金は異世界の回り物! 〜TS転生虚弱美少女は大量スキルで稼ぎたい〜   作:あるふぁせんとーり

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第4話 クーデレ変態美少女メイド

「……て下さい」

 

「んむぅ……」

 

「起きて下さい、マイ様」

 

 

 ノアの声が遠くに聞こえ、俺は意識を取り戻した。

 

 ああ、良いうたた寝だ。

 

 もう少しだけ倒れていたい感じの気分でもあるし、もうちょっと寝たい感じでもある。

 

 彼女も、例え多少口が悪かろうと主人を乱雑にはしないだろう。

 

 もう少しだけ微睡むくらいなら……。

 

 

「失礼しますね」

 

「……うぇ?」

 

 

突如として、俺の身体が重力に逆らった。

 

 ひょい、なんて擬音すら聞こえないほど軽く、ノアは子猫でも抱くかの如く俺を持ち上げる。

 

 身体が浮く感覚で俺ははっきりと目を覚ましたが、その瞬間にはもう手遅れであった。

 

 

「な、何してるんですかノア?!」

 

「いえ、後三十分で出発というのに大した準備もしてないものですから」

 

 

 そう言って彼女は俺を部屋の外へ運び出す。

 

 脇を持つ両手には大して力も籠もってないのに、それを決して振り解けないことを直感的に俺は理解してしまう。

 

 いわゆるわからせってだろうか。

 

 こうなってしまった俺に出来ることは、僅かに顔を赤くしながら猫のように手足をだらんと垂らして何処かに運ばれるのを待つだけだった。

 

 

「……天地無用、ですからね」

「そう言われると人間はひっくり返したくなるんですよマイ様」

「わっ、ちょっ、危なっ?!」

 

 

◇◇◇

 

 

 そうして俺が運び込まれたのは、洋服が並ぶクローゼットルームらしき一室。

 

 ノアは俺を適当な場所に座らせると、手早くコーディネートらしきブラウスなんかを選び取る。

 

 というかクローゼットだけで一室使うとか本当にあるんだ……。

 

いや、俺はファッションに興味を持たない典型男子校オタクだった故の無知なのだろうか。

 

 

「ほら、マイ様。バンザイして下さいバンザイ」

 

「いや、一人でも着れますけど……」

 

「私が着せた方が早いので」

 

 

 妙な説得力を帯びた発言に「ならしょうがないか」と俺が大人しくバンザイすると、彼女はパッとパジャマ代わりのワンピースを脱がせ、その上から下着、白いブラウスと被せていく。

 

 確かにまだこの身体に不慣れな俺よりもよっぽど早いかもしれない。

 

 いや、俺では着る順番もギリギリ分からない程度だし大差負け臭いか。

 

 そして彼女の指示に従って脚も伸ばすと、瞬く間にスカートとニーハイソックス、パンプスが履かされた。

 

 いずれもパッと見て、ちょっと触っただけで分かる高級品の風格を醸し出している。

 

 それが部屋を囲むクローゼットにびっしりと並んでいるのだから少し慄きすら覚えてしまうほど。

 

 金かけた上に我慢とかオシャレって大変なんだな……。

 

 

「えっと、これで大丈夫ですか?」

 

「はい。今日の面接に相応しい身なりです。……にしても、後5年といったところでしょうか……」

 

「5年?何がですか?」

 

「あ、いえ。マイ様が大人の身体になるまでそれくらいかな、と」

 

「……え、いや、何で急に?」

 

「今触った感じだとそれくらいだと思いまして」

 

「……」

 

 

 こいつ思ったよりヤバいタイプか?

 

 綺麗な顔の眉一つ動かさずに淡々とこの野生の変態としか思えない言葉を吐いているという事実が一番怖く思える。

 

 少なくとも残念な美人で済ませて良い感じの発言ではない。

 

 こんなことなら嘘発見器オンにしとくんだった……。

 

 えーっと、待って、もうデータベースのダウンロード終わってるはずだから……。

 

 「嘘発見器 検索」と頭の中で思い浮かべると、某俳優の個人サイトもびっくりの速度で読み込んだそれはパッと視界に広がり、確かに説明書の図式を変えたような感じでは間違いなく嘘発見器であろう解説が映し出されている。

 

 スクロールや拡大、画像表示なんかは念じれば出来るという近未来的テクノロジー。

 

 俺がオンオフの方法を表示させると、左手の親指、薬指、小指、右手の小指、人差し指、親指と図解付きで表示される。

 

 

「えっと、だから、左がこうで……」

 

「……?手遊びですか?」

 

「あ、えっと、その……まあ、そんな感じです」

 

 

 よし、出来た。

 

 若干指がぷるぷるする中で俺は頷いた。

 

 そして満を持して自らの身体とはいえあまり女子小学生の裸など見てはいけないと無意識に目を逸らしていた正面の鏡越しにノアの顔を見る。

 

 彼女は相変わらず色々と赤の他人に言ったら即座にブザーを鳴らされ警察が飛んできてお縄になる程度の発言を続けているが、俺はその言葉を拾おうと割としっかり目に意識を割いた。

 

 

「5年後……ですから、魔法学校を卒業するくらいですね。その頃にはマイ様はそれはそれは傾国の……」

 

「……うっわ」

 

「……?どうかされましたか?」

 

「あ、いえ……」

 

 ……100。

 

 そこに映し出された数字は堂々のカンストであった。

 

 いや、本気度たっかぁ……。

 

 もしかしてこの残念な美人、俺の身体が目当てで後見人やってる危ない感じのロリコン、或いは光源氏とかなんじゃ……?

 

 いや、確かにブラックジョークとか言ってる時も私のこととか私に話しかけてる時は本気度が妙に高かった。

 

 どうしよう、確認するべきだろうか、いやでも遺産目当てではないってことは悪い人ではなさそうだし……でも女子小学生の身体目当てってことは良い人ではないし……。

 

 いや、本当にどうすれば良いんだ俺?

 

 

「……あの、なんですけど」

 

「はい、なんでしょうか」

 

 

 意を決して、俺は口を開いた。

 

 いや、開いてしまったというのが正しいだろうか。前からそうだが、思ったことが先に口から出るという悪い癖は転生しても治っていないようだ。

 

 末端冷え性といい、治してほしいものばかり残っているのは一体どうして……なんて文句はさておき、もう言ってしまったからにはしょうがない。

 

 俺はごくりと唾を呑んでから、鏡越しにノアと目を合わせる。

 

 

「……私のこと、好きなんですか?」

 

「はぁ、何かと思えばそんなことですか」

 

 

 彼女は俺の髪を結う手を止め、小さな椅子に腰掛ける俺の隣でしゃがみ込み、鏡越しに目を合わせてくる。

 

 そしてノアは白くて細くてしなやかな腕を俺の方へ伸ばし、その手が俺の頬に触れる。

 

 ビクッと身体が震えた。

 

 

「良いですか、マイ様」

 

「は、はい……」

 

「この丸くて大きい宝石みたいな青い瞳、それを囲むぱっちり二重に化粧要らずに整った長いまつげ、雪のように透いた人形の如き白い肌、頬に僅かに乗った健康的な薄赤、長くて細くて肌触りの良い青白い髪、柔らかく薄紅を生まれながらにして乗せられたかのような唇……自らが素晴らしいものをお持ちなのはお分かりですよね?」

 

「……そ、そうなんですかね……?」

 

「はい。正直言ってドストライクです、何もかもが」

 

 

 ぎゅっと、頬に触れている手に籠もった力が強くなる。

 

 数字は100が連続していて、彼女が一切嘘を吐いていないのは十分理解できた。

 

 

「この際はっきりと言ってしまいます、マイ様。……私は、マイ様に一目惚れをしております」

 

「……ひ、一目惚れ……?私に……?」

 

「はい、お慕い申し上げております。12年間、マイ様が産まれたあの日から。私は、マイ様に一生涯、お仕え申し上げる覚悟です」

 

 

 相変わらずノアは表情を変えない。

 

 しかしそれとは対称的に、俺の表情は凄いことになっている。

 

 目の前の顔の良い女からのドストレートな告白に、彼女が雪のようと称した肌が真っ赤になっていく。

 

 漫画で言えば、間違いなくプシューと蒸気が上がっている。

 

 くらくらする視界が捉えている120などの数字はバグだろうか。

 

 

「えっと、えっと……あの……その……」

「……そうですね、ですからマイ様の質問にお答えしますと……はい、私はマイ様のことが好きです。大好きです」

 

 

 あり得ない、今はっきりと見えた。

 

 彼女の隣に浮かんだ数字は200。

 

 100がMAXのはずなのに、200。

 

 いや、数字ガバガバじゃん、なんて平時であれば考えていたであろうが、今はそれだけの好意を真正面からぶつけられたせいでそんな余裕がない。

 

 

「え、えっと、じゃあ私の身体を狙ってたりは……」

 

「いいえ、と断じてしまえば嘘になりますが、少なくとも嫁入り前にマイ様を穢すつもりは毛頭ありません。そこはご安心ください」

 

 

 絶対、漫画で言えば俺の目は今ハイライトの消えたぐるぐる目だろう。

 

 いや、これだけ直球で愛情を伝えられたのとか両親以来じゃないか?

 

 そんなことを考えながら混乱状態に陥っている俺を差し置いて、彼女は腕時計を一瞥する。

 

 そして「もうこんな時間ですか」と呟いて、ノアは俺の方へ手を差し出した。

 

 

「時間です。行きましょう、マイ様」

 

「……そう、ですね」

 

 

 そう言って、差し出されたその手を取る。

 

 何処か懐かしさを覚えるような温かみが、薄手の指抜きの手袋越しに伝わってきた。

 

 俺は優しく握られたそれを、ぎゅっと握り返した。

 

 

「……そういえば、私の髪、結わなくていいんですか?」

 

「……あっ」




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