叢雲、天より根差す光   作:聖徳王の笏

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二十八話 萃如せし天命

 

 

 

 

 暴れん坊が二人、企み癖のある者が二人、そしてどちらも兼ね備えた僕という、なんとも珍妙な組み合わせで旅をしていた訳だが、今は近江の淡海の海まで来ていた。

 ちょっと離れた所で待っていろと同行者に伝えて一人禊を行っていると、何か変な感覚が身体を襲う。

 

 

 

「へっ……へっ、ぶえっくしゅん! 

 ……あ〜っ、なんで禊中にくしゃみなんてするかな。色々あったし身体がだいぶ弱ってんのかなぁ……」

 

 

 

 禊中にくしゃみだなんてとても恥ずかしくて人に言えたことじゃないのだけれど、この時ばかりは何かが変だった。空を見上げてみれば、僕の穢れを纏った霊魂がヒラヒラと舞っていたのだ。

 

 

 

「むっ!? なんだあの霊魂! マズイ、捕まえなくては!」

 

 

 

 褌一丁で急いで飛び立ち、捕まえようとしたものの、その霊魂はまるで僕をおちょくるかのように不遜な態度で自在に飛び回り、そして気ままに大和の方へと飛び去って行ってしまったのだ。

 

 

 この時は諦めて服を取りに戻ってしまったけれど、それは誤った判断だった。このままだと大事な時に判断を誤るのは中つ国勢の特権と言われそうである。

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだよ東神さま、元気がないね。禊中になんかあったのか?」

 

 

 

「ああいや、別に……ただ水が冷たくて落ち込んでるだけ」

 

 

 

「……全然冷たくなかったじゃん。朝斗彦、身体は大丈夫なの?」

 

 

 

 僕の事を深く知る二人には一瞬で何かあったと察してきたので困ったものだ。ちなみに、もう二人については如何に魚を釣ったかで競い、負けた童子がイチャモンつけた結果取っ組み合いの喧嘩をしていた。

 

 

 

「と、とりあえずもう出立しよう。早く諏訪に戻らないと……」

 

 

 

「……無理しちゃだめだよ?」

 

 

 

「ありがとうてゐ。大丈夫だから急ごう」

 

 

 

 近くにあの大百足のヤツが住んでるらしいぞ! と鼻息を荒くする鬼二人の腕を引っ張って無理矢理道を進んでいると、美濃との国境に聳える伊吹山が見えてきた。

 

 

 

「おおっ! これは我らの大江山にも勝るとも劣らない、見事な光景だ!」

 

 

「ここに住むのも悪かないね!」

 

 

 

 山好きの鬼二人がふんすふんすと鼻を鳴らしているのを横目に、僕は龍とてゐとともに会話に興じていた。

 

 

 

「信州の生まれと言っていたな。鞍馬では何を?」

 

 

 

「鞍馬の棟梁は若くして聡明で文武両道の誉れ高きお方と称されていたのです。そのため大天狗である我が父の命令で彼女に師事させて頂くこととなり、実務などの補佐をさせて頂いていたのです。

 ……まぁ、実際は仕事嫌いの奇人であったけれども」

 

 

 

「へぇ……、鞍馬天狗主体の戦じゃないにもかかわらずついて行ったのは?」

 

 

 

「彼女の戦いっぷりを見たかったからです。天狗は天魔様のとりなしによって同族間の抗争が減っていた故、戦場での立ち振る舞いなどを学ぶ好機であると思い、付き従いました。

 結果的にあれが師にとって最後の戦になってしまわれるかもしれないのですが……」

 

 

 

「まぁもし何かが起きた場合、最前線で戦うのは無理だろうけど、後方で指揮するくらいなら行けるんじゃない? 

 そもそも、大将が前出て戦うって絶対必要ってわけじゃないしね……」

 

 

 

「あの方は前に出たがりなんです……。きっと筆の練習と共に武の鍛練もしているはず」

 

 

 

 武闘派すぎるよソレ……とてゐに言われたものの、龍は何も言い返せなかった。言われた事が事実である以上仕方ないのだ。

 

 

 それじゃあ彼女には無理させないよう後進が頑張らねばいけないねと僕が言うと、龍は無言で頷き返した。

 

 

 

 後に知った話だが、どうやらあの戦後に天魔は鬼と戦いたくない為に精強な兵士を擁する鞍馬へと移動したとのことだった。二百年後に都が平安京へと遷都されるということもあり、彼等は朝廷の権力者との暗黙の了解のもと、北部から攻めて来るかもしれない人ならざる侵略者への抑えとなったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「何っ? 近くで鬼が悪さしてるから助けて欲しい?」

 

 

 

 後に不破関が置かれる辺りにて、その場限りの神力を民草に分け与えることで自身の体を認識出来るようにして近隣の村を訪ねた際に村民のもの達から鬼退治を頼まれた。

 

 

 

「はい、ここ最近になってから急に何処かからやってきてはここらに住まう人々から食料や家畜、挙句に幼子などを持ち去ってしまうのです。

 

 

 見たところ、貴方様は大層なご武人だとお見受け致しました。そのため、僭越ながらお話をさせていただいた次第にございます」

 

 

 

「ふむ、そうか……。その話、受けさせてもらおう。外で待機している同行者にも伝えよう」

 

 

 

「ありがとう存じます! これでこの村も救われる!」

 

 

 

 

 

 

「という訳で、近くに住まう賊同然の鬼を退治する事になった。彼等はここ以外の寒村からも略奪を働く不届き者のようだ」

 

 

 

「朝斗彦、また安請け合いしたの?」

 

 

 

「……困ってる者は神として見捨てられない。相手が鬼だとしても」

 

 

 

 やれやれ、これだからダイコク様の系譜は……とてゐには言われたが、基本的にお人好しなのである。助けられる者には限りあるけれど、目の前で頼られたら断らないよね。

 

 

 

 

 

 

「……これって私らの勢力を拡げる好機じゃないか? 萃香」

 

 

 

「それもそうだなぁ。もしここいら一帯を抑えられたらデカイぞ」

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 その日の晩。

 鬼が好みそうな場所に目星をつけてウロウロしていると、辺りから充満した血の匂いがしてきた。どうも目標の位置は近いようだ。……しかし、大した気配がしないな。ここら一帯で暴れてるって言うもんだから最低でも大江の新たな大族長くらいの妖気の持ち主だとばかり思っていたが……。

 そんな噂をすればなんとやら、敵の首魁が現れたではないか。

 

 

 

「おうおう。このアタシの縄張りに無断で入ってくるたァ、どういう了見だ? コラ」

 

 

 

 確かに角を生やし、大胆不敵な態度ではあるが……何かが違う。

 

 

 

「……なんか、身体細くない? こんなのに襲われてたの?」

 

 

 

「とっ、朝斗彦殿! いくら鬼でも初対面の相手にそれは……」

 

 

 

「龍おまえ、いくら鬼ってなんだその言い草は! いてこますぞ!」

 

 

 

 

 

「……はぁ。いやだってさ、家畜とか子供攫っていくとか聞いてたからてっきりでっぷりと太った奴が出てくんのかなぁって」

 

 

 

「あ、あたしもそうだと思ってた」

 

 

 

「……というか貴女、どっかで会ったことある?」

 

 

 

「人違いに決まってんだろ。アタシはお前みたいなやつ知らないし、顔も見た事ない! 失せなッ! アタシのこの弓に射抜かれたくなければなッ!」

 

 

 

 そう言って彼女は自身の身体に斜め掛けしていた長弓を手に取り、こちらに対して威嚇行為をしてきた。見た所、所々傷があるとはいえ彼女の弓は中々の名品である。というか、コレって……。

 

 

 

「……その長弓……もしかして、天之麻迦古弓じゃ?」

 

 

 

 そう指摘すると、賊の頭は酷く狼狽した様子でどこでその名を! と叫び声を上げたため、どうやら僕の読みは当たったようだ。こんなひ弱そうなヤツが一体なんで我が義弟の弓を……。

 

 

 そう考えてまもなく、僕は思い出した。あの時且山の陣で見た光景を。

 そうか。アイツ、あの時の闇妖怪の襲撃騒ぎの間に逃げ出したのか! 

 

 

 

「お前は! あの時の天邪鬼か!」

 

 

 

「おっなんだ知り合いか?顔が広いね、東神さま」

 

 

 

「コイツは天邪鬼だ! 昔鬼に寄生する事で出雲軍に紛れていたんだ! お前の大好きな関門海峡での戦の際にヤマトに一人で甚大な被害を与えた張本人だぞ、萃香!」

 

 

 

「……出雲とはまた随分と懐かしい響きだな。お陰でアタシもアンタのことを思い出したさ。

 全く、高名な葦原朝斗彦命に覚えて貰えてて嬉しい限りだよ……おっと! 今は世間の間じゃ八坂刀売神か! ハハハッ! 

 

 

 ……おいお前ら! この舐めたカマ野郎をぶっ倒すぞ!」

 

 

 

 彼女はいつの間にか弓に番えていた鏑矢を弦を目いっぱい引いた後に放ち、ポーン…という不思議な音が辺りに鳴り響いた。その瞬間、茂みに隠れていた配下の妖怪たちがわっと飛び出て僕達へと襲いかかってきたのだ。

 

 

 舌の回る天邪鬼が出てきた時点で噂の鬼はある程度まとまった賊と化しているだろうと目星を立てていたが、やはりな。手口が昔と変わっていない。

 そう思いながら、向かってくる敵に対して剣を引き抜こうとしたその時、隣より龍が進み出てきてこう言った。

 

 

 

「朝斗彦殿、ここは任せてほしい。天狗が鬼にやられっぱなしではないという所を彼奴に見せてやらん」

 

 

 

 翼を広げて空へと飛び立つと、彼女は辺り一面に夥しい数の光線を撃ち放ち始め、僕は慌てて仲間達を呼び集めて結界を張って防御の姿勢をとった。

 

 

 

「アイツ、寝る前に星のうんちく言うだけの変な奴かと思ってたらあんなこと出来たのか! すごいじゃねぇか!」

 

 

 

「わざわざ親許を離れて学んでいたんだし、彼女自身の才覚もなかなかのものな筈だよ。しかし、見境なく撃つな……! 僕が思ってたより強いぞ!」

 

 

 

 視界が塞がれるほどに眩い攻撃がしばらく続いた後、そこに残っていたのは見るも無惨な姿に成り果てた一団の姿だった。遠巻きから様子を伺っていた敵の生き残りは腰を抜かし、荒事には慣れてるとはいえ流石の僕達もここまでやるのかと少し驚いてしまった。

 

 

 

 敵に背を向けて意気揚々と戻ってきた龍に対してワル鬼ふたりが思わず、

 

 

 

「やりすぎじゃね?」

 

 

「やりすぎだろ」

 

 

 

 と、鬼が言うセリフとは思えない言葉を吐いて出迎えていたため、戦いの中にも関わらず笑ってしまった。お前達鬼ってのはやりすぎても足りないが代名詞じゃないのかい? 

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

「あれ? ねぇ朝斗彦、件の天邪鬼はどこに行ったの?」

 

 

 

『えっ?』

 

 

 

 てゐが何気なく発した一言によって、僕達は現実に引き戻された。まるで首を落とされた死体のように敵が腰を抜かしたまま何もしてこないので、完全に油断していた。

 周りを見渡してもそれらしき死体は無いし、逃げたんじゃないか? と話していたその時、

 

 

 

「……オイ、お前当然のようにこっち居るけど何してんだ」

 

 

 

 童子の鋭いツッコミによって、皆の視線が同じ所へと向く。てっきり萃香がいるのかと思っていたが、僕の背後にいたのは天邪鬼だった。

 

 

 

「……バレた!?」

 

 

 

「バレるだろそりゃ。てかいつからいたんだ」

 

 

 

「……コイツが弾幕撃とうとして、それに対して葦原朝斗彦が結界張った時からだ」

 

 

 

 

「…ほぼ最初からじゃん」

 

 

「お前、なんで裏とってるのに何もしないのさ」

 

 

「自分だけ助かるなんて狡くないか?」

 

 

「味方見殺しにしたってこと?」

 

 

「大将の風上にも置けない不埒者だ」

 

 

 

 

 僕達からは好き放題言われたが、天邪鬼は気にしていなかった。だって天邪鬼だから。

 鬼と天邪鬼、似て非なるもの。例えるならば同じ丸いものでも月と鼈くらい違う。彼女のとった行動は天邪鬼としては正解だが、鬼を騙る者としては完全に間違った選択である。

 

 

 そんな月と鼈が少しばかし顔を見合わせた後、旅のガヤ要員でしかなかった童子は一つ行動を起こす。敵の鬼達に対して、あることを確認したのだ。

 それは、僕の事を信じているか否か。敵達は突然投げかけられた質問に困惑しつつも信じてると言い、萃香と童子はニヤリと笑いながらこう言った。

 

 

 

「おうおう! 聞いて驚くなよオマエら! ここにおわすお方は我らが東神さま、葦原朝斗彦命である!」

 

 

 

「お前達が神に楯突く咎人になりたくないのなら、我らに降伏しろ! 大人しく降伏するのなら痛い目には合わさないぞ!」

 

 

 

 すると、それを聴いた有象無象の鬼達は目の色を変えて立ち上がり、仲間を見殺しにした天邪鬼に対してジリジリと近寄り始めたのだ。おやおやこれはこれは……。

 

 

 

 

 

「お、おい……悪かったって……なぁ? 謝るからゆるしてくれよ、な? な?」

 

 

 

 

 

『……』

 

 

 

 

 

 四方八方から追い詰められていよいよ囲まれそうになったその時、天邪鬼は大きな叫び声をあげて脱兎の如く逃げ出した。童子に扇動された鬼たちは怒り心頭な様子でそれを追いかけてどこかへと行ってしまい、この場に残されたのは鬼ならざる者たちだけ。

 

 

 

「戻ってくるかもしれないし、ここで待つ?」

 

 

 

「……人ならまだしも、鬼の死体のそばには居たくない」

 

 

 

「同じく」

 

 

 

「よし、ちょっと離れるか」

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 各自星を見たり穴を掘ったりしていたところ、やがて萃香を先頭にして鬼たちの集団が現れた。萃香は片手に天之麻迦古弓を手にしており、僕が手を振るとソレを見せつけるように掲げ、それに続く鬼達も憑き物が取れたような顔をしていた。

 

 

 

「戻ってきたか。天邪鬼はどうした?」

 

 

 

「アイツなら**(華扇)が死なない程度にボコボコにしてその場に放置してきたよ」

 

 

 

「金棒だと普通に殺しそうだったから素手でやってきた。アイツ、今頃ナメクジみたいに地面の上を這ってるだろうよ」

 

 

 

「怖すぎるウサ」

 

 

 

「あとさ東神さま、この弓あげるよ。コレ、何か縁ある物なんでしょ?」

 

 

 

「わ、わかった。預かっておくよ。

 ……しかし、こんなに仲間が増えても正直困るよ。これじゃああの天邪鬼の代わりに君達が賊の頭になったようなものだし、僕も諏訪に帰れなくなるよ」

 

 

 

「いやいや、心配には及ばないさ。……私らこの山に住むことにしたから!」

 

 

 

 萃香が放ったまさかの一言に対して僕、てゐ、龍の三人が驚きの声を上げる中、彼女は満足気な表情でその理由を語り出した。

 一つは、萃香と童子の二人と元賊徒の鬼達が同じ北陸の出身であったこと。二つ目は二人がこの地を気に入ったこと。そして最後は……。

 

 

 

「私、明日が十六になる日なんだ。ならさ、志を同じにするもの達を束ねて一旗揚げるにはもってこいの日だろ?」

 

 

 

「……」

 

 

 

「なぁ、東神さま……分かるだろ? 若い者は野心に焦がれ、一山当ててやろうと躍起になるものだ。ついに私にもその時が来たんだよ……! 

 

 

 あの時の戦いで、私は鬼として覇を唱えるに充分たる力を持つと自覚した。平時に先輩ヅラしてきた年上の連中が何人も死に斃れていった中、私は生き残って勇儀と共に大きな功をあげただろ!? 

 それなのに、それなのにだ! 戦後の連合の継承については口すらも出せず、私達は歳上の言うことにハイハイ言わされただけ。

 

 

 ……そんな事があった後に身寄りのない鬼の集団と出会うなんて、それは大陸で言う所の天命ってやつじゃないのかい?」

 

 

 

「……いいのか? その決断はお前一人じゃなく、この場にいる全ての賛同者達の運命も背負うことになる。そして、お前は乞食あがりの萃香ではなく、伊吹山の首領として今後を生きることになるんだぞ?」

 

 

 

「良いっ! 私はやると決めたらやる女だ。それに、ここに居る鬼の全員全てが私を頭にすると決めたんだ。それに対して今更応えないなんて事は万が一にも有り得ないし、するつもりもない! 

 

 

 私は誓うぞ!必ずやお前達を最善の道に導き、この地を大江山と並べて語られるほどに栄えさせる! そして、お前たちが胸を張って故郷と呼べるようにしてやるッ!」

 

 

 

 

 

 心配する僕を他所に、萃香は拳を掲げて臣下となる者たちに対して登極する者としての誓いをたて始める。これで流れは決まり、変わることは無いだろう。

 自分が面倒を見た者が名誉を得たこととしては嬉しい、しかし人々の守護者でもある以上恐ろしい瞬間であるこの光景に当事者の一人として立ち会っているという、なんとも浮ついた感覚が僕の身を包み込み、修行を付けていた頃より萃香に執ねく付き纏っていた彼女の野心が満たされていくのが目に見えて分かった。

 

 

 

「伊吹山の首領……いい響きじゃないか! なぁ萃香!」

 

 

 

「この淡海の海を臨む地で私は伝説になってやる! **(華扇)! 私の右腕として色々と手伝ってほしい。頼めるかい?」

 

 

 

「おうとも! 二人で切磋琢磨してこうや。それに私らには沢山の仲間だっているんだから!」

 

 

 

「おっと、そうだ東神さま。コレ、前みたいに蛇に変えてくれよ」

 

 

 

「ん? ああ、そんなもの汚いから持ち歩かなくていいのに」

 

 

 

「そんなもん? へっ、私にとっちゃあ大事なお守りだよ!」

 

 

 

 萃香が差し出してきたのはかつて切り落とした我が髪である。つまり、自分の部を護る為の守り神が欲しいようだ。

 

 

 

「ねね、前の大江山で置いてきたのはここから分けたヤツだったろう? これ全部を一匹にしてくれや」

 

 

 

「えぇ……? まぁいいけどさぁ……今君達の集落には捧げものがないだろ? それで捧げ物できないってんじゃあ暴れ出すだろうから、暫くは免除してあげる。

 なんなら農作物とか良く取れるよう僕が加護を与えてやろうか?」

 

 

 

「いいのか!? ……いやぁ〜、持つべきは話のわかる神様の知り合いだよなぁ」

 

 

 

「あとさ、一応勇儀に一報入れときな」

 

 

 

「はいよ!」

 

 

 

 

 

 

「……朝斗彦殿、やはりこやつらに甘くはありませんか?」

 

 

「甘くない!」

 

 

「……左様でございますか」

 

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

 こうして野盗同然の生活を送っていた彼らは萃香を長として伊吹山に本格的に住み着き始め、彼女の支配の元でこの地は鬼の第二の大要塞として栄えることとなった。これより後、この地域では目に見える妖怪による被害は減ったものの、気が付けば身の回りの物が無くなる者が増えたという。

 

 

 

 

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