TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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15日目:折り返しだよ! 多分!

「そうだ。バフォー、私。良いことを思いついたの」

 

 今日から、このダンジョンには中級者も来るかもしれない中。

 もはや、1階で垂れ流している汚物トラップに何の意味も無いと考えていたが、3,4階のホラーめいた様相を見て、ピンと来たのだ。

 

「なんだ?」

「堆肥って知っている?」

「鈴子さん。もしかして、ウンコBB気に入っています?」

 

 バフォーと公平君には既に話のオチが見えたらしい。植物型のモンスターとウンコの相性がいいのは言うまでもない。

 

「これからのウンコは汚物じゃなくて、彼らのご飯になるんだ」

「スカトロダンジョンやめろ」

 

 バフォーの非難を他所に早速スキルを発動させた。植物園と化したフロアにボトボトとウンコが降り注ぎ、植物人間達が拾い上げては、花弁状、果実状の頭部から吸収していく。いよいよ、ファナティックな光景だった。

 

「自分でやっておいて言うのもなんだけど、ホラー味すごいな……」

「コイツらも成長したら、ミツバさん達みたいに可愛い娘になるんでしょうか?」

 

 公平君もワンチャンスに賭けているみたいだが、中々に難しいとは思う。

吸収し終えた植物人間達は再びヒタヒタとフロアを徘徊し出す。探索者の迎撃はしてくれると思うのだが。

 

「バフォー。もうちょっと、買うのは選んだ方が」

「コイツらをまとめて買いあげると、ダンジョンの建造費用を割り引くって」

「悪魔の癖に押し付けられてんじゃないよ!」

 

 とりあえず、今日1日の様子を見て判断するとしよう。今後は中級者も入って来るだろうが、暫くは予約していた初心者ばかりになるはずだ。

 

――

 

 2週間も経てばダンジョンの攻略はかなり進み、2階を突破する者も現れていた。探索者は少女だったが、表情に浮ついた物は無かった。煌々とやる気をたぎらせている姿は、初心者とは思えない位に精悍だった。

 僅か2階の間で艱難辛苦を噛み締め、夢見る少女は歴とした探索者になっていた。少女――栗栖エリコは復讐に燃えていた。

 

「(ここで味わった雪辱は、ダンジョンをクリアすることでしか晴れない)」

 

 思い出す。10日ほど前、ミーハーだった自分はダンジョンの洗礼を受け、汚物塗れになった。幸い、外に戻った時に臭いなどは消えていたとしても心に刻まれた傷は大きく残った。

 アレだけ好きだったダンジョン配信も見なくなったし、親に話すことも無くなった(両親は安心していたが)。だが、今でも夢に見るのだ。

 

『オェーッ!!』

 

 降り注ぐウンコ。ゲロを吐きかけて来る珍妙な生物。夢を見た代償と言うにはあまりに重い。重すぎる。きっと、自分の人生にはあの体験がつき纏うのだと。

 これから高校を卒業して、大学に行って、働き出して、気になる人を見つけても自分の過去には『ウンコ塗れになった女』と言う経歴が重くのしかかる。

 

『いや。エリコが気にし過ぎているだけじゃ』

 

 と、友人は言ってくれたが、問題は本人がどう思うか。である。

 故に、彼女は安心しきっていた両親をたまげさせ、アレだけ目を背けていた配信動画を視聴し、交流サイトなどを始めとした情報をかき集めて再チャレンジをしていた。スタッフも『ヤベェなコイツ』みたいな顔をしていた。

 

「私は! 運命にあらがう!」

 

 抗う必要も無い運命とVSしているのは滑稽ですらあるが、攻略の為の熱意と準備は本物であり、初の3階到達者となった。

 雰囲気が一変したことを肌で感じ取っていた。今までのフロアと違って、草木が生い茂り、屋内とは思えない様な雰囲気があった。

 

「(アレか)」

 

 直ぐにエリコはスマホで動画撮影の準備を始めた。LIVE配信をする訳ではないが、例えダンジョンの攻略を失敗したとしても映像を収めて帰ってくれば評価もされるし、別の探索者の攻略の足掛かりになる。

 現代におけるダンジョン攻略がスマートに行くのは、こうした情報の共有化が多く、同時にエンタメ的な価値まで付随できるのだから相性が良かった。

 

「(この臭いは)」

 

 2階は比較的清潔だったが、このフロアからは覚えのある臭いが漂っていた。間違いなく、そこら中にウンコが散乱している。

 一体、誰が。どんなモンスターがいるのかと警戒しながら進んだ先で、始めて彼女はフロアの住民ことモンスターに遭遇した。

 

「(何、アレ?)」

 

 植物の様な頭部を持つ人間。1,2階のモンスターはコミカルで可愛い気があったが、フロアの雰囲気も相まって一気に異界へと立ち入った気分に陥っていた。

 だが、直ぐにエリコは冷静になっていた。既にウンコとゲロを浴び、おまけに悪夢と常識にも苦しめられた身。今更、植物人間がなんだというのか。

 スキルを発動させ、身体能力にバフを掛け、肉薄。手にしていたナタで植物人間の頭部を刎ね飛ばした。切り離された頭部は地面に溶けて消えたが、胴体部分が倒れる兆しはなく、断面をエリコの方へと向けたかと思えば、大量の種子が発射された、

 

「フェイントか」

 

 直ぐに盾を構えて、種マシンガンを防ぎ、そのまま突っ込んで胴体をナタで切り裂いた。ようやく、倒れたかと思えば瞬間のことである。

 ビチャビチャと茶色の汚濁が降り注ぎ、断面から現れた根っこの様な物が絡みついたかと思えば、身体が高速で再生されて行く。

 

「そう言うこと……!」

 

 エリコの判断は早かった。されど、時間を掛けたのが仇になった。周りには植物人間が集まっており、彼らにバフを施す様に汚濁が降り注いでいた。

 

――

 

 一番期待していなかった植物人間共だが、私のスキルと恐ろしい位に噛み合っていた。植物がウンコを吸収して、ウンコが植物たちに力を与える。

 

「私もテイマーになっちまったみて~だなぁ~!」

「今日の鈴子さん。テンション高くないっすか?」

「私よりフロアマスターしているからな」

 

 今までは汚いとか不快感を煽る物でしかなかったスキルでモンスターを強化できる。なんて芸当ができたら、テンションが上がるのも無理はない話だ。

 最初は喋りもしなければリアクションも無い不気味な奴らだったが、こうもバフを与えるのが簡単だと面白いし、コイツらも可愛く思えて来た。

 

「ダンジョン側って楽しいんだな。今まで裏方で支援している程度だったけど、自分から干渉出来たら良い物だな!」

「ダンジョンの主よりダンジョンを楽しんどるな」

 

 遠見のアーティファクトで見る限りでは、足を踏み入れた探索者の少女が健闘をしていたが、やがて数の暴力に呑まれて消えて行った。

 

「これは楽しくなりそうだねェ。中級者以降の探索者が来たら、公平君のスキルも合わせて撃退できるかもしれないねぇ!」

「でも、俺のスキルって直接触れないと付与できなかったはずじゃ」

 

 言われたらそうだ。先日のアレは関係者が少なかったから何とかなったが、このフロアの植物人間全体にバフを掛けるのは少し無理があるかもしれない。

 

「バフォー。スキルの重ね技みたいなのは……」

「あるが、教えない」

「なんでさ。お前も初心者用部分がサラッと中級者にハック&スラッシュされるのは嫌だろ?」

「それはそうだが……」

「お前もさ。ダンジョンクリエイターなら初心者のみならず中級者だって大切な顧客のハズだ。初心者用の階層を通過点として消化されるだけじゃなく、歯ごたえのある難易度として楽しんでもらう。っていうのもまた、主としてすべき配慮じゃないか?」

 

 最近、バフォーの扱いは何となく分かってきた気がする。

 無理な頼みは聞いて貰えないが、コイツは探索者のことが大好きなので彼らを引き合いに出せば比較的言うことを聞いてくれやすいのだ。

 

「ぐっ。貴様……!」

「むしろさ。中級者にも初心者と同じ風景で、でも難易度がちょっと上がっていて初心を思い出すっていうのもまた、ウリにならないか?」

「鈴子さんはこのダンジョンを防衛したいのか、名物にしたいのか。よく分からないっすね」

 

 実は私もそう思っている。攻略されたくないと思ったら、戦力を強化しない程度に特色を出さなくてはならないので、プロデュースしているみたいになるのだ。

 

「分かった。やり方は難しくない。スキルを発動する者同士が密着すればいいのだ。単純だろう」

「えー……」

「じゃあ、鈴子さん。早速やりましょう!! どっちがいいですか! 俺が抱き着く側か! 抱き着かれる側か!!」

 

 もはや、見慣れた公平君の下心の餌食にならない様に私が抱き着く側に回った。胸を押し当てる形になるが、揉まれたりするよりはマシだろう。

 

「うぉ、すっげっ。高ランクダンジョンのアーティファクトでも手に入らない経験だよ、コレは」

「公平君。君は名前の通り。もう少し品行方正でいるべきだと思うがね」

「これ位の役得は必要だと思うんですよ。男子高生の欲望を分かって下さい」

 

 元が男の私にだから言っても良いことだが、間違っても異性に言った瞬間。ヒエラルキー最下層への転落は免れない文言だった。

 その後も、初心者たちが慣れぬ植物人間との戦いで撃破されて行き、ある程度察した物が4階に辿り着くこともあったが、突破はできなかった。

 5階に辿り着かれる日も遠くはないかもしれない。本題は中級探索者が現れてからだ。……かつての同僚たちは甘くはない。

 

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