自衛官だったけどスネークになったので世界大戦を阻止してみた 作:みどり色
みどり色です。
活動報告やTwitterでも流しましたが第1話の冒頭部分の大幅な変更、及び加筆しました。
主人公の背景的な部分を変えたイメージですので物語進行には全く影響はありません。
よろしくお願いします!
<クラスノゴリエ坑道>
俺は森林地帯の奥地に存在するトンネルに足を踏み入れた。
先程まで太陽の暖かさを全身に感じていたが、トンネル内は薄暗く、気温も低く対照的な環境だった。
俺はトンネルを中ほどまで進んだところで後ろを振り返る。
「・・・・・」
アイツはついて来ていない。
べ、別に構いはしない。
元々俺は一人だ。
今更ツチノコの一匹や二匹、いないところで何の支障もない。
なんのタクティカルアドバンテージもない(錯乱)
10秒ほどそのままだっただろうか?
俺は後ろ髪を引かれるような動きで前を向く。
い、いや決して後ろ髪など引かれてはいない。
これは・・・そう、バンダナが霊か何かに引っ張られたのだ。
クソッ、ザ・ソローの仕業だな?
「・・・・・」
一人で漫才(?)をしていても誰もツッコんでくれないというのはなんと惨めなことか()
スタミナゲージの急降下を感じながら天まで届きそうな梯子に手を掛ける。
え、今からこれ登るの?
なんかこう、ロードとか入って気が付いたら山岳地帯でした!とかってことにはならない?
もしくは壁の後ろに隠しエレベーターがありますとか。
・・・・・調べてみた結果、コンクリートの壁はコンクリートの壁でそれ以上でもそれ以下でもありませんでした。
べ、別にアイツが来るのを待つために時間稼ぎをしている訳じゃない()
違うからな!!
『スネーク、山岳地帯はその梯子を上った先にある。山岳地帯の山頂でEVAと合流する予定だったな? 早くその梯子を上るんだ』
突然、少佐から無線が入る。
なんだコイツ()
文句があるならお前がここに来て梯子登ってシャゴホッド破壊してヴォルギン排除してザ・ボスも抹殺してみろよ()
かのSAS出身なんだろ?
さっさとHALO降下してこいよ()
あ、フリーフォール(自由降下)は無理だったか?
出来もしないのに偉そうにしやがってクソッ
『スネーク、どうしたんだ?』
「別に、なんでもないさ」
『ならさっさとするんだ。EVAからの情報ではシャゴホッドのフェーズ2は終了したんだろう? 君が失敗すれば再び世界大戦が始まる。祖国(アメリカ)を核の脅威から救えるのはスネーク、君だけだ』
「俺の祖国(日本)は既に焼かれている。二度もな」
『?』
『お前たちアメリカの核によって』という言葉はなんとか飲み込んだ。
さっきの言葉も独り言くらいの声量だったから彼らには届いていないかもしれない。
だがそんなことはどうでもいい。
今はたまらなく怒りが込み上げてくるんだ。
このクソッタレは状況に、クソッタレなアメリカに、俺の周りにある全てに怒りを覚えてしまう。
だが怒りの感情という名の燃料は俺に行動を起こす手助けをしてくれた。
怒りがトリガーになって分泌されたアドレナリンは疲労感を身体の隅に追いやる。
決して無くなったわけじゃない。
ただ“感じなくなった”だけだ。
しかし今の俺にはそれで十分だった。
目の前に立ち上るまるで鉄格子のような梯子を怒りのまま登って行く。
決して認めたくはなかったが、心の中ではわかっていた。
“アイツ”がいない事実は思った以上に俺に影響を与えているのだと。
◇
<クラスノゴリエ山麓>
豊かな自然を感じられた森林地帯と打って変わり、梯子を上り切った先の山岳地帯は岩ばかりの無機質な環境だった。
吹き付ける風は強く、標高が高いことにより気温もグッと下がっている。
だが今の俺にはとても居心地がよく感じた。
地上よりも生き物の気配が少なく、無機質で冷たいこの環境は火照った俺の身体を鎮めてくれる気がした。
少しの間、目を閉じて冷たく強烈な風を全身で浴びる。
同時に太陽の温もりと有難さを感じる。
その時、足元で何かの気配を感じて目を移すとサソリが俺の身体を這いあがろうとしていた。
俺は瞬時にナイフを抜いてサソリを串刺しにする。
身体の大部分を異物が貫通しているにも関わらず、サソリは事切れることなくジタバタと手足や尻尾をバタバタと動かしている。
俺はそのままナイフで刺したままサソリを口に運んだ。
美味くもなく、腹の足しにもならなかった。
しかし何故だか命のありがたさをより深く感じる。
そこそこの年数を生きてきた。
いつの間にか“立派な大人”と言われる歳だ。
別に立派でもなんでもないけど()
不思議なことにこの世に生を受けてから今が一番、生を実感できている。
中東で死んでから・・・死んだんだよな?
とにかくこの世界に来てからどこか他人事のような、他人の人生を見ているような・・・夢の中?
うーん、そこまで現実感が無い訳じゃないんだけど、この感覚を伝えるのは難しい。
ただ単に俺の語彙力が著しく低いという事実はこの際、脇に置いておいてくれ()
だがこの世界に来てからようやく俺は生を、命を実感できている。
大変な思いをして馬鹿みたいに長い梯子を上った甲斐があるというものだ。
「・・・・・生きてる」
この冷たい風も殺風景な自然も、今の俺には必要なものだった。
それに本当の意味で覚悟が決まったように感じる。
この先どうなるかなんて分からないし、何が正解かも分からない。
だが俺は、今この世界で生きている。
それだけは確かだった。
・・・・・そういえば今思い出した。
ザ・ボスに着けられた発信器外して無いですやん()
◇
<クラスノゴリエ山頂>
任務序盤の中継基地で駐機していた戦闘ヘリを片付けていた為、比較的スムーズに山頂エリアまで辿り着くことができた。
途中でRPG-7を確保することも忘れない—————が・・・・・RPG+SVD+XM16E1を運搬するのは無理だ。
これじゃ潜入どころの騒ぎじゃない()
干渉してガチャガチャ音鳴るし、しゃがむのは大変だし、伏せてもずり落ちてきて匍匐どころじゃない。
それよりも何よりもスタミナが急降下していく。
あれ、ザ・フィアーの迷彩使ってたっけ?()
ちなみにショットガンなんかも持っていられないからセルゲイ達に押し付k・・・・・預けてある。
捨てるのは勿体ないしな!
有効活用だよ、うん!!
とりあえず山頂の小屋までは頑張って運ぶぞ。
EVAに預ければなんとかしてくれるだろう(他力本願)
っていうか良いこと考えちゃった!
施錠された坑道入り口に置いておこうっと☆
シャゴホッド戦までまともに使わないんだから持っていたって邪魔なだけだろ()
俺はRPG-7を坑道入り口に放置する。
・・・誰も持っていかないだろうな?
もう少し目立たなくしておくか?
まあ大丈夫だろ、真面目な日本人ならいざ知らず不真面目な外人は自分に関係のない仕事はしない筈だ(怒られる)
・・・・・いやいやいや俺はバカか?
ここに放置してたらEVAから鍵貰ってもう一回ここで拾ってグロズニーグラード潜入することになるやん。
ってことはやっぱりEVAがいる頂上まで持って行かなきゃか()
っていうか預かってくれるかな?
拒否されたら任務を放り投げる自信しかない()
◇
<クラスノゴリエ山頂 山小屋>
ダメだ、死ぬ・・・・・
もう無理!!
一歩も動けない!!!
山小屋?に何とか辿り着いたビッグボス(予定)の身体は悲鳴を上げていた。
まあ正確には肉体疲労は大したことない。
腹が減っているくらいだ。
限界なのは俺の心()
だが俺は諦めない。
この階段を上った先に少し大人☆なイベントが待っていることを俺は知っている。
・・・っとその前に、俺は色々重いものを地面に置いておく。
どうせ小屋を出る時にここを通ることになるんだ。
無駄に上階へ持って行く必要はないだろう。
俺の接近を悟られる訳にはいかない。
古くなった階段の軋み音を最小限にするために俺はゆっくりと歩みを進めていく。
どうして悟られる訳にはいかないのかって?
皆まで言うな。
変態紳士諸君なら分かる筈だ。
「あら、早かったのね」
階段を上った先にはタチアナの服のままで眼鏡を外した状態のEVAの姿があった。
彼女の言葉通り、俺は早すぎたんだ。
念のために言っておくが早漏かどうかの話はしていない。
決して。
別にいいじゃん、早漏だって。
別に気にしていない。
決して。
表情には決して出さないが、俺はかなり動揺していた。
どのくらい動揺しているかというと、聞かれてもいない自身の早漏という情報を自己開示してしまうくらいには動揺している。
だが動物としては早漏の方が種として優れているんだ。
ヤッてる最中に襲われる可能性が低くなるからな。
つまり行為中に襲われる心配のない人類にとっては早漏だからといって良いことは特にない。
大丈夫、前戯で満足度を上げるんだ。
・・・・・俺はなんの話をしているんだ()
「少し待って」
そう言うと彼女は徐に服を脱ぎだした。
反射的に目を逸らし、彼女に背を向ける俺はまだ捨てたものじゃないだろう?
そんな俺の背中に向けてEVAは意外そうに声を掛けてくる。
「エージェントがそんな簡単に隙を見せてもいいのかしら?」
挑発的な声色を含んではいたが、彼女は何故だが機嫌が良さそうだ。
それにしても今までだったらガン見していてもおかしくない状況なのに、どうして俺は反射的に目を逸らしたんだ?
映像作品に気を使う必要はない。
作品のキャラクターが脱いだとして、それを観ようが観まいが物語に影響はない。
視聴者はどこまで行っても視聴者だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
—————ああ、そういうことか。
俺は自覚してしまった。
この世界で“生きている”と。
どこか他人事のように、どこかプレイヤーのような認識でこの世界を“観ていた”が、今は現実としてこの世界を“見ている”。
「君が俺に危害を加えるメリットは無いはずだ」
つまりだ。
俺は現実で美女が脱ぎ始めたら目を逸らしてしまうチキン野郎ということが判明した。
それらしいことを言ってはいるがチキン野郎であることは変わらない。
「それはそうだけど、目を逸らされるとちょっと自信無くすわ」
つまり見ても良いと??
見ても良いと!?
大義名分さえあれば俺は迷うことなく視痴(しかん)を敢行するだろう。
よし、やるんだ俺!
なんとなく許可が出た雰囲気だろ!?
「レディーの着替えを盗み見る趣味は無い」
この口か!?
この口が悪いのか!?!?
趣味かどうかは置いておいて、美女の着替えシーンは見たいだろ!!
「・・・・・なんだか人が変わったみたいね(ボソッ)」
「 ? 何か言ったか?」
「いえ、何も」
独り言のように発せられた言葉が俺の耳に届くことは無かったが、何故だかEVAは俺の背後に接近してきた。
うなじがゾワゾワする感覚、反射的に振り返って身構えてしまう。
「あら、やっぱり気になったのかしら?」
「い、いや・・・今のは君が」
「他人のせいにするの?」
EVAはつなぎ型のライダースーツをズボンのよう履いているだけで上着の部分は後ろに下ろしている。
つまり上半身は下着姿だ。
クネクネと身体の曲線を主張しながらゆっくりと近づいてくる。
俺と彼女の距離は半歩ほどしかない。
EVAは腰に手を当てながら俺の顔を覗き込んで来る。
「どうしたの?」
いやお前がな!?
お前がどうしただよ!?
少し視線を下に向ければ絶世の爆美女のご尊顔が視界にin☆してくる。
さらに視線を下げれば爆美女の爆ny
「・・・やっぱり人が変わったみたいね」
「な、なんのことだ?」
鋼のメンタルで決して胸部に視線を向けなかった自分を褒めたたえたい・・・と同時に後悔の念が押し寄せてくる。
見たかった()
その時、EVAの身体に無数の傷が刻まれているのが目に入る。
「その傷は?」
別に無理やり話題を変えようとした訳ではない。
決して。
「大佐に」
「・・・・・」
「大丈夫、バレた訳ではないわ。彼の趣味よ」
俺が黙っていたことで気を使わせてしまったようだ。
彼女は俺を安心させるように“バレていない”ことを強調してくる。
俺が黙っていたのは別に彼女の正体がバレたとかバレてないとか、そういうことではなかった。
単純に彼女の身を案じただけだ。
「人をいたぶる、痛めつけて快楽を得る最低の男・・・!」
『・・・・・カティンの森』
『さすがに知っているか。ポーランド軍将校、警察、知識人、2万人以上が処刑された。2万人だぞ? 中には怪しいというだけで“ついで”のように殺された民間人もいた。俺は今でも忘れられない・・・NKVD(ソ連秘密警察)がまるで作業のように捕虜の頭に銃弾を撃ち込んでいく光景を。まだ若かった俺は祖国の行いにも理由が、意味があるのだと自分を納得させようとした。そしてGRU所属になってしばらく経ってからヴォルギン大佐がこの事件に関わっていたのを知った。それだけじゃない、この大虐殺を積極的に推進していたのを最近になって知ったんだ』
EVAの言葉を受けて、セルゲイとの会話を思い出す。
ゲーム上でもヴォルギンの残虐性は描かれていたが、それはあくまでスクリーンの中だけだ。
現実として目の当たりにするのは訳が違う。
「無理をさせてすまない」
「・・・優しいのね。でもあなたが謝る必要はないわ」
「本当に優しいなら、君を再び危険な場所に送ることなんてしないさ」
「おかしな人ね、私は命令を受けて任務を遂行しているだけ」
そう言うと彼女はもう半歩接近してくる。
ギリギリ触れていないだけで、ゼロ距離と言ってよい近さだ。
本来であれば半裸の爆美女の奇行に“今日も元気だな”になるところだが、EVAの苦労を考えるとそういう気持ちにはならなかった。
「・・・あなた、本当に人が変わったみたいよ?」
広い意味では確かに人は変わっている(中身)が、オリジナルのスネークを彼女は知らない。
ということは、彼女から見れば俺は“変わっていない”筈だ。
途中で中身が入れ替わっている訳じゃないからな。
あの・・・俺の首に腕を回して顔中にキスしてくるのやめてもらってもいいですかね?
どさくさに紛れて俺の股の間に己の足を押し付けてくる。
とんでもないテクニシャンだ・・・!()
◇
俺はその後、EVAからのCQC☆を何とか耐え抜き、グロズニーグラードについての説明を受ける。
既知の情報だが、確認の意味を含めて情報を聞き漏らさないようにする。
ソコロフが捕らえられている西棟についてやシャゴホッドの位置についての情報を提供してくれる。
「でも一つ問題があって西棟のセキュリティは最高レベルなの。大佐クラスでないと入れない」
「大佐クラスね、俺には無縁な立場だ」
「そう言わないの。この写真を見て? イワン・ライデノヴィッチ・ライコフ少佐、彼に化けるといいわ。背格好も近いから大丈夫、制服を奪って・・・顔は全然似てないけどそれは自分で考えて」
あのぅ、急に投げやりなのはどうしてですか?
寧ろ顔の方が問題だろ()
「・・・わかった。ソコロフを連れ出した後の脱出方法は?」
「北に30マイル行った所に湖がある。そこにWIGが用意してあるわ。最新鋭の表面効果機よ」
「わかった。脱出方法については任せよう。俺はグロズニーグラードに向かう」
「待って!」
そう言うとEVAは俺の腕を掴んで制止してくる。
「ザ・ボスとは、どんな関係だったの?」
「—————俺の親であり、師匠だった」
これは俺の言葉ではない。
だが自然と発せられたこの言葉は、彼の意思が感じられるようだった。
「恋人でもあった?」
「・・・それ以上の存在だ」
「それ以上?」
「俺の半分はザ・ボスのものだ」
「好きなの?」
「そういう感情じゃない」
「嫌いなの?」
「『好きか、嫌いか』そのどちらかでないといけないのか?」
「そうよ、男と女の間柄はね?」
「10年生死を共にした。とても言葉ではいえない」
つまり男女の友情は成り立たないと・・・?
いや友人としての“好き”というパターンもあるのか。
どう考えてもEVAが言う男女の中というのは“そういうこと”だろうがな()
その後、『そんなザ・ボスを殺せるのか?』『恋人はいるのか?』等々、言われるがどれも彼女には関係の無い話だ。
年齢=恋人いない歴の俺にとっては踏んではいけない地雷だったが、そんなこと彼女は知る由もない。
べ、別に冷たくあしらったのもそれが理由ではない。
決して。
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<グロズニーグラード 地下壕>
その後、半ば無理やりEVAにRPGを押し付k・・・預けてから彼女に貰った鍵を使って山岳地帯出口から地下壕に入るところだ。
出口から入るという頭が悪そうなセリフはこの際触れないでいただこう。
今の俺にはそんな余裕は無いからだ。
だってこの後、すぐにボス戦ですぜ?
っていうかEVAはバイクで谷?を降りて行ったけど、俺もそのルートで行けませんかね?()
爆美女のお陰で多少?英気を養ったところでこの仕打ちだ。
やっぱりこの世界は優しくない()
どうせ転生?するならもっと平和なところが良かった。
例えば【澪君を奪い合う多国籍美女7人衆】とか【お隣さんは澪君大好き未亡人+3姉妹】とか【貞操逆転世界で唯一の美男子その名は澪君】とか。
え?
欲望が駄々漏れてるって?
違う。
漏れてるんじゃなくて溢れてしまっただけだ!!
・・・・・ん?
と、とにかく頑張って徳を積んで来世に期待することにしよう。
世界大戦を回避するような働きをすれば、さすがの神様も俺の希望を叶えてくれるはずだ。
筈だ!!!
よーし、なんだかやる気がでてきたぞー☆
ちゃっちゃっと任務を完遂して世界大戦を防いで見せる!
見ててね、まだ見ぬカワイ子ちゃん達!!!
ルンルン気分で地下壕に入るがその中はジメジメして薄暗い場所だった。
まるで俺の未来を暗示しているようでならない()
警戒しながら地下壕の階段を下っていくとかなり開けた空間に出る。
その時、ほとんど視界が効かないほど暗かった地下壕が明るく照らされる。
突然の出来事に快適な空間を奪われたコウモリたちが慌ただしく飛び回り始める。
「くっ!」
角を曲がったところで突然巨大な炎を渦が押し寄せてきた。
滅茶苦茶熱いんだが!?
見ず知らずの人に火炎放射器を使ったらいけないとママに教わらなかったのか?
会ったこともない放火魔の母親に全力のヘイトを向けているとこに、自身で放った炎の中からゆっくりと宇宙飛行士みたいな奴が姿を現す。
かと思ったら火炎放射器を掲げてまるで放水でもするかのように火柱を作り出す。
おい!!
コウモリさんたちが困っているだろ?!
「私はザ・フューリー、怒りの炎で貴様を焼き殺してやろう!」
ファーストコンタクトでいきなり怖いんだが?
「私は宇宙からの帰還者・・・その時、灼熱の世界見た。そこで見出したものはなんだと思う」
いえ、存じ上げません。
「怒りだ! 生きる事への憤怒(フューリー)だ!」
そう言うと放火魔は背中に装備しているロケットブースターで宙に浮く。
よく分からんが生きる事に怒っているなら臓器提供してから後はご自由にどうぞ()
なんでいちいち邪魔するんだよ!?
「お前にもあの灼熱のブラックアウトを感じさせてやろう!」
結構です()
俺は宙に浮いている放火魔に向けて45口径を撃ち込む。
しかし特別製の防火服を身に纏っているフューリーを止めることができない。
フューリーはそのまま俺の上を越していき、通路の反対側に着地する。
そのまま45口径を撃ち込むが宇宙服を応用した防火服に弾かれてしまう。
撃たれていることに気づいているのかいないのか、真相は不明だがフューリーは俺に向かって火炎放射器を発射?してくる。
「うおっ!」
俺はすぐに横の通路に飛び込む。
直撃していないのにも関わらず、まるでフライパンで焼かれたかのような熱さを感じる。
やべぇ、ゲームだったら全く苦労しなかったボス戦だが現実だと大違いだ。
視界が全て火炎に染まり、その熱さは目を開けていられないほどだ。
地下という限定された空間だから余計にタチが悪い。
俺はとりあえず奴から距離を取ることに専念する。
フューリーは火炎放射をしたり、ロケットブースターで飛んだりしているから位置を見失うことはない。
逆に奴は、俺を一度見失うと発見することは難しいようだ。
ここに勝機がある。
ヒット&アウェイを原則にSVD(狙撃銃)を撃ち込んでやる。
『ん? どこへ行った!?』
おうおう、探し回っているな。
そんな宇宙服みたいな服を着ていたら五感が効かないだろう?
それに自分の火炎のせいで奴の目は暗順応できない筈だ。
ま、まあ俺も似たようなものだが放火魔よりは幾分かマシだ。
フューリーは俺を探す為なのか、火炎放射をやめる。
スーツがクソ重いんだろうな。
鈍重な動きで索敵している。
奴が背中を向けたところで俺はその場にしゃがみ込み、SVDを構えてスコープを覗き込む。
火炎の光に慣れてしまった俺の目は、突然暗くなった環境にまだ適応できていない。
奴の姿もぼんやりとしたシルエットにしか見えない為、俺は胴体部分に照準する。
一発、二発と撃ち込んだ所でフューリーはその場に倒れこむ。
やったか?
『くそぉ!』
ダメか。
SVDで使用する7.62×54㎜R弾は30-06スプリングフィールドと同クラスの威力がある。
現代のレベルⅣのプレートなら30-06徹甲弾を1発止めることが基準になっている。
いわゆる“当たり弾”だったり、距離やプレートの状態次第では抜けることもある。
それを2発くらってすぐに戦闘に復帰するなんてこの世界じゃオーバースペック過ぎる()
そんなことを考えている暇はなかった。
放火魔はその名に恥じない行動をしてきた。
立ち上がったと思ったら即座に火炎放射を敢行してきたのだ。
俺は横の通路に飛び込むが、完全には回避できなかった。
少しだが太腿の皮膚を焼かれてしまう。
だがそんなことに構っている暇はない。
火炎が通路に沿って迫ってくる。
投げ出した身体が地面に着く前に身体を丸めてローリングする。
そのまま立ち上がり・・・・・喘息全身だ☆
違う。
全速前進だ!!
誰が息切れだ。
いい加減にしろよ()
冗談を言っている場合かって?
火傷の痛みを意識外に追いやるのに必死なんだよ!
俺は全力で走り、再びフューリーの後ろを取る。
即座にSVDを撃ち込み、すぐに離脱する。
丸焼きにされるのは御免だからな。
その後、何度か同じ行動を繰り返す。
火傷の痛みが酷くなってきた。
治療している暇もなく放置しているが、早くどうにかした方がいいのは確実だ(語彙力)
その時、一発の銃弾がザ・フューリーに命中したことで流れが大きく変わる。
『うぎゃあ! !? 耐火服が!?』
ようやく奴のドレスコードに風穴を開けることに成功したようだ。
待ってましたとばかりに俺は破片手榴弾を連続で放り投げる。
万全の状態では効果を発揮しないだろうがこの状況なら!!
数秒の差でグレネードが爆発—————するタイミングでフューリーは予想外の動きに出る。
『イグニッション・ファイヤー!!』
高らかに技名を宣言しながら何をトチ狂ったのか、フューリーは火炎放射をしながら背部に装着したロケット・ブースターで飛び上がる。
死 ん だ
そう思った瞬間、爆発した2つの手榴弾の破片がフューリーの背中に向かって降り注ぐ。
身体の大火傷が原因で痛覚が死んでいるフューリーは一瞬何が起こったのかわからなかったようだ。
しかし、急速に地面が迫ってくる状況は瞬時に理解できただろう。
自らが放った火炎地獄の中にフューリが消えて行った。
俺はその光景を眺めていることしかできなかった。
何かが違っていれば、火の海に沈んでいたのは俺の方だっただろう。
「ザ・ボス—————」
火の海を背にし、地上へ続く方へと歩き出した所で突然発せられた言葉に反射的に振り返る。
驚いたことにそこには炎に包まれながらも立ち上がったザ・フューリーの姿があった。
「コブラ部隊もこれで終わり・・・貴女だけは生き延びてください。私もザ・ソローの下へ行きます」
フューリーがそう口にすると彼を中心に爆炎が嵐のように吹き荒れ、堪らずフューリーはその場に崩れ落ちる。
そして宇宙飛行士が身につける球体型のヘルメットを外したかと思うと、荒れ狂っていたが炎がフューリーに吸収されていく。
とてもじゃないが信じられない光景だった。
「憤怒の炎! 地獄の灼熱が私を浄化してくれる・・・!!」
そう叫びながらフューリーは再び大地に立ち上がる。
「見えた! 管制塔聞こえるか?」
フューリーはふらふらと身体を揺らしながら背面のロケット・ブースターを起動する。
先程の戦闘でダメージを負ったロケット・ブースターは明らかに正常な状態では無かった。
激しく火花が散り始め、連鎖的に小さい爆発が起きている。
「還って来た!!」
俺は嫌な予感がしたため、踵を返して地上に続く通路に走り出す。
後ろの状況が気になるが、振り返っている暇はない。
火傷の痛みを無理やり意識外に追いやり、全速力で走る。
不具合を起こしたロケット・ブースターはザ・フューリーと共に、俺が飛び込んだ通路の入り口に激突し、奴が絶命したタイミングで自決用の小型爆弾が爆発し、通路入り口を完全に塞いでしまった。
【フューリー!!!】
はい、お疲れ様でした。
主人公がこの世界を“現実”だと認識した回でした。
ここから若干主人公の物事の感じ方や捉え方などが変わって行くかもしれませんが、根本的な部分はそのままだと思うので生暖かく見守ってください。
っていうかフューリー戦でツチノコいたら焼きノコになって美味しくなってたかもしれないから別れてて結果オーライ・・・?
それではまた近いうちに—————