TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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18日目:七転八倒 その2

 エリコの後にも探索者が5階にやって来ることはあったが、クモ男を超えられた奴はいなかった。本日の探索受付が終了したのを見計らって、私達は彼を労いに来た。バフォーが手を上げた。

 

「ご苦労だった。今日は、よくやったな」

「ありがとうございます。このダンジョンの探索者は骨がある奴が、やり応えがある。ボス、冥利に尽きる」

「他のダンジョンはそうじゃないのかい?」

 

 話題のタネがてらに聞いてみたが、コレが良くなかった。バフォーとクモ男の何か突いたらしく、怒涛の愚痴が始まった。

 

「最近の若い奴らは、どいつもコイツも最適解アセンブルだの廉価で組めるおススメ装備だの。オリジナリティがない! 攻略方法も統一されて、探索者の個性が見えんわ!」

「戦い方一つをとってもですね! 攻撃と防御のターン制じゃなくて、遣り取りを許さない様なゴリ押しも多いですしね! ほんと、バフォーさん! 連中はダンジョンに何を求めているんですかね!!」

 

 また、コイツらの『簡単にクリアされたら悔しいじゃないですか』会議が始まった。そんなことを言っても現代っ子は情報の共有がデフォルトで備わっているんだから、誰もが成功させやすい最適解が選ばれるのはしょうがない。

 

「そんな、飽きられそうなダンジョンにイロドリを加えた私には感謝して欲しいね」

「彩と言う割には茶色ばっかりだが」

 

 このダンジョンには糞は欠かせない要素になっている。

 もはや、私のスキルが『BB劇場』なのか、ウンコを出現させるだけなのかは判別し難い所だが、探索者の進撃を拒むという点で大きく貢献していることだけは否めまい。

 

「実際の所、イロドリなんて副産物でしかないがね。さっさと、30日防衛して、このTSを定着させて欲しいね」

「30日も持つかぁ?」

 

 クモ男が怪訝そうな顔をしていた。基本的にどんなダンジョンも現代ではサクっと攻略されがちだ。

 このダンジョンは、私の妨害もあって難易度が上がっている為。探索者を押し留めることには成功しているが、難攻不落と言うイメージが着いたらどんな探索者が現れるか分かったモンじゃない。

 

「事実、高ランク探索者が2回ほど入って来ているからな」

「俺も遠見で見ていましたけれど、あれはヤバかったですね。……でも、高ランク化は楽しそうだったなァ」

 

 チラチラとコチラを見ている。もしかして、今度高ランク探索者が侵入してくることがあったら、自分もハイレベルバトルをやってみたいんだろうか。

 

「いいかい? 龍華にせよ土場にせよ。彼らの侵入はイレギュラーだ。何より、高ランク探索者が派手にバトルをするとマナが飛び散ってダンジョンが成長するから、望むべき物ではないんだ」

「うむ。こればかりは同意だ。そもそも、このダンジョンは初心者用に設計したんだから、卒業した者達は来ないで欲しい」

 

 バフォーも同意してくれた。と言っても、高ランク探索者が権力を使えば、この程度のルールは簡単に破られる。

 だが、別にこのダンジョンはクソが降る位しか特徴が無いハズで。龍華みたいに特定のモンスターが琴線に触れただとか、土場みたいに糞遊びしに来た。みたいなのは、とてつもなく可能性が低いイレギュラーなのだ。

 

「そうなのか。……だが、このダンジョンに挑戦する探索者達と相まみえることにもやりがいは感じている。今は、これを頑張ろう」

「よくぞ言ってくれた。このダンジョンの才先は明るいな!」

 

 バフォーとクモ男は肩を組んで割っていた。お互いの翼と脚が邪魔して、すごくやり辛そうだったが、きっと細かい問題だろう。

 

「(そうだよな。このダンジョン自体に魅力的なアイテムがある訳でも無ければ、珍しいモンスターがいる訳でもない。高ランク探索者が2人も来たのは事故みたいな物だ。もう、あんなことが起きるハズはない)」

 

 我ながらフラグを立てまくっているが、実際問題。連中が来る理由がない。

 そんなことを思っていると、プルルル。と、遠貝が震えた。羽生からだ。強烈に嫌な予感がする。

 

『鈴……木か。良い報せと、悪い報せがある。どちらから聞きたい?』

「良い報せから」

 

――

 

 時は少し遡る。高ランク探索者同士は仲の良し悪しはあれど、社会に対する影響力の大きさからか、互いに繋がっている。コレは相互扶助以外にも牽制し合う意味もある。

 

「龍華センパァイ。ダンジョン攻略に失敗したって聞きましたけれど、何があったんです?」

 

 龍華に会いに来たのは、2m近くの身長と血管が浮き出る程に鍛え込んだ肉体を持つ女性だった。背中には冷蔵庫みたいなバッグを背負っている。

 

「豹華。あの件については何も答えないから。あくまで、私はこの子を捕まえる為に行っただけなんだから」

 

 彼女が滞在している部屋に置かれている水晶内ではハピやんがハルとトモエにシバかれていた。

 

『初心者用ダンジョン出身だからって手加減しませんからね!』

『トモダチ!』

『トモダチやから滅茶苦茶厳しくいくで―』

『イヤーッ!!』

 

 その甲斐もあって、ハピやんの姿は変わっていた。

 飛行はできないが、顔は可愛らしい少女のような物になっていたし、徐々にハーピィーらしい形態に移行していた。

 

「だったら、撤退した。って報告が入るハズですよね? 初心者用ダンジョンで失敗するなんてあり得ないじゃないですか。何かあるんですよね?」

「仮にあったとしたら。どうするつもり?」

「決まっているじゃないですか」

 

ガタン。と、豹華が置いた冷蔵庫の様なバッグの中に収まっていたのは、大量の武器とアーティファクトだった。いずれも戦闘特化仕様で、龍華のアセンブルと比べて、あまりに偏重的だった。

 

「『私』の先輩に勝った奴をぶちのめしに行くんです。そうしたら、私達はいつまでも最強なので」

「ちょっと。豹華! バカな真似は止めなさい!」

 

――

 

『と言う、遣り取りがあったことを事前に知ることができたのが良い報せだ』

「かなり凶報めなんだが???」

 

 一体、何処が朗報なのか。……と、ここまで来て気付いた。まさか、悪い報せは何かといわれると。

 

『ちなみに凶報はだ。明日の最後にやって来る探索者が件の『吉良 豹華(きら ひょうか)』だ。バフォーにもよろしくと言っておいてくれ』

 

 プッと一方的に切られた。暫く、思考が停止した。私もクモ男もバフォーの方を見ていた。

 

「なんだ。私が悪いとでもいうのか」

「でも、龍華を倒したのは、お前だよな?」

 

 豹華が敵討ちに来るというのなら、バフォーが相手をするのが道理ではある。だが、彼は首を横に振っていた。

 

「良いか。私はあくまでダンジョンの管理者だ。私自身はダンジョンのギミックに入っておらんのだ。ボーイと話す為にキャバクラに入る奴はおらんだろ?」

「いや、キャバクラ行ったこと無いから分からない……」

 

 コイツは何処から人間の知識を仕入れて来ているんだろう? やや偏りがある様に思える。バフォーが頭を抱えていると、ポンと背中を叩かれた。

 

「俺がいるじゃない」

 

 心なしかクモ男が楽しそうだ。もしかしたら、自分もハイレベルバトルができるとでも思っているのか、ソワソワしている。

 

「ま、まず。公平君を呼ばないと」

 

 不幸中の幸いとでも言うべきか。最後に来るということは、それなりに遅くなるということ。つまり、公平君も学校を終えて帰っているハズだ。

 速攻で連絡を入れた。もしかしたら、昼寝したり部活仲間と一緒に夜通しパーティをやっていたりしないことを願っていると……繋がった!

 

『アレ? どうしたんすか? 鈴子さん』

 

 私は、この短い時間に起きた悲劇を報告した。その度に、公平君はあー。とか、相槌は打ってくれるのだが。

 

「生返事が多いけれど、もしかして。寝ていた?」

『いや、そういう訳じゃなくて。俺もネットの玩具にはなりたくないんですけど、こうも引っ張り出され捲ると。そろそろ、何かあっても良いんじゃないかって』

 

 ここに来て! と思ったが、考えてみれば私は目的の為に動いているのに対し、公平君は付き合わされているというか。

 いや、彼もネットの玩具にはなりたくないだろうが、私の様に過去を消したいと思う程の必死さはないだろう。ならば、駆り立てるしかない。

 

「よ、要求を聞こう」

『今度、ラグビーの試合があるんで。ネットで知り合った年上のお姉さんってことで、見に来て欲しいんです!』

「承認欲求~~! 現代っ子~~!」

 

 トロフィー扱いされているみたいでやや腹が立つが、仕方がない。

 彼の要求を飲むと『明日、そっちのアパートに向かいます』とだけ言って、電話が切れた。多分、間に合いはするだろうが、果たして。龍華の後輩と思しき豹華の実力や如何に。そして、何よりも。

 

「(多分、コレ。ダンジョンが成長するな……)」

 

 僅か3日後に、次の高ランク探索者。となれば、勝っても負けてもダンジョンの成長は防げない。きっと、高ランクダンジョンも出現するだろうという確信めいた予想があった。

 

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