Let’sでぃすぺあ!【リメイク版】   作:第8代トマター皇帝・トマティーナ二世

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ストックがこの辺で尽きそう……尽きる……


裏・1

「…」

 

 

スレで「イッチ」と呼ばれていた——江ノ島盾子の姿をした人物はスレを表示していたウィンドウを消した。

やることは一つ、ベットにダイブ。全体重をかけられてギシッと悲鳴をあげたスプリングを気にせず、そのまま目を閉じる。

 

 

「……」

 

 

頭に浮かぶのはさっきまでのやり取り。

意図せず黒歴史を掘り返されおちょくられ、挙げ句の果てには世界的テロを実行することになってしまった——あの安価。

 

 

「いや、どうしよ……」

 

 

前世・今世含めて初の胃痛が江ノ島に訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「なんか最近転生掲示板の存在を知ったし、安価でもやってみようかな!」と軽い気持ちでスレを立てたのがそもそもの間違いだったと思う。

 

正直予想していたのは、パティシエとかお笑い芸人とか、言ってしまえばおふざけ感満載のやつ。

だがスレ民が出してきたのはヒーローとかヴィランとか危険極まりない職業。

 

 

おい待てさっきから何だよバカ!かよわい無個性に道を踏み外させようとするんじゃないやめやめろ…ちょっ、ヒーローも無理だってばこちとらモデルしかやってないのに……えっ何!?愉悦is何!?勢いが怖いんだけどこの人。

 

ヒーローもヴィランもできる気がしない!!でもこのままじゃ決まる!!!

 

 

「うあーーーーっ!!(ヤケクソ)」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてスレ民たちの悪ノリに焦りに焦った結果、最大最悪の絶望的事件を起こす羽目になったわけである。焦りはろくな結果にならない。

 

「にしてもなぁ……」

 

腹の辺りを押さえながら呟く。

不可能、というわけではない。

なんといっても、自分の身体は「江ノ島盾子」。

超がつくほどの才能至上主義で本科(お客様)予備学科(財布)の間に天と地ほどの差があろうとも、予備学科に入りたがる人間が後を絶たないほどのブランド力を持つ希望ヶ峰学園に()()()()()()()()()()()本科で入学した女である。

所詮予備学科は本科に入れなかった才能なしの敗北者じゃけぇ……(煽り)

 

 

 

まあ折角の機会なので、いつもこの身体で過ごしている感想を心の中で述べさせてもらおう。

 

江ノ島盾子。

超高校級のギャル改め超高校級の絶望。

彼女の身体は非常に素晴らしい。

 

足が速くなる個性なんて目じゃない身体能力。

 

頭を良くする個性を持たなくても成績トップを維持し続ける頭脳。

 

魅了の個性を使わずとも周りに自然と人が集まってくるコミュニケーション能力。

 

スマホの黒い画面に映る、チワワ百匹分詰め込んだほどの愛くるしい顔。

 

黒いバッテン印のアプリを開けばトレンドにあるのはその名前。

 

何やっても上手くいく。存在自体が反則。あまりにもチートが過ぎる。

思わず笑みが込み上げるのも仕方ないだろう。

 

 

そもそもあの安価に拘束力はない。

あくまでもお遊びで、達成するかどうかの決定権は本人に託されている。

 

 

 

 

 

だから、平穏で安全な日々を送りたいのならそんなもの、ないことにしてしまえばいいのだ。

 

見なかったふりをして、そのままスレを閉じて、イージーモードで余生をのんべんだらりと過ごしていけばいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——でも、そんなのは()()()()()

不可能上等。ハードモード上等。

 

才能がある“だけ”の無個性の少女にいともたやすく揺さぶられる個性社会。

……そんな考えただけで楽しそうなこと、江ノ島盾子がやらないわけがない。

 

無個性はあくまでもハンデ。

それに、あのような摩訶不思議な超能力を使いこなせる自信がない小市民の自分にとっては、個性なんてない方が楽だ。前世の考察班は個性ウイルス説とか言ってたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、決めた」

 

安価達成、しよう。

盛大に笑えるほど、最高で最悪な景色を見せてやろう。

 

 

 

 

——全員もれなく、絶望させてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぷ」

 

笑い声が漏れた。

 

「うぷぷ」

 

漏れた笑いは連鎖して、止まること無く広がっていく。

 

「うふふふ…」

 

爆笑いが、談笑いが、破笑いが、哄笑いが、一笑いが、苦笑いが、嘲笑いが、冷笑いが。

 

「うっひひひひ…」

 

高笑いが、含み笑いが、泣き笑いが、独り笑いが、思い出し笑いが、照れ笑いが、作り笑いが、せせら笑いが、物笑いが——

 

「あっははははははは!!!!!!!!」

 

——狂気を含んで含んで含んだ嗤い声が、部屋を満たす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——後に世の中を揺るがす大事件を起こすエノシマジュンコ(絶望)が、産声を上げた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高揚感に酔いしれながら江ノ島はなんとなく時計に視線を向け……青ざめた。

 

「………あっ」

 

 

時計の時刻は午後4時。

終礼はとっくに終わって放課後の時間帯である。

 

 

学校に遅めの欠席連絡を入れ、溜まっていた友からの連絡を大急ぎで返し、江ノ島は時間感覚に気をつけねばと自戒するのであった。

 

 

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