは出来ることならあまり泥棒はしたくなかったので、定住より旅を続ける方を選びたかった。

 

「何だよリュウ、海を知らないのか?海は川の終わりにある超でっかい水場のことさ。実はオレも見たことないけど」

 

「魚もいっぱいいる?」

 

「ああ、中には漁師って言って、海に出て魚を沢山採って来る仕事もあるくらいだ。釣り場も多いし、見たことも無い魚だって」

 

 そこまで聞いてリュウの目に強く輝いた。

 

「行きたい!」

「おいリュウ、お前まさか漁師になりたいのか?」

「釣りがいっぱいしたい!」

 

 屈託のない笑みと答えにティーポとレイは顔を見合わせると、肩を竦めて苦笑する。

 

「まっ、出来そうなら両方やってみようぜ」

「オレもリュウが釣った魚は食べたいしな」

「うん!」

 

 そんなこんなで三人は、テントで川の字になって寝ようとした。

 

 が。

 

「ごめんくだっさーーーーいっ!!」

 

「うわっ何だ!?」

「敵か!ケーサツか!?」

「あの声は……」

 

 リュウはテントを飛び出すと、そこには寝間着姿で枕を持ち、息を切らせたニーナがいた。

 

「ニーナ!」

「リュウ!もう、探したんだから!」

 

 少女は彼を認めると、猛然と走って抱き付いた。

 

「おい何だリュウ、知り合いか?」

「もしかしてさっき言ってた女の子か?」

 

「あっリュウのご家族の方ね、初めまして。私ニーナって言います!それでですね」

 

 パジャマ姿でカーテシーを決めると、ニーナは大きな声で、こう言った。

 

「今晩ここに、泊めてくーださいっ!」

『……はあっ!?』

 

 ニーナが仲間に加わった。

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