転生したら『分身』の個性を持っていた件   作:鋼色

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友達と食べるたこ焼きが1番美味しい


二話 枯れ死んだ暗黙者

第一号(ファルガ)がヴィラン組織に対して激闘を繰り広げている頃、第三号(トゥリオス)は自然の中に立っていた。

 

風が吹き、

 

緑が巡る。

 

獣は肉を喰らい、食物連鎖という名のピラミッドを奏でる。

 

飢餓に飢えた獣は幼く、抵抗もできなさそうな人の子に牙を振るう。

 

怯み、慄き、恐怖の真っ只中で喰われ、死するのを想定していた。

それは知能上昇型個性を持っていなくとも理解できる。

 

「っと、分かりやすいねえ。そんなんじゃ俺様には敵わねえぜ?」

 

第一号(ファルガ)第二号(ツース)第三号(トゥリオス)第四号(フォレアルム)第五号(イクセンド)の五名には1番秀でているステータスがあった。

 

第一号(ファルガ)は格闘センス、第二号(ツース)は索敵能力、第三号(トゥリオス)は感知・隠密、第四号(フォレアルム)は呪力操作、第五号(イクセンド)は常時100%を発揮する完璧実践能力。

 

各々が振り切れた才能スペックを所持しており……第三号(トゥリオス)は体も精神も未成熟でなお半径5kmの感知が可能となっている。

 

風が肌に食い込む感触、風切り音、獲物を目の前に興奮している匂い。

 

五感全てが感知対象なり得る第三号(トゥリオス)にとって、飢餓を訴えかける熊など造作もない。

 

「呪力パンチ」

 

たった一瞬。その一瞬で練り上げられた呪力が顔まで迫り、弾ける。

血が拳に付着し、熊は痛みに悶える。

 

「使えや、個性」

 

本離分羅の得意分野を五つに分けたとて、誰かの得意を他の者ができない訳ではない。

本業よりも理解がほんのわずか劣るが、経験と技術は本業に匹敵する。

 

ゆえに、第三号(トゥリオス)は理解していた。目の前の熊が類稀の個性持ちだという事に。

 

……しかし、熊は唸るのみだ。

 

理解していないのか、理解していてなお見せないのか。

敵意があるのに見せないのから見るに、前者だろう。

 

動物の個性を見たかった……そう心の中で呟き、ため息を吐いた時だ。恐怖から固まり、動けていなかった森が動き出す。

 

赤熱の光線が隣を通り過ぎる。

 

「マジかよ」

 

➖➖➖

 

(個性ビームってところか?目覚めたばかりであの出力、相当まずい。一回打ってヘロヘロになるとか、ダウンするとか、体力が削られるとか、そんなんなら良いんだが……見えねえよな、体力が減っている様子)

 

外面は余裕な笑みを浮かべているが、内心は冷や汗ダラダラだ。心に渦巻く焦燥と痛みへの恐怖が選択肢を狭めているのを実感できる。

 

なんて事ない幼稚な不満を心の中で漏らしていれば、熊から新たなビームが飛んでくる。

 

焦り、不満、作戦……頭で組み立てていた思考、その全てが打ち壊される。

避けることを余儀なくさせられた。

 

分体から流れ出てくる経験を利用し、紙一重で回避する。

 

中々見ることができないレベルの感知能力を所持し、殺し合いの経験が流れてきたからこその回避。

 

そんな高等技術によるものでも……少しは受けた。完全に避けきるというのは難解だった。

 

「…あちぃ」

 

首が掠った。当たったのなんて一瞬で、自認した瞬間にまた離れたのに。

 

それでもこのレベルのダメージを与えんのか。最強の道は随分と遠いな。

 

血反吐を吐いちまいそうだな、クソが。

 

五条悟、お前はどんな軌跡を辿ってきたんだ。

どんな道筋を歩けばあの最強具合にたどり着く。

 

無敵に最強……羨ましいもん全ドリしやがって。

 

「ぐぅがぁ!」

 

視線が彷徨い、思考がどこかに飛んでいく。そんな隙を見逃すはずもなく、熊の爪が顔を通る。

呪力防御を貫通し、顔面に斬撃跡が残る。僅かとは言い難い程度に流れる血が口に入る。

 

味わいたくなんかない煩わしい血の味。

 

それが頭を冷えさせる要因となった。

 

ひどく冷たく透き通る思考に黒い閃光が走る。

別の自分が黒閃を決めたのを直感的に理解できた。

 

その瞬間、脳裏に景色が見えた。それは間違いなく呪いの新たな景色であった。

 

そして、新たな景色は冷たい思考とリンクする。

 

血が混ざった唾液が地面に垂れて………………黒い閃光がなった。

 

黒閃!!!

 

1度目は他人。2度目は自分。短期間の黒閃二連発。それは開きかけていた扉をこじ開けるには十分であった。

 

「俺様の術式は分身。5体まで分身が可能であり、本体は任意に移動可能だ。本体の贈与が完了せずに死んでしまった場合、自動的に本体機能が4分割され、5分後に死んだ分体以外の分体に渡される。他者に殺された分体は1時間で復活する。自殺した場合は5時間だ。また、死んだ分体の意識、記憶、性格は次に伝達される。他殺、及び自殺のタイムリミット内に全ての分体を倒さない限り、俺様たちが死ぬことはない」

 

典型的な『術式詳細の開示』という縛りが呪力量を底上げする。

高まりに高まった呪術センスと膨大化した呪力。これ以上の切り札を作り出す機会があるだろうか……

 

いいや、ない。

 

 

拡張術式………

 

 

 

 

 

 

 

惰羅化羅(だらから)

 

 

額から流れ出る血液が1mmサイズの水玉が抽出され、空中に浮かぶ。

その数、ちょうど100ピッタリ。

 

「呪槍・夏椿」

 

三粒の血液水玉が赤黒い槍へと変貌する。射殺さんとする槍の圧力によって足が一歩引いている。

そんな行動を見逃すはずはなく、鋭く研磨され、熟成された一突きが放たれた。

 

右足、左足、右腕に突き刺さる。刺さった拍子に大量の血液が飛び出す。

 

苦渋の表情を浮かべ、倒れる熊の目の前で……先ほどの何十倍もの量を誇る血液水玉が空中に浮かぶ。

 

「……」

「高揚感に押されて即興で作った拡張術式にしては自由性が高すぎる代物だ……とでも言いたげだな」

 

懐疑を乗せた視線についつい口が動いた。

とは言っても、さっきみたいにペラペラ喋るつもりはないがな。術式の開示による縛りがないと切り抜けられないっていう状況でもないしな。

 

今からしゃべるのはただの余談だ。

どうせ出血多量で死んじまう。冥土の土産にプレゼントしてやるよ。

 

「別に考えてなかった訳じゃない。…いや、違うな。正確にはずーっと考えていた、だ。俺様は……俺様たちは、もし自分がこのキャラになったらどうだろうと、考えていた。ずっとな」

「だからこその拡張術式だとしれ、大馬鹿者」

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