叢雲、天より根差す光   作:聖徳王の笏

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五十七話 甦りし聖徳伝説

 

 

 

 永い、夢を見ていたかのような気分だ。

 今、私がこうして物思いにふける事ができるという事は、尸解は成功したのだろうか? 

 ああ、感じたことの無い、素晴らしい力が身体にみなぎるのを感じる。目の前を覆う殻を破り、早くこの力の素晴らしさを皆へと説き、聴かせたい。

 

 

 私が指で目の前を覆うモノをつーっとなぞると、それはまるで自ら進んで道を開ける群臣かの様に景色が開け、あの時この目で見たものと変わらぬ華夏の神仙が描かれし天井が見えた。

 

 

 

「時が来たな。本当に長い時を経て、太子様が復活なされた」

 

 

 

「待たせたな、屠自古よ……!? お前、脚が!」

 

 

 

 私が驚きの声を上げると、屠自古はバツが悪そうに頭を搔いた。

 

 

 

「あー……気付かれましたか。

 これはなんというか……その……はは、しくじってしまいまして」

 

 

 

「……嘘だろう? それじゃあ布都は?」

 

 

 

「アイツなら無事尸解仙になって、今は大祀廟の前で緑の巫女とその連れの神と戦っているはずです」

 

 

 

「巫女? ……それに神? どういう組み合わせなんだ? もう宗教戦争が始まっているのか?」

 

 

 

「いえ……太子様の復活に際し、自らの欲を聞き届けてもらいたいがために小神霊が大量に湧き出たのです。それを不審がって調査しに来た連中がいるのですよ」

 

 

 

「……そうか。ならば、私の新たな力を試すにはいい機会だ。

 私は文字通り生まれ変わった、神の子としてな。豊聡耳王子は死に、そしてたった今、その欲の蛹よりこの豊聡耳神子が羽化したのだ」

 

 

 

「はぁ……目覚めたて故にだいぶ気分が高まられている様ですが、あまりムチャはなさらないでくださいよ? もう敵はスグ近くまで来ているのですから」

 

 

 

 これはもしかしてだが、我等はかなり旗色が悪いのでは? 布都と争っているという、その神衹の戦士が来る前に調子を整えなければ……。

 

 

 

 

 

「貴女ですね! 小神霊たちとさっきののじゃロリ娘の親玉は!」

 

 

 

 なっ!? もう来たのか!? 

 

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは驚いた。いや、正確には大祀廟に入り、見覚えのある顔触れが襲ってきた時点で何となく察しは着いていたが、まさか千四百年の時を超えて弟子と再会する事になるなんて。

 

 

 あの時のことは当時を知らない者には誰にも話してないため、それについては早苗も勿論知らない。今の幻想郷であの時の事を事細かに覚えているのは僕と河勝……摩多羅神のみだ。

 

 

 

「貴女は何者なの?」

 

 

 

「私は……豊聡耳神子。上宮太子だとか、聖徳王と呼ばれた和国の王族であり、日ノ本を統べる大王になるものです」

 

 

 

「聖徳……太子!? 朝斗彦様! この方、アレですよ! 旧一万円札の!」

 

 

 

「……あぁ、そうだね」

 

 

 

 何だろう。記憶にある最後の姿に比べて明らかに若返ってるというか……アレって河勝が大連を討ち取った頃の見た目だよな。

 

 

 

「此方が名乗ったのだから、そちらも名乗るのが流儀というものでしょう」

 

 

 

 かつての記憶にある声、そして自信に溢れたその顔つき……あれはまさに選ばれし者だ! 僕が鍛えた頃にはなかったはずの神そのものの力が、明らかに彼女に発現している! 

 

 

 

「私は妖怪の山にある守矢神社の風祝をしている東風谷早苗です! 一応現人神でもあるんですが……まぁ、巫女みたいなものです!」

 

 

 

「……なに? 現人神? 私はてっきり宿神かと思ったけれど……?」

 

 

 

「シュクシン?」

 

 

 

「あっ、要はミシャグジだよ。人の身に神の御魂が宿る事でそうなる」

 

 

 

「なるほど! 流石は朝斗彦様!」

 

 

 

 まぁ、実際に作っちゃったし現在でも関わりあるからね。

 今の世の中で言う、里の八百屋で好評な秋姉妹印の野菜みたいな感じで、私が作りました! って奴。

 いいよねアレ。野菜と同じ扱いしたら絶対本人に怒られるけど。

 

 

 

「そこの御仁、貴方の名も聞きたいのですが」

 

 

 

 うわ〜……嫌だ。明らかに様子のおかしい弟子が僕の正体に気づかないで名前を聞いてくるなんて、そんな状況あまりにも嫌すぎるよ。

 

 

 

「……葦原朝斗彦。山の頂上にある守矢神社の祭神が一柱だ。……これでいいかな」

 

 

 

「ふぅん……。守屋神社、か。

 なんとも数奇な縁だ。かつて倒した敵の名を冠する連中とやり合うこととなるとは、まさか……」

 

 

 

「なんじゃお主ら、まさか兄上の縁者か!」

 

 

 

「……勘違いしていそうだから一応言っておくけど、守るに矢だからね。大連の守屋じゃない」

 

 

 

「……」

 

 

 

 あ、二人で顔赤くしてる。

 ありゃあ、真剣に間違えたな。確かに一度守屋は諏訪に攻めてきたことあれど、我々と関係はない。縁が深いというのなら、間違いなくそれは王子と僕のことだろう。

 

 

 

「と、ともかく! 

 

 

 そこの早苗とやら、欲が心より漏れ出ているな。貴女はここで功をあげ、周囲を見返したい……そう思っているのでしょう?」

 

 

 

「えぇ? ああ、はい。……なんかサトリ妖怪みたいですねぇ」

 

 

 

「折角ここまで来たのだから、私の相手をして欲しい。私としても、復活したことで得た力を試す良い機会となるからね」

 

 

 

「……どうします? 朝斗彦様。相手はああ言っていますけど」

 

 

 

「ああ、いいんじゃないの? 早苗にとって良い相手にはなるはずだよ。色々な意味でね」

 

 

 

 しかし、鍛えたもの同士が戦うなんて見た事がないな。しかも、片方は死んだと思ってた千年以上前の人間だ。……いや、恐らくもう人間じゃないだろうけど。

 

 

 ……これ、河勝は知ってるのかなぁ。もし知らないとなれば、今の河勝だと情緒がぐちゃぐちゃになっちゃいそうだ。

 だってあんな人形遊びしてんだもん。何考えてるか今の僕には分からないよ。

 

 

 

「よーし! 行きますよ!」

 

 

 

 何も知らない早苗が自分の腕を回し、やる気を見せている時だった。向かいに佇む王子が剣を引き抜き、居合の姿勢を見せたのだ。当然僕はすぐさま間に割って入り、早苗を斬らんとした王子の太刀筋を捉えた。そして、それを己の環頭大刀で受け止めたのである。

 

 

 

「きゃあっ!?」

 

 

 

「早苗! 怪我はないか?」

 

 

 

「え、えぇ……。でも、ビックリしちゃいました……」

 

 

 

 ここに来る途中まで一緒だった妖夢ちゃんのように、弾幕を斬撃に組み合わせる戦い方なのかと思ったら、本気で斬りかかっていくなんて信じられないな。

 ……まさか、弾幕ごっこの決まりすら分かっていないのか? 

 

 

 

 

 

「……何故私の邪魔をする? 山の神よ」

 

 

 

「おいおい。そういうのは困るんだよ、王子。

 幻想郷では決闘する上での取り決めがあるんだ。それを守ってもらわなければ……」

 

 

 

「ふん……その態度、気に食わないな。私はもう力無き王子(みこ)ではない。神の子だ! 醜き芋虫が美しき羽を持つ揚羽蝶となるかのように、私は尸解したことで、仙人を超えて神霊へと生まれ変わったのだ! 

 ……この神徳が分からぬものには、言葉ではなく力で思い知らしめる他あるまい!」

 

 

 

「……先程までとはまるで様子が違うな。怒りで前が見えていない、それでは駄目だと言ったはずだろう」

 

 

 

「知った口をきくな! 和を以て貴しと為す、逆らう事なきを宗とせよ。

 故に、逆らう者は全てこの私が倒す! そして、世に広く(タオ)の教えを説き、民草に真の平穏を(もたら)さん!」

 

 

 

「……あークソ、コレじゃ僕まで紫に大目玉喰らう事になるな。しかし! 弟子の不始末は師の責任だ! 

 ……音に聞け! 目にも見よ! この葦原朝斗彦が君の相手をしよう。さぁ、かかって来い!」

 

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

 どうしよう。やる気満々で挑もうと思ったら、あのイケメンの自称聖徳太子に斬り掛かられて、驚いている間に朝斗彦様が私のことを護ってくださり、そのまま戦い始めてしまった。

 目の前で土曜の夕飯時に観てた時代劇や星間戦争系映画もびっくりするような剣戟が繰り広げられ、完全に置いてけぼりになっているのは、守矢の風祝を勤めるこの私こと、東風谷早苗である! ばばん! 

 

 

 

「ごめんな。ウチの太子様が迷惑掛けて」

 

 

 

 手の出しようがないのでぼーっと眺めていると、どこからともなく先程交戦した亡霊、たしか名前は蘇我屠自古さんが現れ、話しかけてきた。

 でも、蘇我、物部……その上聖徳太子と来るなんて、何時ぞやに古墳発掘したいなんて言っていたのを思い出すなぁ。まさかこんなことになるなんて。

 

 

 

「え? あ、いえ。こちらこそ、さっきはありったけの弾幕を撃ってしまってごめんなさい」

 

 

 

「別に気にしていないさ。

 ……あのカミサマ、昔似たような方を私は見た事がある」

 

 

 

「え? そうなんですか? 

 確かに朝斗彦様はかなり気ままな方ですが……飛鳥時代の頃に何をしていたかついては流石に私には分かりかねますね! だって私、その頃にはまだ生まれてないですもの!」

 

 

 

「……いや、恐らくは他人の空似だろう。

 私が覚えているのは、その神が八坂刀女比売と名乗っていたこと、その神が太子様ともう一人のある豪族を自らの手で鍛えたということだけだ」

 

 

 

 ……ソレ、絶対朝斗彦様の事だわ! 神話の時代の話はこの前聴かせて頂いたけれど、衝撃の新事実! あれ? ということは、私の兄弟子? いや姉弟子? は、一万円に描かれていた人ってこと!? 

 

 ……いや、地方の神がなんで古代日本の超有名人と接点をもってるのかしら? しかも、性別を入れ替えて接してたって事よね? 素性を隠す理由でもあったのかな? 

 

 

 私、陰謀論者みたいな思考になってるかも?でも、ノストラダムスの大予言で一喜一憂したもんなぁ〜…などとどうでもいい事を考えていると、この宇宙的な空間の上層で争う二人が放った弾幕などが時折飛んでくる。

 それを避けつつ、戦う様をぽへ〜と眺めていると、横にいた屠自古さんが、「悪い、呼ばれたから行ってくる」と言って姿を消し、やがて自らの主を助ける為に参戦するのが見えた。

 

 

 

「朝斗彦さまーっ! 私もお手伝い致しましょうか〜?」

 

 

 

「早苗、来るんじゃない!」

 

 

 

 ……それに対してこちら側は思いっきり拒否。私の事を思ってなんだろうけど、なんだかなぁ……。

 今回の異変は前回の様に神奈子様と諏訪子様に力を借りたのではなく、朝斗彦様に稽古をつけてもらってた上での挑戦だったから、私としては一緒に戦いたいのに。まぁ、あの側近二人倒したし、いいか。

 

 

 はぁ〜。いつまで経っても霊夢さんと魔理沙さん来ないし、妖夢さんは途中まで一緒だったのにいつの間にかはぐれてるし。

 出来ることないし、もう少し見守っていようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「三人でかかってもなお耐え切るか。神を名乗るだけはあるようだ」

 

 

 

「そりゃあ、こちとら君が産まれる前から神をやってるんだ。当然だろう。

 ……しかし、これだけ打ち合ってもなお気付かないとは、些か名前負けしてないかい? 王子。無闇に君を傷つけたくないから、そろそろ此方も種明かしをするべきかな」

 

 

 

 そう言って指先に作った高密度の弾幕を超低弾速で天井へと放ち、それをもうひとつの弾幕で追い打ちする事でド派手に爆発させた。

 そして、辺りを閃光が包み、敵の目を眩ませたうちに自分の中のある感覚を入れ替える。こうする事で、僕は自由に性別を変えられるのだ。

 

 

 

 僕の姿を見た王子達三人は三者三様の反応を見せた。王子は目の前で起きた事にただ呆然とし、奥方の屠自古さんは口をあんぐりと開けていた。そして、大連の妹こと物部布都は一言、「誰じゃ?」と、率直な感想を漏らしていた。結構結構。

 

 

 

「なっ……なんだと……!? お師匠様!?」

 

 

 

「フフ……驚いたかな、王子。本当に久しぶりだね」

 

 

 

「そんなっ……こんな事があるのか?」

 

 

 

「いや、なんで気付かなかったかな。男の時の顔、河勝に似てなかった?」

 

 

 

 僕がそういうと、まず初めに屠自古さんが「……ああっ、似てた! 似てましたよ、太子様!」と、納得した表情。彼女、普通の人の子だった頃から気配り上手でいい子なんだよ。全然変わってない。

 

 うーん……と首を傾げる王子に対して、あまり面と向かって接したことのない彼女がすぐにピンと来てくれたのは、なんか嬉しいやら悲しいやら。

 まぁ、格好もあの頃の赤い装束*1じゃなくて、昔から着てる早苗の巫女服に近い配色のモノだし……って、それは関係ないか。

 

 

 

「わ、私は師匠の前であんな事を口走っていたということか……? ああ、なんて恥ずかしい。末代までの恥だ」

 

 

 

「いや、それよりもさ。こっち的には仏教すら裏切って道教の仙人になってたことがビックリだよ。なんで?」

 

 

 

 刀を納めて僕が質問すると、彼女はまだ気分が昂っているのかムスッとした顔をしながら、「だって……」と、まるで不貞腐れたちびっこのような反応を見せた。

 その顔、この子の小さい頃に修行で負かした時の事を思い出すなぁ。

 

 

 

「……貴女が羨ましかった。無欲で、皆が憧れる神という立場にある、貴女のことが。貴女に憧れば憧れるほど、私は欲深くなり、神への登極や生に対してへの渇望が溢れてしまったんだ。

 そんな時、青娥と出会った。貴女と同じように、心の内が分からない者だ。彼女に仙道を説かれたことで、私はその教えに魅せられてしまったのだ」

 

 

 

「……」

 

 

 

「……幻滅しただろう。あれ程手塩にかけて面倒を見てくれたにも関わらず、道を逸れてしまった私に。

 

 ……破門なりなんなり、罰は全て受け入れよう。貴女が思うままに、私の事を煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

 

 

 

 彼女は民草からも親しみやすさを感じさせる為政者であったが、大王以外に頭を下げる瞬間は数える程しか見たことがない。そんな彼女が頭を下げたということは、覚悟があっての事なのだろう。

 

 

 ……面倒を見ていた頃から、意思が弱かったことを思えば驚きを隠せない。何か気持ちの変化があったか? いずれにせよ、それについては本人しか分からないことだけれどね。

 

 

 

「……そんなこと、する訳ないじゃないか。

 だってさ、僕は伯母上に頼まれて君と河勝を鍛え始めた訳だけど、二人とも始めから仏教徒だったし、揃って頑固者だから全然改宗出来る気しなかったんだよ? 

 

 

 それが、実は僕に隠れて第三の宗教に改宗してて、十五世紀もの長い年月を超えて復活しましただぁ? こちとら気にしないよそんなの! 面白いし! 

 自分の道を模索した結果そう決断したのは君自身でしょう? なら、思う存分好きにしたらいいと僕は思うよ?」

 

 

 

「その通りですっ! 貴女方の事情はよく分かりませんが、私もこの郷に来てからはお仕えする神々の皆様方のご厚情で好きにさせてもらって、いまがありますから!」

 

 

 

 あれ、いつの間にこっちに来てたんだ早苗。

 ……いや、そっち見てたからって無言で親指立てるのやめてね。

 

 

 

「……貴女は本当に他人に甘いな。神のくせに、あまりにも優しすぎる。それこそ私が憧れ、そして今この力を得て神仙になってもなお、手に入れられなかった唯一のモノだ。

 

 

 私には二人の師が居る。決して交わることの無い、まるで陰と陽のように対照的な二人だ。いずれも、我が力を持ってしてもその心の声は聴くことが叶わない。それ故に、私は憧れた。自らが持たない力を持つあなた方に。

 

 

 だが、もう憧れるのはやめにしよう。私は生まれ変わったのだから。

あなたの言うように目の前の道を邁進し、力ではなく、己が信ずる道を以て民草に認めてもらうとしよう!」

 

 

 

 うおー! 弟子のはずなのに後光が指してる、眩しい! これが生まれ持った……えっとアレだよ、カリスマってヤツだね。

 やっぱり、腐っても彼女は大御神の血を引き、かつその当神から選ばれし者と呼ばれた天孫なんだな。かつての伯母上の威光を久々に感じたよ。全く、あの頃が恋しいなぁ……。

 

 

 

「……まぁ、肩の荷が降りた様でよかったよ。だけど、ここは決まり事が多いから、それだけは守ってね。さっき剣を抜いて彼女に危害を加えようとした事については、新たな力を得た事で錯乱してたってことで不問にしてやるから」

 

 

 

 面食いな早苗が、「死にたくは無いです。でも、あの方になら斬られても良いかも……」などと、隣で身をくねらせながらアホな事を抜かしているのを無視しつつ、僕は調停者としての役割を全うすべく実務的な話題を出した。

 目の前で一人だけ頭にでっかいクエスチョンマークを浮かべている様子を見るに、スペルカードについてや決闘のルールは分かって無さそうであるしね。

 

 

 勝手に不問にしたことは紫からしたらたまったものじゃないだろうが、異変解決後に何かご機嫌取りで贈り物でもすれば何とかなるだろう。それに、僕も一応有力者の枠組みに入れて貰えている以上、新勢力である彼女達には色々と説明しなければ。

 

 

 

「まず第一に、ここは幻想郷だ。日ノ本のとある地に張られた博麗大結界によって外界より隔絶された、忘れ去られた者たちが集う土地。

 外で居場所をなくした妖怪や神々達が幅を効かせ、人々が非現実的な状況を当たり前として受け入れる。そして、そんな弱き者の庇護者、諸問題の調停者として博麗の巫女が在るという理想郷だ。

 

 

 そして決闘では、さっきの様な昔ながらの生死を賭けた殺し合いではなく、弾幕を撃ち合い、如何にそれを綺麗に魅せるかを競い合う! 

 各々が自分らしい弾幕を記録するスペルカードと呼ばれる札を作る事で、人であろうが妖怪であろうが、皆が平等に力を発揮出来る……それが命名決闘法だ! 

 

 

 ……と、そんな所かな。

 どう? 今の説明で何となく分かってくれたかい?」

 

 

 

「ほう……」

 

 

 

 彼女は腕を組んだ後に「屠自古、知ってたかい?」と、隣にいた屠自古さんに聞くと、「勿論」と即答され、更にはもう一人の側近である物部布都からも全く同じ返事が帰ってきた。その為、王子……いや、神子は在りし日より変わらぬその木兎(ミミズク)の耳のような髪を萎びさせ、目に見えて落ち込んでいたのであった。

 

 

「ルールも分かったようですし、早速やりましょうよ! だって異変は弾幕ごっこあってこそですから!」

 

 

「……いや、向こうにはスペルカードもないのに無理でしょ。また今度改めてやればいいと思うけど? 宴会の時とかにさ」

 

 

 

「はっ、確かに!」

 

「……誰に似たのかなぁ、その無鉄砲さ」

 

 

 

 ……ともあれ、こうして世を騒がせた神霊異変は終わりを迎えた。

 始まった時は欲まみれな早苗が心配過ぎて監督する為に着いてきたけれど、結果的についてきて良かったんじゃないかな? 一人で行かせてた場合、下手すりゃ神子に殺されてたでしょ。この子。

 

 それに、この空間を覆う結界。これは大結界などの神道に由来するものではなく、仙界を作る時に用いられるものだ。明らかに僕達を閉じ込める為に張られたとしか思えない。きっと、僕達が大した邪魔もなく大祀廟の扉を越えられて、同行していた妖夢ちゃんが邪魔を食らって置いていかれたのは分断するためだったのだろうな。

 嫌な気は常に感じていたけれど、その持ち主……つまり、神子が話す所のもう一人の師とやらが暗躍していたに違いない。しかし、とんでもないヤツに魅入られたな、神子。

 

 

 

 

*1
所謂神奈子様スタイル





一話で復活する太子様。
1400年も眠ってていきなり弾幕ごっこ出来るはずないと思うので、師弟対決にしました。なお、幻想郷で血腥い戦いして欲しくなかったので当人目線は省略。
次も現代かな〜。
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