筆が進んだので書きました。キャラによっては小話もついてるよ。
葦原朝斗彦 (
下諏訪の大社の主祭神。
肩甲骨近くまで伸びた黒い癖毛を結わずにそのままにしている。
長い事社を空けていた事を反省し、本人曰く神らしくどっしりとした態度で過ごしていたところ、仲の良い伯母である天照大御神によって自らの不手際(三章参考)を指摘され、責任を取らねば罰すると脅された。そして、そのついでに先祖返りを起こしたという王族の導き手となることを課せられ、言わば単身赴任の形ではるばる畿内へとやってきた。
男神であるが、大和の朝廷においては男神の建御名方神の妻である八坂刀売神として扱われるため、女子の姿で潜入し、弟子達を鍛えることとなった。
しかし、『神祇の信仰を護りし、強き者を育てよ』という伯母の言葉を真に受けたことで弟子二人を狂戦士へと仕立てようとするなど、そのぶっ飛びぶりは更に酷いものへとなっている。
ほかの神々同様、人間からは一部の条件を満たした者以外その姿を見ることはできないが、基本的にとにかくよく喋るため、その相手をする河勝は大和の朝廷において虚空へと話し掛ける奇人変人の類として扱われる事になった。
キャラ付けとしては死なないクワイ=ガン・ジン。
彼が良かれと思って提案した事をそのまま受け入れると、もれなくその者には悪い事が起きる。所謂逆神。
秦河勝
この章の実質的主人公。*1
渡来系豪族の秦氏に連なる男で、後に摩多羅隠岐奈として幻想郷の創造に関わる宿神。
趣味は能面彫りと雅楽にまつわる楽器の演奏。
物心がついて間も無い頃に原因不明の熱病に侵され、生死を彷徨ったものの復活。それ以来、人並外れた力を手に入れ、飽くなき渇望を感じるようになったこと以外は基本的に普通の人間。
しかしその熱病の正体とは、鬼の里で過ごし続けた朝斗彦が諏訪に戻る途中にて禊を行った際に飛び出た御魂が、紆余曲折を経て河勝の身体に取り憑いた事で反応を起こして生じたものであり、生き残ったことで彼本来の魂がその御魂と共存し、彼はめでたく宿神の身となった。
親族たちからは神童などと言われ、唯一無二の才能を褒め称えられた野心溢れる若者であった。
しかし、本物の神童である豊聡耳王子と出会った事で己の天命を知った彼は、将来の大王たる豊聡耳王子を支える事を胸に己を律し、相次ぐ天変地異や政争などで混乱極まる大和にてしぶとく活動した。
六世紀末に起きた蘇我氏と物部氏による内戦、丁未の乱においては蘇我氏陣営として参戦。初陣にもかかわらず果敢な戦いぶりを見せ、敵の総大将である物部守屋を仕留める大活躍を見せた。
その後においても、斑鳩宮の造営に斑鳩寺や自領における広隆寺の建立など、仏法興隆の世における改革派の一人として、東夷である倭が和国として生まれ変わるための国造りを担うなど、聖徳ノ君や上宮太子と呼ばれた豊聡耳王子の片腕として、その活動の多くを補佐した。
晩年は齢七十を越える老齢でありながら、東国に巣食う大生部多率いる常世神の信仰者を壊滅させ、その際には駆け込みセーフで神力を操れるようになるなど、神を討ちし真の神として老いてなおその名声を大きく高めた。
しかし時の権力者である蘇我入鹿の攻撃によって播磨は赤穂坂越まで逃亡し、同地でその長い一生を一度は終えた。
雲隠れした後、一族の者達によって神格化されたことで大避大明神として神霊化を果たす…が、だがしかし己に巣食い、神霊となる際に完全に同化した御魂の強い悪影響によって、その姿は女子のもので固定されることとなった。
しかし、それからが宿神の本領発揮である。
数多の神格を取り入れたことで様々な側面を併せ持つようになったのだが、時が経って平安時代になると彼女は後戸信仰と結びつき、その存在は幻想郷でも一部の者のみが知る摩多羅隠岐奈へと変わった。
実は小心者。
キャラ付けは、後の隠岐奈に繋がるようにしつつ、超常的存在に憧れをもっている有力者の人間…というキャラ。
豊聡耳王子(豊聡耳神子 名の読みは同じ)
六世紀末、七世紀初頭の和国において
彼女は祖先でもある天照大御神が指した選ばれし者その人であり、河勝と共に朝斗彦に鍛え上げられた。
神は二物を与えないどころか、五つ…いやそれ以上を与えられた天性の才覚の持ち主であり、女子でありながらも将来の大王とする為に男子として養育されたという秘密を持つ。
然しながら、混乱が収まって叔母が即位した際には、『なんだ女子であっても即位出来るではないか…』と内心かなり複雑な感情を抱いていた。
物心ついた時から人並外れた力に振り回されていたことから元々はストレスや不安に対して非常に弱く、似通った性格である父の二の舞にならぬようにと気持ちに蓋をし、仮面を被るかのように日々を過ごしていた。
しかしある時、布都を経由して道教の教えに出会ったことで運命が変わる。元々の異国への憧れや、神道への抵抗感などといった部分からすぐにその教えに傾倒していき、彼女はいつしか不老不死に憧れるようになった。
やがて、強まる野心と反比例して体はみるみる弱り、このままでは大王になることすらままならぬと焦った彼女は尸解の儀を執り行い、仙人へと生まれ変わることとなる。
その後、悠久の時を眠りについたのちに幻想郷にて復活した。しかし大王がどうこうと言うような時代はとうに過ぎ去っているのを悟ったため、強いジェネレーションギャップを感じることとなった。
その後幻想郷へと受け入れられたことで性別のしがらみや信仰の秘密、王族として背負う重圧が無くなった結果、末っ子気質*2でわがまま気味な道教大好き豊聡耳さんへと変貌した。それでも人里で演説する時は真剣モードとなるため、顔ファンの女性の追っかけが多い。
キャラ付けとしては、人間らしくありたいものの超常的存在に限りなく近い、葛藤に苛まれる人間を意識したキャラ。なので神霊廟本来のシナリオ・キャラ設定テキストに比べるとだいぶ動機などが逸脱気味。
物部布都
古代の有力豪族、物部氏の娘。
良かれと思って豊聡耳王子を道教の教えに導いた張本人。
父は豊聡耳王子の祖父である広庭王こと欽明天皇等に仕えた物部尾輿であり、彼女は彼の最晩年に産まれた娘である。物部守屋は同母兄であり、親のあまりにも高齢な出産の際は驚きと喜びを持って受け入れられた。
河勝とは同い年。
古来より八百万の神々と密接な関係を持つ物部氏においてもかなり高い素質を持っていた彼女は、本来ならば祖神、氏神を祭りし三輪山の社の管理者へとなるべき存在であったが、両親に先立たれたことや女子らしからぬ気の強さのせいで次第に兄以外の周りの者から疎まれ、その道は別の者が進むに至った。
それ故に表向きは明るく振る舞うものの、性格は嫉妬深く、愛情に飢えている。
正直自分でも変なヤツなのだと自覚していた悪い所全てを受け止めてくれた為、豊聡耳王子には妄執とも取れる忠誠心を持ち、彼女の為ならば例え火の中であろうが蠱毒に突っ込まれようが生還する心積りで仕えている。
夫は古代日本の名宰相・蘇我馬子。
兄はこの縁談に猛反対したものの、その頃には彼女は親族全員に嫌われてると勘違いしていたため、他田大王…すなわち後世での敏達帝によって組まれたこの馬子との縁談には家を出れるとノリノリだった。
守屋から敵情を知る為のスパイとしての役割を涙ながらにお願いされ、反抗したら消されると思いつつも粛々とその役割を務めていたため、初め馬子には一切信用されずに会話も全く無かった。
しかしひょんなことから時の大王を助けてしまい、それから紆余曲折があり夫の命令で兄を裏切ることとなる。そして丁未の乱での主戦、
その後、兄の亡霊が夢枕に現れ続けたことで身内殺しの焦燥感に駆られ、道教の教えに拠り所を求めたものの結果は変わらず、それはいつしか馬子、ひいては蘇我への憎しみに転じた。
結局、それは屠自古の尸解を阻止する形で復讐が行われる事になる。
幻想郷においては同じ尸解仙であることから神子の右腕として活動しているが、その活動内容とは命蓮寺を燃やしにかかったり、弾幕として利用した皿の買い替え代を経費として神子のポケットマネーから出させること。
キャラ付けとしては、主人公とは違う系統のめちゃくちゃヤバいやつ。廟組の核弾頭。
蘇我屠自古
古代の有力豪族、蘇我氏の娘。
父は蘇我馬子であり、弟には蝦夷、甥に入鹿がいる。
超人まみれの飛鳥において大変貴重な普通の人枠であり、本人曰く『なんだかよく分からんうちに色々な事に巻き込まれていた』人。
男として生きる豊聡耳王子にとっての形式ばかりの妻となることを強いられたものの、なんだか普通に彼女の事を恋愛的に好きになってしまったので何とかなってしまった。
その想いは幻想郷へとやってきた今でも健在。
王子に嫁いだ頃から『例え天地がひっくり返ろうが今後私が驚くことはない』と考えていた。
だがしかし、ある日突然彼女に連れていかれた先で青娥のヘンテコな儀式を目の当たりにして呆然としていたところ、気付けば腕の中に後の山背王子がいたので彼女は立ったまま気を失った。
王子の尸解の際は、後に青娥が『屠自古さんが一番覚悟が出来ておりましたね』と口にするほどだったが、布都の陰謀によって失敗。哀れな事に亡霊となってしまった。
そして、山背王子の変を目の当たりにしたことで力が覚醒。甥を呪詛したことで、入鹿は数年後に乙巳の変にて命を落とすことになった。
この一件を以て大臣家としての蘇我氏は滅亡し、皮肉な事に自らの父によって滅ぼされた物部氏に出自を持つ布都による復讐が、形を変えてその実を結ぶことになったのであった。
幻想郷においては主婦力の高さから布都に使いっ走りをされたりしているが、彼女自体がドが付くほどのお節介焼きなので、むしろやらなくていい時もやる。
ただし、嫌な事をされればその時は頭上より雷が落ちることになるそうな。
霍青娥
一体いつの時代から生きているのかすらも分からない、ゆるふわ系邪仙。もう一人の選ばれし者の導き手であり、朝斗彦とは対をなす存在。
心に存在する隙を見逃さなかったことで豊聡耳王子を仙道へと導くことに成功した、めちゃくちゃヴィランっぽいけど良く考えれば別に対してヴィランでも無いやつ。
元々は南北で争い続けたことで荒廃していた当時の中華の地より活路を求め、倭国へと逃れてきた。
が、その倭国も倭国で、本人曰く"めちゃくちゃくだらない理由"で国が乱れていたのでしばらくの間は大陸っぽい雰囲気が漂う太秦にて隠遁し、胡散臭い占卜師として活動する傍らで倭国の風習等を研究していた等、真面目な部分もある。
仙道による桃源郷を作るという野望を胸に、当時一番の力を持っていた王子に取り入ったものの、千四百年の時を経た後に幻想郷で彼女が復活した時には既に全てがどうでも良くなっていた。むしろ、弟子がちゃんと復活出来たということが彼女にとって思いのほか達成感を感じさせ、向こう数百年はそれで満足出来るとか。
故に、今日も彼女はご機嫌な様子を見せながら人里で悪事に手を染めるのだ。
…やっぱりヴィランじゃないか。
大生部多
常世神を崇める教団を率いる半人半霊。
乱れた天下の情勢から、それを今こそ自分達にとっての理想の神を顕現させる絶好の機会と見て神降ろしの儀式を行った。
元々は幽世大神…つまりは大国主に仕えていた半人半霊の一人であり、同胞を纏める立場にあった。しかし、ある時仲間達が勘気を被ったことで皆まとめて冥界から追い出されそうになると、不満を抱いた同胞によってかつぎ上げられて反乱の旗頭にされた。
そして神一人相手に集団で挑んで負けたことで冥界を追放されると、死の気配に導かれて上州へと移住。榛名山の噴火が起きた事で被災した。
その後は駿河不尽川の流域へと移り住み、虎視眈々とその時が来るのを待っていたのである。
あまり戦いが得意ではなく、河勝に終始押される有様であった。しかし、敗北後に常世神ラルバによって蘇らせられたことで異形の妖怪へと姿形を変え、河勝を殺さんがために理性を捨てた。
最期は河勝によって念入りにとどめを刺される事となった。
【豪族達】
蘇我馬子
五十年以上も中央政権で権勢を誇った当時を代表する有力豪族の一人であり、屠自古の父。位は大臣。
絶対零度の眼差しと腹の底が読めない性格によって数多の豪族に恐れられる存在であるものの、その実態は自らの主である大王を支えることが生き甲斐。
どんなに恐れられようとも、自らはあくまでも大王を支えるNo.2という認識だった。
特に橘豊日大王…後の世における用明天皇とその子である豊聡耳王子にはなかなかに入れ込んでおり、彼等の為ならば全ての汚れ役を背負う覚悟を持っていた…が、結局その汚れ仕事を行うのは布都の役目であり、志は同じだったものの彼女から恨みを買うきっかけとなった。
王子の雲隠れを知るやいなや目に見えて弱り、後を追うようにこの世を去った。
物部守屋
当時を代表する有力豪族。位は大連。
仏教を嫌う廃仏派であり、力を伸ばす馬子を抑えようと志を同じくする王族、穴穂部王子と手を組んだ。
しかし抵抗虚しく蘇我氏との戦いが起きると、進退窮まった彼はかつて交戦した敵である鬼を頼るべく援軍要請を送り、彼女達もまたそれを受け入れた。
完全に勝利間違いなしだと喜んでいた彼であったが、待てど待てども鬼達がやってくる様子はない。ようやく北部より一団が現れたと聞いて確認の為に櫓に登ったものの、現れたのは鬼ではなく守屋の嫌いな異国かぶれの秦の私兵であった。
爪を噛み、己の負けを悟りつつも一矢報いんと奮戦したが、布都の放った毒矢に倒れ、藻掻き苦しむ所を河勝によってとどめを刺された。
立場が危うくなるまでは父の尾輿共々朝廷の剣として各地に出征しており、先述の鬼達との戦のみならず、諏訪の神有員とも交戦したことがある。
極度のシスコンだが、朝廷で重きをなす存在であり前述の通り度々出征していたがために留守にすることが多く、その思いは妹には通じなかった模様。
他田大王のお気に入りの豪族。大王薨去後はその妻である額田部姫に仕えていたものの、古代日本の火薬庫こと穴穂部王子に目をつけられ殺害された。
孫は豊聡耳王子の子である山背王子に仕えたが、山背王子の変にて討死した。
布都と同じく馬子の汚れ仕事担当だった渡来系豪族。泊瀬部大王暗殺の主犯であり、よりにもよって主君である馬子に存在を抹消された。
息子は名を東漢弓束といい、その系譜はやがて征夷大将軍である坂上田村麻呂へと繋がる。
蘇我蝦夷
屠自古の弟であり、馬子の後継者。
可もなく不可もなく物事をこなす男で、偉大な父には遠く及ばないので大臣の地位を引き継いだあとも目立たぬように過ごしていた。
息子には目をかけており、元服が終わるやいなや大臣の地位を譲り渡すほど。しかし、その息子の乱暴狼藉な振る舞いによって乙巳の変の際に自害した。
蘇我入鹿
蘇我大臣家の四代目(稲目→馬子→蝦夷→入鹿の系譜)。
若くして豪族としての頂点に上り詰めたことで横暴な振る舞いを厭わなくなったが、章の終了後に鎌子と中大兄王子によって宝女王の目の前で殺害された。
中臣鎌子(中臣鎌足若しくは藤原鎌足)
蘇我一色に染まった宮に出仕することに嫌気が刺したことで隠遁していた若者。
同じ捻くれ者の波動を感じたことで、東海より帰ってきて間もない河勝と接触を図る。その際、河勝の秘蔵っ子であった車持与志古娘に一目惚れし、彼女を嫁として娶った。
河勝とは彼女を通じて頻繁に連絡を取り合っていたようで、彼は自らの死に際に入鹿討伐の為の策を用意した。それは三韓進調と呼ばれる三韓からの使者を迎え入れる儀式をでっち上げ、それに入鹿を呼び出してとどめを刺すというものである。
この計画は同調した中大兄王子や蘇我石川麻呂、師である南淵請安と共に詳細が練られ、実行に移されることとなった。その儀の際の使者役は大陸文化に慣れ親しんだ秦氏の者たちが務めた。
その血は言わずもがな、後世において大王家に次ぐ名家として多くの者に受け継がれた。
大生部多の元にいた不思議な雰囲気を纏う娘で、後に中臣鎌足となる鎌子の妻となった。
元は上州に住まう豪族車持氏の出であり、その身に流れる血は河勝も羨むほど。
周りの者の死を察し、それを詠む力を持っている。それは妖忌曰く黄泉津大神の力のほんの一部を受け継いだかもしれないとの事。
その力によって常世桜とラルバを繋げる為の橋渡し役として多に利用されていた。
朝斗彦と河勝の師弟コンビによって能力を
坂越で河勝が死に、いつしか都が平城京から平安京へと移ってしばらく経った頃、はたして虫に喰われたのか地下を掘り進む土竜に削られたのかは分からないがある日突然御札が効力を失い、その封印が解けた。
それまで琥珀に閉じ込められてた若枝は瞬く間に地上へと伸びていき、封印を護る役目としてその上に住んでいた西行寺家の庭に一夜にして巨大な常世桜が生えた。
やがてそれは一家の一人娘である幽々子の死と結び付けられ、彼女の亡骸ごと八雲紫の手によって幽世へと送られることとなった。その後は大国主によってちょちょいのちょいとされ、気付けば亡霊として復活していた幽々子は幻想郷における冥界の管理人に任命された。
【王族たち】
河勝が初めて会った大王であり、廃仏派。
父親の治世が長かった為、在位期間は短かった。
豊聡耳王子の父親であり、作中ではよく大兄王子と呼ばれた存在。崇仏派。
河勝の才能を買って豊聡耳王子の傍役にさせたり、親戚でもある馬子を重用して仏教興隆の種を撒いたりと短命ながらも後の時代に影響を残した。しかし、大御神の子孫たる大王が蕃神にうつつを抜かすことは許されず、その治世の間は多くの天災に見舞われ、自身も流行病に罹患するなど苦しむ姿が目立った。
他田大王、橘豊日大王、額田部女王らとは異母兄弟にあたる人。
丁未の乱後に年長の王位継承権保持者だった為に馬子の擁立によって大王となったが、彼の権力に対して不満を漏らした結果、かねてより不満を抱いていた諸王族と馬子の手によって暗殺された。
他田大王の異母妹にして妻、橘豊日大王の同母妹。
朝斗彦曰く『伯母上にそっくり』な大王。
女の身で大王に即位した史上初の存在であり、崇仏派が勝利した後の即位だったために永きにわたって治天の君であり続けた。
子供の頃から普通は見えない者が見える体質であり、本人もそういった類のモノが好き。
芯がしっかりとあり、気性は荒い。
最晩年、斑鳩に漂う妙な気配を察した事で上宮王家の者を後継者から外すように遺言した。
大王家のぶっとび担当。非常に野心的であり、自らが大王の地位に着くことを信じて疑わなかった。しかし軟弱な兄、橘豊日大王が蘇我の力を背景に大王として即位したために物部守屋と手を組んだ。
粗暴な振る舞いが目立ち、丁未の乱の前に謀殺された。
父は豊聡耳王子、母は蘇我屠自古であるが、実際は青娥による倫理的に不味い儀式によって産まれたという秘密を持つ、まるでハルシネーションのようなとんでもない存在。*4
子供ながらに明らかに違和感を感じながら成長していたが、ある時決して覗く事なかれと言われていた父の部屋を覗いた際、胸にサラシをまく父の姿を見てしまった。
耳の良い父のことだ、完全にバレた!と思った彼はその事実を自らの墓まで持っていくことを固く誓ったといい、それ故に成人した後は更に自らの出生に対して疑念を抱くようになった。
自らが命を絶つ原因となった山背王子の変では自分がこれ以上生きても良くない筈だと考え、潔く死を受け入れた。
河勝が大生部多を退治した時の大王。
額田部女王を目標としているが、髪の毛一本分だけ彼女の方が優しい性格。
宝女王の息子。河勝曰く、豊聡耳王子の再来だとか。
その業績は言わずもがなである。
【河勝の味方をした人々】
魂魄妖忌
自称ただの庭師である半人半霊の剣豪。
楼観剣と白楼剣の二振りを巧みに振るう二刀流であり、その腕は神である朝斗彦の顔に傷を負わせるほど。
朝斗彦や河勝からも一目置かれる存在である。
冥界にいた頃は大国主のお気に入りっ子であり、彼の身の回りの事や雑務を手伝ったり、腕がなまらぬようにと修行に付き合ったりしていた。
前章にて大国主が語った刃傷事件の主犯であり、主君からは残るように言われたものの自らの意思で下野することとなる。
常世神を崇めていたが、多の強引なやり方によって覚醒させられたラルバを見た事で幻滅し、同族であるにも関わらず彼を裏切った。
ラルバと彦ノ坊の面倒をよく見ていたため二人にはとても懐かれており、多の死亡後の妖忌は与志古娘に従って鎌子の元で仕えていたが、河勝が雲隠れした後に二人は彼を頼って中臣氏の元へとやってくることとなる。
寿命が普通の人間に比べてとても長い為、庭師兼藤家の歴史を知る生き字引としてその後も藤原氏に重用され、平安の時代になるとその傍流である西行寺家に仕えた。
エタニティラルバ
常世神の生まれ変わりとして大生部多にとっつかまっていた揚羽蝶の妖精。
初めは人間の上半身に幼虫の下半身を持つ稚児らしい姿をしていたが、多による降霊の儀式によって無理矢理常世神の力を降ろされたことで、妖しい羽を生やした悍ましい妖怪の姿へと変じた。
多が求める常世の神として暴れたものの、本物の神である朝斗彦によって退治された。
戦いの後は河勝によって能力を封印されたため、彼に付き従いつつも本来の妖精らしくのびのびと過ごしていた。
幻想郷にはいつの間にかやってきており、成長して綺麗な羽を生やしている。
少名彦ノ坊
大生部多によって囚われていた小人族の少女。
れっきとした少彦名命の子孫であり、それを自慢してまわっていた所を多によってとっつかまった。
小人の国に居た頃の友達からは名前だけの木偶の坊と呼ばれ、それだと可哀想だというラルバの提案で親しい者からはのぼうちゃんというあだ名で呼ばれる。
河勝の東征の際に助けられ、朝斗彦から煽られたことで度胸試しを行った結果、戦士として覚醒。河勝の仲間として坂越の地まで付き従ったが、彼が雲隠れした後はラルバと共に妖忌の縁を頼って鎌子のもとへと行き、その後は一人で祖先の足跡を辿るために各地を流浪したあと、小人の国へと戻り幾人かの子を産んだとか。
やがて、その冒険好きな血を受け継いだ子孫は京の都にて暴れる鬼と戦うこととなり、彼女に負けを認めさせたことで魔法の小槌を手に入れた。
それはいつしか彦ノ坊が振るった輝針剣とともに少名氏の家宝となったという。
彼女の巡った地には少彦名命に縁ある社が多く残る。
少彦名命
名前のみの登場。
若かりし頃の大国主の相棒にして唯一無二の親友でもある天津神で、海の向こうの高天原より小さなガガイモの実の船に乗って葦原中国へとやってきた。
大己貴の国造りを大いに手助けし、義兄弟たる彼が中つ国に君臨する為の礎を築いた神であり、図らずとも幼き頃の悩める河勝に対して朝斗彦が彼のようになるべしと説いた存在であった。
なお、大己貴と少彦名による糞我慢と埴背負いの我慢勝負については話さなかった模様。だってそうしたら女子である王子が…とは朝斗彦の弁である。
かつて、少彦名は常世の国へと行くという野望を胸に大国主に先立って幽世へと向かったものの、そこに彼の求めたものはなかった。
「こんなの常世の国じゃない!」
怒った彼は幽世を抜け出し、自らを象徴する力である国造りの力を使って天下において勝手に理想の領域を作り出した。それが後の小人の国である。
【朝斗彦の縁者】
八坂神奈子
諏訪の明神であり、朝斗彦の妻。
旦那が実に三百五十五年の長い時を経てようやく自分のもとへと帰ってきたと思ったら、突然大和に行くと言い出したので仰天。その理由を聞いてモヤモヤとしていたものの、まぁ別に義父みたく本物の隠し子作った訳じゃないから…と自分に言い聞かせていた。
しばらくしてたまたま渦中の存在である河勝と顔を合わせる機会があったが、『意外といい男』だったのでそれまでの憂いは全て晴れた。
なおその後の彼は彼女が嫌いなタイプである胡散臭い女神へと大変貌を遂げるのだが、当時の彼女は知る由もない。
朝斗彦が帰ってきた後、迷惑かけてばかりだから…と自分の髪色と同じ紫紺色の勾玉をくれた時は、嬉しさのあまりに人目もはばからずに一日中ニマニマ笑いながらそれを眺めていた。
その後はというとあえて身に付けずに大事にしまってあり、時代が進んで額縁を手に入れたあとはそれに入れて部屋に飾っている。
強大な力を持っていても心はいつまでも恋する乙女である。
洩矢諏訪子
いそいそと諏訪を離れていった朝斗彦の動機が気になって神奈子より聞いた際、いよいよ無性生殖するようになったかと口を滑らせたことで彼女からゲンコツをくらった。
河勝については彼からいわゆるミシャグジと近いものを感じるため嫌いではない。
気圧の乱れならぬ、地脈の乱れで身体が痛くなることが判明した。
王太子一行が行幸を行った際、諏訪にて彼等を歓待した現人神。
前章より歳を重ね、立派な現人神として諏訪湖以南を束ねているが、神話の体形で中央とモメたせいで一度物部守屋が攻めてきたことがあり、その時はなんやかんやあって双方矛を収めた。
伊吹萃香
伊吹山の鬼たちを束ねし首領であり、誰がなんと言おうが朝斗彦の一番弟子。アル中。
泣く子も黙る鬼の部族連合をまとめる大族長の一人であり、衣摺の戦いへと参戦する為にずんちゃかちゃっちゃと太鼓を鳴らして行軍していたところ、朝斗彦に退却するように指示された。どうするべきか迷った後、流石に東神さまに言われちゃしょうがねーなと言って勇儀と共に大江山へと向かっていった。
二百年後の鬼退治では一度殺されたあと、朝斗彦の力で復活。
市井の者には迷惑かけん…だが、頼光には復讐したい!と京の都で暴れていた*5ところ、自分の手のひら分くらいの体格である小人に挑発された。
ムカついたので
星熊勇儀
身長六尺六寸*6を超える体格をもつ、大江山の鬼たちを率いる大族長。
衣摺の戦いでは萃香と合流するために陣を張っていたところ朝斗彦がやって来て、何も言わずに今は退くべしと言われたので色々言い返したものの、結局説得されたので彼が代案として出した案を受け入れ、大江山で鬱憤ばらしの闘技大会を開催することにした。
闘技大会は様々な催しが行われたものの、皆の注目を集めた種目においては族長二人の独壇場となり、模擬戦では萃香、相撲では勇儀が勝った。
なお、決まり手は送り吊り落とし。
一ヶ月に渡って行われた闘技大会の後、鬼達はしこたま酒を飲んだ。それはまるで退治される前の大蛇が如くである。
職人達が張り切って作った宴会道具の魔法の品々の性能も相まってすっかり舞い上がった彼女達は、まだまだ飲み足りないぞ!!!と、寝る間も惜しんでひたすらに酒を摂取し続け、やがていつしか皆が揃って酒浸りになった。
茨木華扇
相変わらず動物に懐かれがちな伊吹山のNo.2。茨木童子とも呼ばれる。
萃香と共に衣摺の戦場へと向かったものの、先述の出来事があったため諦めた。
闘技大会では全ての部に参加したが、『アタシらも文化的なこと出来るって世に知らしめた方がいいんじゃないかい?』という勇儀の提案で用意された和歌の部にて優勝した。
なお、言い出しっぺの勇儀すら参加しないほどに人気がなかったので実質不戦勝だったが、恥を捨てて歌を詠んだ結果、その才能は仲間達に高く評価された。
元々大酒飲みだったのに大会後の大宴会で吐きながら飲み続けていたところ、見事アル中となった。
しかし二百年後に自分の腕を斬った張本人こと愛憎入り混じった宿敵・渡辺綱にフラれて仙道を志した際、『自分を律せねば何も始まらない!』と腕の治療用途を除いた断酒を決意。
矯正するのにはめちゃくちゃ時間がかかった。
埴安神袿姫
朝斗彦の古い友人であり、橘豊日大王の時代に起きた災害によって縄を張っていた上州が火砕流に飲み込まれた憐れな神。
その後はというと、もう噴火するんじゃないわよ?と復興後に榛名山へと話しかけるなど、相変わらず奇行が目立っていた。
天弓千亦
朝斗彦の古い友人。
袿姫の救難信号に対して朝斗彦以外が誰も行動を起こさない中でただ一人上州へと赴いて民を助けたお節介焼きな神。しかし自身の信仰が伸びることはなく、その後はお察しの通りである。
玉造魅須丸
朝斗彦の古い時代からの友人。
長い畿内での生活によってしじみ汁欠乏症になった朝斗彦が向かった先の出雲の玉造にて隠遁生活を送っていた。空き巣を行おうとした朝斗彦を叱り、例のごとく勾玉をプレゼントした。
他人に勾玉を贈ることが趣味であり、それを拒否したものは神代から現代において木花之佐久夜毘売命のみである。
朝斗彦が訪ねたちょうどその頃、彼女は八尺瓊勾玉以来の傑作と自ら称すほどの道具を数多の試作品の犠牲の末に作り上げた。自らが認めし者のみに扱う事を許し、妖を討滅し、人々を安寧に導く為の宝具。その名を陰陽玉という。
大国主大神
名前だけの登場。
冥界の管理をそつなくこなしていたが、天下の信仰が荒れたことで力が弱まってしまった為に領域の管理が不行き届きとなり、それを大生部多へと利用された。
事の顛末について報告にやって来た朝斗彦によって全て聞かされたので自身の管理の甘さについてを謝罪したが、『それなら伯母上も苦しんでるよ』と彼から聞かされた瞬間、それじゃあそういうことが起きてもしょうがないなぁとすぐさま手のひらを返した。
この義親あってこの義息ありである。
天照大御神
不変の大御神、太陽の化身。
朝斗彦にとっては完全に気のいい伯母であるが、今回ばかりはお仕事モード。河勝の存在を知らせて責任を取らせ、王子の面倒を見ることを強要した。
前章にて弟である素戔嗚の一族の意見を受け入れて天下の民の信仰については静観の姿勢を取っていたものの、やはり自分達の根幹である信仰が揺らぐ事についてはかなり不安を抱いており、そんな折に現れた豊聡耳王子の存在は渡りに船であった。ちょうどその時に私生…宿神を生み出した甥の存在を思い出し、無理難題を押し付けることとなった。
なお、朝斗彦からは完全に人選がおかしい、思兼様*7のような賢者を傍に付けるべきだと文句をつけられており、それに対しては聞かないフリをして乗り切った。
太陽は多元的な信仰における神々にとっては人気の領域であり、大御神もまたそんな他所の神々との間にパーソナルスペースを作って暮らしている。しかし、天下で信仰が揺らいだ結果彼女の領域においても度々不具合が起き、日焼けしたりほかの神と揉めたりしたとか、していないとか。