1話 白紙の物語
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・・・・…………目が覚めた時、見知れた知らない天井だった。
窓からは近未来チックな建物が並んでいる。
「…………」
ただ、"いつもの光景"と認識してしまっている。
ベットからゆっくり起き上がる。
顔を洗い、エプロンを着て朝食を作る。
今日の朝食は焼いた食パンに目玉焼き、ベーコンにキャベツの葉。
朝食を食べ終わった後は歯を磨いて私服へと着替える。
「……ふぃぃ〜っ…」
背を伸ばして一日が始まる。
「さて……どうしようか……」
俺は、前世の記憶…といった大層なものでもなく、至って普通。何かで死んだかもよくわかっていない。そんな前世の記憶。
今の年齢は19。父と母、妹は6年前に事故で亡くなった。
人が飛び出してきて避けようとした結果らしい。
父は人の笑顔が好きな売れないマジシャン…そういえば母が魔法使いってあり得ないことを話していた。父はドジをして売れなかったため専業主婦兼ドライバーとなっていた。主な収入は母が担っていたが……先ほど言った通り僕以外を残してあの世に行ってしまった。
それからというもの僕はたらい回しにされ続け、最終的に孤児院で育てられることとなった。
父から教えてもらったマジックを見せて孤児院の子供達を驚かせてたっけ……。
(…………暇だな………)
僕は本当に断片的な記憶しか前世の記憶しかない。唯一言えることはこの世界よりも遥かに文明が劣っている世界の記憶ということだ。
「…………」
父から教えてもらったことはいくつかある。
一つは希望を持ち続けること。
例え小さくても、誰かにとっては大事な希望。誰かの支えにきっとなる。そう言っていた。
父の口癖は「君の希望だ。」だった。
今思い出しても恥ずかしい。そして最後の言葉は「最後の希望だ」って言ってさ……。
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(………歩くか。)
俺は振り払うように玄関へと向かう。
この家は元々、父の友人の1人が経営しているマンション……かつたらい回しにされた挙句引き取ってくれた唯一の存在。
その場所を出るとビル群が並んでいる。
空は少し雲がかかっているが青空のほうが多い。
横断歩道へと向かう。
タッタッタッタッタッ
「っ、!危ない!!」
横から走っていた子供の腕を引っ張る。
目の前を車が通り過ぎる。引っ張っていなかったら間違いなく引かれていただろう。
「こら!走ったら危ないって言ってたでしょ!!!」
母親らしき人がこちら…いや、子供を叱っている。
「ごめんなさい…」
「ごめんなさいですまないでしょ!!!」
「あ、…あのありがとうございます。この子を救っていただいて…」
「あ、いえ。お子さんが怪我無いようで何よりです……。」
俺は屈んで子供の目線に合わせる。
「次はちゃんと横断歩道は注意して渡ろうな。それと、走っても危ないからちゃーんとお母さんの言うことも聞くんだぞ?」
「うん……」
その子の頭を少し撫でるとすぐに信号が青になった。
「おっ。」
「青になったから信号を渡ろうか。ちゃんと手を上げて渡るんだぞ?」
「なんでおててあげるの?」
と首を傾げてきた。
「ん〜…」
ふと父と母、妹が病室で横たわっている姿が映る。
「・・・・・・」
「車って、意外と見る範囲が狭いんだよ。だから気づかない時があるからこうやって…」
と左手を上げる。
「ここにいるんだよーってそんなふうにアピールするんだ。」
「へぇ〜〜……お兄ちゃんものしりだね!」
「物知りってわけじゃないさ。」
「あっ……でもしんごう、赤になっちゃった…」
「え?」
振り返ると信号機が赤になっている。
「あ……すみません……うちの子が……」
「大丈夫、大丈夫です。」
「また渡りれば良いんです。」
3分くらい続くような数秒が過ぎ去った後、青となってその家族は手を上げて渡っていった。もちろん、俺も。
その後、あの家族は通りを真っ直ぐ歩いていく。
俺は少し見届けた後違う道を歩いた。
「あっ!ハル兄ちゃんだー!!」
俺の名前を呼ぶ声がする。俺の名前はハル。ハル・ソーマ。
行き着いた先は俺がいた孤児院だ。
「わーーーいっ!!」
「おっっ…!」
「おい〜、いきなり飛びつくな、、よっ!」
「きゃーー!!」
俺は飛びついてきた男の子を持ち上げてぐるぐると回す。
「よいしょっ……」
ぐるぐる回すおしおきをして、男の子を芝生に下ろす。
この孤児院は都会の中に人工芝が敷かれている小さいながらもまるで山の中にあるような自然が造られている。他にも、教会としての側面もある。ちなみに俺は興味ないから触れてこなかった。
「兄ちゃん兄ちゃん!ゲーム!ゲームしよ!!」
「はいはい。でも俺にはやらなくちゃいけないことがあるからその後でな?」
「はーい…」
「約束だ。」
と小指を出す。
「っ〜!」✨
「ゆーびきーりげんまんうそついたらハリセンボンのーます!指切った!!」
「針千本な?」
と少しその子にツッコミを入れて建物へと向かう。
「いやぁ、わざわざありがとうねぇ?」
「いえ。俺暇だったんで。」
今俺はこの孤児院を経営している人と一緒に孤児院の子供のための給食を運んでいる。
「よいしょっ……」
「ふぃぃ〜〜……」
「あっ、おじさん!そのダンボール俺が待つから…!」
「えぇ?いいのかい?」
「だっておじさんもう良い歳でしょ……」
「まだ私は60だよ!!ま、お前もすぐこんな歳になるさ。」
ははっ。と笑い飛ばす。
俺もそれを笑いながら重いダンボールを運ぶ。
「じゃ、俺はこれで。」
「ああ、そうだ。ハル君。はいこれ。」
と封筒を渡してきた。
一瞬でわかった。お金だ。でも今は必要ない。
「いえ、良いですって。そのお金は孤児院の子達に使ってください。」
「ははは!お前は相変わらず優しいねぇ?」
「ま、それくらいのことしたんだ。持っておきなさい。」
「兄ちゃん!兄ちゃん!!」
「ハルおにいちゃーん!」
「お?どうしたんだい?」
「おじちゃん!おれ!約束してたの!ハル兄ちゃんに!!」
「私!ハル兄ちゃんの手品!見たいの!!」
「「「みたいのーー!!」」」
「わかったわかった。待ってくれよ?」
「「「やったーー!」」」
「いつもすまないねぇ……」
「いや、俺もこの子たちの驚いてキラキラしてる顔、好きなんで。」
と準備するために孤児院の中へと入る。
「えーと……あっこれだこれ。」
俺が取り出したのは埃を被った"父が使っていた"手品に使う道具が入っている箱だ。
つまり…遺品だ。でも俺1人が持っててもここで誰かが使ってくれたりマジックに挑戦してくれるのほうが父は喜ぶだろう。
俺はその道具を持って子供たちがたむろしている場所へ向かう。
(もう夕方か……)
俺はいろいろ片付けをして帰路へとついている。
「……………」
(なんで俺の父さんと母さんは付き合ったんだろ……)
俺の聞いた話では父がドジをした時に付き合い始めたらしい。母曰く、本当に魔法使いなのよ。って言ってた。子供のころはさっきマジックを見せた孤児院の子供達のように目をキラキラさせたが今思うと正気か?と思う。
でも、一つ確かなものはある。それは父が「笑顔を作り出す」"売れない"マジシャンだったことだ。
父がしてきた手品は俺も歓声を上げたし、そしてなにより次は何をするんだろうとワクワクしていた。
でも…それは子供の頃の話。歳を重ねるごとに無関心になっていた。
逆に母は父の新しい
ああ……あの頃に戻ってもっと話を聞きたかったな……
それくらい…俺の記憶は白紙が多数を占めている。
高校を卒業してもそれは埋まらない。
スマホを取り出そうとポケットに手を突っ込むと紙が折れる音がした。
封筒だ。
(あの人……いつのまに入れてたんだよ…………)
と呆れながらもネットニュースを見る。
宇宙エレベーターの記事とかそんなのもあるが目ぼしいものは無かったので閉じる。
「ふぃぃ〜…………」
と大きなため息をついた。
「…………」
(明日も、あの子たちのように笑顔でいられますように……)
そんな平素な願いを思いながら歩き出す。
ああ……俺も、父に似て人の笑顔が好きなんだな……
そんなことを思っていた。
続くと思っていた。
空からおおくの紅い目が降りてくるまでは