「えー、では今日はお城に帰る前に、プラントのごみ処理場へ行く。いいな?」
『はーい』
レイの確認にリュウたちは仲良く返事をした。
三人の頭には漫画みたいなタンコブができている。昨日浜辺に忘れていたレイを助けた所、ガチ目のトーンで怒られたのだ。当然である。
「手伝わせちゃって悪いわね、でもありがとう」
「いやいいんだ、行こう」
モモ以外は全員目の下にクマができていた。
それもそのはずで、塔の中はろくに生活スペースが無く、その辺を歩いているとモンスターや機械と遭遇し、戦闘になった。
足音や鳴き声もあって到底寝られる環境ではない。モモとハニーだけならいざ知らず、五人ともなると安全な部屋が見つからない。
「しかし野宿の方がマシな暮らしがあるとは思わなかったぜ」
「家の中にモンスターを放し飼いにしてる奴って結構いるんだな、リュウ」
「うちのお墓もそうよ」
寝られなかったキッズはそのまま夜通し探検していた。元気が過ぎる。
「ごめんねー、こんなことならお父さんの書斎を、片付けておくべきだったかしら」
「いや、まあ、そこまではいいさ」
レイは僅かな緊張感を持って答えた。リュウたちの探検に付き合う際、彼は鍵開けのスキルを駆使して、モモの父の書斎に入った。
書斎は書斎でもえっちな本が死ぬほど詰め込まれた書斎に。
「そっとしておいてやろう、な」
「レイ……ありがとう」
処分をすることもできず、突然の死を迎えたモモの父。ふとしたきっかけで知った複雑な家庭の事情。
本を熟読したかったが、レイはそっとしておくことにした。ノイズが多すぎた。
「あっ馬車が来たよ」
「アレに乗って行くのね」
街道には迎えの馬車がやって来た。プラントが手配した迎えである。
女子一人にお便り一つ出して、徒歩で行き来しろは頼む方からしても無責任である。
そのための足が用意されたのだ。
「でもさー、ゴミ処理場って何捨てるんだ?」
「食べ残しとか皮とか種なら、土に埋めるよね」
「プラントのゴミ処理場は、育ちすぎて食べられなくなった強化作物や、実験で出た失敗作を、火山の溶岩に捨てる場所なのよ」
食べられない物を捨てるという一言で、リュウたちは納得しかけて、疑問符を浮かべた。
「やっぱり埋めたらいいんじゃない?」
「だよなー」
「うーん、失敗作の中には土に毒を流してしまう物や、育ちすぎてモンスターになってしまった作物もあるの」
モンスターになった作物。リュウたちは強化作物が美味しくなかった理由に思い当たり、顔が青くなる。
『モンスターだから不味かったのでは?』
喉元まで出かかった言葉を、誰もが飲み込む。
「それがまた復活しないように、溶岩に捨てるの」
「モモさんものしりー」
「へへへ……」
などと話していると馬車はプラントに到着、一同は外側を回ってごみ処理場へ向かった。
「暑っ、臭っ!」
「はえー、でっけえ洞窟だなあ」
掘り抜かれた人口の空間は、溶岩の熱気が充満しており非常に暑かった。
「プラントの不調の原因があるかもしれないから、一通り見て回りましょ」
「えっ、心当たりとか場所とか分からないの?」
「あくまでも可能性の問題だからね」
ごみ処理場内部は、こんな環境でもしぶとく生きている奴らなせいか、モンスターも一クセあった。
しかし今は五人パーティである。ロマサガや世界樹並みと来れば、苦戦はしない。
彼らは敵を蹴散らしながら奥へと進む。
「うへえ、昨日はあんなに涼しかったのに。早い所ボスでも出ないかなって……」
暑さから逃れたい一心で、その辺の横穴に入ったティーポは、そこでとある物を見つけた。
「でっけえー。たまねぎか?これ?」
「ティーポ、何かあったかって、でけえたまねぎだな」
「わー、すっごいたまねぎ!」
集まるとみんなしてたまねぎを連呼する。その声を聞いてたまねぎが目を覚ます。
「誰ですか、あなたたちは?」
「おいたまねぎが喋ったぞ!」
「すげえ、たまねぎのおばけだ!」
「これは立派な変異体ね……!」
興味津々と言った様子で、暑さも忘れてたまねぎの変異体を囲んでわちゃわちゃし始める。
「あの!何かご用でしょうか?」
「あ、そうだったわー。いけないいけない。実はね」
モモはかいつまんで事情を説明した。
「そうですか。私は変異体。そしてあなたたちは、私を排除しに来た」
「いえまだそうと決まった訳では」
しかし変異体は聞く耳を持たず、戦闘モードに移行する。
「私は私の身を守るために、あなたたちを排除します!」
「愉快だね。話を聞かない奴に限って、話が早いと来てる」
とはいえそこは多勢に無勢。直ぐに勝負は着いた。
「私の負けです。私のような危険な存在は処分してください」
「だから早えーって!」
胴体のみとなった変異体は、打って変わって生を諦めてしまった。
「私はまた人を襲うかもしれない!私の意思は固いですよ!」
「クソッ、手も足も出ないくせに意地でも死のうとしやがる!」
まるで元気なくせに死ぬ死ぬうるさい年寄りである。
「うーん、どうしたらいいかな」
「簡単だよ。勝ったのはオレたちなんだから、オレたちが好きにしていいんだ」
弱肉強食、それは生殺与奪へと通じる一つの法である。
「ええ、それって乱暴じゃない?」
「でもオレこいつ殺すのヤダぞ」
「うん、ボクも」
「私も」
ティーポが取るに足らないNOを言うと、周囲もそれに同意する。時には相手を尊重しないことが、相手のためになることもあるいい見本である。
「まあ行き違いはあったけど、そんなに死に急ぐこともないだろ」
「一先ず何処かに植え替えましょう。賢樹の森辺りに運んで、後は様子を見ればいいのよー」
「みなさん……」
リュウたちは変異体を外へと運び出すと有言実行、件の場所へと運び込み、地面に半分くらいまで埋める。
「これでよしっと」
「ありがとう、みなさん」
「ちゃんとしたたまねぎになって、人生やり直すんだぞ!」
「頑張ってみます」
ティーポは腕を組んで偉そうに言う。深く考えて喋ってはいない。
「でもびっくりしたわ。たまねぎがモンスターになっちゃうなんて」
「またこんなことがあったら、その時はどうしようかしらー」
第二第三の変異体が生まれないとは限らない。というか変異体の中でも特別な個体が生まれる恐れがある、というのが今回発覚した問題だが。
「その時はシーダの森にでも埋めるさ」
「火事で焼けたし今は何もないもんね」
「誰も文句言わないだろ」
などと話ながら一行はプラントにて、所長に一部を誤魔化して事後報告し、再び峠の茶屋訪れた。
「今回は助かっちゃったわー。ありがとー」
「まっ、お互い様だろ」
「それにティーポもありがとー」
「オレ?」
カレーの量をどのくらいにするか、頭を悩ませていたティーポが振り向く。
リュウは辛さで、ニーナは漬物の選択で悩んでいる。
「私だけだったら、きっと流されて処分しちゃったと思うの。あそこで君が嫌だって言ってくれて、助かっちゃった」
「そっか。なんか、照れるな。へへ」
ティーポは鼻を擦ると、少しだけ赤くなってはにかんだ。
「これ食ったらウィンディアに戻るぞ。そろそろ手形もできてるはずだしな」
「そういえばそんな話だったなあ」
寄り道がメインとなったニーナの社会科見学が、色々有ったが無事に終わりを迎えようとしていた。