TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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17日目:レベルアップ!

 初心者用ダンジョン部分で、私達が手入れをしていないのはボスフロア位だ。

 今の所、探索者達は無限湧きする植物人間達に絡め捕られて、突破できずにいるが初心者用部分が制覇されるのも時間の問題だ。

 

「だから、ボスモンスターと面会をしておこうと思うんだけれど。やっぱり、何かしらのアマッターノなのか?」

「そう言うコンセプトだからな。おーい、ダンジョンクリエイターだ。入るぞ」

 

 ボスフロアと言うだけに階段を上って直ぐに大きな門があるだけで探索要素は無い。ここを開けて直ぐに、ボス戦と言う分かりやすい作りになっている。

 バフォーがノックをすると『どうぞ』と言う短い返事と共に門が開いた。辺りは薄暗かったが、一斉にフロアの松明に火が灯った。そして、ボスの姿が露わになる。

 

「俺は『アラクネ・ノ・アマッターノ』。……いや、クモ男!!」

「バフォー? 東映に怒られたりしない?」

「怒られるも何も。そう言うモンスターとしか」

「悪魔らしいすっとぼけをするね~~!」

 

 前にも似たようなことをしたので、彼の悪魔らしい所を褒め称える為に肩を叩いた。今度は払われることは無かった。

 『アラクネ・ノ・アマッターノ』ことクモ男は名前とコンセプトこそアレだが、デザインはリアル目だった。殆ど、デフォルメされていないので、ギョロリとした目が並んでいて……有体に言えばキモかった。

 

「クリエイター殿。そこのお嬢さんは?」

「このダンジョンに潜り込んで来る探索者達を妨害するイカれた女だ。一応、我々の味方だと思ったらいい」

「何故、同胞の妨害を?」

 

 何回も説明するのが面倒臭いが、呪いとダンジョンの関係についてを話すとクモ男は憤慨していた。

 

「どうして、先達たるものが後進の行く手を阻むんだ。しかも、自分の欲望の為にとは。浅ましい!」

「うむ。私もそう思うが、コイツも止むに止まれぬ事情があるのだ。それを汲んでくれると助かる」

 

 モンスター側に糾弾され、高ランク探索者からも問い詰められているし、我が身を顧みる所であるが、止まる気にはなれない。

 

「ふん。事情があるなら、俺はこれ以上言わん。だがな、1つだけ約束しろ。このフロアでは邪魔をするな。介入はするなよ」

「どうしてだい?」

「知れたこと。ダンジョンに足を踏み入れた探索者が失敗と成功を重ねた末に辿り着く、一区切りがこのフロアなんだ。ここまでの努力が実を結ぶか否かと言う真剣勝負に手出しはされたくない」

 

 怪人みたいな見た目をしているのに実に正々堂々としていて気持ちが良い。

 もしも、このダンジョンが初心者用の階層までしかなかったら、彼の意図を無視して妨害をしていた所だが、まだ中級者用ダンジョンの部分もある。

 

「分かった。じゃあ、私達はここでは手出しをしない。それで良いね?」

「無論だ。バフォーさんも手出し無用で頼むぞ」

「うむ。では、そのまま中級者用フロアに向かうとするか」

 

 介入のしようがないのなら、私だって何をするつもりもない。ここを超えたらいよいよ中級者用フロアだ。モンスター達も一際強力になるというのがセオリーだが、一体何がいるのだろうか?

 

~~

 

 中級者用フロアこと6階。ダンジョンのフロアが一変して、懐かしい感じに包まれた。私の主戦場だった場所だ。

 

「ここまで来ると。私のスキルでどうこうって言う小細工が利かなくなるね」

「もしも、お前がスキルを使い続けて妨害する気ならやり方を変えた方が良いかもしれんな。主に罠やギミックとして運用するとかな」

 

 バフォーの言葉に頷いた。1階部分でやっていた妨害なんてお遊びやおふざけの様な物だ。ここまで来たら、探索者も一筋縄でいかない連中ばかりだから、妨害するにしても本気を出さなければならない。

 となれば、汚いだけ。とかではなく、ちゃんとダメージや進行の妨害など。ある意味、私側のリミッターも外れるという訳だ。

 

「じゃあ、私が協力するモンスター達と会ってみないとね。今度はどんなのがいるんだろう?」

 

 アマッターノシリーズもそろそろネタ切れを起こしているのか。はたまた、植物人間みたいなパターンが来るのか。実はちょっと楽しみにしている。

 何と出会うか分からないという探索心を煽る要素もまたダンジョン特有の物だと。バフォーと一緒に歩いていると、早速第一モンスターを発見したが。

 

「ヒン」

 

 現れたのは、頭の部分が馬のモンスター。と言うだけなら、第1階層で出会う『ケンタウロス・ノ・アマッターノ』と同じだろう。

 だが、コイツは頭部だけが馬で首から下は人間の胴体と手足が生えている。より、人間に近くなったが、とてもキモくなっていた。

 

「バフォー?」

「何を驚いている。下層に出て来たモンスターのレベルアップ版が出て来ることは珍しくないだろう?」

 

 階層の多い中級者ダンジョンでは、1層目で出て来たモンスターのレベルアップした形態が後半に出て来る。と言うことは往々にしてあるのだが。

 

「キモいよ!」

「なんてことを言うんだ! 見ろ! 武器も盛ってやる気もたっぷりだというのに!」

 

 『ケンタウロス・ノ・アマッターノ』のならぬ逆ケンタウロスの手にはやり、背中には弓矢を背負っていた。かなり好戦的なアセンブルにはなっている。

 

「うーん。本当に大丈夫? ちょっと、槍術と弓術を見せてくれない?」

 

 逆ケンタウロスが頷くと槍を取り出して振るってみせた。ブンブン、ドスドス。あまり武術に詳しくは無いが、どう見ても力任せに振っている様にしか見えない。

 

「バフォー。お前から見て、これはどう見える?」

「一応、高ランク探索者の武術などは知っているが、それと比べると振り回しているだけだな。体当たりや、嚙みつきよりはよっぽど強いが」

 

 モンスターにそんな心得を求めてはいけない。次に弓術の方だが、大体は真っすぐ飛んでいたが、割と逸れたりもしていたが。

 

「……武具が使えるだけ、進歩と言うことにしよう」

「そうだぞ。他の奴らも呼んで来てくれ」

 

 ヒヒーンとだけ返事して、逆ケンタウロスが呼びに行って数分後。懐かしきメンバーの進化した姿があった。

 

「シャーッ」

 

 まず、ナーガ・ノ・アマッターノこと逆ナーガは頭部だけが蛇になって首から下が人間っぽくなっていたので、エジプト神話辺りに出てきそうなモンスターになっていた。

 手には妖しく光る紫色の剣が握られている。如何にも『毒ですよ』と言わんばかりの雰囲気を醸し出している。ちなみにこれもまた力任せに振り回す位しかしてくれなかった。

 

「最後に、セイレーン・ノ・アマッターノだが」

 

 顔面部分だけが魚になっていて、首から下が人間になっていた。

 もはや『セイレーン』の面影はなく、マーマンとか半魚人。いや、この形態的に言ったらインスマウスと言う方が正しそうだった。

 

「あー」

「そこはギョギョーって言わないのか」

「何を期待しとるんだ」

 

 手には分かりやすく銛が一本。ただ、これの扱いに関しては外の二者よりも若干冴えているというか、機敏な雰囲気は感じた。……6階部分のモンスターはこんな感じか。

 

「全員が武器を持っているから、突破して来たばかりの初心者は洗礼を免れないって感じか」

「ウム。敵も同じ様に武器を使うとなったら、より高度な駆け引きが生まれるだろう。その分、入手できあるアイテムは豪華になっているから、モチベーションは見せて欲しい所だ」

 

 モンスターと面会を済ませた後は、宝物なども調べてみたが、それなりに価値のある物が揃っていた。コンスタントに入手することができれば、生計を立てられる位の額にはなる。

 

「言っとくが。それは探索者用だから、くすねるような真似は止めろよ?」

「でも、宝物とかが無いと分かったら探索者達もやる気をなくして……」

 

 と言いかけた所で、バフォーが黒槍を取り出していたので謝罪した。流石に、ダンジョンの報酬部分に手を付けることは許されないらしい。

 

「全く。妨害は認めているが、探索者が獲得しうる報酬部分を中抜きする様な真似は許さんぞ。ダンジョン全体の信頼に関わって来るからな!」

「本当にダンジョン部分には真摯だね」

 

 6階部分はこんな物だったが、中級ダンジョンが何処まであるか。と言うのは、今までの経験則から考えて……。

 

「このダンジョンは15階まで。って所かな?」

「やはり、自分の領分は詳しい様だな。その通りだ」

 

 もしも、高ランクダンジョンが生えて来たら30階までとなる感じか。あるいは50階までか。そっちの方は私もよく知らない。

 

「モンスターの面々も6,7階は同じ様になるだろう。8,9階はミツバちゃん達の強化形態が来る感じか」

「ハピやんは龍華に確保されているから、2人だけになるが。あるいは早めにクモ男を再登場させるか」

 

 ボスモンスターが3階後に雑魚モンスターとして闊歩するというのは何とも言えない儚さを感じる所ではある。

 

「大体、分かった。中級ダンジョン以降はごまかしや悪戯レベルじゃなくて、私も本気でサポートして行こう。いざとなったら、公平君にも力を借りるだろうね」

「ウム。後、まぁ。これだけ話題になっているから、また高ランク探索者が来そうな気もするが」

 

 不吉なことを言わないで欲しい。ただ、龍華、土場が攻略しきれていないという話は高ランク探索者の間で話題になることで、襲来は避けられない。

 ……そもそも、相手によってモンスターの形態やレベルが一気に変わるダンジョンなんて前代未聞だからね。にしても。

 

「少し前までは、私が妨害することをなんやかんや言っていたのに。今はノリノリだねぇ」

「……正直に言うと。ダンジョンが成長するというのを見て、どうなるか。と言うのは、私も少なからず興味がある。元はさっさと消費しようと思っていた物が生き永らえて、どうなるか? と言うのは見てみたい」

 

 ふと、龍華の言っていたことが頭をよぎった。バフォーは信用しない方が良い。

 実際、ダンジョンが成長することの弊害は私の自室がダンジョンに取り込まれる。と言う形で表れている。

 私達の生活に極当たり前の様に馴染んだダンジョンと言う物が何なのか。と言うのは、実際の所よく分かっていない。

 

「ちなみに。本当に30日で呪いが完遂すると思うかい?」

「……そうなるハズなんだ。そもそも、ダンジョンが30日も持つなんて状況を見たことが無いからな」

 

 初心者用ダンジョンなんて2,3日で消えるし、中級者ダンジョンでも1週間程度。高ランクダンジョンでも1ヶ月も持っているモノなんて見たことが無い。

 

「何が起こるんだろうねぇ。私は、どうなるんだろうねェ?」

 

 戻った所で良いことなんて無い。両親との関係も薄くなっているし、友人なんかもあまりいないから未練はない。でも、『鈴木 浩二』と言う人間の記憶が消えた時、私はどうなるのか。

 

「さて、そろそろボスフロアに辿り着く奴も出て来るだろう。どんな奴か、顔だけでも見に行くとするか」

「そうだね」

 

 バフォーと一緒に下層部分へと戻って行く。残り2週間ほどで私と公平君の呪いは成就するが。果たして……。

 

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