もし、それがとある世界の鬼ィちゃんにそっくりな男だったら。
これは、そんなもしもの世界……
バージル鬼ィちゃんはかっこいいなぁ……
DMMORPGユグドラシルにおいてプレイヤー、NPC合わせて1500人もの大軍勢を全滅させ退けるという伝説を生み出した全十階層からなるナザリック地下大墳墓の第九階層――――。
巨大な両開きの扉の中には黒曜石で出来た巨大な円卓に41人分の席が据え付けられている。
一昔前まではギルドメンバーたちの会話で賑わいを見せていたこの部屋も今は見る影もなく、埋まっている席は立った二つ。
「いやー、ホントお久ーです。モモンガさん」
一つはコールタールの様に黒くドロドロしたスライム系の最強種と言っても過言ではない『漆黒の粘体/エルダー・ブラック・ウーズ』、ハンドルネームはヘロヘロ。
「まさか来てもらえるなんて思いませんでした、二年ぶりくらいですかね? ヘロヘロさん」
もう一つは肉や皮膚が一切なく眼光が赤黒く光が灯っているアンデットであるリッチの最上位者『死の支配者/オーバーロード』、ハンドルネームはモモンガ。
異種族のみで結成されたギルド《アインズ・ウール・ゴウン》の長でもある。
近況や仕事の愚痴も尽きた時、ヘロヘロはとあるプレイヤーについて聞いてきた。
「そういえば、バージルさんの姿が見えませんが今日はログインしていないんですか?」
「ああ……。実は――」
楽しい時間は刹那に終わりを告げ、別れの時が来た。
「大変なのに来ていただいてありがとうございます」
「本当なら最後まで御付き会いしたいんですけど……眠すぎて」
「仕方ありませんよ、落ちていただいて結構ですよ」
「モモンガさんはどうするんですか?」
「私は残ります。他に誰が来るか分かりませんし、バージルさんの帰りを待たなければいけないので……」
「そうですか。……今まで本当にありがとうございました。貴方がギルド長だったからこそこのゲームをこれだけ楽しめました――また、どこかで会いましょう」
モモンガはヘロヘロの言葉に返事をして、姿が消えるその瞬間まで見つめていた。
「今日が最終日ですし、良かったら最後まで残っていかれません……か」
誰もいない部屋にモモンガの本当に口にしたかった言葉が木霊する。
「またどこかで会いましょう、か。――ふざけるな!」
怒りのままに円卓へと振り下ろした拳が重苦しい雰囲気に似合わないノーダメージを告げる軽快な音が部屋に響く。
「荒れているな、マスター」
巨大な両扉を開き現れたのはモモンガと共にナザリック地下大墳墓を守り続けた自称モモンガの剣ことバージルだった。
「バ、バージルさん! 戻られたんですね、シフの様子はどうでした?」
「所詮はNPCだ、何も変わらん」
「ははは、相変わらずですね。残り時間も少ないですし、玉座の間に移動しませんか?」
「構わん、どうせ戻るつもりは無いのだろう?
バージルの言うそれとは《アインズ・ウール・ゴウン》のギルド武器で七匹の蛇が絡み合った形をしており、名を【スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン】、その力は世界級に匹敵する。
「ですが……」
「誰にも文句は言わせん、第一この世界を捨てた奴らに文句を言う資格はない。それでも戯言を口にするなら斬るまでだ」
「……本当に、変わらないなぁバージルさんは」
「ふんッ、当然だ」
この世界の終わりが迫っていても昔と何一つ変わらないバージルに、変わらず共に居てくれるバージルに何故か泣きそうになるモモンガであった。
部屋を出て玉座の間がある第十階層に繋がる階段を下るとそこには実質十階層のフロアボスであるセバス・チャンと戦闘メイド、プレアデスたちが待機していた。
「付き従え」
最後くらい仕事をさせようとセバスとプレアデスたちを付き従え、玉座の間の扉の前に到着する。
右側には女神、左側には悪魔が彫られている重厚感あふれる巨大な両扉に触れると自動で開き始める。
玉座の右脇にはサキュバスという種族とはおおよそ縁遠い純白を連想させる傾国の美女アルベドが一人。
セバスとプレアデスを待機、ひれ伏せさせると、モモンガは玉座に座り、バージルは左脇に立つ。
「まだ少し時間がありますし、アルベドの設定でも見てみますか?」
「お前の好きにしろ」
「はい、じゃあまずアルベドから……長っ!」
「アルベドの作成者はタブラだ」
「ああ、って何ですか、これ?」
アルベドの長すぎる設定をスクロールしていくと現れた最後の一文がモモンガを呆れさせた。
「ちなみにビッチである、って」
「もう一度言おう、アルベドの作成者は――」
「タブラさんでしたね。とはいっても幾らなんでもこれは流石に……」
最後くらいは許してくれるだろう、とモモンガはアルベドの設定を変更する。
空いた空白に何か入れるべきか悩み、キーボードを打つ。
――――モモンガを愛している。
新たに設定に加わった一文を見てどうしようもない羞恥心に襲われるが、モモンガは忘れていた。
「ほう、お前が何をしようと構わんが……虚しくないか?」
バージルという男の存在を。
「バ、バージルさんッ! い、嫌これは違うんですよ!」
モモンガは慌てて設定画面を消し、バージルに弁解する。
「そんな事より、そろそろ時間だぞ」
――――23:58:48
「……本当に、ありがとうございました。バージルさんだけは最後まで残ってくれて、とても嬉しかったです」
――――23:59:16
「言ったはずだ、俺はお前の剣。お前が望む限り共にいる。何処であろうとな……」
――――23:59:52
「……さよならですね」
――――23:59:56
「……ああ」
――――00:00:00
――――00:00:01
――――00:00:02
――――00:00:03
「……なに?」
「全く、締まらんな」
零時を過ぎても強制ログアウトせず、ログアウトもGMコールもシステムコマンドも使用できず、ナザリックに居続ける状況を不審に思っていると本来あり得ないはずのモモンガとバージル以外の声が聞こえてきた。
「どうかなさいましたか、モモンガ様、バージル様」
「……モモンガ、どうやらここはユグドラシル内ではないようだ」
「どういう事ですか?」
「これを見ろ」
そうしてバージルは自身の左腰に刺した閻魔刀を鞘から少し抜き、自身の指を切った。そこからは赤い鮮血が出たが、瞬く間に塞がり指には傷一つできていなかった。
「なッ!」
「ユグドラシルでは指を切ったところでダメージを負うだけで血は出ない、痛みもない。しかし、今は出血し痛みもあった」
つまりはこの世界はユグドラシルではなく、ましてやゲームの世界ですらない現実世界ということだ。
「……セバス」
「はっ」
「大墳墓を出て、周辺地理を確認。プレアデスたちは九階層で侵入者を警戒せよ」
「承知いたしました」
「畏まりました」
モモンガはとりあえず情報を集める為にセバスにナザリック周辺の情報収集を命じた。
「アルベド、お前にも銘じたいことがある」
モモンガはさらに各階層守護者を第六階層の闘技場に集めるようアルベドに命令を出し、玉座の間に残ったのはモモンガとバージルだけとなった。
「バージルさん、とりあえずもう警戒しなくていいですよ」
「今は従っているがどうなるか分からん。気は抜けん」
「そうですね、ですからこれから彼らの忠誠心を確かめる為に守護者たちを第六階層に集めたんです」
「それはお前に任せる。俺は何があってもいい様に警戒しておこう」
「お願いします」
――メイン――
名前 バージル
Vergil」
種族 異形種(魔人)
分類 プレイヤー
異名 ナザリックの剣鬼
役職 至高の42人の一人
アインズ(モモンガ)の護衛
住居 ナザリック地下大墳墓の第九階層にある自室
属性 中立~悪 カルマ値:-100
種族レベル
混血児(悪魔) 15.Lv
魔人 15.Lv
職業レベル
ワールドチャンピオン 5.Lv
剣士 15.Lv
剣聖 15.Lv
モンク 10.Lv
ナイキ・マスター 10.Lv
ガイキ・マスター 15.Lv
――サブ――
誕生日 ?
身長 183
年齢 ?
性別 男
趣味 動物と戯れる・鍛錬
作成NPC 灰色の大狼シフ
備考 鈍感
――概要――
バージルは現実世界では『ギルバ・アンジェロ』という名で富裕層に向けた護身術を指導する指導者であった。が、人気DMMORPG『ユグドラシル』で作成したアバター「魔人」として同じギルドのギルドマスターであるモモンガとNPC達を含むギルドの拠点ごと異世界へ転移した。
ゲーム時代、異形種狩りに遭遇した時にモモンガに助けられたことからモモンガに対し尊敬の念を抱いており、1人また一人とユグドラシルを去る仲間たちに憤りを覚えながら、仲間たちに別れを告げられながらそれでもギルドを守り続けているモモンガの姿にさらに尊敬の念を強め、その忠誠心はアルベドらNPC達にも劣らない。
しかし、モモンガは仲間としてのバージルを求めている為、モモンガに対しその感情を表に出すことはほとんどない。
転移後は、NPC達の主として振舞うモモンガをサポートしながらいつかは在りし日の様に二人で異世界を冒険したいと考えている。
ちなみに、世界征服についてはデミウルゴスの勘違いと理解しつつも自身もこの美しい異世界をモモンガに捧げたいと考えている事と、これ以上の心労をモモンガにかける事を嫌い話していない。
モモンガの正妻をめぐる争いは中立だが、モモンガがアルベドの設定を自信を愛していると変更した事、ある一件を境に若干アルベド派となるがすべてはモモンガが決める事と考えている。
「モモンガ様~」(モモンガ抱き枕を抱きしめるアルベド)
「…………」(バージルの好感度が10上がった)
――外見――
『デビルメイクライ』のバージル、以上。
イケメン、モテる。
――性格――
基本的には冷静沈着――――モモンガが関わらなければ。モモンガに敵対する者は味方であろうと迷わず切り捨てる。モモンガと同様無差別な殺戮はしないが、モモンガの邪魔になると判断すれば幾千の命を斬り殺そうと一切躊躇しないモモンガ崇拝者。
力こそが全てという価値観の持ち主で、モモンガ以外の全てをその者の力の有無によって判断する。しかし、現実世界で指導者という立場であった為、弱者と判断した相手であっても好意的に接することは可能。
NPC達に対しても上記の判断基準を崩すことはないが、バージルなりの優しさを見せる事もあり、特に、階層守護者たちには同じモモンガ崇拝者として親近感のような物を抱いている。
ちなみに、動物に関してはモモンガに対する者とは別種の愛情を抱いており、簡単に言えば動物好きである。作成したNPCは人を乗せられる程の大きさの狼の姿をしており、その造形には愛ゆえのこだわりを随所に感じられる。
普段シフが住んでいる第六階層に頻繁にバージルが出入りしていると聞きつけたぶくぶく茶釜の趣向からアウラはバージルに好意を寄せている設定を持っている。
ちなみに、その設定をバージルは知らされておらず、自身がアウラに好意を寄せられている事には全く、微塵も、毛ほども気づいてはいない。
「ねえ、バージル? 恋なんて縁遠い様な活発な見た目美少年の美少女が普段不愛想な男が動物にだけ見せる優しい視線に胸打たれて密かな想いを寄せるって最高のシチュエーションじゃない?」(早口)
「……何の話だ?」
――強さ――
バージルの戦闘スタイルは簡単に言ってしまえば殴れる剣士。
格闘と剣技を主軸にして戦う近接戦闘を得意としているが、ガイキ・マスターのスキルにより青い剣状の気を射出し遠距離攻撃も可能とする。
ギルドメンバー『たっちみー』と同じく運営公式武術トーナメント優勝し、その報奨として近接武器の閻魔刀を選んだ。説明欄には「人と魔を分かつ」とも「闇を切り裂き食らい尽くす」とも書かれており、刀自身が意思を持っていることから選ばれし者以外には扱えない。
その強さはギルドメンバーの中でも一二を争い、同じくワールドチャンピオンである『たっちみー』とギルド最強の表を二分する程の実力者。
ワールドエネミーを『バージル』『たっちみー』の二人だけで攻略したのはギルド内のみならずユグドラシル内
全体での伝説としてユグドラシル終了まで語り継がれていた。
NPC最強である『ルべド』相手に勝つことが出来る唯一のギルドメンバー。
所有ワールドアイテム:悪魔の引き金(デビル・トリガー)
上述のワールドエネミーを攻略して入手。使用条件に種族制限があったため使用可能なバージルに所有する事になった。効果はバージル曰く悪魔の力を引き出すものらしいが……。
「バージルさん、ぜひ使ってみてくださいよ!」
「面倒だ……断る」
「……」(´;ω;`)
「――――
「わぁ、見た目が変わるんですね……かっこいい!」