自衛官だったけどスネークになったので世界大戦を阻止してみた 作:みどり色
俺はポーチからスモークグレネードを三つほど取り出す。
これで手持ちのスモークは品切れになるが命には代えられない。
俺はピンを抜いて三方向にスモークを投擲する。
周囲は濃さの差はあれど煙が充満していく。
『ひょおお?!』
ザ・フィアーは足場を見失い地面に落下した。
何故わかるかって?
サーマル(赤外線ゴーグル)付けてるからね。
卑怯とか言うなよ、アイツだってステルス迷彩っていうチート装備持ってるんだから()
しかし人外部隊—————外人部隊じゃないよ?
“人外部隊”であるコブラ部隊の連中は木の上から落ちたくらいじゃ何ともない。
普通は死ぬだろっていうツッコミは無しだ。
だって人外なんだから。
俺はグラーニニ・ゴルキー研究所外庭の武器庫で手に入れたXM16E1を据銃する。
正直銃自体が長すぎて使い難いが、射距離が遠くなればその分精度は出やすいメリットもある。
セーフティーからセミオートへ切り替え、体勢を立て直しているフィアーのバイタルに向けてトリガーを引く。
しかし驚くことにフィアーは立ち上がることをせずに四つん這いの状態で地面を高速で這い始めた。
その光景はちょっとしたホラーだ。
人間の中でも長身であるフィアーが地を這っているその姿は巨大な蜘蛛そのものだ。
しかも今の俺は肉眼ではなくサーマルを通してみているから余計に気味が悪い。
『シュホーウ!!』
うわぁこっち来たキモイ()
質の悪いB級映画にでも出てきそうな蜘蛛人間を避けるためにローリングして、そのまま膝立ちの状態でトリガーを2回引く。
しかし木を遮蔽として使うことでフィアーは俺の攻撃を避ける。
くそっ、せっかく撃ってるんだから避けるなよ()
俺が理不尽な悪態をついている最中にもフィアーは木登りを楽しんでいる。
段々と腹が立ってきた。
まだスモークの効果は残っている。
俺は体力に物を言わせてフィールドを不規則に走り回る。
正確な場所は分かっていないだろうが、奴も俺が動き回っているのは把握している筈だ。
だが特に邪魔はしてこなかった。
今は下手に動いて地面に落ちるよりも、スモークが晴れるのを待っているんだろう。
俺がフィールドを粗方走り終える頃になるとスモークが綺麗に晴れてくる。
あー、疲れた・・・
とりあえず腹ごしらえだな。
俺はポーチに手を突っ込みカロリーメイトの封を破って—————おいちょっと待て。
どうして既に封が破られているんだ?
ツチノコを横目で見ると、奴はいそいそと身体を舐め始める。
ツチノコは毛繕い?をするという無駄な知識を得た所でフィアーが地上に降りてくる。
十中八九スタミナ回復のためだろう。
奴のステルス迷彩は試作品で使用者のスタミナをエグイほど消費するものだ。
原理は知らん、俺に聞くな()
「食い物だ! おぉぉ!?」
腹を満たしたフィアーはようやく気が付いたようだ。
俺がフィールドを走り回っていた理由に。
「BOOM」
俺は握った拳を開くことで爆発のジェスチャーをしながら、もう一方の手に握った起爆装置を操作して周囲の木に設置したTNTを爆轟させる。
本来であればザ・フィアーにTNTやクレイモアなどの設置型のトラップは効果がない。
すぐに気づいて処理されてしまうからな。
しかしスモークによって視界が封じられ、煙が晴れるまで待機を選んだことで奴のスタミナが枯渇した。
スタミナ切れを起こすとその回復を優先することでトラップへの対処が後回しになってしまったんだ。
まあ今回に関してはトラップ自体に気づいていなかったようだがな。
複数のTNTが起爆されたことで、まるで断末魔のような音を立てながらフィールドの木々が薙ぎ倒されていく。
それを回避しようとフィアーは地面を高速で這いまわるが倒木によって動きが制限される。
唯一の安全地帯は今俺が立っている場所。
奴もそれを察したようだ。
薙ぎ倒される木々を避けながら俺に向かって来る。
しかし俺に注意が向いたことで頭上への注意が散漫になったようだ。
ひときわサイズの目立つ大木がフィアー目掛けて落下する。
そのまま一直線に俺に向かってくれば当たらなかっただろう。
しかし、小銃を構える俺の射線から外れるために身を翻したのが運の尽きだった。
まるで地面を割らんばかりの轟音と地響き—————
それらが落ち着くと倒木の下敷きになったフィアーの姿が目に入る。
「と、倒木の落下位置まで計算して・・・? さすがはボスの弟子—————」
そう言い掛けた所でフィアーは吐血する。
奴の下半身は倒木によって完全に潰されている。
どう考えても助からないだろう。
俺はガバメントをホルスターから抜き、フィアーの脳幹を撃ち抜くために照準する。
「すまないな、苦しまずに死なせてやれなくて」
「恐怖だ・・・! 見えたぞ、恐怖が!!」
先程まで鼓膜が破れるかと思うほどの轟音が鳴り響いていたからか、周囲は静寂に包まれているようだった。
そんな中、鳴り響いた一発の銃声は嫌に耳に響くものだった。
・・・・・すまん、倒木の件は全く計算外だったんだ()
【フィアー!!!】
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<スヴィヤトゴルニ南部>
ザ・フィアーとの死闘を終え、ポニゾヴィエ倉庫を抜けたところで無線が入る。
『スネーク、聞こえる?』
「EVA? 随分と久しぶりな気がするな」
無線はEVAからだった。
無線自体は時々していたが、それも必要最低限のものだった。
・・・・・決して嫌われている訳ではない。
ない!!
『そうかしら? そんなことよりもソコロフ博士は大要塞グロズニィーグラードに移されたわ。シャゴホッドの最終調整をさせられている』
「無事なら何よりだ。少なくとも奴はまだ必要とされているということだ」
そんなことよりも、で済まされた俺は冗談を言う余裕もなく普通に返してしまう。
不満なのは俺だけか!?
俺だけなのか!?
『あなた、なんだか変わった?』
「?」
『なんだか雰囲気が—————』
「スウゥゥゥ、今日もいつも通り元気だが?」
うん、分かっている。
こういう所が嫌われるんだよな()
『一体なんの話をしているのかしら? とにかく急いで、シャゴホッドのフェイズ2のテストも完了したわ。最後の調整が済めば、彼は用済みになる。CIA(アメリカ)に奪われるくらいなら大佐は簡単に殺すわ』
呆れた様子のEVAたん。
一瞬、彼女の好感度が少しだけ上がったような気がしたが、全くそんなことはなかったようだ。
先程よりも事務的な声色で淡々と話を続けている。
「EVA、ソコロフのそばを離れないでくれ」
『わかってる。それとグロズニィーグラードの場所わかる?』
グラーニンからここから北にある山岳地帯から要塞に繋がる地下壕へ行けることを聞き、そして施錠された倉庫の扉のキーも貰ったと事実を伝える。
『グラーニンが? どうして?』
「さあな、酔っていたからじゃないのか?」
別に嘘はついていない。
実際グラーニンから聞いた話だし、奴は酔っていたしな。
ただ“全ての情報”を与えていないだけだ。
『・・・それで彼は今どこに?』
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
恐らくEVAはグラーニンの現在地が谷底だと把握しているんだ。
もっと言うと、EVAが変装している“タチアナ”がグラーニンにプレゼントした靴の現在地だ。
その靴にはグラーニンの現在地を知らせる発信機が埋め込まれている。
俺がセルゲイに頼んで谷底に捨てさせたやつだな。
恐らくEVAはグラーニンが殺され、その死体も処理されたと思っている筈だ。
その実行犯が俺だと疑っているんだろう。
『彼も重要な情報源よ。あなたもわかっているでしょ?』
「勿論だ。十分すぎる程に理解しているつもりだ」
お前はグラーニンをただ利用していただけだろうが俺は違う。
実際、今は俺の協力者だしな。
『私とあなたも協力関係にある筈よね?』
「ああ、お互いの目的達成のために」
『・・・わかっているならいいの。でもスネーク、そのルートには問題があるわよ』
「ああ、要塞内部に繋がる地下壕の山岳側出口は封鎖されていてこのキーでは開かないんだろ?」
『知ってたの?』
「だから君がいる」
『・・・冷たい言い方ね』
EVAは少しだけだが悲哀の感情が含まれた様子で言葉を発する。
なんだか彼女と話していてイライラしてきたのか冷たい言い方になってしまった。
まあ別に好かれる必要もないし極論嫌われたって別に構わないんだがな。
EVAは立派な工作員だ。
個人の感情で任務を棒に振ったりはしないだろう。
「気に障ったなら謝る。こんなでも俺はアンタを頼りにしているんだ」
だが好かれる必要な無いが、嫌われる必要も無い。
少佐の言う通り、可能であれば良好な関係を築いていた方が何かと有利に働くのも間違いない。
『・・・あなた、二重人格って言われない?』
「どういう意味だ?」
『さあね? 山岳の頂上に廃墟があるの。そこで落ち合いましょう』
「わかった」
『それとスネーク、もう一つ問題があるの』
調子が戻ったEVAが話を進める。
二重人格は失礼だろ()
ま、まあこの身体に俺が憑依?しているような状態だからあながち間違いではないのが悔しいところだ。
『コブラ部隊の一人が山岳手前のジャングルで待ち伏せしているらしいわ。伝説の狙撃手、ジ・エンドよ。彼は近代狙撃技術の祖とも言われている兵士よ』
「ジャングルという悪条件に加えて待ち伏せか。俺もいよいよジ・エンドという訳だ」
『大変だろうけどなんとか頑張って。廃墟で落ち合いましょう』
◇
<スヴィヤトルゴルニ東部>
EVAとの無線を終わらせた俺は真っすぐジ・エンドの下に向かう・・・ことはせずに寄り道をしていた。
ジ・エンドが待ち構えている森林地帯の手前で道が分岐するんだが、俺はそっちに進んでいる。
べ、別に嫌なことを先延ばししている訳じゃない。
俺は夏休みの宿題はギリギリまでやらないタイプなのだ!
・・・ん?()
む、無駄話をしている場合じゃない。
兵士が一人、こっちに向かってくる。
俺は物陰に隠れて兵士が勝手に距離を詰めてくるのを待つ。
奴が俺のすぐ横に来たタイミングで兵士を拘束する。
「動くな。ここには何人いる?」
「クソっ!」
兵士は悪態をつくだけで情報を吐かない。
中々肝が据わっている。
「もう一度聞く。ここにいる仲間の人数は?」
「やれよ、仲間を売るくらいなら死んだ方がマシだ」
「・・・そうか」
俺は兵士の首に腕を回して締め上げる。
すぐに兵士の身体から力が抜け、離すとその場に崩れ落ちた。
そのまま道なりに進んで行く。
道中敵兵がいたので同じように無力化していく。
さらに進んで行くと北東の角に大きな小屋が現れる。
“大きな”小屋ってなんだか矛盾しているような気もするが・・・まあいいだろう。
この分岐したルートは最終的に行き止まりになっていて、一番奥に小屋が建てられている。
この森林地帯の警備を担当するチームが利用しているんだろうな。
俺は小屋のあるスヴィヤトルゴルニ東部に存在する兵士を残らず無力化していく。
残りは小屋の中にいる兵士だけだろう。
物音を立てずに慎重に進んで行く。
室内に入ると数人の兵士がいた為、同じように無力化する。
そのうちの一人だけやたら強く締め上げてしまった気もするが・・・まあ気のせいだろう。
残りはやたらガタイの良い兵士だけだ。
後ろから近づいて行き、即座に拘束する。
そういえばいつの間にか身体と技術、イメージとの乖離というのが少なくなっている。
訓練も良いが、やはり実践で得られるものは多い。
「?! ちょっと待て!」
やたらガタイの良いお兄さんに制止される。
そんなんで離すわけないだろう?
戦いの世界は甘くないんだ。
「俺だ、スネーク!!」
やたらガタイの良いお兄さん—————セルゲイは大慌てだ。
おいおいセルゲイ君、ダメでしょ?
拘束されたからってすぐに身分を明かしちゃ。
「・・・なんだセルゲイか、全く気が付かなかった」
「嘘をつくな、アンタ分かっててやっただろう? それにこの場所で落ち合う約束だっただろう」
「そうだったか?」
「・・・はぁ、他の連中も無事だろうな?」
「ああ、全員仲良く夢の中だ」
◇
「おい、起きろニコライ」
セルゲイが気を失っているイケメン君の頬を何度か叩く。
他の連中は既に目覚めている。
ニコライ君だけ寝坊助さんな理由は・・・特に心当たりはないな、うん()
おいツチノコ、何だその目は?
一度お前とはしっかりと話をしないといけないと思っていたんだ。
覚醒したばかりだというのにイケメンのチャートがはみ出しているニコライ君に腹が立つ。
なんだ、その爽やかさ。
ジャングルには無用の長物だ。
新兵から・・・いや、生まれからやり直せ。
そして次はニコライ君に憑依してやる()
んっんん!!
べ、別に羨ましいとかじゃないし!?
ただ『良いなー、そんな顔だったらモテモテだろうなー、人生有利だろうなー、兵士なんてやらなくても金持ちの金髪巨〇美女に養ってもらえそうだなーetc』って思ってるだけだし?
・・・・・なんだか悲しくなってきた。
このチートボディーの全能力を駆使してシャゴホッド盗んで世界各国に核兵器撃ち込んでやろうか。
「それで、ここにいる連中が?」
俺は得意のポーカーフェイス(ry
「ああ、俺達に賛同してくれた連中だ」
外で警戒に就いている者もいるが、10人を超える数の兵士が仲間になったということだ。
この短期間でよく集めたものだ。
「こんなに?」
「いや、実はもっといる。怪しまれないように本来の任務に就いたままの連中だ」
えぇ・・・・・
凄いね、セルゲイ君()
俺なんかより、アンタを中心に組織化した方が良いんじゃないの?
「了解した。本来の任務に就いている仲間がいるというのは心強いが、同時にリスクでもある。向こうは俺のことを認識できるだろうが俺は仲間を認識することができない」
「確かにそうだな」
「だよな?」
「ああ」
「・・・」
「・・・・・」
どうする!?
ねぇセルゲイ君、どうする!?
まだ短い付き合いだけど、いつも頼りになるのに変な所でポンコツ発動するのやめて!?
ポンコツは俺一人で十分なの!
「何か目印を付けるのはどうだ?」
お、いいじゃんそれ。
それならパッと見で識別できるしな。
「よし、それで行こう」
完全に“おんぶにだっこ”だが・・・まあ別にいいだろう。
そもそも俺が頼み込んでこうなった訳じゃないしな。
なるようになるだろう()
「それとセルゲイ、頼みがあるんだが?」
「なんだ? 遠慮なく言ってくれ」
俺はFOX・・・というか、俺自身が任務に失敗したときの予備としてもう一つの組織がこの地域で動いていることを説明する。
XOFとスカルフェイスについてだ。
「・・・アメリカも一枚岩じゃないってことだな」
「綺麗ごとだけではやっていけないさ。だから俺たちみたいな人間がいるとも言える」
「違いない。それで、その“髑髏”をどうすればいいんだ?」
「可能なら捕縛、無理なら情報収集だけで構わない。とにかく無理はするな」
「了解した」
スカルフェイスは後々厄介ごとを起こす張本人だからな。
早い段階で排除したい。
それもアメリカに感づかれることなく、な。
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<ソクロヴィエノ>
俺はセルゲイらと別れた後、元の道に復帰して山岳地帯へ続く森林を進んでいる。
その時、妙な胸騒ぎを覚えた。
俺には森の声なんて聞こえないが、いつもと“違う”雰囲気を感じる。
『蛇よ、聞こえるか! わしはジ・エンド!』
“やまびこ”のように突然聞こえたその声はジ・エンドと名乗る。
ということは既に俺の位置を掴んでいる筈だ。
距離と位置関係、木々の茂り具合から判断して十中八九12時の方向、俺の正面の高台にいるはずだ。
『貴様に本当の終焉を見せてやろう』
—————見えた。
スコープの反射光だ。
近代狙撃技術の祖とか言われているようだが、反射光を抑えもしないなんてな。
それともハンデのつもりなのか・・・
俺は身体を隠しながらSVD(狙撃銃)に弾倉を叩きこんでスライドを引く。
『最後にはもってこいの獲物だ』
横倒しになっている大木の隙間からSVDを差し込む。
スコープ越しにジ・エンドの姿を捉えた。
俺がこの木の裏に隠れたことを分かっているからなのか、索敵することなくこちらに照準している。
スコープがキラキラ反射しているぜ爺さん?
俺は迷わずにトリガーを引く。
互いの距離はそこまで離れている訳じゃない。
確実にジ・エンドの脳幹を撃ち抜いた。
いや、“撃ち抜けた”射撃だった。
俺が引き金を引く瞬間、目の前の茂みから鳥たちが飛び立ったのだ。
一発入魂の集中力で狙っていたこともあり、突然のイレギュラーに狙いがブレる。
俺が放った弾は明後日の方向に飛んでいく。
いや、飛んで行ったと思われる。
なんで他人ごとなのかって?
だって弾が見える訳ないんだから知らないよ!
じゃあなんで分かるのかって?
死にかけジジイがピンピン(?)しているからだ!
『そこだ!』
やまびこのように響いた声。
その瞬間、俺が隠れている場所にジ・エンドが放った弾丸が着弾する。
こうなってしまっては身体を晒せば俺の方がジ・エンドだ。
くくくくっ、ジ・エンドだw
すみません、誰か笑ってもらってもいいですか?
俺は澄ました顔で二つのグレネードをポーチから取り出す。
スタングレネードとスモークグレネードだ。
若干動揺して動作が遅れたのはここだけの秘密だ。
まずスタングレネードのピンを抜いて12時方向に投擲し、追いかけるようにスモークグレネードを放る。
スコープに集中していたジ・エンドは突然の光に目が眩んだ筈だ。
そしてスモークグレネードから周囲に煙が充満していく。
スモークが十分に広がるには少し時間が掛かる。
だがそれを待っている暇はない。
奴の目が眩んでいる隙に場所を移動しなくてはならない。
今の俺に冗談を言って笑っている余裕はないのだ。
俺は瞬時に上体を起こし、全速力で駆け出す。
3秒程度で次の障害物に移動する。
その間にもスモークが広がっている。
何度か細かい移動をしたが、ジ・エンドは俺の位置を掴めていないようだった。
俺はそのまま高台に向けて移動する。
ここは岩壁に囲まれており、ジ・エンドの位置からでは射線を確保することはできない。
よし、チートボディーの性能を最大限生かして全力疾走タイムだ。
うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!
◇
はぁはぁはぁはぁ、死んだ。
もうダメだ。
アーバン(市街地)用にチューニングされた俺のメンタルは険しい自然界での肉体労働を拒否している。
・・・・・あれ、おかしいな。
俺のメンタルに反して身体は随分と余裕そうだ。
さすがビッグボスの綺麗な身体・・・無垢な子供のようだ!
んっんん!!
やはり問題は俺のメンタルだけのようだ。
心技体の心については伝説の英雄には程遠い。
そりゃそうか、だって中身はその辺にいる平凡な日本人だしな。
ニートじゃないだけ褒めて欲しいわ()
誰か俺を褒めて!!
そんな無駄なことを考えていると高台エリアに辿り着く。
運が良ければ老衰待ったなしの死にかけジジイがいる筈だ。
さーて、どこにいるかな~
俺はTNTの起爆装置を取り出して、移動間に仕掛けたうちの一つを爆轟させる。
実際の爆薬はスクリーン(映画)のように炎を上げて派手な爆発などしない。
意外と地味なものだが威力は量に応じて約束された効果を発揮してくれる。
ある一本の木がTNTの爆発によって地面に横倒しになる。
突然の爆発にジ・エンドが反応を示す。
「なんと!」
お、意外と近くにいるな。
人は意識、無意識関わらず大きなアクションが起きている方向に注意が向いてしまうものだ。
交通事故や救急車、パトカーや大きな声で騒ぐ人、街中の喧嘩もそうだろう。
加えてジ・エンドはご臨終まで待ったなし、老衰8日前というジジイの中のジジイ、独り言も多い特典付きだ。
XM16E1(アサルトライフル)を構えてジ・エンドに接近す【パキッ】る。
俺は落ちている枝を見事に踏み抜き、周囲に乾いた音を響かせる。
「・・・・・」
「・・・・・」
俺達は数秒間見つめ合う。
数秒もあったかな?
わからんが爺と見つめ合うなんて誰得状況に気分が悪くなる。
「そこか!」
俺が気分が悪くなっている隙に瞬時(?)にモシンナガンを構えたジ・エンドが引き金を引く。
ジ・エンド用に特別な改造を施されたモシンナガンは射手の要求に従い、麻酔弾を発射する。
その目標は言うまでもなくこの俺だ。
ぐはぁぁぁぁ!!
その隙にジ・エンドはスタングレネードを投擲し、死にかけのジジイとは思えない軽やかな身のこなしで走り出す。
麻酔弾とスタングレネードの影響でクラクラする身体に鞭を打ち、ジ・エンドの後を追いかける。
逃してなるものかぁぁぁ!!
一度見失うと探し出すのが骨なんだよ!!
俺は走りながらポーチに手を突っ込み、その手に触れた物をテキトーに引っ張り出す。
さっきの麻酔弾でごっそりスタミナを持っていかれた。
スタミナ回復も急務だった。
ヒンヤリとして独特な滑り感?のある感触—————
【チー?///】
おい。
なに優雅に脱皮してるんだ?
っていうか羞恥の判断基準がわからん。
え、なに脱皮って恥ずかしいシーンなの?
人間で言う所のお着換えシーンかなにか?
【チー・・・///】
だからその恥ずかしそうなリアクションやめろよ!?
なんだか悪いことしてる気分になってくるから!!
俺はツチノコをポーチに突っ込みながら他の食糧を探す。
ん?
これはワニか?
そういえば沼地でキャプチャーしたまま忘れていた。
とりあえず何でもいいから口に放り込む。
「おっぇぇぇぇ、腐ってやが・・・る?」
ちょ、スタミナが・・・・・
俺は堪らず膝を着く。
アカン、身体に力が入らない。
え、なに?
腐った物を食べてミッション失敗?
笑えなくね?
「なんだと? これで終わりとは失望したぞ」
遠くなっていく意識の中でジ・エンドの言葉が耳に届く。
【—————】
その時、ジ・エンドとは別の声?音?が聞こえた気がする。
【チー!】
あーツチノコ。
キャプチャーした所からだいぶ離れちまったけど、まあ達者でやれや。
無事に帰れるといいな。
その時、口の中に何かを押し込まれる。
口の中に入って来た物をAUTOで食べてしまうこの食いしん坊ボディーは碌に咀嚼もしないで飲み込んでしまう。
味も何もない。
だがこのチートボディーは取り込んだものを即座にスタミナへと還元する。
「くっ・・・!」
「なんと! 生き返った?!」
俺は太腿のホルスターからガバメントを抜いてジ・エンドに照準する。
すまんな、騙し討ちみたいになっちまって。
妙な静けさに包まれる森の中に一発の銃声が鳴り響く。
【おじいちゃん!】
その時、鮮やかな体毛のオウムが飛来してくる。
飼い主(ジ・エンド)がいなくなったらコイツは自然界で生きていけるのだろうか。
その時、嫌な気配がした俺はオウムに麻酔弾を撃ち込み、抱きかかえてその場から避難する。
【ジ・エンド!!!】
生命活動を終えたジ・エンドの身体は秘密保持の為に巨大な爆発と共にバラバラに吹き飛ぶ。
オウムは・・・無事だな。
咄嗟に眠らせて抱え込んでしまったが別に鳥のペットは必要としていない。
運が良ければ生き残れるだろう。
麻酔で眠っている間に捕食されなければ、だがな。
「じゃあな、達者でやれよ」
俺はオウムを放置してその場から立ち去る。
いや立ち去ろうとした。
俺のポーチからツチノコが跳ね出てオウムの隣に着地した。
・・・なんか黄色くなってるんだけど()
え、なんで黄色いの?
まさかカロリーメイトの食べ過ぎで黄色くなったとか言わないよね?
・・・・・言わないよね?
「なんだ、その目は?」
【チー!】
なんかめっちゃ反抗?的な目で見てくるんだけど。
そんなことより黄色くなってることが気になり過ぎるんだけど?
え、なに食性によって体色変わるの?
脱皮したから急に色変わったんだよね?
っていうかツチノコにカロリーメイトって毒じゃないのかな?
急死しても知らんぞ()
っていうかなんでコイツはオウムを連れて行きたがっているんだ?
ダメダメ、無責任に動物は飼えません!
「そら、行くぞ」
俺は二匹に背を向けて歩き出す。
こうすれば諦めて付いてくるだろう。
そう思ったのだがツチノコは頑なにオウムの傍を離れようとしない。
【チー、チー!】
ツチノコはぴょんぴょん跳ねてなんとか俺を引き止めようとしている。
いや、どんなにわがままを言われても無理なものは無理だ。
そんな大型の、それも色鮮やかな鳥を連れて潜入なんて頭が沸いてるだろ()
目立ち過ぎてステルスどころじゃないし、そもそも俺に大人しく付いてくるとは思えない。
どう考えても不可能だ。
ステルスで兵士の後ろに近づいている時に、【おじいちゃん!】とか言われてみろ。
俺はその場でオウムを焼き鳥にして食う自信しかない。
「お前はまだしも、そのオウムは無理だ。いい加減諦めろ」
【チー!!】
ツチノコさんはそれはもう頑なだった~。
なんだか腹が立ってきた()
子供を育てたことはないが、子供がわがままを言っている時の親の気持ちがわかった気がする()
「なら、勝手にしろ。せいぜい達者でやれや」
俺は湧き上がってきた謎の怒り?の感情のまま一方的にツチノコに別れを告げ、山岳地帯に続くトンネルへと進んで行く。
後ろから俺を引き止めようと必死に鳴き声を上げるツチノコの声を無視して。
はい、お疲れ様でした。
唐突なツチノコとの別れ・・・・・
自分で書いてて悲しい気持ちになりました()
それではまた近いうちに—————