「見た所保護者の方がいないみたいだけど、君たちだけでここに来たの?」
現れたのはウサ耳色白の、髪がもっさりして眼鏡を掛けており目の下にクマがある白いビキニの下側が気持ちもっこりしている少女だった。
モモである。ついでに土偶みたいなロボのハニーもいる。
「この辺は大したモンスターも出ないけど、子供だけじゃ危ないわよ」
「へん、保護者ならちゃんといるぜ、な?兄ちゃん?」
ティーポは威勢よく返事をすると、少し離れた砂浜を指差した。
そこにはキッズに首まで埋められたワ―タイガーの姿が。
「おーい、他の人にあんまり迷惑かけるなよー」
首だけを向けて呼ばわる恐るべき人虎!
波の音、磯の香り、白い空、ニーナによって盛られた砂の枕のおかげで、うとうとしていたのである。
「ああ、ちゃんといるのね、よかったー。所であなたたち、どこから来たの?この辺りには村なんてないけど」
ニーナたちに目線を合わせるため、前屈みになるモモ。しかしそんなセクシーショットに気を取られる田舎少年ではない。
「心配してくれてありがとうございます。私たちプラントから来たんです」
キッズ代表としてニーナが先頭に立ち、後ろでティーポとリュウがふざけ合う。
目を話しているスキに何処かへ行ってしまいそう。
「あらー、じゃあ職員のお子さんかしら。私はモモ。お父さんが昔そこで働いていたの」
「そうなんですか。じゃあモモさんもお父さんと?」
「ううん、お父さんは私が小さい頃に亡くなったわ。私はたまに、こうして泳ぎに来るの」
「あっそうなんですか、すいません」
「いいのよー、もう何年も前のことだし」
ふとしたきっかけで女子二人男子二人に分かれたことで、完全にパーティが分断されてしまった。
男2女2は一見バランスが良さそうだが、現実的には空中分解の特急券である。
「この浜辺って静かでしょ。ほとんど貸し切りみたいなものだから」
嘘である。何故モモがここにいるのか。
それはプラントからごみ処理場の変異体の様子を、見て来て欲しいという依頼のお手紙が届いたからだった。
「今日はかわいいお客さんも来てたし、運が良かったかな」
こんな優しいお姉さんぶっているが、リュウたちを見かける直前まで、その辺の物陰でムダ毛の処理をしていた彼女である。
長いこと自宅の塔に引きこもっていたために、すっかり臭くなっていたのだ。
お世話ロボットのハニーが鼻を抑えるジェスチャーで非難を始めると、久しぶりに人と会うことを考え、モモは渋々海に体を洗いに来た。
――おーいリュウ、レイ兄ちゃんの砂の形変えようぜー。
――いーよ、何にする?
――お前らせめてオレに許可を取れよ……。
だがそれは自身の体臭が海よりキツイことが前提である。何時の頃からか、ハニーの目は白い。
「でもここからプラントまで帰るのって大変じゃない?何処かに泊まるアテはあるの?」
「いえ、ここで遊んだら今夜は近くでキャンプをしようかなって」
「あら、だったらうちに来ない?ここまでの途中で塔が有ったと思うんだけど、あそこが私の家なの」
「えっいいんですか!?」
ニーナはぱっと見、校舎めいた建物を思い出した。
中はお城ほどではないにしろ、野宿よりよっぽどマシだろうと思えたのだ。
実際はその辺のフィールドよりも強いモンスターと、防犯用の仕掛けにより、およそ生活空間としては破綻しているダンジョンなのだが。
「あなたたちさえ良ければ、だけど。あ、あと食料はそんなにないから、そこは自前でお願いね」
「あっそうですよね。分かりました。ちょっと聞いてきます」
ニーナは既に戻って遊んでいたリュウたちの元へ駆け寄ると、今の会話をレイに伝えた。
彼に盛られた砂はババデルの形になっていた。
「っていうことなんです」
「おー、そりゃありがたい。さすがにまた走って帰るのはしんどいからな」
「じゃあオレたちで今日の晩飯を釣ればいいんだな!リュウ!」
「そうだね、がんばろ!」
そして前話の冒頭へと戻る。
「よーしリュウ、オレと勝負だ!」
「望む所!」
『二人共がんばれー!』
二人掛かりで竿を振れば、瞬く間に重なるヒットの山。
釣った魚の講釈をモモに受けながら、初めて釣る魚に目を輝かせる二人。
「ぐわーっまたタコ!」
「ティーポはタコをよく釣るなあ」
大物も合わせてゲット。魚籠も道具袋もパンパンとなった。
「これだけあれば明日の朝ごはんも大丈夫かしら」
「そろそろ日も暮れて来たし、それじゃ帰りましょうか」
女子二人に言われ、釣り勝負はそこで終了となった。釣果はリュウの方が多かったが、サイズで言えばティーポが勝った。
「ふふん、今回はオレの勝ちだなってえい!こら!離れろ!オレの勝ちだから!」
釣ったタコ『80』に絡まれながらも、自らの勝利を誇示するティーポ。
剥がすのをみんなに手伝ってもらった時は、痛くてちょっと泣いた。
「タコって食べたことある?下ごしらえが大変だけど、とっても美味しいのよ」
「え!?タコって食えんの!?」
「じゃあこの前の奴も食べられたんだね」
「いや、アレは食べない方がいいと思うぞ、リュウ」
そんなこんなで和気あいあい。モモを加えて一同は、今晩の宿の塔へと引き上げることにした。
「それにしても今日は沢山遊んだわね。来てよかったわ、ね?」
「うん、釣りもできたし」
「…………」
「あら、どうしたのティーポ?」
「何だろう、何か忘れてるような」
ティーポは自分の身形を確認し、次に荷物を検める。
全員既に着替えた後である。
「水着はこっちに入れてあるわ」
「魚も荷物も持ったよ」
「なら気のせいか」
少年少女は談笑しながら道を行く。
ある人物のことをすっかり忘れて。
「あっクソ!砂が水を吸って、思ったより重い!自力で出られない!うお、潮が満ちて来た、リュウ!ティーポ!お姫さん!ちょ、あ、誰かー!」
彼らがレイのことを思い出したのは、もう少し後のことだった。