TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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19日目:襲撃スパンが短い 1

「(嘘でしょ)」

 

 この糞ダンジョンに配置されてから、ここで受付をするのがルーティンになっていたスタッフは、今日最後の探索者を見て驚いていた。

 バレー選手の如き背格好をして、冷蔵庫みたいな巨大なバッグを背負っている。初心者でないことは一目瞭然だ。

 

「『吉良 豹華』でぇす。受付をお願いしますぅ」

 

 データベースで照合をすると、案の定。彼女が高ランク探索者だということが判明した。既に2件ほど前例があるにしても、このダンジョンには何があるというのか? 一スタッフとして詮索はしないにしても。

 

「電子機器の使用は……」

「しませぇん」

 

 受付にスマホだけを預けて、彼女はダンジョンへと入って行った。

 ゲートを潜って数歩ほど進んだ所で、彼女が背負っていたバッグがマナに反応して青く光った瞬間、形を変えて豹華の全身に装着された。

 つま先から頭部まで覆われ、収納されていた武器が全身に取り付けられていた。2本のブレードは両腕にマウントされ、足鎧の先端は猛禽類を彷彿とさせるような鉤爪が伸びていた。尻尾の様に伸びるテイルブレードに、頭部を包み込むヘルムの中央から蚊の口吻の様に伸びる槍が1本。背中には何かしらの砲身が取り付けられていた。

 

「行きますよぉ~!」

 

 彼女の号令と共に背中の砲身が吠え、大量のマナが射出された。降り注ぐ糞は木っ端みじんに吹き飛ばされていた。

 

――

 

「なんか、ウチよりメカ娘的なことしてへん?」

「メカ娘って言うか、武器人間っすね」

「もろにモスキートじゃないか!」

 

 まさか、武器人間が実在したとは。とか、悠長なことを言っている場合ではない。ミツバちゃん、公平君と一緒に豹華のスラッシュ&ハックぶりを見ているが、シャレにならない。

 龍華や土場と比べてフィジカル全振りなのか、とんでもない速度で駆け回っては遭遇するモンスターを辻斬り気味に切り裂いていく。憐れ、1階のアマッターノ達が逃げ惑っているが、逃げる背中に砲撃をぶち込んだりと探索方法があまりに破壊的で攻撃的だ。

 

「どっちがモンスターか分からんな……」

 

 バフォーが端的に告げていた。とは言え、土場みたいに近寄りがたい雰囲気と言う訳でもないので、公平君がミツバちゃんとスキュさんにスキルによる強化を施していた。……のだが。

 

「アレ? 前は空中機動できたのに……」

「私もです。なんて言うか、触手が少ないような」

 

 見た目は似たような感じになっているのだが、どうやら龍華の時と比べて強化幅が小さくなっているらしい。これに関しては、理由が直ぐに思い浮かんだ。

 

「恐らく、相手が単騎で乗り込んできているから。じゃないかな?」

「公平君のスキルは『公平化』だから、戦力的な総和が近しくなる様に調整した結果。と言うことだろう」

「自分のスキルながらも、割と融通利かないっすね……」

 

 と公平君は言うが、このままだと100%攻略されるだけの所に対抗できる可能性をもたらす。と言うだけでも十分すぎる。

 

「私達ができるのはここまで。と言うことさ、ミツバちゃん。スキュさん。後は頼んだ」

「分かったやで!」

「この間の土場さんみたいな人じゃなきゃ良いですよ」

 

 元気溌溂なミツバちゃんと比べて、スキュさんは前回のことを引き摺っている様でテンションが低かった。本当に土場とか言う探索者は酷かった。

 私達は豹華と遭遇する可能性を考えて、5階まで移動することにした。ミツバちゃん達で止まってくれたら幸いだが。……と思っていると、爆発音が聞こえて来た。そこまで来ている!

 

「急げ!」

 

 バフォーの後を付いて、急いで移動する。ここまで無茶苦茶な探索者は始めてだ。ひょっとしたら、私達も巻き込まれてしまうかもしれない。

 

「(それだけは避けないと!)」

 

 彼女の攻撃に巻き込まれて死んだ場合。もちろん、ダンジョン故に入り口に戻されるのだろうが、その場合。登録もしていない人間がいきなり出現することになったら……大分ヤバい。一目散に走る。

 

――

 

「アレぇ~? トモエちゃん? でも、髪の色が違いますねぇ」

 

 遠見で姿は確認していたが、いざ目の前にしてみれば豹華と言う人間の異質さが際立って見えた。

 

「ウチの妹と知り合いやからって、手加減せぇへんで!」

 

 飛翔する能力は無いにしても、地上部分で急接近する程度にはスラスターも使えた。スキュラとも動きを合わせて、接近しようとしたが。

 

「――z___!!」

 

 一瞬、何が起きたか分からなかったが、少しして自分が壁に激突したことに気付いた。振り返れば、眼前にはブレードの刃が迫り来ていた。

 

「ッ!!」

 

 咄嗟にヒートブレードで受け止めたが、豹華のヘルム中央部分に取り付けられている槍が引っ込んだ。

 

「(アカン! 引かれへん!!)」

 

 もしも避ける為に体勢を崩せば、そのままブレードで切り裂かれるし、膠着状態のままなら槍に貫かれる。となれば、この状態を切り抜ける手段は。

 

「うぉおおお!」

 

 鍔迫り合いになっていた2人の背後からスキュラが突っ込んで来た。しかし、豹華は一切背後を見ないまま、テイルブレードを振るっていた。

 

「!?」

 

 咄嗟に身を引いたが、それでもスキュラの体は切り裂かれていた。

 だが、テイルブレードを振るおうとした一瞬の隙を見て、ミツバもスラスターを吹かして豹華を跳ね飛ばしていた。

 

「あらぁ~」

 

 空中で受け身を取り、態勢を立て直した所で負傷していたスキュラに組み付くと、闇雲にブレードで切り裂き、口吻槍を打ち込んでいた。

 

「スキュさん!?」

「クッソ! 離れろ!!」

 

 振り解く為に暴れようとしたが、スキュラは自らの動きが鈍くなっていることに気付いた。豹華が引き抜いた口吻からはドロリとした液体が垂れていた。

 

「効いてきました?」

 

――

 

 龍華も土場も規格外であったが探索者としての振る舞いはしていた。だけれど、豹華の振る舞いはどちらかと言えば。

 

「モンスターに近いな」

「参考にしている部分はありそうだね」

 

 5階へと退避した私達は遠見で現場を見ていたが、今。身動きを取れなくなったスキュさんが撃破されていた。このままではミツバちゃんが撃破されるのも時間の問題だろう。

 

「これが高ランク探索者か……」

 

 5階まで避難して来たのでフロアボスことクモ男も様子を見て、身震いしていた。無理もないことだ。

 

「バフォー。やっぱり、お前が出る訳にはいかないのか?」

「何度も言うが、私はクリエイター側だ。軽々に出現して良い物ではないんだ」

「そんなこと言わずに。前回は手伝ってくれたじゃないか」

 

 それでもバフォーは首を振らない。できる限り、ダンジョンとギミックで撃退したいという所なのだろう。

 

「公平君。俺にも力を貸して貰えるか?」

「分かりました」

 

 クモ男に乞われて、公平君が彼にスキルを掛けていた。

 特債の怪人めいたフォルムはファンタジー寄りの造詣へと変わっていた。蜘蛛の様に膨らんだ下腹部には眼球の様な赤い模様が入っている。上半身部分にはやはり、人間の美少女の姿があった。

 

「ウム。良い眺めだ」

 

 黄色と黒のツートンカラーの髪は毛量が多く、肩まで伸びている。タランチュラなどは毛に覆われているというが。

 

「うーん。どうして、モンスターはレベルアップすると女体化するんだろう?」

「公平君。そもそも、ここのモンスター達は美少女モンスターの余った素材で作られたモンスターなんだから、レベルが上がったら元の姿に寄って行くんだろうさ。多分」

「いや。余ったので作ったモンスターのレベルが上がったからって元の姿になります? パンの耳がふわふわの真ん中部分になります?」

 

 言われてみればそうだ。そもそも、端材部分が下位互換みたいな扱いかと言われたら疑問であるのだが。

 

「バフォー。そこら辺は?」

「何って。そう言うモンだとしか」

 

 理屈じゃないらしい。遠見で観測していた2階部分だが、ミツバちゃんも間もなく撃破されて、豹華は3階へと上がっていた。恐らく、ここに来るのも時間の問題だ。私達の運命はクモ男ことアラクネに託された。

 

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